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7.貧乏性の御曹司、鍋パーティーをする
≪隼人≫2
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鍋を皿に盛って、居間の座卓に運んだ。
護が、廊下から居間に入ってくるのが見えた。
「完成ですか?」
「うん。プラモ部屋に行って、呼んできて」
「はい」
ミャーが、箸の用意をしてくれた。
「ありがとう」
「いいってことよ」
「……うん」
「梶本、遅くない?」
「遅れるって。連絡は、もらってる。篠崎も」
「電車かな」
「たぶん。車は、まだ、持ってないはずだから」
みんなで鍋を食べている時に、呼び鈴が鳴った。
「俺が行くから」
護に声をかけて、玄関に向かった。
梶本と篠崎だった。
篠崎は、リュックを背負っていた。都心にある百貨店の紙袋を抱えている。
梶本は、黒いエコバックを片手に提げていた。重たそうだった。たぶん、ジェンガだろうなと思った。
「一緒にいたのか」
「そう。これ、お土産」
「ありがとう」
篠崎から、紙袋ごと受けとった。
「ジェンガを持ってきた」
「やるの?」
「やるよ。必勝法も履修済みだ」
「ジェンガに必勝法なんて、あるの?」
篠崎が梶本に聞いた。
「ある! 今日、俺が手本を見せてやる」
「うん。いいけどさ。
まあ、上がって」
「おう」
梶本が、長いコートを脱ぎはじめた。
今日は、白衣は着ていなかった。そのかわりに、黒い光沢のある布に、スパンコールがいくつもついた、ダンサーの衣装のようなものを着ていた。どこかで見たような服だった。
「それ……。去年はやってた、あれ。フィギュアスケートの深夜アニメ。あれだ、『ギャラクシー・アイスショー』!」
「なぜ、わかった?! そうだ。これは、シリウス様だ」
「見たの?」
「うん。こっちに越してきてから、ネットの定額のやつで。
土日は、アニメの一気見とか、しょっちゅうしてる」
「あなどれんな……」
「いいから。早く、上がって。あと、今日は、ずっとそのキャラなの?」
「破綻しない限りは」
梶本の足元は、黒の長いブーツだった。脱ぐのが大変そうだな、と思った。
「しばし、待たれい!」
「うん。待つけど。しっかし、すごい服だな」
「これで、電車に乗ってきたからね。上からコートを着ててくれなかったら、車両を変えなきゃいけないところだった」
篠崎が、淡々と言った。苦労が偲ばれた。
「アニメの一気見とか、そんな面白いことしてるんだったら、呼んでほしかった」
「え、そう?」
「うん」
「古い作品が多かったから。篠崎からしたら、『いまさら?』みたいな……感じかと」
「なんで。初代のオリジンとか、最高だよ。一緒に見たかった」
「う、うん。わかった。じゃあ、機会があれば」
「アテレコ大会とか、したい」
「いやー、ちょっと。そこまでは」
「そう? 名場面を演じてみたいとか、思わない?」
「ない……」
ここで、ようやく梶本の両足がブーツから脱出した。
護が、廊下から居間に入ってくるのが見えた。
「完成ですか?」
「うん。プラモ部屋に行って、呼んできて」
「はい」
ミャーが、箸の用意をしてくれた。
「ありがとう」
「いいってことよ」
「……うん」
「梶本、遅くない?」
「遅れるって。連絡は、もらってる。篠崎も」
「電車かな」
「たぶん。車は、まだ、持ってないはずだから」
みんなで鍋を食べている時に、呼び鈴が鳴った。
「俺が行くから」
護に声をかけて、玄関に向かった。
梶本と篠崎だった。
篠崎は、リュックを背負っていた。都心にある百貨店の紙袋を抱えている。
梶本は、黒いエコバックを片手に提げていた。重たそうだった。たぶん、ジェンガだろうなと思った。
「一緒にいたのか」
「そう。これ、お土産」
「ありがとう」
篠崎から、紙袋ごと受けとった。
「ジェンガを持ってきた」
「やるの?」
「やるよ。必勝法も履修済みだ」
「ジェンガに必勝法なんて、あるの?」
篠崎が梶本に聞いた。
「ある! 今日、俺が手本を見せてやる」
「うん。いいけどさ。
まあ、上がって」
「おう」
梶本が、長いコートを脱ぎはじめた。
今日は、白衣は着ていなかった。そのかわりに、黒い光沢のある布に、スパンコールがいくつもついた、ダンサーの衣装のようなものを着ていた。どこかで見たような服だった。
「それ……。去年はやってた、あれ。フィギュアスケートの深夜アニメ。あれだ、『ギャラクシー・アイスショー』!」
「なぜ、わかった?! そうだ。これは、シリウス様だ」
「見たの?」
「うん。こっちに越してきてから、ネットの定額のやつで。
土日は、アニメの一気見とか、しょっちゅうしてる」
「あなどれんな……」
「いいから。早く、上がって。あと、今日は、ずっとそのキャラなの?」
「破綻しない限りは」
梶本の足元は、黒の長いブーツだった。脱ぐのが大変そうだな、と思った。
「しばし、待たれい!」
「うん。待つけど。しっかし、すごい服だな」
「これで、電車に乗ってきたからね。上からコートを着ててくれなかったら、車両を変えなきゃいけないところだった」
篠崎が、淡々と言った。苦労が偲ばれた。
「アニメの一気見とか、そんな面白いことしてるんだったら、呼んでほしかった」
「え、そう?」
「うん」
「古い作品が多かったから。篠崎からしたら、『いまさら?』みたいな……感じかと」
「なんで。初代のオリジンとか、最高だよ。一緒に見たかった」
「う、うん。わかった。じゃあ、機会があれば」
「アテレコ大会とか、したい」
「いやー、ちょっと。そこまでは」
「そう? 名場面を演じてみたいとか、思わない?」
「ない……」
ここで、ようやく梶本の両足がブーツから脱出した。
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