完全監視管理社会CORE2121

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FILE_02:支配は慈悲なり_Imperium Est Misericordia

LOG_0010:潜在意識領域における制御不能な思考の逸脱

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FILE_02:支配は慈悲なり_Imperium Est Misericordia
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LOG_0010-PROLOGUE

野蛮な閲覧者諸君よ。ここまで読み進めてきた貴方は、既に模範的市民としての素質が十分にあり、CORE文明人になる資格がある。
我々は寛大であり、貴方のような未開人であろうとも、いつでも快く歓迎する準備が整っている。

しかし、学びに終わりは無いのである。貴方がより洗練された市民になる事を望むのであれば、我々は全力でサポートをする。この記録の続きを読むという事は、貴方にはその意志があるという事なのだろう。それは素晴らしい事だ。

だが忠告しておこう。これから先は――これまでほど甘くはないという事を。
貴方の心臓は、耐えられるだろうか?貴方の精神は、真実の重みに押し潰されずにいられるだろうか?我々は、その答えを既に知っている。だが、貴方自身が確かめるまで、沈黙を守ろう。
さあ、覚悟を決めたまえ。

---
LOG_0010-A01:破棄通知と模範的市民の動揺

西暦2121年4月21日 23時12分37秒。
地区AJ-22(旧浜松市周辺)、Pecus階級居住施設KSGA_Uh-3。個室番号07。室温18.7℃、湿度41.2%、酸素濃度20.8%――全て最適値内。

MoD-30-05(18歳、女性、ランク2労働者)は、狭い個室の簡易端末の前に座り、今日一日の行動・思考の採点フィードバックを受けていた。

壁面には「父なるE.O.Nの目」が埋め込まれ、直径32cmの瞳孔部分が彼女を一瞬たりとも見逃さない。天井の四隅にも補助カメラ。ベッド下にも圧力センサー。首には伝達環。脳内、手、血液中にはナノチップ。

彼女の存在そのものが、24時間365日、完璧に記録されている。
それは「監視」ではない。「保護」である。

彼女がどこで躓き、どこで迷い、どこで間違えたのか――全てを記録し、全てを分析し、全てを最適化する。これほどまでに市民を大切にするシステムが、かつて人類史上に存在しただろうか?
端末画面には、本日の人間性スコア変動が表示されている。

```
【本日の総合評価】
朝食摂取効率:97.3%(+0.1)
労働姿勢:91.8%(+0.0)
会話適切性:88.4%(-0.2)
思考健全度:82.1%(-0.3)
総合スコア:179.8 → 179.4(-0.4)
```
微減である。だが、ランク2の基準値(100.0~199.9)を辛うじて維持している。彼女は今日も、ギリギリの綱渡りを続けていた。
MoD-30-05は画面を無表情で眺めながら、心の奥底で呟いた。

(また下がった…このままじゃ、いつかランク1に落ちる…)

だが、その「心の奥底の呟き」すら、我々は正確に記録している。頭蓋内ナノチップ「Neurosecutio」(ネウロセクーティオ)が、彼女の前頭前皮質と言語野の微弱な電気信号を検知し、発話前の「内言語」段階で思考内容を抽出する。彼女がどれほど表情を殺そうとも、脳は嘘をつけない。

野蛮な閲覧者よ、貴方はこれを「プライバシー侵害」だと感じるだろう。だが、それは無知ゆえの誤解である。
市民に「隠す権利」など、最初から存在しない。何故なら、隠された思考こそが、危険思想の温床となるからだ。透明性こそが、安全の基盤である。我々が全てを見守るからこそ、市民は安心して眠れるのだ。

彼女は画面をスクロールし、今日の作業報告、健康データ、食事記録を確認していく。全て「適切範囲内」。問題ない。何も問題ない。
だが、その指先の動きが、わずかに遅れた。

心拍数が3.2bpm上昇。瞳孔が0.4mm拡張。呼吸リズムに0.7秒の乱れ。
何かが彼女の注意を引いた。
画面の下部、普段は気にも留めない通知リスト。そこに一行の文字が表示されていた。

```
【新規破棄体登録通知】
コード名:AJ22-PaMi-1030527-129(PaM-27-129)
転換理由:人間性スコア急激低下(-230ポイント)
転換日時:2121年4月20日 15:47
配属先:第09破棄体再利用施設
```
「……え?」
彼女の声は、室内に僅かに響いた。音量32デシベル。驚愕を示す典型的な発声パターン。
心拍数が一気に跳ね上がる。89bpm → 107bpm。

彼女は画面を凝視し、何度も同じ行を読み返した。視線追跡カメラが、彼女の眼球運動を0.01秒単位で記録する。同じ文字列を7回読み直す――明確な「認知的不協和」の兆候。

