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新しい仲間
新しい仲間 ⑫
しおりを挟む「初めまして。カナリヤ」
「…」
誰かが耳元で囁いた。目をゆっくりと開いた。そこには天井しか見えず、誰もいない。起きあがろうとするが思うように体が動かない。
それでも誰かが話しかけてくる…
「私はクライス。光の精霊」
「光の…精霊…?そんなのが本当にいるの…?」
「ええ…いるわよ。今は伝説みたいになっているけれどね」
横を向くと真っ白なワンピースをきて、金色の髪をし、青い瞳の女の人がいた。
女はカナリヤに近づき、カナリヤのおでこをそっと触った。するとさっきまで重かった体が軽くなった。カナリヤはゆっくりと起き上がった。
「どう言うこと?ここはどこ?私は…何をしていたの?」
「あなたはアイに毒を盛られ倒れたのよ。ここはあなたの夢の中。私があなたの夢の中に入り込んだの」
「…それで…私に何かようでも?」
「あなた、面白いわね。私にそんな態度を取るのはあなたが初めてよ…それにみんな驚いていたわ」
「…まあ、なれているので」
「そうね、神と繋がっているものね。こう言うことは多いわよね」
「はい…あの、私死んだんですか?」
クライスはさっきまで笑みを浮かべていたが暗い表情になった。
「まだわからないわ。あなたは正と死を彷徨っている」
「そうですか」
「けれど、私はあなたのことを気に入っているわ、カナリヤ。あなたみたいな子を私はずっと待っていた。神が与えた能力は人々を救うためにあるもの。それを間違った使い方をしているものがいる。神が能力をとったところでそいつは何も変わらない…同じ過ちを犯すだけよ。だからあなたみたいな子がいて嬉しいわ。私はあなたに協力する。あなたを生き返らせるわ」
クライスはそっと微笑んだ。アイとマリヤのことを言っているのだろう。
「私はただルリスの仇を取りたいだけです。そんな精霊の力を借りるなんて」
「いいえ。それだけではないでしょ?」
「え?」
「あなたは仇を取るためにここまでしているわけではない。自分と同じような苦しみをこれ以上広げないため。他の人には幸せになってほしい。だから元凶のアイを追っている。そうじゃないの?」
カナリヤは黙って俯いた。
「だから私はあなたを選んだよ、カナリヤ」
「…私に協力してくれるんですか?」
「ええ」
「本当に私と協力して大丈夫だと思ってるんですか?裏切るかもしれないんですよ?」
「私の目に狂いはない。それにあなたがそんなことをしないって分かってる。私はあなたを信じる」
「そこまで言われたら…断れないじゃん…」
「何かあったら私をよんで。すぐに駆けつけるわ」
クライスは手を出した。カナリヤはその手を強く握った。
「約束よ。アイを止めて。これ以上苦しむ人たちを出さないように」
「分かった…約束です」
カナリヤはクライスの前から消えた。
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