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「あれ………?」
光魔法の使い手であり、公爵令嬢であり、王太子の婚約者である、リュミエール。キャラメル色の髪の毛を長くみつあみにして後ろに垂らし、きらきらと輝くカンラン石の瞳を持つ美少女だ。一応、平凡な少女という事になっているはずなのだけど……リュミエールは思う。
そんな彼女の婚約者である王太子__アレンは、水色の髪と青い瞳を向けながら、リュミエールに対して__正確には、リュミエールが築いた逆ハーレムメンバーである男たちに対して__街外れにある森の、「人形姫」の館に行こう、と言い出した。
「人形姫」の館と呼ばれる由縁は、二年前のあの事件以来、ここに「人形姫」が住み着いたのではないか、という噂が流れているからだ。
思えばあれから二年か、と思い直したリュミエールは、前方5mあたりで「リュミエール!」と自分を呼ぶ男たちを見ながらそう思った。
しかし、かといって「人形姫」に対して何か思うところがあるわけではない。二年という歳月を経て、彼らの中では、「人形姫」は「過去の女」に成り下がったのだ。
しかし、何か引っかかるところがある。
リュミエールは、なんだったか、と考えてみる。
しばらく、ぬかるみのない道を進むと、急に視界が開けた。
鮮やかな緑色は、まるでそこを避けるように、円形に開けている。
明らかに不自然だ。
円の中には、完全な正方形にされた、デザイン重視の黒い柵があり、その内側にはたくさんのラベンダーが咲いている。その香りが鼻孔を満たし、まだ距離があるというのに肺を蹂躙する。まるで香りの暴力だ。
そしてその奥には、小さな洋館が建っていた。
洋館自体は、よくある作りだったのだが、リュミエール含む全員は、二階テラスから自分たちを見つめる少女の姿を見て、わが目を疑った。
純白の柱が、玄関周りのちょっとした階段の周りに四本立っていて、ひさしついでにテラスにもなっている。よくある作りだ。小さな白いテーブルとイスがある。そのイスには、その少女が腰かけていた。
しかし、なぜ彼女が、ここに?
そんな全員の疑問に、答える気はない、という意思表示のかわりに、くすくす、と小馬鹿にするような笑みを漏らした少女。その姿は人形めいていて、むしろ本物の人形になったのでは……? という疑問まで湧いてくる。
ゆるく縦に巻かれた金色の髪は、まるで本物の黄金を使ったかのようにつやつやときらめいている。そのわりに、サラサラと揺れる髪の毛は痛みを知らず、過度にきらめいているわけでもなく……それこそ上等な金糸を贅沢に使ったかのようだ。
瞳は、硝子質で、宝石をはめ込んだように光を反射して輝いている。奇麗な赤色だが、その割にハイライトはなく、どこか暗い印象を与える。まつ毛は、不思議な事に瞳より少し濃い赤色だった。
小柄で華奢ではあるが、まるで彼女の周囲だけすべて塗りつぶされたように、生命という生命の気配がない。
石鹸を掘り出したように外気に触れた事がないような肌の上に、お行儀よく鎮座した顔のパーツは、彫像か、石像か……それこそ人形に近い。
その少女に、全員見覚えがあった。
「っ!」
アレンは声にならない叫び声を上げ、洋館の中に特攻する。
当然の権利というかのように、他のメンバーたちも中に続く。
ただ一人、リュミエールだけは立ち尽くしていた。
そして、自分の名前に気付き、下唇を噛んだ。
__「本番」が、始まったのだ__と。
ここはセイレン王国。魔法使いが生まれる唯一の国である。
中でも光魔法と闇魔法は、強大すぎて存在自体が禁忌とか、むしろ実在するのかとか、さまざまな憶測が飛び交ってきた。
そんな中、「光の聖女」として世に生を受けたのが、ヒロインこと、リュミエール公爵令嬢だ。当然すぐに第一王子との婚約が決まったのだが。
その一年後に生まれた少女が、厄介だったのだ。
ここはセイレン王国。乙女ゲーム「光の聖女の恋煩い」の世界である。
この世界で、リュミエールだけが、その事を知っている。
しかし、ヒロインの名前を「リュミエール」にすると、「光の女神」モードが始まるのだ。
「光の女神」モードは、とある問題のせいで、マトモな乙女ゲーマーではクリアできない、と言われている。
その理由が、この___。
後日談である、「人形姫の復讐」と言われる強制イベントである。