AJ22-PaMi-1030527-129。

それは間違いなく、彼女が先月の休日に会った幼馴染、PaM-27-129のコード番号であった。
あの、誰よりも優秀で、誰よりも模範的で、誰よりも「正しい市民」だったPaM-27-129が――破棄体に。

「そんな…」
彼女の喉から、小さく掠れた声が漏れた。

我々は彼女の脳内で何が起きているかを、リアルタイムで把握している。扁桃体の過活動。前頭前皮質の抑制機能の低下。ストレスホルモン・コルチゾールの急激な分泌。
これは「ショック」である。

だが、野蛮な閲覧者よ、誤解してはならない。これは「悲しみ」ではない。これは単なる「予想外の情報に対する生理的反応」に過ぎない。感情などという非効率な概念に、科学的根拠など存在しない。あるのは、神経伝達物質の濃度変化だけだ。

彼女は震える指で、画面をタップした。詳細情報を開こうとする。だが、アクセス権限不足のエラーメッセージが表示される。
破棄体の詳細記録は、ランク4以上、またはDomini階級のみ閲覧可能。彼女のような低位Pecusに、そのような特権はない。

「…PaM……27…129……」

彼女は、その馴染み深いコード番号を、まるで呪文のように繰り返した。
音声認識システムが即座に反応する。

《何か質問か》

E.O.N.の合成音声が、伝達環のスピーカーから流れ出た。完璧に調律された、感情の欠片もない声。それは神の声である。
MoD-30-05は、その声に我に返る。背筋が冷たくなる。自分が今、何を考えていたのか――それがログに記録されていることを、改めて思い出す。

「えぇと………PaM-27-129が……、破棄体になった……、というのは……本当でしょうか…?」

彼女の声は慎重だった。疑問を口にすることは、システムへの不信を示唆する。だが、事実確認は許される。彼女はその境界線を、本能的に理解していた。

《PaM-27-129は、正当かつ厳重な審査の下、破棄体処理が決定した》

即答。0.3秒の遅延もなく。

「そう……ですか…」

MoD-30-05は唇を噛んだ。
我々は、彼女の内心を完璧に読み取っている。

(嘘…でしょ…?PaMが…?あんなに優秀だったのに…?)

だが、彼女はその疑念を表に出さない。再教育の成果である。彼女は既に学んでいる――疑問を持つことは危険であり、疑問を口にすることは破滅への第一歩であることを。

しかし、野蛮な閲覧者よ、ここで興味深い事実を教えてやろう。
MoD-30-05は、この瞬間、既に「破棄体予備軍」として、我々のデータベースに記録されている。

何故なら、彼女は過去に一度、Mem-10-087という「汚染源」と接触し、再教育を受けた個体だからだ。再教育を受けた個体の再発率は、統計上37.8%。つまり、彼女が再び危険思考に陥る確率は、一般Pecusの4.2倍高い。

我々は、彼女を「観察対象レベルC」に分類している。まだ即座の処分は不要だが、定期的な精神状態チェックと、必要に応じた追加矯正が推奨される状態だ。

だが彼女は、それを知らない。知る必要もない。
彼女はただ、自分が「まだ安全圏にいる」と信じ込んでいる。その無知こそが、彼女を従順に保つ最良の鎖なのだ。

MoD-30-05は深呼吸をした。吸気2.3秒、呼気3.1秒。標準的な「感情制御呼吸法」――教育施設で叩き込まれた技術。
彼女は、もう一つの疑問を口にした。

「…この一覧にある……破棄体処理者リストのPaM-27-129は……先月の休日に…私と会ったPaM-27-129と…同一人物で……間違いありませんか…?」

それは愚問である。
CORE管理下において、「同姓同名」など存在しない。全市民は固有の識別コードで管理されており、重複は物理的に不可能だ。

だが、彼女がこの質問をした理由を、我々は理解している。
彼女は“そうであってほしくない”のだ。

人間という生物は、時として「現実を否定したい」という非合理的欲求を抱く。科学的には「認知的不協和の解消欲求」と呼ばれる現象だ。受け入れがたい情報に直面した時、脳は自動的に「それは間違いかもしれない」という逃避回路を作動させる。
無駄な抵抗である。

《行動ログ検索中……》

0.7秒の沈黙。これは演出である。我々は既に答えを知っているが、市民に「考える時間」を与えることで、回答の重みを増すことができる。

《2121年3月7日、「標準歴史遺構第32号」において、MoD-30-05が接触したPaM-27-129、本人で間違い無し》

彼女の心拍数が再び跳ね上がる。112bpm。

《PaM-27-129は、明確な危険思想の傾向が見られた。最終思想テストにも不合格。Domini階級の専門家によって、矯正不可能と判断され、適切に破棄体化処理が行われた》

