レベルが上がりにくい鬼畜な異世界へ転生してしまった俺は神スキルのお陰で快適&最強ライフを手にしました!

メバル

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第二章【激動編】

【44】スタンピード(後)

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 クソ面倒くさいスタンピードが始まり2日程していた。
 怒涛の魔物の侵攻により力なき国やジェンノ王国と敵対していた国、親交のない国は次々と滅ぼされていた。
 最低レベルの魔物にすら太刀打ちできない人間たち。
 属性ヒューマンが如何にレベルが上がりにくく、低レベルで無力な存在かが理解できると思う。

 先人は人という漢字を支え合って生きているからこそ人は生きていけると言っていた。
 だが俺は、そうは思わない。
 人が人にもたれ掛かる事により人は楽をする人間と苦しむ人間が居るというのが現実だと思う。
 それに三本の矢の話も有名な話だろう。
 一本では簡単に折れてしまう矢も三本なら折れにくいので、三兄弟が協力して生きて生きなさいって話ね。
 ここで大事なのは、飽くまでも折れにくいってだけで別に折れないわけじゃない。
 実際にそんな強固な矢であれば天下統一してるだろうし……
 というか、そんなに強固にしたければ最初から鉄の矢にすれば一本でも折れないって話だと思うんだよね……

 ま、まぁ俺の屁理屈はここまでにしといて、現実問題の話をすればさ、ジェンノと敵対したり親交を深めてない国々から国力のなさが原因で簡単に滅びていっている。
 滅ぼした魔王軍の部隊は次へ、また次へと歩みを進めている。
 確実にスタンピードの波は大きくなり被害は甚大な物となってしまっているというのが現状である。

 ディゼル君の部隊を行かせたけど、ワンチャン戦闘になりかねないので、念の為にキアの作ったホムンクルスも数体行かせておいて良かった気がする。
 多分これで最悪の事態は避けられるだろう。
 ホムンクルス達には最優先事項で人間を守れと命令してある。

 先ほどマイムから連絡が入りゲンズが率いる魔物混成軍と戦争が始まったそうだ。

「ザハル、陛下の力は物凄いよ!
 今では僕でも勝てないかもしれない。勇者スキルの覚醒で弱い魔物は近付いただけで消失しているよ」

「無理に走ってないか?」

「うん大丈夫」

「無理しだしたら止めてくれ。マイムの特殊スキルを強制行使する権限を許可する」

「わかった!アレだね」

「そうだ。多少無茶しても構わん。
 それにお前が魔力枯渇に陥っても俺が直ぐに回復してやるから安心しな」

「だったら僕は陛下が安全帰れることだけを最優先事項に置いて動くね」

「頼む」


 各地で戦争が始まったところで、遂に俺の所にも1人の魔人が現れた。
 勿論ダラルである。

「久しぶりだな、人間の化け物」

「誰かと思えば、魔人のポンコツじゃあーりませんか。
 生き返れてよかったな。
 あ、お前の主がトンコツラーメンの修行してたから地味なダジャレに聞こえてしまったかな?
 すまんすまん。わっはっはっは」

「貴様……陛下を愚弄する発言は何よりも許しがたい。
 貴様もこの国もこの地も全て灰に変えてやろう」

「出来るものならいつでもどうぞ。
 ほれ、はよ始めんかえ」

 めっちゃ挑発してる俺。
 だって全てにおいて負けないし。
 それにさ、コイツはまだ気付いていないようだけど、魔物たちは既にロックしてあるし、ダラルが命令して魔物たちが指先1つでも動かそうもんなら、即死するようにスキル付与してるんだよねー。

 さっさと終わらせてレーニアの所に行ってあげたいしなー。
 うぜーから早く終わらせよ。
 後処理はペスカだけでいいし。

「さて、ダラルと言ったかね?
 俺も暇じゃないのでね、君に5分の猶予をあげよう。
 その間に1ミリでも俺を驚かせてくれたら、この首と国を差し上げようじゃないか」

「舐めた口を聞くではないか……
 いいだろう。その吠え面を後悔に変えてやるわ!
 行け!魔物たちよ!奴を蹂躙しろ!」

 ダラルの命令により魔物は親交を開始しようとした瞬間、即死スキルが発動し、ここに居た100匹程の魔物は即死したのであった。

「なっ!?何が起きたというのだ!
 貴様!何をした!」

「特に……まぁ君に話したところで理解出来んだろうし、君も消えたまえ」

 ダラルは瞬時にフルパワーになり臨戦態勢をとるも、ザハルの前では当然無力であり、何をさせてもらえるわけでもなく、彼は2度目の死を迎えた。
 更に屈辱的な話をすればザハルは何も触れもしなかった。
 メストを軽く放出しただけでダラルは死に至ってしまったのであった。

