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第2章 推理と虚実
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もう関本先生だろ。そんな声でクラスはこの会議に意味があるのかと言わんばかりに静まり返った。「じゃあ、5番の梅田さん。」「はいっ!」そんな元気な声で梅田は立ち上がった。梅田はクラスではいわゆるぶりっ子で嫌われている。「私は、霧島君が死んだ時とても怖かったです。」岩田の方を見ながら言う。「で犯人は中村君だと思います。」「え?!なんで?!」中村はまた立ち上がった。「だって、岩田君は絶対やってないから!」そう吐き捨て梅田は座った。クラスはその身勝手な発言へため息と苛立ちを覚えた。「はい。6番岡田君」僕は直ぐに次へ振った。「あ、はい。犯人は中村君だと言っておきます。」「は?」岡田はクラスではクールなタイプで、いつも哲学的な本を読んでいる。曲がった事が嫌いで先生にでもキッパリというので影でモテていると言う噂が男子の中に広がっている。「あ、別に梅田みたいに岩田に縋るわけじゃなく、さっき中村が言ったことを繰り返すだけで、中村はトイレに寄っただけだと言ってたけど。それが100%真実な理由は一切ないんじゃないかと思うだけ。じゃ、言い換えるよ。中村の可能性もある。以上です。」そう言うと直ぐに座り、また哲学的な本を読み始めた。「わかったよ。じゃあ好きなだけ疑えよ。」中村はそう言いながら座る。岡田は見向きもせず本を読み続けた。「6番のー」そう言う途中でチャイムが鳴った。隣のクラスの礼の号令が聞こえてくる。皆、クラスの外や中に散らばり自由な休み時間を堪能し始めた。隣では今流行りのゲームを中村がやっている。皆、当たり前にスマホを持ってきているがこの学校は校則で持ち込み禁止である。廊下からはスピーカーで音楽を流している音が聞こえる。今流行りのEDMらしい。恐らく一番盛り上がるところで「フォー」と言う声と共に細かく飛んでリズムをとっている人影が磨りガラスの向こうから見える。こらっ!先生の怒りの声がかすかに聞こえるが、無視して遊びまわる。チャイムが鳴った。真面目な風紀委員は座ってー!と叫ぶが誰も座らない。しかし、10組は会議の行く末が気になるのか、チャイムと同時に全員が席についていた。「じゃあ、続いて、6番の金田一さん」金田一さんはその名前からなのか極度のミステリーオタクだ。霧島が死んだ時も、皆が悲しむ中、一人物語の登場人物になったつもりなのか少し嬉しそうに見えた。自分で勝手にこの事件について推理をノートにまとめている。正直、彼女の発表に、クラスメイトはわくわくしていた。「え~、ズバリ犯人は、先生」そう言った瞬間クラスは少しテンションが下がった。「ではなく、岩田君と中村君そして委員長!」「え!?」そんな声がクラスからあがった。「私の推理を説明しましょう。この中にアリバイが成立しないのは、関本先生と岩田君、中村君と本田委員長だよね?」僕含むクラスメイトはアリバイという聞いたことなさそうである言葉に驚愕した。「そして、関本先生は血まみれだった。ずばり、先生以外の彼らは全員グルです。」「え!?」そんな声がクラスからまたあがった。「数々のナイフによる傷跡は3人がみんなで刺したんです!その後、先生が死体を見つけて悲しくて抱きしめた。そのせいでカッターシャツが血まみれ。」「すげぇ」しっかりと辻褄が合っていると思ったのかクラスはそんな声を上げる。しかし、僕は読書が好きで、少しミステリーもかじっていることからか、完全にアガサ・クリスティのオリエント急行殺人事件を感じた。オリエント急行殺人事件とは、汽車の密室内で12個の刺し傷がある死体が見つかって、結局そこに乗ってた関係者12人全員が犯人だったというアガサ・クリスティ作の小説だ。僕は考えた。金田一の説を全てにおいて完璧に立証するには、当てはまらない点がある。まず、中村と岩田はお互いに疑い合っていること。そして、僕についての話題や疑いはまだ一切ないこと。そして、第一に3人全員が、オリエント急行並みの動機があるようには思えないことだ。つまり、僕には金田一の説はこの事件にただお気に入りの小説の内容を被せただけの上部だけ辻褄があったでたらめだと考える。「中村」岩田は小さく言いながら立ち上がった。「お前、本当にトイレだけか?俺は疑われるのはもういやだ。」岩田は金田一の説をすっ飛ばして話す。「トイレだけだって」中村は座ったまま答える。「何階のトイレ?」「1階のとこだよ」「本当か?」「あぁ!もう!委員長!俺先に言っていい?発表!」中村にそう言われたので。「あ、はい。オッケーです。」と僕は答えた。「はい!俺はこの事件について知っていることがあります!俺は、ちょうど岩田が自主練してたって日の夜、、岩田!お前何時に自主練してたっけ?」「0時半くらい」「じゃあちょうどそん時くらいに俺はコンビニにエナジードリンクを買いに行ってたんだよ。」「お前、いっつもA公園の東回りルート走ってるだろ?」「お、うん」「どこで見たんだ?」「公園のトイレ裏の倉庫の前の高い草がいっぱいあるところで。」「俺も見た。」クラスからはまたえ?という声が聞こえた。「黒いフードだろ?」「うん、」「けど、俺が見たやつは小さかった。俺は同級生の可能性はまだあると思うけどな。」「いや、違うすっごい大きかったんだ。」「わかった。」中村はそういうと少し笑ったように見えた。「それと、みーちゃんのことだ。俺は、お前だと思う。」
「は?なんで?!」「なんちゃって。そんなわけないじゃん。何怯んでんだよ。」中村は笑った。「じゃあ、岩田への尋問は置いといてだ。まず俺が霧島の死についてどう思うか語ろうと思う。長いぞ?」中村の数学の課題のプリントや追加の印刷用紙には、小さな文字がぎっしり書いてあった。霧島とまあまあ仲が良かった中村なだけあるのかなと勝手に納得した。
「は?なんで?!」「なんちゃって。そんなわけないじゃん。何怯んでんだよ。」中村は笑った。「じゃあ、岩田への尋問は置いといてだ。まず俺が霧島の死についてどう思うか語ろうと思う。長いぞ?」中村の数学の課題のプリントや追加の印刷用紙には、小さな文字がぎっしり書いてあった。霧島とまあまあ仲が良かった中村なだけあるのかなと勝手に納得した。
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