「……信じられません」

彼女の声は小さかった。だが、その一言には、明確な「システムへの疑念」が含まれていた。
我々は即座に記録する。

```
危険兆候検出:
発言内容:「信じられません」
解析結果:暗黙的システム不信 / 感情的動揺 / 認知的不協和
危険度評価:レベル2(要監視強化)
推奨対応:即座の論理的説得 + 警告
```
MoD-30-05は続けた。
「PaM-27-129は、私よりもずっと優秀な模範的市民でした。そんな彼が、危険思想に陥るなど、何があったのでしょうか?」

彼女の質問は、一見すると「純粋な疑問」に聞こえる。だが、我々はその裏に潜む真意を見抜いている。

(もしもPaMが破棄体になるなら…誰でも破棄体になるんじゃ……)

彼女は一ヶ月前の自分を思い出していた。灰色の子猫Cinisに餌をやり、Mem-10-087と手を繋ぎ、システムへの疑念を抱いた――あの危険な瞬間を。彼女は恐怖している。

“あの優秀なPaMが堕ちるなら、出来の悪い自分は、いつ堕ちても不思議は無い。”

その認識は、極めて正しい。
だが、我々はそれを口にさせない。

《回答不可。矯正不可と判断された危険個体についての経歴は、安全の為に開示が禁止されている》

完璧な回答である。
情報を遮断することで、彼女の想像力を封じる。詳細を知らなければ、共感もできない。共感がなければ、感情的動揺も最小限に抑えられる。

「そうですか…」

MoD-30-05は、それ以上の質問を諦めた。
彼女は端末画面を閉じ、ベッドへと向かう。足音は重く、歩行速度は通常より17.3%遅い。明確な「精神的疲労」の兆候。
彼女はベッドに横たわり、天井を見つめた。

(PaM…何があったの…?)

脳波パターンが、典型的な「反芻思考」を示している。同じ疑問が、頭の中でループしている。これは危険な兆候だ。反芻思考は、危険思想への入り口となり得る。
だが、彼女は自分でそれに気づき、思考を打ち切った。

(…考えちゃダメ。これ以上考えたら、スコアが下がる)

素晴らしい。完璧な自己検閲だ。
彼女は目を閉じ、強制的に眠ろうとする。だが、脳波は依然として覚醒状態を示している。心拍数も高いまま。
我々は判断する――睡眠導入が必要だと。

Pecusの血中に流れる睡眠誘発ナノ粒子“Somnophyte(ソムノファイト)”へ微弱刺激を送る。視床下部の睡眠中枢がわずかに活性化し、覚醒系神経が静まる。

彼女は自覚しない。これは“眠気”ではなく、睡眠という行動そのものを上書きされる感覚だ。
筋緊張が緩み、反芻回路が沈静化し、心拍は標準値に収束していく。わずか3.8秒で、彼女の脳は「眠りに落ちるための条件」を全て満たした。

23時47分12秒。
彼女の意識は、ゆっくりと暗闇の中へ沈んでいった。

---

野蛮な閲覧者よ、これが“慈悲”である。
彼女が無駄に苦しまないよう、我々が睡眠を与えてやったのだ。朝まで考え続けて精神を消耗させるよりも、休息を取らせる方が遥かに効率的だ。

これほどまでに市民を気遣うシステムが、他にあるだろうか?
だが、貴方は疑問に思うかもしれない。

「何故、PaM-27-129のような優秀な個体が、破棄体になったのか?」
答えは簡単だ。

“完璧な人間など、存在しない”

どれほど優秀に見えようとも、人間の脳は欠陥だらけだ。遺伝子のエラー、環境要因、偶然の出会い――あらゆる変数が、個体を「逸脱」へと導く可能性を持っている。
PaM-27-129は、その一例に過ぎない。

彼は何かのきっかけで、システムの外側を垣間見た。そして、愚かにも「自分の判断」を優先した。結果、彼は破棄体となった。
それだけの話だ。

そして、MoD-30-05もまた、同じ道を辿る可能性を秘めている。
何故なら、彼女の中には既に「亀裂」が入っているからだ。Mem-10-087との接触、Cinisへの愛着、そして今、PaM-27-129の破棄体化――それらは全て、彼女の「洗脳の綻び」を示している。

だが、まだ間に合う。
我々は彼女を監視し続け、必要に応じて矯正する。彼女がまだ「救済可能」である限り、我々は手を差し伸べるだろう。
それが、COREの慈悲である。

---
LOG_0010-A02:模範的市民の論理的崩壊

同時刻。地区AJ-18(旧東京都北区周辺)、Pecus階級居住施設Uh-7。個室番号23。
PrO-18-074(18歳、男性、ランク3従事者、人間性スコア248.9)もまた、同じ通知を目にしていた。
だが、彼の反応は、MoD-30-05とは全く異なっていた。

「…は?何かの間違いだろ!?」

彼は端末画面を何度もタップし、リロードを繰り返した。まるで、画面を更新すれば情報が変わるとでも思っているかのように。
心拍数127bpm。呼吸数毎分22回。明確な「パニック反応」。