 フィリックスは父の戦いを見たく、ペスカにせがみ今、父の戦いを目の当たりにした。
 フィリックスは言葉もなく、ただただ圧倒されるだけであった。

「ペスカは知っていたのかい?父上の強さを……」

「勿論であります。ザハル様に現状で敵うものは恐らくいないでしょう。
 殿下、強くなられませ。私も手助けをいたします。人々を守れる力をお付けなされませ。
 そして人々に愛される王になられませ」

「勿論だよ。ペスカこれからもよろしくね」

「勿論でございます」

「しかし……とんでもなく強かったね」

「あれでいて主は2割程度の力も出されていません。それに殿下、比べる必要はありませんよ。
 あの方は人知を超えた力を手にされてます。
 ヒューマン属とあの方を天秤にかける必要はありません。
 殿下は殿下らしく成長なされればよいだけです」

「そうだね。ありがとう……ペスカ」


 ペスカとフィリックスの間に親愛の輪が繋がった瞬間であった。
 ペスカはフィリックスの右腕として王を支えるワンコになるのである。
 ただそれは少し先のお話になるんだけどね。

「ふぅ……ゲロ弱かったなぁ。
 ペスカ、見ていたんだろ?」

「はい!」

「多分もう何も来ないと思うけど、来たら来たで蹴散らしといてくれ」

「承知致しました!」

「俺はディゼル君の所に行って、レーニアの所に行ってくるから後は宜しくね」

「万事おまかせ下さい」

「キア、ディゼル君の所までは何キロある?」

「200キロってところですね」

「よし、3分だな」

 そう言ってザハルはスキル:加速を使用した。
 超加速ではなく、ただの加速である。
 スキル使用後、ペスカは目で追うことすら出来なかった。
 フィリックスには一瞬の影すらも見えていなかった。
 父と息子の差は途方もない差があり、比べられるに値しないというのが現実であった。

「キア何分?」

「2分20秒!新記録ですね」

「お!?やったな!キア」

「ですね!」

「んーと、ディゼル君はどこに居るんだね?」

「えーっと……あ、あそこにいますね」

 ディゼルの軍は魔王軍と激闘中で、何より驚いたのは何か意外と接戦をしていた事だった。

「鶴翼の陣だ!ホムンクルス部隊を主体として守りの形態を維持しろ!
 まだ攻めるときではない!今は耐えるのだ!」

「おーーー!!!」

「ねぇねぇキアさんや、これは介入の必要がないのじゃないのかね?
 意外とあと数体のホムンクルスを送ればディゼル君のスキルアップにも繋がったりして」

「そうですね。では4体程応援に出しましょうか」

「だね。それとホムンクルスの1体に危険な状況になったらキアの分身が発動する術式を嵌め込んでおけばいいんじゃない?」

「承知しました」

「じゃあここは安心だね」

 と言うよりも案外これがきっかけでディゼル君の能力が伸びるきっかけになるかもなーって実は思ってるんだよね。
 レベルが低い兵士と高い兵士と武闘派の連中と臆病な連中を上手く動かし、犠牲者0ではないけど本当に上手く立ち回っている。
 ディゼル君は本当に優秀な武将だね。
 メンタルは豆腐以下だけどね。

 ここの安全性が分かったから、もう行くべき所は1つだけだね。
 待ってろよレーニア……絶対に君を死なせない!

 俺は超加速を使い1000キロ離れているレーニアの戦場へと走り出した。
 超加速している俺は、まぁ言うなればエグい速いと思われる。

 実はこんなに急いでいるには理由がある。
 ディゼル君の戦闘を見ている時にマイムから連絡があり、レーニアが何故だか押されだし限界を超えたレベルでの戦闘を開始し、危険な状態と聞いたからである。

 マイムの言葉は最早耳に入らなくなっており、言わば暴走状態ということだ。

 魔王スキルと勇者スキルには大きな違いがある。
 魔王は安定した力を発揮する代わりに暴走状態にはなれないので、爆発的な力を発揮できない弱みもある。

 勇者スキルはその反対になり、暴走状態になり自分が持ってる力以上のものを発揮できる反面、反動が大きい。
 簡単に言えば身を削りながら力を使うということだ。
 この状態が長く続けばレーニアの命に危険が迫ることになる。
 それゆえに俺は超急いでレーニアの戦場に向かっている。

 俺は戦場に着いて即時に行動を起こした。
 キアの本体と直ぐに分離し、キアにはマイムの回復に行ってもらった。
 俺は取り敢えずグーパン一撃をゲンズの顔面にお見舞いし、ゲンズは顔面が吹っ飛びピクピクと痙攣をしながら地に沈んだ。
 次に行ったのは戦場の掃除を優先し、魔物たちを人間に被害が出ない様に調整しながら殲滅した。

 そして……アイツを止めないと。

「レーニア!俺だ!聞こえるか!」

「うわーーー!!!」

「クソが全然聞こえてないじゃないか。
 あぶね!俺に攻撃してくんじゃねー!」

「私が全てを!全てをーーー!!!」

「もういいんだ!スタンピードは止まった!
 お前は勝ったんだ!」

「まだ!まだ!足りない!これじゃ!誰も守れない!!」

「言っても聞かないなら力で止めるしかないか」

 多分これは俺にしか止めれない方法で、この方法で止める事が今のレーニアには1番有効な手段だと思った。
 皆は真似しちゃダメだぞ!

