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生前の少女だち
さよならわたしのアイ【金藤蘭】
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「ここが今日から君の仕事場だ」
さすがに無造作とまではいかないが、それに近い扱いで、少女趣味前回な部屋にわたしを放り込んだ。
さぁ笑いなさいな!
これはある少女の、滑稽な笑い話。
あぁ、決してわたしは壊れているわけではないのですよ。
だってもとから、こうやって生まれついてきたんですもの。
それまでのわたしにとっての「世界」は、灰色の空と灰色の煉瓦、何もかも壊れてしまった町の、がれき。都市の残骸。何もかも、同化してしまうような灰色。むかしむかしは、青い空に白い雲が覆っていたという伝承もあるが、今空を見上げても、すべて灰やら汚染された大気やらが覆っている。どう考えてもヒトが吸ってはいけないような空気だがヒトの適応能力というのは存外素晴らしい。むしろ、一説によれば、幼い頃から毒になれたからだだと全身猛毒になって毒を吸っていないと生きていけないからだになるらしい。よって問題はないのです。たぶん。実際今現在わたしに健康被害がないのだから実害はないのです。
まず最初に説明をしましょう。
現在の女性の平均寿命は20代後半です。
なぜかって、説明するまでもありませんよね。戦時体制、男はみんな戦場に。ずっと男ばかりの軍に入っていたら、それはもう、さまざまな欲求がたまりますよ。結果的に言ってしまえば、子供ひとり養うより、軍に送り込むなり娼館にでも売った方が生活は圧倒的によくなったのです。
そういう点で言ってしまえば、わたしはある意味とっても普遍的で、よくいる子どもだったのです。
それなりの家庭に、なぜだか綺麗な顔をもって生まれてしまったわたしが、上流階層にあるような、高等な店で、お客様を満足させるためのすべを学ばされた。
望んでいないのに。
何も、望んでいないのに。
泣きたくなっても、無理やり笑顔を作らされて、ココロと体を切り貼りして売られる。自分のすべてを存在を、値札をつけて売ったなら、なんて価値がないのでしょうか。何もかも、無意味に、無作為に、無秩序になってしまうようで……恐怖、したのだとおもいます。今となってはもう、わからないことですが。
自分のすべてを外界から隔絶して、何もかも感じないように、人形のようになってしまえば、こんなに楽な事もなかっのでした。氷のように、石のように。何も感じずにいれば、傷つくこともないのです。__喜ぶことができなくても、何か問題があるのでしょうか__。
あぁ、だって、この世界は全部灰色。
期待を持つ方が悪かったのです。
いつしかわたしの体が使い物にならなくなったとき、今度は人体実験のモルモットになりました。
ただ、自分と似たような少女たちが、お行儀よく並んで壊れていく様子を見ていると__なんだかとっても、救われたのです。
笑って!
嘲って!
それがわたしを、可哀想な少女を救ってくれるのです。__自分は哀れだ。自分は可哀想子だ。そう思えば、気が楽になりました。慈善事業として、どうか。たとえ自分が、自分以外の__都合のいい子になったとしても、ヒトの幸福論とは存外わからないものです。
目の前がまっくらになっていき、誰もがわたしのことをあざける世界から、満ち足りた気分でわたしは旅立ちました。
どうかお元気で。
二度と帰りたくないわ。
「はっぁ、軍部をワタシたちのこと遣い潰しすぎだよねぇ!? ちょっとオーバーワークすぎるよっ!」
頭の中に直接塗りつけられたみたいな声__いえ、まるでテレビの画面にぱっと映し出されるようなイメージが、わたしの中に浮かんできた。同時に感じたのは、からだを支配する冷たいなにか。それは確かな違和感となってわたしを縛りました。
「あは、起きたかな? 金藤蘭、それが新しい君の名前。ワタシの可愛い死人」
………あぁ、確かに。わたしは人形。だって、理解できる、自分がもう、死んでいることを。なぜ自分が意識を保って動けているのかは謎ですが、さしたる問題ではないのでしょう。
「からだを機械にかえちゃったけど、きみには似合ってるよ! きみはとっても美しいからね、ワタシの人形だからあたりまえなんだけど。ほら、ダンスの時間だよ。きみはあまり得意じゃないかもしれないけれど、きみが蹴散らす雑草ときみはくらべものにならないからね」
彼女はわたしの頭をなでてこういいました。
「可哀想なきみには死のステージがお似合いだよ!」
その言葉をきっかけに、意識は暗転__
「 」
死にたくなかった、といえばうそになります。だから今この状況はあまりにも不本意なのですが。
生前それなりに気に入っていた声は、金属がさび付いたような音にしかならず。
「 ア ギギ 」
でもこの壊れてしまった世界は、どうでもよくなってしまった世界は………。
なんて、美しいのでしょうか。
さすがに無造作とまではいかないが、それに近い扱いで、少女趣味前回な部屋にわたしを放り込んだ。
さぁ笑いなさいな!