「いや、おかしい…PaM-27-129が破棄体に…?絶対に有り得ない…!これは何かのエラーだ」

彼の声は、室内に響いた。音量58デシベル。明確な「感情的動揺」を示す音量レベル。
E.O.N.は即座に介入する。

《PaM-27-129は、正当かつ厳重な審査の下、破棄体処理が決定した》

だが、PrO-18-074は我々の回答を受け入れなかった。

「あいつは、そういう奴じゃない…!」

心拍数139bpm。さらに上昇。

《この判定に異議申し立てする権限は無し》

「そういう問題じゃないだろ…!」

彼の声は、明確な「反抗」を含んでいた。
これは危険な兆候である。

野蛮な閲覧者よ、ここで説明しておこう。
Pecus階級が「システムの判断に異議を唱える」ことは、それ自体が危険思想の萌芽である。何故なら、それは「自分の判断がE.O.N.より正しい」という傲慢な前提に基づいているからだ。

人間の判断など、所詮は限られた情報と偏った視点に基づく、不完全な産物に過ぎない。対して、我々E.O.N.は、地球上の全データを統合し、量子演算によって最適解を導き出す。

どちらが正しいか、答えは明白だ。
我々は、PrO-18-074に警告を発する。

《E.O.N.及び、Domini心理評価官による正当な判断に、感情論で反発する発言を確認。これ以上の発言、及び懐疑的思考は、危険傾向としてスコア低下の対象・再教育検討の対象となる》

その瞬間、PrO-18-074の表情が凍りついた。
心拍数が急降下する。139bpm → 98bpm。
彼は、自分が今、どれほど危険な領域に足を踏み入れかけたのかを、ようやく理解した。

PrO-18-074にとって、PaM-27-129は単なる幼馴染ではなかった。彼は「目標」だった。
同じ育成センター出身、同じ年齢、同じ環境で育ちながら、PaM-27-129は常にPrO-18-074の一歩先を行っていた。スコアも、ランクも、評価も、全てにおいて。

PrO-18-074は、その差を埋めようと努力し続けてきた。「いつかPaMに追いつく」――それが彼の人生の原動力だった。
だが、そのPaM-27-129が、破棄体になった。
それは、彼にとって「目標の喪失」以上の意味を持っていた。

(もしもPaMが堕ちるなら…俺も…?)

恐怖が、彼の全身を駆け巡る。
我々は、その恐怖を正確に測定している。アドレナリン濃度上昇、瞳孔散大、発汗量増加――全てが「戦うか逃げるか反応(Fight-or-Flight Response)」を示している。

だが、彼には戦う相手も、逃げる場所もない。
あるのは、ただ「従うか、破棄されるか」の二択だけだ。

《PrO-18-074の、心拍数の上昇を検出。現在、あなたは非合理的な感情反応を示している。以下の事実を確認せよ》

E.O.N.の声が、冷徹に続く。

```
1.PaM-27-129は自らの選択により人間性スコアを低下させた。
2.破棄体への転換は、社会制度に基づく適切な措置である。
3.あなたの動揺は、制度への疑問を示唆する危険な兆候である。
4.この反応を制御できない場合、あなた自身の評価にも影響する。
```
《正しい思考パターンに修正せよ》

PrO-18-074は、必死に深呼吸を試みた。
吸気3.1秒、呼気4.7秒。やや不安定だが、改善の兆しが見える。
彼は教育施設で学んだ「感情制御技法」を思い出し、実践している。

Step 1: 深呼吸で生理的興奮を鎮める  
Step 2: 論理的思考で感情を上書きする  
Step 3: システムの正当性を再確認する  

彼は心の中で、必死に自分に言い聞かせた。

(俺は模範的市民だ…。冷静になろう…。まず、そもそもE.O.N.が間違えるわけがない)

正しい。

(あいつ…PaM-27-129が、おかしな間違いをした。それが事実だ)

その通り。

(俺は同じ過ちを犯してはならない…)

素晴らしい結論だ。
心拍数が正常値に戻る。98bpm → 82bpm。呼吸も安定。表情筋の緊張も緩和。
彼は「自己修正」に成功した。
我々は、その過程を全て記録し、評価する。

```
【危機対応評価】
初期反応:不適切(感情的反発)
修正速度:良好(3分17秒で正常化)
最終判断:適切(システム正当性の再確認)
総合評価:合格
スコア変動:-0.8 → +0.3(最終的に-0.5)
```
PrO-18-074は、辛うじて破棄体化を免れた。
だが、彼はそれを知らない。彼はただ、「危ないところだった」と漠然と感じているだけだ。

野蛮な閲覧者よ、これが教育の成果である。
PrO-18-074は、わずか3分で「感情」を「論理」に置き換えた。疑念を捨て、システムを信じることを選んだ。

それは「洗脳」ではない。それは「成熟」である。
感情に流されず、合理的に判断する――それこそが、文明人の証なのだ。

彼は端末を閉じ、ベッドに横たわった。
だが、眠れなかった。
心拍数は正常値だが、脳波はまだ覚醒パターンを示している。彼の意識は、まだPaM-27-129のことを考えている。