光魔法の使い手であり、公爵令嬢であり、王太子の婚約者である、リュミエール。キャラメル色の髪の毛を長くみつあみにして後ろに垂らし、きらきらと輝くカンラン石の瞳を持つ美少女だ。一応、平凡な少女という事になっているはずなのだけど……リュミエールは思う。
そんな彼女の婚約者である王太子__アレンは、水色の髪と青い瞳を向けながら、リュミエールに対して__正確には、リュミエールが築いた逆ハーレムメンバーである男たちに対して__街外れにある森の、「人形姫」の館に行こう、と言い出した。
「人形姫」の館と呼ばれる由縁は、二年前のあの事件以来、ここに「人形姫」が住み着いたのではないか、という噂が流れているからだ。
思えばあれから二年か、と思い直したリュミエールは、前方5mあたりで「リュミエール!」と自分を呼ぶ男たちを見ながらそう思った。
しかし、かといって「人形姫」に対して何か思うところがあるわけではない。二年という歳月を経て、彼らの中では、「人形姫」は「過去の女」に成り下がったのだ。
しかし、何か引っかかるところがある。
リュミエールは、なんだったか、と考えてみる。
しばらく、ぬかるみのない道を進むと、急に視界が開けた。
鮮やかな緑色は、まるでそこを避けるように、円形に開けている。
明らかに不自然だ。
円の中には、完全な正方形にされた、デザイン重視の黒い柵があり、その内側にはたくさんのラベンダーが咲いている。その香りが鼻孔を満たし、まだ距離があるというのに肺を蹂躙する。まるで香りの暴力だ。
そしてその奥には、小さな洋館が建っていた。
洋館自体は、よくある作りだったのだが、リュミエール含む全員は、二階テラスから自分たちを見つめる少女の姿を見て、わが目を疑った。
純白の柱が、玄関周りのちょっとした階段の周りに四本立っていて、ひさしついでにテラスにもなっている。よくある作りだ。小さな白いテーブルとイスがある。そのイスには、その少女が腰かけていた。
しかし、なぜ彼女が、ここに?
そんな全員の疑問に、答える気はない、という意思表示のかわりに、くすくす、と小馬鹿にするような笑みを漏らした少女。その姿は人形めいていて、むしろ本物の人形になったのでは……? という疑問まで湧いてくる。
ゆるく縦に巻かれた金色の髪は、まるで本物の黄金を使ったかのようにつやつやときらめいている。そのわりに、サラサラと揺れる髪の毛は痛みを知らず、過度にきらめいているわけでもなく……それこそ上等な金糸を贅沢に使ったかのようだ。
瞳は、硝子質で、宝石をはめ込んだように光を反射して輝いている。奇麗な赤色だが、その割にハイライトはなく、どこか暗い印象を与える。まつ毛は、不思議な事に瞳より少し濃い赤色だった。
小柄で華奢ではあるが、まるで彼女の周囲だけすべて塗りつぶされたように、生命という生命の気配がない。
石鹸を掘り出したように外気に触れた事がないような肌の上に、お行儀よく鎮座した顔のパーツは、彫像か、石像か……それこそ人形に近い。
その少女に、全員見覚えがあった。
「っ!」
アレンは声にならない叫び声を上げ、洋館の中に特攻する。
当然の権利というかのように、他のメンバーたちも中に続く。
ただ一人、リュミエールだけは立ち尽くしていた。
そして、自分の名前に気付き、下唇を噛んだ。
__「本番」が、始まったのだ__と。
ここはセイレン王国。魔法使いが生まれる唯一の国である。
中でも光魔法と闇魔法は、強大すぎて存在自体が禁忌とか、むしろ実在するのかとか、さまざまな憶測が飛び交ってきた。
そんな中、「光の聖女」として世に生を受けたのが、ヒロインこと、リュミエール公爵令嬢だ。当然すぐに第一王子との婚約が決まったのだが。
その一年後に生まれた少女が、厄介だったのだ。
ここはセイレン王国。乙女ゲーム「光の聖女の恋煩い」の世界である。
この世界で、リュミエールだけが、その事を知っている。
しかし、ヒロインの名前を「リュミエール」にすると、「光の女神」モードが始まるのだ。
「光の女神」モードは、とある問題のせいで、マトモな乙女ゲーマーではクリアできない、と言われている。
その理由が、この___。
後日談である、「人形姫の復讐」と言われる強制イベントである。
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