ことみとライ

雨宮大智

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『ペガサスのつばさ 3』

『ペガサスのつばさ 三』

 コトミとペガサスのライは、お城を修復するのに最適な場所を探して、旅にでました。コトミ達はまず、西の方面へ向かいました。どこまでも西へ飛んでいくと、海に行き着きました。海へ沈む夕陽は、この上なく美しいものでした。小さな波頭が、幾重にも夕陽を反射して輝きました。しかし、城の修復をするには、適した場所ではありませんでした。ふたりは次に南へと向かいました。南は気候が温暖で、木々もたくさん生い茂っておりました。見たこともない果実がなっていたので、おそるおそる食べてみました。この世の味とはおもえぬほどの美味でした。しかし、城の城壁等に使う石の、石切場がみつかりませんでした。ふたりは東へ向かいました。すると、良質の石切り場があり、森のある平原にたどり着きました。ここなら、大丈夫かもしれないと、ふたりは思いました。ライは場所を報告し、総大将のベルナルドを連れて来ました。ベルナルドは、この土地を気に入り、父の国王アンディにその旨を伝えました。
 城は、東の地にしばらくの間、すえられる事になりました。ふたりの旅は、目的を果たし、終わりを迎えようとしていました。



 そこまで書くと、コトミは泣き出した。嬉し涙だった。涙がノートの端をぬらした。悲しい涙でもあった。もう、ライたちと別れなければならない、そう直感したのだった。涙はとめどなくあふれてきた。塩辛い味がした。

「物語には、いつか終わりが来るものよ」どこかで聞いた声が心に響いた。ターコイズをくれた王妃エビナスの声ではなかろうか。また夢を見ているのだろうか。違う、これは現実の部屋だ。時計の針は六時を指していた。いつもの起床時間まで、あと三十分しかなかった。
「王妃様、私は物語を終わらせたくないのです。できれば、ずっと一緒にライと旅をしたい。天空の城の修復を見ていたい。でも、もう、書く内容がありません。書く時間もありません。むしろ、ずっと物語の中で暮らしたいと思う程なのです」コトミはまた泣きはじめた。
「現実に戻らなければなりません。忘れないでください、物語は常にあなたと一緒にあります。あなたの心の中に、いつまでもあるのです。物語の中で生きたいという気持ちもわかります。でもあなたには、現実の世界がある。物語が自由に変えられるように、あなたの現実も自由に変えることができるのですよ。すべては、あなたの考えひとつ、行動ひとつです。分かりますね」王妃エビナスは優しくさとした。
「……分かりません。私はライたちと、王妃様たちと、もっと冒険がしたいのです。このままでは、物語が終わってしまいます。私は物語の中で生きていきたい」琴美は涙が止まらなかった。

 王妃エビナスは続けた。
「あなたには、書く創造力があるではありませんか。物語はいつまでも終わることはありません。書く人がいる限り。そしてそれを読む人がいる限り。あなたは、自分の書いた物を誰かに見せた事がありますか?」
 コトミは首を横に振った。
「いいえ、王妃様。誰にも見せた事はありません。見せてはいけないと思って……」
「物語は完成した時に、他の人に見せる事が出来るようになるのですよ。そうなれば、物語の世界は力を持ちます。読んだ人の心に浸透していきます。世界はどんどん広がっていくのです。気の済むまで、お泣きなさい。別れは辛いものです。しかし、別れがなければ新しいはじまりは無いのですよ。新しい世界を見つけなさい。扉は何処にでもあります。あなたが、それを見つけて、開くのです。創造力という鍵で、扉を開けるのです。もう朝ごはんの時間ですよ。さあ、新しい扉を開けるのです。あなたには、変えるべき現実がある。それを忘れないで下さい。物語は常に一緒にいます」

 そこで、王妃エビナスの声は途切れた。
 コトミは、学校へ行く服に着替えた。そしてターコイズをポケットに忍ばせた。そして、部屋の扉をゆっくりと開いた。
 朝の太陽が部屋をくまなく照らした。ノートは机の上に広げたままだった。もう、机の引き出しの中の暗闇へ帰ることはなかった。
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