16 / 16
物語のおわり
部屋に入るとすぐ、コトミは続きを書きはじめた。
『ペガサスのつばさ 四』
天空の城は、琴美たちの見つけた場所に降り立ちました。そこで修復を行うのです。琴美とライは役目を終え、また大広間に呼ばれました。
ふたりがかしこまっていると、国王アンディと王妃エビナスが入ってきました。
「面をあげよ」
「はい」
「良く素晴らしい場所を見つけてくれた。ここなら石切り場も近いし、森もある。木造の修理に使う材木やレンガを焼くための木もとれる。それになにより景色が良く、空気が清浄だ。礼をいうぞ」
「良く見つけてくれました、琴美様、そしてライ。特に琴美様は、辛いなか良くがんばりましたね。礼を言います。本当にありがとう」
「復旧の作業の指揮は、私にお任せあれ」ベルナルドが言いました。
半年ほどして、城は完全に復旧しました。明日いよいよ飛び立つという夜、祝いのパーティが催されました。琴美とライも招待されました。
琴美は、着慣れないドレスをまといました。
「ライ、似合っている?」
「すごく似合っているよ、琴美」
この数カ月で、琴美は大きく成長しました。冒険の物語を書くことが、琴美を飛躍的に成長させてくれたのです。
いよいよ、パーティの夜がやってきました。大勢の騎士たちや淑女たちが、着飾って参加していました。楽団の音楽が流れる中、パーティは進みました。
パーティの中で、王妃エビナスが琴美のもとに近づいてきました。素晴らしい装飾品を身に着けていましたが、王妃エビナスはその心の方が美しく、また賢い人であると、琴美には分かっていました。
「そのドレス、とても良くお似合いですよ、琴美様」
「ありがとうございます。王妃様もすごく素敵です。けれど、もっと大事なものがあると、王妃様が教えてくれました。知恵と心です」
「ありがとう。現実の世界はどうですか?元に戻りましたか?」王妃は心配そうにたずねた。
「多くの『創造の人』は、現実に還れなくなってしまうことが良くあるのです。この物語の世界の方が、居心地が良くなってしまって……」
「大丈夫です。ちゃんと帰るとおもいます。秘密が分かりました」
「よく気がつきましたね。秘密は名前にあるのです。あなたが、本当の名前を使う時、ここへはいつでも来ることができ、そして還ることができます。しかし、偽物の名前を使っていると、帰れなくなるのです」
王妃との話が終わり、一人になると、ライが話しかけてきた。
「琴美、今までありがとう。辛いけれども、一度、お別れをしなくてはならない。もし何かあったら、また夢枕に立つよ。本当にありがとう!」
「ううん、ライ、お礼を言わなくてはならないのは、私の方よ。私を呼んでくれてありがとう。私、自分の進むべき道が見えた気がするの。本当に、本当にありがとう。さようなら」琴美はうっすらと涙を浮かべて言った。
パーティは朝まで続いた。次の日、城は天空へと、昇って行った。今はもうどこにあるのか分からない。そう、ガイド役のライがいなければ。琴美は、今でも思う。あれは夢だったんじゃないだろうか、と。しかし、空色のターコイズが、手元にある限り、決してライを、王妃を、そして物語の全てを忘れることはないだろう。
天空の城は、今日もどこかを漂っているに違いない。
(おしまい)
やっと書き上げた。もう夕食時だ。父さんも帰ってきているに違いない。さあ、現実の世界に戻ろう。また、いつでも遊びにいける。そう、ちゃんと帰り方さえ知っていれば。
「おおい、琴美ご飯だぞ」一階から父さんの声が聞こえた。琴美はにっこりすると、大きな声で返事をした。
「はーい、今行きます!」琴美は下へと降りて行った。現実に戻るために。
開け放たれた窓から、風が入り込み、物語のノートをパラパラとめくった。真っ白な新しいページが、開かれた。それは、琴美の新しい物語のはじまりを象徴するかのようだった。
(結)
『ペガサスのつばさ 四』
天空の城は、琴美たちの見つけた場所に降り立ちました。そこで修復を行うのです。琴美とライは役目を終え、また大広間に呼ばれました。
ふたりがかしこまっていると、国王アンディと王妃エビナスが入ってきました。
「面をあげよ」
「はい」
「良く素晴らしい場所を見つけてくれた。ここなら石切り場も近いし、森もある。木造の修理に使う材木やレンガを焼くための木もとれる。それになにより景色が良く、空気が清浄だ。礼をいうぞ」
「良く見つけてくれました、琴美様、そしてライ。特に琴美様は、辛いなか良くがんばりましたね。礼を言います。本当にありがとう」
「復旧の作業の指揮は、私にお任せあれ」ベルナルドが言いました。
半年ほどして、城は完全に復旧しました。明日いよいよ飛び立つという夜、祝いのパーティが催されました。琴美とライも招待されました。
琴美は、着慣れないドレスをまといました。
「ライ、似合っている?」
「すごく似合っているよ、琴美」
この数カ月で、琴美は大きく成長しました。冒険の物語を書くことが、琴美を飛躍的に成長させてくれたのです。
いよいよ、パーティの夜がやってきました。大勢の騎士たちや淑女たちが、着飾って参加していました。楽団の音楽が流れる中、パーティは進みました。
パーティの中で、王妃エビナスが琴美のもとに近づいてきました。素晴らしい装飾品を身に着けていましたが、王妃エビナスはその心の方が美しく、また賢い人であると、琴美には分かっていました。
「そのドレス、とても良くお似合いですよ、琴美様」
「ありがとうございます。王妃様もすごく素敵です。けれど、もっと大事なものがあると、王妃様が教えてくれました。知恵と心です」
「ありがとう。現実の世界はどうですか?元に戻りましたか?」王妃は心配そうにたずねた。
「多くの『創造の人』は、現実に還れなくなってしまうことが良くあるのです。この物語の世界の方が、居心地が良くなってしまって……」
「大丈夫です。ちゃんと帰るとおもいます。秘密が分かりました」