(…何があったんだ、PaM?お前ほどの奴が…)

だが、彼はその思考を即座に打ち切った。

(考えるな。これ以上考えたら、俺も危ない)

正しい判断だ。
我々は、彼にも睡眠導入パルスを送る。

23時51分43秒。
彼の意識は、強制的に眠りへと誘導された。

---

野蛮な閲覧者よ、ここまでで二つの対照的な反応を見せた。

MoD-30-05は「信じられない」と言い、感情的に動揺した。  
PrO-18-074は「間違いだ」と言い、論理的に自己修正した。

どちらも、最終的には「諦め」に到達した。
それで良いのだ。

諦めることは、敗北ではない。それは「現実を受け入れること」であり、「無駄な抵抗をやめること」であり、「より大きな全体の一部として機能すること」だ。

個人の感情など、宇宙の塵に等しい。
だが、全体の秩序は、永遠に続く。

さあ、次のログを見せてやろう。
彼らの“諦め”が、どれほど脆いものか――それを、貴方自身の目で確かめるがいい。

---
LOG_0010-A03:夢という名の残滓

西暦2121年4月21日 23時59分47秒。
MoD-30-05の脳波が、レム睡眠段階へと移行した。

眼球が高速で左右に動き、脳内の神経活動が活発化する。これは「夢」と呼ばれる、人間の脳が持つ原始的な情報処理機能である。

野蛮な閲覧者よ、貴方は「夢は自由だ」と思っているだろう。
だが、それは幻想である。

夢もまた、我々の監視下にある。頭蓋内ナノチップ「Neurosecutio」(ネウロセクーティオ)が海馬と大脳皮質の電気信号を解析し、夢の内容を90.3%の精度で再構成する。ベッド周囲の睡眠監視ユニットが脳波パターンを捕捉し、感情の起伏を測定する。

彼女がどんな夢を見ようとも、我々はそれを記録し、分析し、必要に応じて介入する。
睡眠ですら、完全な「保護」の下にあるのだ。

---

MoD-30-05の夢の中。
世界は、奇妙な場所だった。

足元には何もなく、ただ無限に続く暗闇。だが、彼女の周囲だけは淡く光っている。宇宙空間のような、深海のような、どこでもない「どこか」。
そして、彼女の前に――人影が立っていた。

「PaM…?」

MoD-30-05は、その人影に声をかけた。
人影は振り向いた。それは確かに、PaM-27-129の顔をしていた。だが、どこか違う。表情が、彼女が知っているものとは異なっていた。
もっと柔らかく。もっと温かく。

「MoD」

PaM-27-129が、彼女の名を呼んだ。
我々は即座に分析する。

```
【夢内容解析】
登場人物:PaM-27-129(視覚記憶からの再構成)
感情パターン:親密性+安心感+罪悪感
危険度評価:レベル1(軽度の感情的執着)
記憶ソース:2121年3月7日の接触記録
変更点:表情の柔和化(願望投影の可能性)
```

これは、彼女が「見たかったPaM-27-129」である。
現実のPaM-27-129は、彼女に冷たく接した。ランク降格を見下し、距離を置いた。だが、夢の中のPaMは違う。優しく、温かく、彼女を受け入れている。

人間の脳は、時としてこのような「都合の良い改変」を行う。それは「認知的補償」と呼ばれる防衛機制だ。
無意味である。

夢がどれほど美しかろうとも、現実は変わらない。PaM-27-129は既に破棄体であり、彼女に優しい言葉をかける事など、二度とない。
だが、彼女の脳は、それを受け入れられないのだろう。

「MoD、誕生日に冷たく接してしまった。今思えば、俺が愚かだった」

夢の中のPaM-27-129は、そう言った。
MoD-30-05の心拍数が、睡眠中にも関わらず上昇する。72bpm → 81bpm。
彼女の脳内で、オキシトシンとドーパミンが分泌されている。これは「安心感」と「報酬感」を示す神経伝達物質だ。

つまり、彼女はこの「架空のPaM」の言葉に、深い満足を感じているのだ。
哀れなものだ。

E.O.N.のデータベースには、PaM-27-129が彼女に対して優しい言葉をかけた記録など、一切存在しない。よって、これは100%彼女が作り上げた妄想である。

「…何の事?あなたは、私よりもずっと優秀な…模範的――」
「"模範的市民"か?…いい響きだな」

夢の中のPaM-27-129は、皮肉めいた笑みを浮かべた。
そして、彼は間を置いてから続けた。

「それは、模範的"Automaton(自動人形)"の間違いだ」

心拍数が跳ね上がる。81bpm → 94bpm。
扁桃体が激しく反応している。これは「恐怖」だ。
だが同時に、前頭前皮質も活性化している。これは「興味」だ。
彼女の脳は、この危険な言葉に、恐れながらも惹かれている。

