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【23】謀反

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 順調に仲間を増やしていき魔女と退治するべく兵力の増強、偵察部隊の増員、育成においても全て順調すぎるほど順調であった。

 最近は望月が皆と喋るときはなるべく興奮しないように心がけているらしい。
 いいことだ。歩み寄りは大事なことだ。

 我らの陣営はいつも通り笑顔と食欲と性欲にまみれている。
 誰かのせいで性欲が強めに出ている……

 そんないつもの呑気な陣営に早馬が来た。

「伝令!久我の偵察隊が壊滅!いえ、全滅した模様です!現在、隠殿と時雨殿が応戦しているものの、戦況は厳しく応援を願いたし!」

「すぐに援軍を!」

 俺の声をすかさず遮り伝令兵へ聴取を始めた時定。

「大事なことだ。しっかりと思い出せ。2つ聞く。1つ、全滅した遺体は如何なる状態であった?2つ、誰が裏切った?」

 少し考え込んだ伝令はなにか思い付くと青ざめた表情に変わり口を開いた。

「い、遺体は全て……その、なんと説明すればいいのか……」

「生きる屍になってたんだな?」

「は、はい。その通りです。とてもおぞましい光景でした」

「だろうね。良く戻ってきてくれた。それで本題に入るが、誰が寝返った?」

 伝令は口ごもってしまう。

「…………」

「惣一郎……だな?」

「……は、い」

「わかった。して、何人失った?」

「偵察部隊300人……全員です」

「あの野郎!とことん屑野郎じゃねーか!許さん!すぐに助けに行くぞ!!」

「待ってください兄上!この件で兄上が動くことは禁じます」

「何言ってんだ!時定!隠や時雨を失うかもしれない状況なんだぞ!俺が行かないで誰がその務めを果たせると思ってんだ!」

「落ち着いてください。今兄上が行くのは惣一郎と魔女の思惑通りになります。それに隠も時雨も、そう簡単にはくたばりませんよ。今回は別の者を向かわせます」

「俺だよ」

「あ!?だれ、も、望月……なんで望月なんだ。説明しろ時定!」

「望月殿は後退戦も得意とし更には隠密にも長けておられます。魔女陣営からしてみれば、兄上が前門の虎ならば望月殿は後門の狼です。しかしこの救助戦は後者です。兄上が行っても包囲される事が見えています。
 兄上、あなたの攻めは確かに強い。しかしあなたは守りが弱い。」

「なんだと!?」

「お聞きください。私が言っている弱いというのは、ただ弱いわけではありません。そもそも兄上は守りなんてしないじゃないですか。傾いて傾いて傾きまくる戦いが兄上の戦いです。そしてその戦い方をされれば魔女陣営にとっては驚異でしかありません。なぜなら恐怖と無縁の戦いをするのですから。
 しかしこの戦いにおいては、その武は不要です。自尊心を捨て守りながらも敵を倒し後退を優先しなければなりません。
 それにおいては望月殿以上の適任者はいません。
 ゆえにこの決断になります」

「しかし!」

「兄上……これは軍師命令です。
 軍命として従うことを厳命します」

「っち……わかったよ」

「では望月殿は早急に発たれてください。兵は望月殿で選んでいただいて結構です」

「いや、兵はいらんばい。俺一人でよか。最終的には守りながら、身を隠しながらの戦いになる。一人の方が動きやすい。よかか?」
(いや、兵はいらないよ。~いいか?)

「そういうのであればお任せいたします。隠と時雨を宜しく頼みます」

「任せちょけ」
(任せとけ)

「望月……頼んだ。隠を……」

「皆まで言うな。任せろ」

「すまん」

 そう言い残すと望月は望月にしか知りえない最速ルートを使い救助に向かった。


 それから3日が過ぎたある日。


 九州の熊は怪我を負った隠と時雨を抱え、本人は全くの無傷で帰還を果たした。

 急いで駆け寄る時宗。

「隠!隠!大丈夫か!?隠!」

「大事ない。眠ってるだけだ。それよりも時定、惣一郎より伝言だ。正確にはあいつの使者だが」

「お聞きしましょう 」

「久我に付いたのは久我に天下人の器があると踏んだからだ。しかし今の状況で考えられる最強の天下は魔女ルミエラ様だ。ルーヴェルを救うと息巻いているようだが、死者すらも兵として扱えるルミエラには絶対勝てん。俺はルミエラの騎士兼参謀として引き抜かれた。そして俺はそれを承諾した」

「やはり思った通りに動いたね」

「時定!知っていたのか!?」

「知っていたというより予想が出来た。
 あいつは昔からそうだったじゃないですか。これで魔女と一緒に討伐できます。
 亡くなった兵には申し訳ないですが、これでよかったんです」

「伝令!久我殿がお目通り願いたいと!」

「殿の元お通ししろ」

「はっ!」

「久我殿をお連れしました」

「お入り頂け」

 勿論俺たち幹部連中も全員集合している。
 隠と時雨はパミラが看病してくれている。
 本当にありがたいことだ。
 あ、気になってる人もいると思うが俺の実の両親は既に俺たちの陣営にいる。

 惣一郎の裏切りを聞いたときは、泣き出してしまい心を痛め今は眠っている。

 そして雷玄を中心に全員が卓上を囲い正面に久我と配下の布陣が完成した。

「本日は惣一郎の謀反と、その対策。
 更に亡くなった兵への追悼をしに参った。これより皆で最善の策を考えるでちゅよ」

「でたーでちゅよ!」

 と、つい突っ込んでしまったのを許して欲しい……
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