これはある少女の、滑稽な笑い話。
あぁ、決してわたしは壊れているわけではないのですよ。
だってもとから、こうやって生まれついてきたんですもの。
それまでのわたしにとっての「世界」は、灰色の空と灰色の煉瓦、何もかも壊れてしまった町の、がれき。都市の残骸。何もかも、同化してしまうような灰色。むかしむかしは、青い空に白い雲が覆っていたという伝承もあるが、今空を見上げても、すべて灰やら汚染された大気やらが覆っている。どう考えてもヒトが吸ってはいけないような空気だがヒトの適応能力というのは存外素晴らしい。むしろ、一説によれば、幼い頃から毒になれたからだだと全身猛毒になって毒を吸っていないと生きていけないからだになるらしい。よって問題はないのです。たぶん。実際今現在わたしに健康被害がないのだから実害はないのです。
まず最初に説明をしましょう。
現在の女性の平均寿命は20代後半です。
なぜかって、説明するまでもありませんよね。戦時体制、男はみんな戦場に。ずっと男ばかりの軍に入っていたら、それはもう、さまざまな欲求がたまりますよ。結果的に言ってしまえば、子供ひとり養うより、軍に送り込むなり娼館にでも売った方が生活は圧倒的によくなったのです。
そういう点で言ってしまえば、わたしはある意味とっても普遍的で、よくいる子どもだったのです。
それなりの家庭に、なぜだか綺麗な顔をもって生まれてしまったわたしが、上流階層にあるような、高等な店で、お客様を満足させるためのすべを学ばされた。
望んでいないのに。
何も、望んでいないのに。
泣きたくなっても、無理やり笑顔を作らされて、ココロと体を切り貼りして売られる。自分のすべてを存在を、値札をつけて売ったなら、なんて価値がないのでしょうか。何もかも、無意味に、無作為に、無秩序になってしまうようで……恐怖、したのだとおもいます。今となってはもう、わからないことですが。
自分のすべてを外界から隔絶して、何もかも感じないように、人形のようになってしまえば、こんなに楽な事もなかっのでした。氷のように、石のように。何も感じずにいれば、傷つくこともないのです。__喜ぶことができなくても、何か問題があるのでしょうか__。
あぁ、だって、この世界は全部灰色。
期待を持つ方が悪かったのです。
いつしかわたしの体が使い物にならなくなったとき、今度は人体実験のモルモットになりました。
ただ、自分と似たような少女たちが、お行儀よく並んで壊れていく様子を見ていると__なんだかとっても、救われたのです。
笑って!
嘲って!
それがわたしを、可哀想な少女を救ってくれるのです。__自分は哀れだ。自分は可哀想子だ。そう思えば、気が楽になりました。慈善事業として、どうか。たとえ自分が、自分以外の__都合のいい子になったとしても、ヒトの幸福論とは存外わからないものです。
目の前がまっくらになっていき、誰もがわたしのことをあざける世界から、満ち足りた気分でわたしは旅立ちました。
どうかお元気で。
二度と帰りたくないわ。
「はっぁ、軍部をワタシたちのこと遣い潰しすぎだよねぇ!? ちょっとオーバーワークすぎるよっ!」
頭の中に直接塗りつけられたみたいな声__いえ、まるでテレビの画面にぱっと映し出されるようなイメージが、わたしの中に浮かんできた。同時に感じたのは、からだを支配する冷たいなにか。それは確かな違和感となってわたしを縛りました。
「あは、起きたかな? 金藤蘭、それが新しい君の名前。ワタシの可愛い死人」
………あぁ、確かに。わたしは人形。だって、理解できる、自分がもう、死んでいることを。なぜ自分が意識を保って動けているのかは謎ですが、さしたる問題ではないのでしょう。
「からだを機械にかえちゃったけど、きみには似合ってるよ! きみはとっても美しいからね、ワタシの人形だからあたりまえなんだけど。ほら、ダンスの時間だよ。きみはあまり得意じゃないかもしれないけれど、きみが蹴散らす雑草ときみはくらべものにならないからね」
彼女はわたしの頭をなでてこういいました。
「可哀想なきみには死のステージがお似合いだよ!」
その言葉をきっかけに、意識は暗転__
「 」
死にたくなかった、といえばうそになります。だから今この状況はあまりにも不本意なのですが。
生前それなりに気に入っていた声は、金属がさび付いたような音にしかならず。
「 ア ギギ 」
でもこの壊れてしまった世界は、どうでもよくなってしまった世界は………。
なんて、美しいのでしょうか。
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