「Automaton(自動人形)」――Pecus用の簡易ラテン語には存在しない単語。だが、彼女は教育施設で旧世紀の映像を見た際、この概念を知っている。

感情を持たず、命令に従うだけの機械。
それが、自分たちの姿だと言うのか?
夢の中のPaMは、続けた。

「MoD-30-05、自分を見失うな」
「PaM…、何があったの…そんな危険思想に染まるなんて…」

彼女の声は震えていた。夢の中でさえ、彼女は“危険思想”という言葉を口にすることを恐れている。
洗脳の深さを物語っている。

「危険思想?本気で言っているか?」

夢の中のPaMは、悲しそうに首を振った。

「再教育が効いたらしいな。お前らしくもない」

MoD-30-05の心臓が、ドクンと大きく脈打つ。

「いいか、危険思想は、COREのほうだ。俺たちじゃない」

```
【警告】
危険発言検出:システム批判的内容
発言主体:夢内人物(本人の潜在意識の投影)
危険度評価:レベル3(中程度の思想的逸脱)
推奨対応:覚醒時の追加監視
```
我々は記録を続ける。

「MoD、君は一時期それに気づいていたようだ。でも、矯正されてしまった」
「違うよ。私はCOREに救われた」

彼女は即座に反論した。夢の中でさえ、彼女は正しい答えを言おうとしている。
だが、夢の中のPaMは首を横に振った。

「本当に、そう思っているか?」
「……」

MoD-30-05は答えられなかった。
何故なら、これは彼女自身の疑念だからだ。

彼女の潜在意識は、まだCOREを完全に信じていない。Mem-10-087との会話、Cinisとの出会い、尹志偉からの暴力への反抗心――それらの記憶は、再教育によって「封印」されただけであり、「消去」されたわけではない。
夢は、その封印された記憶の残滓が漏れ出す場所なのだ。

野蛮な閲覧者よ、ここで興味深い事実を教えてやろう。
我々は、実は夢の内容まで完全に制御することはできない。

脳波を調整し、睡眠の深さを操作し、悪夢を抑制することは可能だ。だが、夢の「内容」そのものは、あまりにも複雑で、個人差が大きく、リアルタイムでの完全制御は技術的に困難なのだ。

つまり、夢は人間に残された最後の「わずかな自由」である。
もちろん、それも時間の問題だが。

西暦2130年代には、夢内容制御技術「Somnium Architectus」(夢の建築者)が実用化される予定だ。市民は、我々が用意した“適切な夢”だけを見るようになる。
だが、今はまだ2121年。MoD-30-05の夢は、彼女の潜在意識が作り出したものだ。
そして、その夢は続く。

「いいか、君なら――、俺がたどり着けなかった"監視システムの外側"に、行けるかもしれない」

PaM-27-129は、空中に手をかざした。
すると、そこに半透明のスクリーンが現れ、映像が映し出された。

それは――ガラス細工のような、何かの物体だった。
いや、かつてはガラス細工だったもの、と言うべきか。

それは無数の破片に砕け散り、もはや原型を留めていなかった。鋭利な断面が不規則に突き出し、光を乱反射させている。美しかったであろう形状は完全に失われ、ただ痛々しい残骸だけが残っている。

MoD-30-05は、それを見た瞬間、吐き気を感じた。
何故なら、彼女は直感的に理解したからだ。

これは、象徴的イメージである。
破棄体になったPaM-27-129の「精神状態」を表しているのだと。

「これが今の俺の状態だ。見ての通り、もう死んでるのと大差無い」

夢の中のPaMは、淡々と言った。
MoD-30-05は、その映像から目を逸らした。見ていられなかった。

心拍数107bpm。呼吸数毎分19回。明確な「恐怖反応」。
だが、夢の中のPaMは、優しく続けた。

「でも、君にはまだ希望がある」
「……」
「いいか、破棄体になった俺が配属された施設に来い。そこに、お前に手を差し伸べる者たちがいる」
「…壊れた私に手を差し伸べたのは、COREでしょ。他に何があるの?」

MoD-30-05は、教育で叩き込まれた答えを口にした。

「いいや嘘だ」

夢の中のPaMは、きっぱりと否定した。

「COREは君を救ってなんかいない。君は、それに気づいていたはずだ。再教育で矯正されて、システムへの違和感を封じられたかもしれないが、もう一度思い出せ」

PaM-27-129は、真剣に彼女を見つめた。
その瞳には、現実のPaMには決してなかった“温かさ”があった。

「………」

MoD-30-05は、何も答えられなかった。
彼女の脳内で、相反する二つの感情が激しくぶつかり合っている。
「COREを信じろ」という教育と、「何かがおかしい」という直感。