 その方法とは、レーニアの攻撃を身体で受け止めて剣ごと包み込むことである。
 いや、俺ドMじゃないから痛い思いはしたくないよ。
 それだけは勘違いしないでね。

「うわーーー!!!」

 “ドシュ!”

「グフ……クッソいてー……ハァハァ、レーニア……止まれ……もう、いいんだ」

「え?え、え、え……何で?何でザハルが?
 私は何でザハルを刺してるの?
 いやだ!ザハル!ごめん!ザハル!」

「やっと正気に戻ったか……このおてんば娘が。
 レーニア……俺は大丈夫だ。お前を置いて死なない。それにお前の攻撃程度で死ぬこともない。
 それよりも戦いは終わったんだ。
 王がこんな所で泣きじゃくってんじゃねー。
 堂々と勝ちを宣言してこい!行け!!」

「う、うん。わかった。
 絶対死なないでね……絶対だよ!!
 死んだら殺すからね!」

「どうやって殺すんよ……キア、マイムの具合は?」

「大丈夫です。間に合いました。
 しかし今は主の体のほうが……」

「今超回復で治癒してるが勇者スキルが邪魔して少し時間が掛かってるが問題ない」

「思いっきり刺されましたからね。アハハハ」

「この状況で笑うキアさんのサイコパス具合の方が面白すぎるんだが」

「だって主がこんな事で死なないことは私が1番知ってますから」

「そうだけどさ。まぁそうだけどもさ。なんだかなー」

「それにもう治ってるじゃないですか」

「治ったけどもさ」

 こうして人間たちにとっては破滅を意味する程のスタンピードは終焉した。
 魔王軍は敗北ではなく大きな犠牲を払ったものの、版図を大きく広げることに成功した。

 人間はスタンピードを止めることが出来たものの、大きすぎる犠牲を払う形で戦いを終結させることが出来た。

 しかしながら下を向くわけにはいかず、人間の勝利という形で終わらせる必要があった為に、無理やりの形式でジェンノ王国女王陛下の宣言で戦争終結を宣言したのであった。

「皆のもの!よく戦った!
 我々は大きな犠牲を生んだ。少なく見積もっても幾重の城と人と土地を失った。
 我々は魔物と違い、失った命が蘇ることはない。
 死んだ者の思いや願いや野望を背負い、我々は生きて行かねばならない!
 だが悲しむ必要はない!
 皆!下を向くな!何故なら人々の希望となる勇者が居る!
 今後は勇者でありジェンノ王国女王陛下のレーニアが皆の希望であり続けよう!
 さぁ!立ち上がれ!死者を弔い!翌日からは死者と共に新しい世を作っていこうぞ!
 この戦!我々ヒューマン属の勝ちだ!!!」

「おーーー!!!」

「おーーー!!!」

 人々は声を出すしかなかった。
 現実は厳しい惨状。勇者が居てもこの惨状。
 それでも人々は勇者に、レーニアにすがる他なかった。



 ――――――一方魔王城では――――――

「やはりまだこうなるか……
 起きよ、ダラル」

 何事もなかったようにダラルを再誕させた魔王は不敵な笑みを浮かべていた。

「魔王様……申し訳ございません」

「よい。あんな化け物に勝てん事くらい分かっておったわ。
 それでも版図を大きく広げることが出来たのは上出来だ。
 ダラルよ、今は余の守りはよい。
 広げた版図の全てをお前に託す、いかようにも致せ」

「はっ!必ずや魔王様の期待に答えてみせます」

「そう気張らんでよいわ」

「ありがたき幸せ」

「さて、ここからどうするかね。
 元の世界に戻る為にこの世界の人間を殺しまくってるが、これでいいんだよな。
 だってこの世界の人間は元の世界の人間でもなく、俺にとっては……種族的には敵なんだから、仕方ないんだよな……
 だんだん分からなくなってきた……」

 魔王もまた苦しんでいた。
 多くの人間を殺したのは今回が初めてであった、元人間の魔王。
 大量殺戮をして初めて、彼は命の重みを実感したのである。
 それでも、もう戻れない所に来てしまったことも、また理解していた。
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