8 / 14
過去の病巣
しおりを挟む
ほわほわ、すこしずつかすんでいく脳の中で、あの時の事がフラッシュバックする。
「う、あ……」
どうして、こうなったんだ。
「……あ゛……ひ、ぐ」
なぜ、こんなことになったのだろうか?
「あ゛あ゛ぁ゛……」
ただ、妻と安らかな日々を、幸福な一生を過ごせればよかったのに。
「見ないで……う゛、ぁ゛……」
それ以上に何も望まないのに、それすら、罪だというのか?
病に伏せた彼女を、誰も診てくれなかった。金は用意するといっても、疫病神と罵られ、門前払いを食らう日々にたえて。子どもたちは、親に何を教わったのか、大きな石を投げつけてきた。そのせいもあって、私自身も、生傷が絶えなくなってしまった。しかし、私が痛みを感じることは別に良かった。本当に嫌だったのは、傷を見て、どうみても自分の方が容態が悪いのに、私の心配をする妻を、見る事しかできない自分だ。愛する人の体に巣食う病魔を癒すどころか、逆に心配されるなど、と情けなく思った。彼女は決まって、「あまり無理をしては駄目よ」と、細くなった腕に抱きしめた。必ず治すから、安心しろ、と約束した。
なのに、私は、彼女は、
「う、ぁ゛……」
「ほら、泣き止んでくださいよ、いいこ、いいこ。貴方は本当にいい人間です、こんなにも、こんなにも美しいのですから。人間の理論ではかるのならば、美しいものに罪はありませんよ、えぇ」
「……ちがう、ちが、う……わ、たしは、わるくな……い……」
痛い。もう何が痛いのかもわからないが、痛い。全部目の前の怪物のせいにして、とっくに弾切れを起こした銃を撃つ。もう銃火器としての役目を御免していると知っていても、安心するために撃ち続ける。
「う、あ……」
どうして、こうなったんだ。
「……あ゛……ひ、ぐ」
なぜ、こんなことになったのだろうか?
「あ゛あ゛ぁ゛……」
ただ、妻と安らかな日々を、幸福な一生を過ごせればよかったのに。
「見ないで……う゛、ぁ゛……」
それ以上に何も望まないのに、それすら、罪だというのか?
病に伏せた彼女を、誰も診てくれなかった。金は用意するといっても、疫病神と罵られ、門前払いを食らう日々にたえて。子どもたちは、親に何を教わったのか、大きな石を投げつけてきた。そのせいもあって、私自身も、生傷が絶えなくなってしまった。しかし、私が痛みを感じることは別に良かった。本当に嫌だったのは、傷を見て、どうみても自分の方が容態が悪いのに、私の心配をする妻を、見る事しかできない自分だ。愛する人の体に巣食う病魔を癒すどころか、逆に心配されるなど、と情けなく思った。彼女は決まって、「あまり無理をしては駄目よ」と、細くなった腕に抱きしめた。必ず治すから、安心しろ、と約束した。
なのに、私は、彼女は、
「う、ぁ゛……」
「ほら、泣き止んでくださいよ、いいこ、いいこ。貴方は本当にいい人間です、こんなにも、こんなにも美しいのですから。人間の理論ではかるのならば、美しいものに罪はありませんよ、えぇ」
「……ちがう、ちが、う……わ、たしは、わるくな……い……」
痛い。もう何が痛いのかもわからないが、痛い。全部目の前の怪物のせいにして、とっくに弾切れを起こした銃を撃つ。もう銃火器としての役目を御免していると知っていても、安心するために撃ち続ける。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか
風
BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。
……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、
気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。
「僕は、あなたを守ると決めたのです」
いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。
けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――?
身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。
“王子”である俺は、彼に恋をした。
だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。
これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、
彼だけを見つめ続けた騎士の、
世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる