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変えるべき現実
「おはよう、コトミ」父さんが言った。その時、コトミは気付いた。
『私は誰かに書かれている!』
「ことみ」のイントネーションが違う。父さんはいつも「琴美」と呼ぶ。いま父さんは「コトミ」と私の事を呼んだ。私も物語の登場人物になっている? そんなことって……。王妃が言った「変えるべき現実」とはこの事なのだろうか?
「どうしたの、コトミ? 早く食べてね」
母さんのイントネーションも違う! コトミは冷静になろうと必死に努めた。
「いただきます」
朝食を済ますと、学校へ行く準備をして、すぐに出かけた。そうだ、ノートを持っていこう。麻紀ちゃんなら、何かわかるかもしれない。
「いってきます」
「いってらっしゃい、コトミ」
学校へ着くと、隣の席の麻紀はもうすでに来ていて、今日の予習をしていた。
「おはよう、コトミちゃん」
麻紀ちゃんまで……。
「おはよう、麻紀ちゃん。あのね、後で見てほしいものがあるんだ。放課後、ちょっと時間とれる?」
「大丈夫よ、コトミちゃん、顔がこわばっているよ、どうかしたの?」
「ううん、何でもないの」
「コトミちゃん、何か元気ないけど、大丈夫?」先生が心配そうに声をかけてきた。コトミは思わず涙ぐんだ。
「コトミちゃんのお父さんとお母さんに何かあったの? 本当に病気とかじゃないの?」
「大丈夫です。本当に」
「何かあったら、すぐ言ってね、コトミちゃん」
放課後、誰もいなくなった教室で、コトミは物語のノートをランドセルから取り出した。
「実はね、私、物語を書いているんだ」
「へぇ、すごいね。どれどれ、わたしに見せて」
麻紀はゆっくりと読んでいった。『ペガサスのつばさ』・『ペガサスのつばさ 2』・『天空の城とドラゴン』・『ペガサスのつばさ 3』……。
麻紀が読んでいる間、時間はカタツムリのように、のろのろと進んでいるかに思えた。 コトミはズボンのポケットに忍ばせたターコイズを握りしめた。
「あー、面白かった。どうしてこれ、途中で終わっているの。もっと続きを書けばいいのに。ねぇ、琴美ちゃん、どうして?」
えっ、と琴美は驚いた。イントネーションが元に戻っている。どうして……?
「面白いよ、これ。ねぇ、もっと続きを書いてよ、琴美ちゃん」
「ありがとう、麻紀ちゃん。もう少しで、完成なんだ。頑張って書いてみるね」嬉しくなって、コトミは満面の笑みを浮かべた。
「今日、帰ってから書くよ」
「じゃ、明日見せてね。約束よ、琴美ちゃん」
「わかった! 約束ね」
家に帰りつくと、母さんはもう仕事から帰って来ていて、玄関の掃除をしていた。
「お帰り、コトミ」
コトミはイントネーションが、朝のままだったのにはもう驚かなかった。
「あのね、見てもらいたいものがあるの」
「何? テスト?」
「違う、これなの」
コトミは物語のノートをランドセルから取り出した。
「読んでみて」
母さんは好奇心にかられたのか、物語のノートを読みだした。コトミはポケットのターコイズに指先を当てた。
「……へぇ、面白いじゃない、琴美」
コトミはほっとして、思わず息をもらした。
「でも中途半端はいけないわね。最後まで書いて無いじゃない。こういう物はね、全部書いてから人に見せるものなのよ。分かった、琴美」
「今度から、そうするね。ありがとう、母さん」
『私は誰かに書かれている!』
「ことみ」のイントネーションが違う。父さんはいつも「琴美」と呼ぶ。いま父さんは「コトミ」と私の事を呼んだ。私も物語の登場人物になっている? そんなことって……。王妃が言った「変えるべき現実」とはこの事なのだろうか?
「どうしたの、コトミ? 早く食べてね」
母さんのイントネーションも違う! コトミは冷静になろうと必死に努めた。
「いただきます」
朝食を済ますと、学校へ行く準備をして、すぐに出かけた。そうだ、ノートを持っていこう。麻紀ちゃんなら、何かわかるかもしれない。
「いってきます」
「いってらっしゃい、コトミ」
学校へ着くと、隣の席の麻紀はもうすでに来ていて、今日の予習をしていた。
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麻紀ちゃんまで……。
「おはよう、麻紀ちゃん。あのね、後で見てほしいものがあるんだ。放課後、ちょっと時間とれる?」
「大丈夫よ、コトミちゃん、顔がこわばっているよ、どうかしたの?」
「ううん、何でもないの」
「コトミちゃん、何か元気ないけど、大丈夫?」先生が心配そうに声をかけてきた。コトミは思わず涙ぐんだ。
「コトミちゃんのお父さんとお母さんに何かあったの? 本当に病気とかじゃないの?」
「大丈夫です。本当に」
「何かあったら、すぐ言ってね、コトミちゃん」
放課後、誰もいなくなった教室で、コトミは物語のノートをランドセルから取り出した。
「実はね、私、物語を書いているんだ」
「へぇ、すごいね。どれどれ、わたしに見せて」
麻紀はゆっくりと読んでいった。『ペガサスのつばさ』・『ペガサスのつばさ 2』・『天空の城とドラゴン』・『ペガサスのつばさ 3』……。
麻紀が読んでいる間、時間はカタツムリのように、のろのろと進んでいるかに思えた。 コトミはズボンのポケットに忍ばせたターコイズを握りしめた。
「あー、面白かった。どうしてこれ、途中で終わっているの。もっと続きを書けばいいのに。ねぇ、琴美ちゃん、どうして?」
えっ、と琴美は驚いた。イントネーションが元に戻っている。どうして……?
「面白いよ、これ。ねぇ、もっと続きを書いてよ、琴美ちゃん」
「ありがとう、麻紀ちゃん。もう少しで、完成なんだ。頑張って書いてみるね」嬉しくなって、コトミは満面の笑みを浮かべた。
「今日、帰ってから書くよ」
「じゃ、明日見せてね。約束よ、琴美ちゃん」
「わかった! 約束ね」
家に帰りつくと、母さんはもう仕事から帰って来ていて、玄関の掃除をしていた。
「お帰り、コトミ」
コトミはイントネーションが、朝のままだったのにはもう驚かなかった。
「あのね、見てもらいたいものがあるの」
「何? テスト?」
「違う、これなの」
コトミは物語のノートをランドセルから取り出した。
「読んでみて」
母さんは好奇心にかられたのか、物語のノートを読みだした。コトミはポケットのターコイズに指先を当てた。
「……へぇ、面白いじゃない、琴美」
コトミはほっとして、思わず息をもらした。
「でも中途半端はいけないわね。最後まで書いて無いじゃない。こういう物はね、全部書いてから人に見せるものなのよ。分かった、琴美」
「今度から、そうするね。ありがとう、母さん」
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