「よく気がつきましたね。秘密は名前にあるのです。あなたが、本当の名前を使う時、ここへはいつでも来ることができ、そして還ることができます。しかし、偽物の名前を使っていると、帰れなくなるのです」
王妃との話が終わり、一人になると、ライが話しかけてきた。
「琴美、今までありがとう。辛いけれども、一度、お別れをしなくてはならない。もし何かあったら、また夢枕に立つよ。本当にありがとう!」
「ううん、ライ、お礼を言わなくてはならないのは、私の方よ。私を呼んでくれてありがとう。私、自分の進むべき道が見えた気がするの。本当に、本当にありがとう。さようなら」琴美はうっすらと涙を浮かべて言った。
パーティは朝まで続いた。次の日、城は天空へと、昇って行った。今はもうどこにあるのか分からない。そう、ガイド役のライがいなければ。琴美は、今でも思う。あれは夢だったんじゃないだろうか、と。しかし、空色のターコイズが、手元にある限り、決してライを、王妃を、そして物語の全てを忘れることはないだろう。
天空の城は、今日もどこかを漂っているに違いない。
(おしまい)
やっと書き上げた。もう夕食時だ。父さんも帰ってきているに違いない。さあ、現実の世界に戻ろう。また、いつでも遊びにいける。そう、ちゃんと帰り方さえ知っていれば。
「おおい、琴美ご飯だぞ」一階から父さんの声が聞こえた。琴美はにっこりすると、大きな声で返事をした。
「はーい、今行きます!」琴美は下へと降りて行った。現実に戻るために。
開け放たれた窓から、風が入り込み、物語のノートをパラパラとめくった。真っ白な新しいページが、開かれた。それは、琴美の新しい物語のはじまりを象徴するかのようだった。
(結)
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
オバケの謎解きスタンプラリー
綾森れん
児童書・童話
第3回きずな児童書大賞 奨励賞をいただきました! ありがとうございます!
――七不思議を順番にめぐると、最後の不思議「大階段踊り場の鏡」に知らない自分の姿が映るんだって。
小学六年生の結菜(ユイナ)が通う三日月(みかづき)小学校では、そんな噂がささやかれていた。
結菜は難関中学に合格するため、塾の夏期講習に通って勉強に励んでいる。
だが一方で、自分の将来にひそかな期待と不安をいだいてもいた。
知らない自分を知りたい結菜は、家族が留守にする夏休みのある夜、幼なじみの夏希(ナツキ)とともに七不思議めぐりを決意する。
苦労して夜の学校に忍び込んだ二人だが、出会うのは個性豊かなオバケたちばかり。
いまいち不真面目な二宮金次郎のブロンズ像から、二人はスタンプラリーの台紙を渡され、ルールを説明される。
「七不思議の謎を解けばスタンプがもらえる。順番に六つスタンプを集めて大階段の鏡のところへ持って行くと、君の知らない君自身が映し出されるんだ」
結菜と夏希はオバケたちの謎を解いて、スタンプを集められるのか?
そして大階段の鏡は二人に何を教えてくれるのか?
思春期に足を踏み入れたばかりの少女が、心の奥底に秘めた想いに気付いてゆく物語です。
緑色の友達
石河 翠
児童書・童話
むかしむかしあるところに、大きな森に囲まれた小さな村がありました。そこに住む女の子ララは、祭りの前日に不思議な男の子に出会います。ところが男の子にはある秘密があったのです……。
こちらは小説家になろうにも投稿しております。
表紙は、貴様 二太郎様に描いて頂きました。
【完結】またたく星空の下
mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】
※こちらはweb版(改稿前)です※
※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※
◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇
主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。
クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。
そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。
シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。
【奨励賞】氷の王子は、私のスイーツでしか笑わない――魔法学園と恋のレシピ【完結】
旅する書斎(☆ほしい)
児童書・童話
【第3回きずな児童書大賞で奨励賞をいただきました】
魔法が学べる学園の「製菓科」で、お菓子づくりに夢中な少女・いちご。周囲からは“落ちこぼれ”扱いだけど、彼女には「食べた人を幸せにする」魔法菓子の力があった。
ある日、彼女は冷たく孤高な“氷の王子”レオンの秘密を知る。彼は誰にも言えない魔力不全に悩んでいた――。
「私のお菓子で、彼を笑顔にしたい!」
不器用だけど優しい彼の心を溶かすため、特別な魔法スイーツ作りが始まる。
甘くて切ない、学園魔法ラブストーリー!
一人芝居
志波 連
児童書・童話
母と二人で暮らす小春は、ひとりで頑張る母親に反抗的な態度をとってしまう自分が大嫌いでした。
その苛立ちのせいで、友人ともぎくしゃくしてしまいます。
今日こそはお母さんにも友達にちゃんと謝ろうと決心した小春は、ふと気になって会館のある神社を訪れます。
小春たちが練習している演劇を発表する舞台となるその会館は、ずっとずっと昔に、この地域を治めた大名のお城があった場所でした。
非業の死を遂げた城主の娘である七緒の執念が、四百年という時を越えて小春を取り込もうとします。
小春は無事に逃げられるのでしょうか。
死してなお捨てきれない七緒の思いは成就するのでしょうか。
小さな町の小さな神社で起こった奇跡のようなお話しです。
他のサイトでも投稿しています
表紙は写真ACより引用しました