『殺す』スキルを授かったけど使えなかったので追放されました。お願いなので静かに暮らさせてください。

晴行

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五章

sugar bullet①

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 セツカとメカニカル=シールの決着がついた。
 サトウはそれを手出しもせず眺めていた。
 いや、観察していたのだ。

 都市部から約三キロメートルの距離。
 持っていたロケットランチャーをその辺に放り投げる。
 サトウは迷彩柄のジャンパーを羽織り、ぷぅとタバコをはき捨てた。

 手が震えている。
 緊張? 焦り?
 違う。
 やっと見つけた。喜び。武者震いだ。
 俺の弾を止めやがった。
 思わず踊り出したくなっちまう。
 あいつは……レイゼイ=セツカは、同類だ。

 奴はまぎれもなく天才。
 天才の中の天才だ。
 でなければ俺の弾丸を止めることなど不可能だからだ。
 __それがスキルを使ったものだとしても、だ。
 思いがけずサトウは、昔を思い出していた。少しの間、現実を忘れた。


(サトウさん・やりましたよ!! メカニカル=シールを使ってセツカ様にひとつ楔(くさび)をうちました!! 今なら精神的に弱っていらっしゃるので、簡単にぶっ殺せますよ?)


 アンリエッタの声。
 普段は冷静なサトウだが、あきらかに顔をしかめて遠くを睨み付ける。
 アンリエッタの位置は感覚でわかる。ミーアキャットのように臆病なメスだ。
 サトウは不機嫌に声に対し答える。
 くそうるせえバカ女が、頭の中で勝手に話しかけてくるな。
 わかってねえ。
 あの男はそんなレベルの男じゃねーんだわ。一回戦ってるなら理解できねえのか? 

「うるせえ」

(え・?)

「黙らねえと撃ち殺すぞ? お前はお前の心配でもしていろ。隠れている場所に敵が近づいているぞ」

(えっ・見えているなら援護してくださいよ!?)

「いやだね」

(なんなんですか・もうひどいっ!! いいですよ。私は近づいているひとたちを片付けます。それまでセツカ様を殺すのは待っていてくださいね?)

「無理だ。もう話しかけるな」

(ああっ!? そんな・勝手な……)


 邪魔しかしない女だった。
 どうでもいい。興味がまったくない。
 それより、今は。
 サトウはめずらしく物思いにふける。
 あれは……まあまあ昔の話さ。


 ∇


 ネズミが走り回るような汚ならしい路地の裏。
 アメリカのエージェントが二人背後に立っている。
 どうやら、今回の結果に不満があるらしい。
 エージェントはサングラスで表情を隠しながら、サトウに伝える。

「我が国の望みはあくまでテロリストリーダーの排除だったはずだ。第三次世界大戦までは望んでいないはずだが?」

「知るかよ。てめえらが俺に依頼したんだろうが。結果がどう転ぼうが、俺には関係ないね」

「戦争まで発展するとは膨大な損失だ。君を消さねばならん。だが、君が我が国のエージェントになるというなら話は別だ」

「なんだそりゃ?」

 最初からサトウをこちら側に引き込むための壮大な作戦。
 しかしサトウにとってそんなことはどうでもいい。
 昼飯がまだだ。邪魔をするならば容赦はしない。
 すると、エージェント二人が懐から拳銃を取り出した気配がする。
 所作からするとかなりの手練れらしい。
 
「……あきらめたまえ。君は我が国のエージェントに囲まれている。意味はわかるかね?」

「どういう意味だよ?」

「我が国精鋭のスナイパー。最高の装備と訓練を積んだ特殊部隊の後詰め。戦闘ヘリを数キロ先に空中待機。FBIに協力も要請している。その上で君に、我が国に協力するか否かを聞いているのだよ?」

「だからどういう意味だよ?」

「答えはYES、only」

「NOで」

 __ダンッ、ダンダンダンッ!!!

 連続してスラムに響いた銃の発砲音。
 チカチカと薄暗い路地の壁面の落書きが光る。
 住民は慣れているのか、怯えた様子もなくあくびをしながら窓を閉め無関心を装う。
 やがて静けさに包まれる路地裏。
 ゆらりと動くのは、たったひとりの男の姿。


「我が国我が国うるせえな。ぜんぜん弱いじゃねえか」


 サトウの右手には大型の軍用拳銃が一丁。銃口からはわずかに火薬の煙が昇っている。
 美しさすら感じるほど正確に、眉間を弾丸によって貫かれたエージェント。
 二人とも死んでいた。
 ここからは確認できないが、特殊部隊と戦闘ヘリもすでに撃破されている。
 エージェントの死体をゴソゴソとあさり、100ドル札をいくつかと車のキーを奪うサトウ。
 車のダッシュボードには有名な店のチーズバーガーがあった。
 エージェントたちのランチだったのだろう。サトウは乱暴に袋の中身を助手席にぶちまけ、ひとつにかじりつく。

「うまいチーズバーガーが食えなくなるのは面倒かもな」

 国に対するこだわりはない。
 追われながら暮らしてもいいが、いちいち面倒を感じるよりは自由気ままのほうがサトウは好きだった。
 こうしてサトウは根無し草のように流れていく。



 __行き着く先はいつも戦場だった。
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