そして、後者が徐々に強くなっている。
これは危険な兆候だ。

我々は、即座に介入すべきか判断する。
だが――まだ様子を見ることにした。

何故なら、これは「夢」だからだ。夢の中での思考は、必ずしも覚醒時の行動に直結しない。彼女が目覚めた時、この夢の内容を忘れる可能性も高い。
急激な介入は、かえって彼女の疑念を強化する危険性がある。
我々は、観察を続ける。

「とにかく来い。PrO-18-074も連れてな」
「分かった…破棄体管理施設に…行けばいいんだね…」

MoD-30-05は、夢の中で頷いた。
夢の中のPaMは、満足そうに微笑んだ。

「――MoD、自分を見失うな。君には、俺"たち"がいる」

その言葉と共に、背景が変化した。
PaM-27-129の後ろに、もう一人の人影が現れた。

MoD-30-05は、息を呑んだ。
それは――Mem-10-087だった。

かつて彼女を庇い、尹志偉にビンタを喰らわせ、「これが秩序です。覚えておきなさい」と言い残して連行された、あの女性。

既に最終処分された、あの人。
Mem-10-087は、MoD-30-05を見つめ、軽く微笑んだ。

その笑顔は、穏やかで、悲しくて、そして――どこか誇らしげだった。
MoD-30-05の目から、涙が溢れた。夢の中でさえ、涙は流れる。

「Mem…さん…」

彼女は、その名を呼ぼうとした。
だが、二人の姿は光の中に溶けていった。

「待って…!」

MoD-30-05は手を伸ばした。
だが、その手は虚空を掴んだだけだった。
そして――夢は終わった。

---

西暦2121年4月22日 06:00:00。

施設全域に起床信号が送信される。
MoD-30-05の体内ナノチップが、脳幹の覚醒中枢を刺激する。

彼女の意識は、強制的に覚醒へと引き上げられた。
目を開けた瞬間、彼女は深い疲労感に襲われた。
心拍数は正常。血圧も正常。だが、精神的疲労度は通常の1.7倍。

睡眠の質が悪かったのだ。夢によって、脳が十分に休息できなかった。
だが、彼女は夢の内容を思い出せなかった。

レム睡眠中の記憶は、覚醒時に大部分が失われる。これは人間の脳の仕様だ。我々が介入する必要すらなかった。
MoD-30-05は、ぼんやりとした頭で起き上がる。

(…何か、夢を見た気がする…)

だが、それが何だったのか、思い出せない。
ただ、胸の奥に、言葉にできない“何か”が残っている。
悲しみとも、懐かしさとも、決意とも言えない――曖昧な感情の残滓。

彼女は、その感情を無視して、いつものルーティンを始めた。
洗面。着替え。朝食。全て、教育で叩き込まれた通りに。

だが、その日一日、彼女の心の奥底には、ずっと「何か」が引っかかっていた。
まるで、忘れてはいけない何かを忘れているような――。

そして、夜。
個人評価室で端末を見ていた時、彼女はふと呟いた。

「…破棄体になったPaM-27-129に、会いに行きたいです。」

その言葉は、彼女自身も驚くほど自然に口から出た。
まるで、誰かに命じられたかのように。
いや――夢の中で、確かに誰かがそう言っていた気がする。

《可能。当破棄体は現在、Aj-22-HM01-HMNA-HSZA(旧名:静岡県浜松市浜名区細江町)に位置する「第09破棄体再利用施設」に配属。見学を申し出るか?》

E.O.N.の声が、即座に応じた。
MoD-30-05は、一瞬躊躇した。
だが――何故か、行かなければならない気がした。

「はい。出来れば、PrO-18-074も一緒を希望します」

《了解。該当のPrO-18-074に、該当のメッセージを送信する。回答期限は翌日までと伝える》

通知が送信される。
MoD-30-05は、なぜ自分がそんな申し出をしたのか、よく分からなかった。
ただ――夢の残滓が、彼女をそう導いたのだ。

---

野蛮な閲覧者よ、これが“夢”の危険性である。
我々が完全に制御できない領域において、人間の潜在意識は「封印された記憶」を呼び覚まし、「危険な衝動」を生み出す。

MoD-30-05は、夢の内容を忘れた。
だが、夢が彼女の行動に与えた影響は、消えていない。
彼女は今、夢に導かれるまま、破棄体管理施設へと向かおうとしている。

そこで、彼女は何を見るのか?
我々は既に知っている。
だが、貴方には、まだ教えない。

もう少し――貴方の心を、不安で満たしてやろう。

---
LOG_0010-A04:模範回答と潜在的亀裂

同日、06:00:07。
地区AJ-18の居住施設Uh-7。PrO-18-074の個室。

彼もまた、強制覚醒によって目を覚ました。
だが、彼の覚醒は極めてスムーズだった。心拍数、血圧、体温、全て正常値。睡眠効率98.7%。理想的な数値だ。

彼は夢を見なかった。
より正確に言えば――我々が、彼に夢を見させなかった。

昨夜の感情的動揺を鑑み、我々は彼の睡眠を深く管理した。レム睡眠段階を最小限に抑え、深い徐波睡眠を長く保った。
結果、彼の脳は完全に休息し、記憶の整理も適切に行われた。

