5 / 8
お化けトンネル編
05
しおりを挟む
トンネルを抜けて、たどり着いたのはファミレスから近い公園だった。
広い芝生が広がる敷地を、街灯がほのかに照らしている。
隅の方にはブランコと滑り台があり、さらにそこから少し離れた位置には自販機と東屋があった。
東屋の下には木製のテーブルセットがある。休日の昼間にでも家族や友人と訪れて、昼食をとりたくなるようなスペースだ。
「朝切、ここになにが?」
トンネルからはすっかり離れてしまっている。
駅が近いこの場所は、ファミレスの他にコンビニやマンションが立ち並び、通りにはこの時間でも車や人通りが多かった。幽霊の類が出てくるような場所には、とても思えない。
「トンネルに残っているのは、殺されたときの痛みや恐怖の残留思念だ。本体はここにいる」
「なんでまた……?」
「そんなのは聞いてみなきゃ分からない」
真墨は東屋に近づくとスッと目を細め、「多分あの子だ」と呟いて足を止めた。
「デートしてたの?」
「え?」
咄嗟に反応してしまったが、どうやら真墨は東屋の下にいる何者かと対話をしているらしい。
「……ふぅん。幸せだったんだね」
ややしばらくしてから、真墨はふっと息をつくと、困惑するばかりの一聖を見上げる。
「この子、ここでいつも彼氏とデートをしていたそうだ。あまりお金がなくて、遠くへは遊びに行けなかったけど……日曜日になるとここで待ち合わせをして、手作りのお弁当を一緒に食べたって」
「……そうか」
「彼女にとって、この公園は特別な場所なんだ。ここにいれば、彼氏がいつか迎えに来てくれると、そう信じている。だから待ってるんだよ。ずっとね」
どことなく切なさを覚えながら、一聖は東屋のベンチに目を向けた。当然、そこには誰の姿も見えない。
すると真墨が「この人は違うよ」と言って首を横に振った。数秒の沈黙のあと、困ったように溜息を漏らす。
「……ダメだ。君はその彼氏ではないと、伝えてみたがぜんぜん聞かない」
「そんなに似てるのか? 俺が、その恋人と」
「そういうわけではないと思う。ただあの日、あの場所、あの天気。この子の波長がぴったり噛み合う若い男なら、誰でもよかったんだ。それがたまたま君だったってだけ。この子にとってはね、視えてる景色も存在している時空も、私たちとはまったく別だから……」
あーぁと言って、真墨はガリガリと頭を掻く。
「君が直接この子と話すのがいいだろう。私の言うことは聞く気がないようだから」
「話って……どうやって?」
「すごく疲れるから、ホントは嫌なんだけどな……」
真墨は面倒くさそうに一聖の手を引いた。そして東屋へと入っていく。一聖は促されるまま、木製のベンチに腰掛ける。
「私の中に入れるから」
「入れるって……憑依させるとか、そういう?」
「その通り」
真墨は一聖のすぐ隣に腰掛けると、ふっと大きく息をつく。
「え、ちょっと待ってくれよ。俺は一体なにをどうすれば?」
「じゃ、あとはがんばって」
有無を言わさずポン、と背中を叩かれた瞬間、一聖の視界が暗転した。
広い芝生が広がる敷地を、街灯がほのかに照らしている。
隅の方にはブランコと滑り台があり、さらにそこから少し離れた位置には自販機と東屋があった。
東屋の下には木製のテーブルセットがある。休日の昼間にでも家族や友人と訪れて、昼食をとりたくなるようなスペースだ。
「朝切、ここになにが?」
トンネルからはすっかり離れてしまっている。
駅が近いこの場所は、ファミレスの他にコンビニやマンションが立ち並び、通りにはこの時間でも車や人通りが多かった。幽霊の類が出てくるような場所には、とても思えない。
「トンネルに残っているのは、殺されたときの痛みや恐怖の残留思念だ。本体はここにいる」
「なんでまた……?」
「そんなのは聞いてみなきゃ分からない」
真墨は東屋に近づくとスッと目を細め、「多分あの子だ」と呟いて足を止めた。
「デートしてたの?」
「え?」
咄嗟に反応してしまったが、どうやら真墨は東屋の下にいる何者かと対話をしているらしい。
「……ふぅん。幸せだったんだね」
ややしばらくしてから、真墨はふっと息をつくと、困惑するばかりの一聖を見上げる。
「この子、ここでいつも彼氏とデートをしていたそうだ。あまりお金がなくて、遠くへは遊びに行けなかったけど……日曜日になるとここで待ち合わせをして、手作りのお弁当を一緒に食べたって」
「……そうか」
「彼女にとって、この公園は特別な場所なんだ。ここにいれば、彼氏がいつか迎えに来てくれると、そう信じている。だから待ってるんだよ。ずっとね」
どことなく切なさを覚えながら、一聖は東屋のベンチに目を向けた。当然、そこには誰の姿も見えない。
すると真墨が「この人は違うよ」と言って首を横に振った。数秒の沈黙のあと、困ったように溜息を漏らす。
「……ダメだ。君はその彼氏ではないと、伝えてみたがぜんぜん聞かない」
「そんなに似てるのか? 俺が、その恋人と」
「そういうわけではないと思う。ただあの日、あの場所、あの天気。この子の波長がぴったり噛み合う若い男なら、誰でもよかったんだ。それがたまたま君だったってだけ。この子にとってはね、視えてる景色も存在している時空も、私たちとはまったく別だから……」
あーぁと言って、真墨はガリガリと頭を掻く。
「君が直接この子と話すのがいいだろう。私の言うことは聞く気がないようだから」
「話って……どうやって?」
「すごく疲れるから、ホントは嫌なんだけどな……」
真墨は面倒くさそうに一聖の手を引いた。そして東屋へと入っていく。一聖は促されるまま、木製のベンチに腰掛ける。
「私の中に入れるから」
「入れるって……憑依させるとか、そういう?」
「その通り」
真墨は一聖のすぐ隣に腰掛けると、ふっと大きく息をつく。
「え、ちょっと待ってくれよ。俺は一体なにをどうすれば?」
「じゃ、あとはがんばって」
有無を言わさずポン、と背中を叩かれた瞬間、一聖の視界が暗転した。
10
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる