ことみとライ

雨宮大智

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天空の城の王

 コトミは、白亜の城の中にいた。夢へと入ったのだと、コトミは自覚した。そこは、大広間で、おそらくは天空の城の中だと思った。大広間は幅が百メートルはあるかと思われた。その壁際に騎士とペガサスが居並んでいた。気づくと、コトミのすぐわきにライが屈んでいた。慌ててコトミも頭を下げた。前には、王冠をかぶった人物と並んで、きらびやかなドレスをまとった四十才位の女性が、大広間の一段高くなった椅子に腰かけていた。その前には、総大将のベルナルドと、もう一人立派な体格をした男性がいた。たぶん、副将ソレイユではないかと、コトミは思った。

「顔を見せてくれ。楽にして良いぞ。私はアンディ、この天空の城を治める王だ。隣にいるのが、我が妻で王妃のエビナスだ。総大将のベルナルドとは面識があるな。ベルナルドは私の息子だ。コトミ殿の活躍は、ベルナルドやライから聞いている。窮地を救ってくれて心より感謝いたす」
 コトミは、恐縮のあまり、ガチガチになっていた。
「もったいないお言葉、ありがとうございます」それだけ言うのがやっとだった。
「この度の戦いに勝てたのも、コトミ殿の活躍によるところが大きい。何か褒美を差し上げたいが、希望のものはあるか。宝石でも金でもよいのだぞ」アンディの言葉には威厳があった。
「いえ、何も欲しいものはございません。ただ、こちらの世界では見るもの、聞くもの全てが珍しく、出来ればこの国を旅する許可を与えてくださいませんか?」
「欲が無いな。まあ、よかろう。では、ライを護衛につける。それと、ひとつ頼みがある。」
「なんでございましょうか?」
「実はこの天空の城を一度地上に戻す事を今検討しているのだ。戦いの傷が深いものだからな。修復がしたい。できれば地上を旅し、城が地上に戻るのに適切な場所を探してはくれないか? もちろん、我々もさまざまな場所を探す。もし、コトミ殿が良ければの話ではあるのだが……」
「願ってもないお話にございます」

「コトミ様……」王妃のエビナスが口を開いた。
「あなた様の力は、物語を書くこと。その創造力で、適切な場所を創り出して欲しいのです」そして、副将ソレイユの側にいた女性に声をかけた。
「ティアラ、首飾りから一つターコイズを差し上げて」
 ティアラと呼ばれた美しい女性は、首から首飾りを外すと、ひとつ宝石を引き抜いた。王妃はそれを受け取ると、琴美の方へ、しずしずと歩いて来た。
「これをお持ちなさい。きっとあなたを幸運へと導いてくれるはずですよ。困ったときには、石に願ってみてください。きっと解決策を教えてくれると思いますよ」
 そう言いながら王妃エビナスは、美しい青色のターコイズを琴美の手の上に置いた。王妃の目は静かな森の湖のように澄み、何者も恐れないような強さがあった。

「ありがとうございます、王妃様。幸運のターコイズは、ありがたく頂戴いたします。それでは、『ライと一緒に城の修復に適した場所を探す物語』を書いてみます」
「ありがとう、コトミ様。天があなたに微笑みますように」にっこり笑った王妃の顔は、まるで女神さまの顔のようだった。
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