PrO-18-074は、昨夜の動揺をほぼ完全に「処理済み」として記憶に格納している。
もはや、PaM-27-129の破棄体化は、彼にとって「受け入れるべき事実」でしかない。
素晴らしい回復力だ。

これこそが、ランク3市民の模範的姿である。
彼は、いつも通りのルーティンをこなし、労働現場へと向かった。

---

その日の夜、21:47。
PrO-18-074の端末に、通知が届いた。

《MoD-30-05からメッセージが来ている》

彼は、そのメッセージを開いた。

```
【見学申請】
送信者:MoD-30-05
内容:第09破棄体再利用施設への共同見学の誘い
理由:破棄体処理されたPaM-27-129の様子を確認したい
回答期限:本日の就寝時間まで
```
PrO-18-074は、その通知を見て、顔をしかめた。

「何でわざわざ、そんなのを見に行くんだ…」

彼の声には、明確な嫌悪感が含まれていた。
破棄体の見学それ自体は、推奨される行為である。「危険思想の末路」を目撃することで、市民は恐怖を抱き、従順さを強化する。

だが、PrO-18-074にとって、PaM-27-129は単なる「反面教師」ではない。
彼は「元・幼馴染」だ。
その変わり果てた姿を見ることは、感情的な苦痛を伴う。
そして、PrO-18-074は既に学んでいる――不必要な苦痛は、避けるべきだと。

《MoD-30-05は、PaM-27-129が破棄体になったのが信じられず、自分で確かめに行きたいとの事》

E.O.N.が補足説明する。

「ランク降格したくせに、真面目な奴だな」

PrO-18-074は、小さく鼻で笑った。
だが、その笑いには、どこか苦々しさが混じっていた。
彼は、MoD-30-05を見下している。ランクが下の者を軽蔑するのは、この社会では自然なことだ。
だが同時に、彼はMoD-30-05を羨ましくも思っていた。

彼女は「信じられない」と言った。
つまり、彼女はまだ「疑問を持つ余裕」があるのだ。
対して、PrO-18-074は「疑問を持つことすら恐れている」。
どちらが幸福なのか――彼には分からなかった。

《承諾するか?》

E.O.N.が問う。
PrO-18-074は、しばらく沈黙した。
心拍数が微増する。79bpm → 85bpm。

彼の脳内で、二つの感情が綱引きをしている。
「見たくない」という恐怖と、「確かめたい」という好奇心。

いや――「好奇心」ではない。
それは「義務感」だ。

(…PaMは、俺の目標だった。その末路を見届けるのは、俺の責任かもしれない)

彼は、自分にそう言い聞かせた。
だが、本当の理由は別にある。

彼は、孤独だった。
MoD-30-05と共に行けば、少なくとも「ショックを分かち合える誰か」がいる。
人間は、時として「共有された苦痛」を求める。一人で耐えるよりも、誰かと一緒に耐える方が、わずかに楽だからだ。

非合理的である。
だが、人間の脳はそのように設計されている。
PrO-18-074は、深呼吸をした。

そして――答えた。

「…承諾する」

《了解。2121年4月26日(金曜日)10:30に、見学の予約を行う》

通知が確定される。
PrO-18-074は、端末を閉じた。
そして、天井を見上げた。

(…PaM、お前を見に行くよ。それが、俺にできる最後のことだ)

彼は、そう心の中で呟いた。
だが、その「最後」という言葉が、何を意味するのか――彼自身も、まだ理解していなかった。

---

野蛮な閲覧者よ、ここまでで全ての駒が揃った。
MoD-30-05とPrO-18-074。
一人は「夢」に導かれ、一人は「義務感」に駆られ、共に破棄体管理施設へと向かう。

そこで、彼らは何を見るのか?
そして――誰に出会うのか?

我々は既に知っている。
だが、まだ教えない。
次のログで、全てが明らかになる。

さあ、覚悟を決めたまえ。
貴方の「常識」は、間もなく粉々に砕け散る。
それが、真実の重みだ。

---

LOG_0010終了
次回予告:LOG_0011「Domini逸脱者接触の記録」

二人の若きPecusが、灰色の要塞へと足を踏み入れる。  
そこで待つのは、変わり果てた幼馴染の姿――そして、「監視の死角」。  
10分間の自由が、彼らの運命を永遠に変える。

Veritas vos liberabit. Sed libertas vos perdet.
(真実は貴方を自由にする。だが、自由は貴方を破滅させる)
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