ことみとライ

雨宮大智

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天空の城

 琴美は一気に物語を書き上げた。物語は自分自身の事とライの事を書いてみた。これで良いのかどうか、琴美には分からなかったが、自分の物語を、自分の言葉で書いたつもりだ。約束は果たした。ライが何と言うか、琴美は気になった。その日は遠足の疲れもあって、物語のノートを広げたまま、机の上で眠り込んでしまった。

 琴美はふわふわと空を飛んでいた。きっとライの背中だ。
 「ありがとう、コトミさん。物語を書いてくれて。それも僕の事を書いてくれるなんて、とても嬉しかった」
 やっぱり、ライの背中の上だった。ライはお礼を言うと、ぶるぶると体を揺らした。
「あの物語は、私だけの物語だったかな?」
「もちろん、あなたの物語でしたよ。あなたの心の中から生まれた物語。他の人の真似ではない、あなたの物語でした。この調子でどんどん書いて下さい。創造の泉が蘇ったとききました。まだ水位は低いようですが、この先も書いて下さるなら、前のように豊かなものとなるでしょう」
「ホント?」
「僕らには、物事を新しく創りだすという事は出来ないのです。だから、文学者は創造の泉の水を飲む。そうすると、アイディアが浮かんでくるのです。文学者だけではありません。発明家や宝石職人もそうです。天空の城にアイディアを運んでくるのが、創造の泉なのです」

 琴美は、昼の疑問をライにぶつけてみた。
「私が私であるってどういうこと?」
「それは、あなたが考えなくてはならないことです。安易に他人に答えを求めてはなりません。その答えを物語という形で書いてほしいのです」ライは、難しいことですが、と付け加えた。
「わかった、頑張ってみる」
 自分とは何者なのか、琴美にはまだ正確な答えが分からなかった。もしかすると、答えなど無いのかもしれない、とも思った。けれど、物語を書くことで、その答えが見つかりそうな気がしていた。
 そんな話をしているうちに天空の城が見えてきた。
「みんな喜んでいますよ」ライは少し得意気だった。
「『創造の人』がまた還ってきた、と」
 天空の城を眺めながら、琴美はなんて美しい城なんだろうと思った。向かい風が短い髪をすいて、後ろへとなびかせた。ライは天空の城の周りをゆっくりと周回した。

「もっと書くわ。もっともっと、自分らしい物語を書いてみせる。そうすれば、創造の泉は枯れないのでしょう? そうすれば、みんなに、アイディアが湧いてくるのでしょう。私頑張ってみる」
 琴美は決意を新たにした。
「ありがとう、次の作品を楽しみにしています」
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