「叉雷の鱗」は、なぜエタったのか? -自作のエターナル小説について語る-

福守りん

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七章 天地鳴動

☆【2】龍王崩御、【3】陸糸

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龍王が亡くなる
※けっこうショッキングな展開のはずなんだけど、力尽きたみたいで、書いてもいなかった。

【3】陸糸

「何てことを」
 千鶴の声は掠れていた。
「なぜ待っていてくれなかったの」
「王の魂はここに」

「私が呑みます」
「あなたには出来ない」
「父に呑まれた人々の魂を、闇に葬り去ることは許しません」
「あなたは、再び同じ過ちを犯すおつもりか!」
「……!」
「よろしい。あなたなら王を丸ごと呑むことも出来るだろう。だが、もしもあなたが我を忘れた時、あなたを止めることが誰に出来ると仰るのか」
「この重荷を誰に負わせるつもりなの」
「僭越ながら、この私が」
「陸糸!」
「愛しい我が君。あなたはついに生涯の伴侶を得られた。最早私には、心残りなど何一つございません」
「彼は人よ。私は父とは違う」
「あなたはあの者と結ばれるのです。今ここで天に誓ってもいい」
「やめて。愚かなことを――」
「真に愚かなのは私でしょうか? あなたではなく?」
「龍王になるということがどれほど惨いことか、あなたは本当に分かっているの?」
「ならば尚更だ。あなたには決して継がせませんよ」
「……私をあげるわ」
「心を亡くしたあなたに興味はありません」
「私に心などあるものか!」
 千鶴の絶叫は、目に見えぬ烈風となって、暗い湖面を波立たせた。
「心ある者ならば、無辜の人々の営みを壊す筈がない。私に心があるならば、いたずらに父の命を喰い散らかしたりはしなかった!」
「おやめなさい。全て過ぎたことです」
「過ぎ去ってなどいない。私は忘れない。ただ一人私の前に進み出て、心ひとつで私を止めて下さった母のことを。私は人々だけではなく、実の親までも喰らった魔物よ」

「私も覚えていますよ」
「……?」
「私が小指ほどの蛟だった頃、私は姿無きあなたの声を聞いた。あの時のあなたの声を今でも覚えていますよ。私をこの水辺に導いた後で、あなたはこう云った。
 生きなさい。あなたは我が一族のために命を落としてしまったけれど、あなたには罪などありません。生きて、生きて、生き延びて、いつの日か私とともにこの珠〔ほし〕を護って欲しい――と」

「あれは、あなただったの。陸糸」
「ご自分の宿命だけは視えないのだとあなたが云われた時から、私は長い間考えていました」
「何を」
「全能のあなたが抱える僅かな泣き所。それこそが、私の儚い望みを叶えるための、突破口になり得るのではないかと。
 そして悟ったのです。たかが人龍の私が永久にあなたに仕えるためには、あなたと同等か、あるいは、それ以上の力を得るしかないのだと」

 千鶴の顔面は蒼白になっている。
「私は、王となったあなたのために人を狩ったりはしない」
「それでこその我が君です」
 陸糸は満ち足りたような顔をしている。
「信じていますよ。私が狂ってしまった時には、あなたが風のようにやって来て、愚かな私を滅ぼして下さることを」
「王になろうとする者が、そんな戯れ言を口にするのですか。人龍の魂を道連れにすることは、たとえ天が許しても、この私が許しません」

「そんな顔をしてはいけない」

(後略)

※陸糸は、もとは現代の人(地球の)。
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