亜人種と俺

メバル

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 あれから数日経っていた。
 病状は悪化の一途を辿る。
 建琉の周りには、レイグ、ボイル、スレイがずっと見守っていた。

『どうやら、ここまでのようだね。俺はね、今とっても幸せなんだよ。君たちと出会えて人生が変わったんだ。
 当時の自分では考えられなかった。野垂れ死ぬのも当たり前の町。死ぬことなんて何の恐怖も悲しみもなかった。
 人が死んだり殺されたり日常茶飯事だっからね。
 それが普通だと思ってた。
 そんな俺に、こんなに素晴らしい友人と最愛の人と子供まで授かった。贅沢すぎるよ。
 贅沢すぎて君たちと離れたくなくなったよ。
 スレイとずっと一緒に居たかった。
 レイグともっと空を飛びたかった。
 ボイルともっと釣りをしたかった』

『当然だ!我も同じ気持ちだ!
 建琉!死ぬでない!建琉……』

『建琉……また行こう!死んではならんぞ……死なないでくれ……』

『あと、半年もすれば産まれてくるよ……
 男の子かな?女の子かな?
 名前は建琉が決めなきゃいけないんだよ……
 いやだよ……建琉……
 やっと平和に生きれる道が見つかったのに……
 神様なんていないじゃん!』

『いや……神様が……居たから……君たち……と……出会えた……
 欲を……言えば……もう少し……生きた……かった……な……』

 建琉は途切れ途切れの声を振り絞って話していた。泣きながら少しでも気持ちを伝えようと必死であった。

『遺体……は……火葬……して……海に……散骨……してくれ……
 皆……今まで……仲良くして……くれて……本当に……ありがとう……僕は…幸せ者だよ……スレイ……ごめんね……ずっと……愛して……いるよ……レイグ……ボイル……スレイ……ありがとう……』

 建琉は穏やかな顔で逝った。
 レイグたちは泣き崩れる。
 遺言の通り火葬し海に散骨した。

 あれから10年。
 レイグは子育てに大忙し。
 ボイルも結婚し子供がいる。


 『今日はパパの命日ね。
 海に行くわよ!【建琉】準備は出来たの?』


 完

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