50 / 50
第一期
それぞれの過去と思い 二八話
しおりを挟む
「良かったのか?」
馬車の中でイリスが聞く。ルーミは窓から遠ざかっていく屋敷を見る。
「え…?」
「黙って帰っていいのかって言ってんだよ。挨拶とかもせずに」
「うん。いいの」
とうとう屋敷が見えなくなる。馬車は気づくと森を走っていた。窓の外を見ても木々しかない。
「あそこはきっとこの世界とはまた別のところにあるんだろうな」
イリスがボソッと言う。それはなんとなくわかっていた。あの場所についてイリスが言った言葉を思い出す。確かにあそこは不思議なところだった。
「きっとあのサイジとか言うやつがスキルで作った空間なんだろうな。そう思うと相当強いマナなんだろうな」
「うん」
俯いて目を閉じる。ライは私たちが消えてどう言う顔をするのだろう。ショックを受けるか、喜ぶか。やっぱり最後くらい挨拶しておけば良かったんじゃないか。
けれど、そしたら私は離れたくない、と思ってしまう。ライは私の恩人でもある。ありがとう、と伝えておくべきだったか。
サイジにはライに渡してと手紙を渡しておいて、と伝えておいた。そこに色々とお礼を書いて置いたから大丈夫。
「これからどうっすかね。三人いないしギルド続けていけないからな」
忘れていた、そうだった。お金は十分あるが、何もしていないと言うのは暇で嫌だ。
コンコン
窓を誰かが叩く音がする。馬車は走っているのに、誰が叩いたのだろう。
「あ、鳥だ」
そこには何かを首から下げた鳥がいた。
「すみません、止まってください」
前にあった扉を開け馬車を引いている人に言う。
馬車が止まるとゆっくりと扉を開けた。鳥はルーミの掌に停まった。
「なんだこれ」
イリスが鳥の首にかかっている紙ををとった。すると鳥はドアを出て空に向かって消えた。
「見せて」
手紙はサイジからだった。
「ちょっとしたお礼をあげるよ。良かったら学園に通わないか?推薦状は私が書いておいた。場所などは後日送る。イリス君の分も書いておいてあげたよ。それでは、また会う日まで」
「なんだよそれ……俺は付け足しかよ」
イリスは半ば切れた顔で手紙を見ている。ルーミは手紙の内容を見るとふふっと笑った。やっぱり憎めない相手だ。
「これでこれからも楽しめそうね。学園とかもう最高!」
「推薦状書けるとかこいつ何者だよ」
イリスはブーブー言いながら椅子に座り直す。
「そうね…。何者なんだろう」
馬車が動く。馬車に揺れながら手紙を見つめる。すると涙がぽたりと一粒落ちた。涙は手紙に垂れ濡れてしまった。すると濡れたところが透けて何か文字が浮かんできた。
『ありがとう、元気でね ルーミ、イリス』
「もう…泣かせないでよ」
ルーミは笑いながら涙を流した。
馬車の中でイリスが聞く。ルーミは窓から遠ざかっていく屋敷を見る。
「え…?」
「黙って帰っていいのかって言ってんだよ。挨拶とかもせずに」
「うん。いいの」
とうとう屋敷が見えなくなる。馬車は気づくと森を走っていた。窓の外を見ても木々しかない。
「あそこはきっとこの世界とはまた別のところにあるんだろうな」
イリスがボソッと言う。それはなんとなくわかっていた。あの場所についてイリスが言った言葉を思い出す。確かにあそこは不思議なところだった。
「きっとあのサイジとか言うやつがスキルで作った空間なんだろうな。そう思うと相当強いマナなんだろうな」
「うん」
俯いて目を閉じる。ライは私たちが消えてどう言う顔をするのだろう。ショックを受けるか、喜ぶか。やっぱり最後くらい挨拶しておけば良かったんじゃないか。
けれど、そしたら私は離れたくない、と思ってしまう。ライは私の恩人でもある。ありがとう、と伝えておくべきだったか。
サイジにはライに渡してと手紙を渡しておいて、と伝えておいた。そこに色々とお礼を書いて置いたから大丈夫。
「これからどうっすかね。三人いないしギルド続けていけないからな」
忘れていた、そうだった。お金は十分あるが、何もしていないと言うのは暇で嫌だ。
コンコン
窓を誰かが叩く音がする。馬車は走っているのに、誰が叩いたのだろう。
「あ、鳥だ」
そこには何かを首から下げた鳥がいた。
「すみません、止まってください」
前にあった扉を開け馬車を引いている人に言う。
馬車が止まるとゆっくりと扉を開けた。鳥はルーミの掌に停まった。
「なんだこれ」
イリスが鳥の首にかかっている紙ををとった。すると鳥はドアを出て空に向かって消えた。
「見せて」
手紙はサイジからだった。
「ちょっとしたお礼をあげるよ。良かったら学園に通わないか?推薦状は私が書いておいた。場所などは後日送る。イリス君の分も書いておいてあげたよ。それでは、また会う日まで」
「なんだよそれ……俺は付け足しかよ」
イリスは半ば切れた顔で手紙を見ている。ルーミは手紙の内容を見るとふふっと笑った。やっぱり憎めない相手だ。
「これでこれからも楽しめそうね。学園とかもう最高!」
「推薦状書けるとかこいつ何者だよ」
イリスはブーブー言いながら椅子に座り直す。
「そうね…。何者なんだろう」
馬車が動く。馬車に揺れながら手紙を見つめる。すると涙がぽたりと一粒落ちた。涙は手紙に垂れ濡れてしまった。すると濡れたところが透けて何か文字が浮かんできた。
『ありがとう、元気でね ルーミ、イリス』
「もう…泣かせないでよ」
ルーミは笑いながら涙を流した。
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。
山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。
異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。
その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。
攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。
そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。
前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。
そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。
偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。
チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる