犯人aの裁き

華図

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第1章 事件とお披露目

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僕はその日、いつもより早く目覚めた。両手を上げ体を伸ばした後、カーテンを開けて、朝日を確認した。足を踏み外さないようゆっくりと階段を下りると、母は朝ご飯を作りながら、「おはよう正仁、どうしてこんな早いの?」と僕に言った。僕は「わからん」とめんどくさそうに言った。テレビを見ていたからだ。いつもついてる、朝のニュース。今日もあの話題で持ちきりだった。「またもや、猫の首が山岡中学校の校庭で見つかりました。手足は近くのコンビニエンスストア、臓器や胴体は未だ発見されていないと言うことです。」とニュースキャスターのいつもの声が言った。「うわー!また?!」母は顔をしかめて言う。母がびっくりする理由も分かる。近所だからだ。犯人は、場所をほとんど変えることなく、僕の通う中学校の校区内で犯行を行なっている。犯行の内容は非常に残虐で猫、烏、鳩、その他小動物の首や胴体、手足や内臓なのが、校門前や車道の真ん中など、目立つところに置いてあると言うもの。「警察はどうなってるんだ。犯人はいつか人で試したくなるぞ。」とテレビに向かって新聞を読みながら祖父は言った。当然新聞の話題もそれで持ちきりだ。「ピコン」母の携帯が鳴った。メールが届いたようだ。「今日は通常通り登校だって」母は少し大きな声で僕を嘲笑うように言った。その後、ぼくは支度をして少し早めに家を出た。通学路には警察や、テレビの取材班が沢山いた。校門を通り、上履きを履き替え、2年10組を目指す。長い道のりの中、どうでもいいことを考えていた。今日の避難訓練は不審者を想定したものだ、ちょうどいい機会だと僕はおもった。そういえば、昨日4組の蒲田が泣いてたな、なんでだろう。そうしているうちに教室に到着した。教室には中村英登が一人で机に伏せて居眠りしていた。教室は朝日がまだ差し込んでないせいか、青く暗かった。僕は、電気をつけて少し大きな声で「おはよう!英登君!!」と言った。彼はすこしビクッと驚いて、ぼくの顔を見た。「おぉ!おはよう!委員長!」さすがクラスのムードメーカーと言わんばかりの元気さだった。僕は席について、教科書を机に入れた。次に教卓のなかの出席名簿や点検表を職員室に持っていった。帰ってきた頃には、クラスで目立たない女子達が群れをなして教室にいた。英登君はまた居眠りしていた。僕は席に着いて、本を開いた。僕の席は一番窓際の後ろから2番目だ。ふと窓を見ると、校庭の真ん中にブルーシートのテントが張ってある。周りには警察がちらほらといる。僕は当たり前か。と思い、もう一度本に目を向けた。本に集中していると、気がつくと随分と人数が増えていた。「きゃー!」廊下から女子の奇声が聞こえた。この奇声でもう驚くものはいない。なぜなら岩田蓮への歓声なのだから。彼は陸上部で県選抜。成績もいつも上位で絵に描いたような優等生。それに、整った容姿から女子の大半の憧れになっていた。岩田はいつも笑顔だった。「おはよう!」爽やかな声で言いながら、10組に入ってくる。席は僕の後ろ。僕にもおはようと言ってくる。僕もおはようと返す。「昨日の数学の課題できた?ちょっと難しくない?」岩田は僕に言った。「そうだよね。一応塾の先生と相談しながらやったんだけど、あれは難しすぎるよ。」僕は何気なく答える。「じゃあ見してよ!お願い!」岩田はいつもそうだった。僕の努力を、簡単に奪っていってしまう。いや、僕だけではない。彼は気付いてないのかもしれないが、彼は友達が多いが裏では相当男子からは嫌われていた。僕は嫌な顔をせず、すぐに数学の課題を貸し出した。彼が、机に教科書を入れ終わって席に着いて少しすると、朝学活開始のチャイムが鳴った。僕はこのクラスの委員長だ。いつものように黒板の前で、司会進行を務めた。クラスの風紀委員が今月の目標について話し終えた頃「離せよ!!」先生を振り払う声が聞こえた。霧島だ。霧島弥。この学年の中でも酷い不良だ。しかし、そこまで驚くことではない、なぜなら
この中学校は市内でも一番と言えるほど荒れている。なんたって、5つの小学校が集結する超大型中学校だからだ。人が多ければ、自然と不良も多くなるのは当たり前。だから、霧島が先生に向かって暴言を吐いたり、教室でタバコを吸ったり、クラスメイトをいじめたりするのは、本来なら注意すべき点だが、当たり前になっていた。「ガン!!」霧島は勢いよく教室のドアを開け、クラスメイトを睨みつけながら自分の椅子ではなく机に座って、スマートフォンをイジり始めた。クラス担任の関本綾が、勢いよく開けっぱなしのドアから溜息をつきながら入ってくる。「次に先生の話しを聞きます。先生お願いします。」僕は、先生に気遣うことなく話しを振った。僕は席に戻った。先生は少し咳き込んだ後話し始めた。「皆さん、おはようございます。今日は避難訓練です。元々は校庭に逃げる調理室からの火事を想定した避難訓練の予定でしたが、最近横行している、例の事件の対策として急遽不審者が学校に侵入してきたことを想定しての避難訓練に変更されました。初めてではあるので、先生の指示をよく聞いて動くようにしましょう。」この先生は新人なのか、話はあまり面白くない。愛想もないし、いつも冷酷で、生徒達からはすごく嫌われている。「それと、昨日の数学の小テストなのですが、無くしてしまいまして返却することができません。」と先生はきっぱりと言った。教室の中は「えー?またー?」というような声が響き渡る。気のせいかもしれないが、年が明けてから先生がプリントを無くす頻度が高くなってきている。無くし癖が酷いのかいつも静かに謝り、再テストを配るというのは最早日課になっているようだった。再テストを配り始めると、「またかよ!クソが!」と言って霧島は椅子を蹴り、いつもの屋上へとゆっくり歩いていった。再テストを終え、避難訓練の二時間目までの数学の授業中、僕は体調不良を訴え保健室へ向かった。それから何分経っただろうか、保健室のベッドに横たわっていると、警報音が鳴った。避難訓練が始まったのだ。「山岡先生山岡先生支給玄関前まで来てください。」体育教師の山田の声だ。放送室が隣なだけあって、放送を通しての声と、生声が両方聞こえた。そして、山岡先生なんて存在しない。この中学校の名前に先生という単語をつけただけだ。これは、不審者に避難行動や対策行動を悟られないための方法だと気がついた。すると、反対校舎のそれぞれの委員長が窓やドアを閉め始めるのが見えた。今、僕がいないから代わりに岩田が閉めていた。何故か関本先生はいない。そして、数分するともう一度放送が鳴った。「犯人確保。犯人確保。一斉下校想定のため、体育館に全校生徒は集まってください。」と流れた。次は理科の教師の斎藤の声だった。田舎の方出身なのか変なイントネーションが人気の先生だ。そして、放送室から体育教師の山田が出てくるのが見えた。そうすると、今度は教室のドアが一斉に開けられ、生徒達が列をなし始めた。岩田は僕より委員長らしく見えた。それらの列は1年生から順に体育館に走り始めた。そして、事件は起こった。避難訓練を終え、3時間目の授業が始まる頃僕は教室に戻った。クラスメイトは僕が戻ったことに気づいてないのかと思うくらい、体調について話しかけてこなかった。国語の授業が終わった頃、1.2.3....それぞれのクラスから悲鳴が聞こえた。だんだんと10組に近づいてくる。最初は小さかった悲鳴は9組に差し掛かった時にはとても大きく感じた。血まみれの足、服、顔、、先生。関本先生だ。朝には、真っ白だったカッターシャツが真っ赤に染まっていた。その瞬間クラスの一部女子は岩田に向けるような歓声ではなく、恐怖を示す悲鳴をあげた。いつも机にへばりついて寝ている英登君はその冷たい真顔をゆっくりと正面へ向けた。岩田はそのクッキリとした目を大きく見開いて固まった。関本先生は、血まみれでクラスにゆっくりと入ってきた。「死んだ、、、、」僕にはそう聞こえた。とても小さい声だ。すると、先頭の列の野山が「先生、、死んだって?!誰が?!」そう大きな声で立ち上がりながら問いかけた。「ぷっはははははは!!ふはははは」先生は高く笑い始めた。いつもとは全く違う笑い方だった。クラスの前の方の生徒は綺麗に整った机をバラバラにしながら先生から離れる。「ふははははは!!」笑い続ける。クラスはとても静かだ。これまでこんなに静かになったことはあっただろうか。「先生が、、やったの?!誰を?!!」副委員の中山が静かに問いかけた。先生は急に真顔になった。怖い。素直にそう思った。その後30秒くらい沈黙が続いた。その時、山田と校長そして、1から9組の先生達がクラスにドタバタと入って来る。「関本先生!!子供達から離れなさい!!」校長が怒鳴る。そして、手で少し指示をした後、他の先生達が関本先生を抑えつけた。関本先生はまた笑い始めた。先生達はドタバタと廊下へと関本先生を引きずる。「霧島君、、、」そう関本先生が呟いた。すると野山が「霧島が?!死んだ!!?」そう叫んだ。女子達はまた悲鳴をあげる。「静かにしなさい!!」山田が叱りつける。その頃には関本先生は見えなくなっていたが、笑い声はまだ聞こえていた。その時、クラスは異様な空気だった。いつも周りに迷惑をかけていた不良の霧島は死んだのだ。その瞬間、僕はふと思った。霧島の親友の新田はどんな反応をしているのだろうと。しかし、その日新田は休んでいた。身近な人が死んだショックは中学生には重いのかクラスの一部は霧島がどんな奴だったかをほっといて涙を流した。その日、弁当を食べることなく訓練内容が即実行され、体育館に集まり一斉下校が行われた。その日、関本先生は警察に生徒を殺害した容疑者として逮捕された。
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