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幼少期編
24 婚約パーティーの前に
しおりを挟む今日は姉の婚約パーティーの日。ちょうど王家とデルヴィーニュ公爵家で顔合わせが終わったところ。まあ、王家はこの前全員紹介した通り。
「デルヴィーニュ公爵令嬢のご準備が整いました」
王家の執事が伝えたら母と王妃様が勢いよく立って姉がどんな風になったか話し合いながらきゃあきゃあ言いながら姉の控え室に向かって行った。それにつられたように父と王様もケイレブ殿下の様子を見に行った。残されたのは兄と僕、バージル殿下とサラ殿下、カミール殿下だ。ソファーに向かい合って気まずい沈黙が流れる。
(兄様、どうしましょう……)
目線で訴えると兄は少し肩をかすめて紅茶を飲む。ああ、気を使わなくていいのか。兄が堂々としてるとかなり安心できる。
「……仲が良いのだな」
兄の方を向いて笑ってたら急に話しかけられてびっくりした。
「ありがとうございます」
そう応えて紅茶を飲んでる。兄のその余裕はどこから来るんだろう?
年下にサラッとかわされたバージル殿下は少し面を食らったような表情をしてから兄を興味深そうに見る。なんか不躾というかもやもやする視線。
(僕の兄様だぞ!)
兄にぎゅっと抱きついてバージル殿下をキッと睨む。
「……リラン」
兄が小さく僕を呼んだので顔を上げると何かに耐えているような儚げな顔の兄がいた。
(綺麗……)
思わず見惚れてしまった。
「へぇ、なるほどなぁ」
とバージル殿下の声で見つめ合っていた僕たちは視線をバージル殿下に向ける。兄を見てニヤニヤしてるバージル殿下は王様と全く雰囲気が違う。叔父さんがショタを見てるようなそんな感じ。かなり気持ち悪い……
「アホらしい。お兄様方、私は自室に戻っております」
呆れた声でそう告げるとサラ殿下はサッサと出て行った。高飛車だなぁって思う。まだよく知らないからいい子かも知れないけど。そんな感じでサラ殿下が出て行ったドアの方を見ているとカミール殿下と目が合った。ん?と首をかしげるとすぐに顔を逸らされたけど…別にいいけど、ちょっと傷つくよ?
「えーっと、レイナードだっけ?2人で話さないか?」
再びバージル殿下に視線を戻す。下心丸出し。兄の貞操が心配になるレベルだよ、これ。兄抱きついている力を強めるとバージル殿下がこっちを見る。背中に悪寒がして鳥肌が立つ。すごく不快そうな顔。
(怖い……)
蛇に睨まれている蛙ってこんな気分なのかな……じっと見ていると急にバージル殿下が後ろの壁まで吹っ飛んだ。凄い音がしだけど奥に控えている使用人たちは来ない。
兄の手が抱きついている僕の手を優しく解く。パッと顔を見るとバージル殿下をすごく冷たい目で見据えてる。僕の方を見ないあたりがなんか怖い。バージル殿下とは種類が違うけど圧倒的にこっちの方が怖い。王子達の方を見るとバージル殿下は目を見開いて額に汗を浮かせてる。カミール殿下は………
(え?なんで僕の方凝視してるの?この状態で…)
僕が見ているのに気づいて顔を赤くして俯いた。
(意味がわかんない……なんなの?)
「僕の可愛い弟を怖がらせないでくれるかな、第1王子」
ドスのきいた低い声で兄が静かに言う。ポカーンとしていたバージル殿下はハッと我に返って、
「いや、お前こそわかってるのか?この俺に手を出したんだぞ。タダで済むと思ってるのか?」
「王子の1人や2人、闇に葬り去る方法などいくらでもある」
そう言うと兄はバージル殿下とカミール殿下を交互に見る。カミール殿下はさっきまで赤かった顔が一瞬で青くなった。
「ふ、不敬だぞ、お前!」
「僕の可愛い可愛い弟を威圧したお前の方が不敬だと思うけど」
………
(ん?に、にいさま?)
「…な、お……ただでは済まさないぞ?」
バージル殿下が立ち上がろうとすると上から押さえつけられるように90度のお辞儀をしているみたいになった。
さっきの兄の言葉で今だに混乱している僕を兄はヒョイっと抱き上げた。
「僕に勝てるのは父上だけだ」
そう言うと、そのままドアの取っ手を掴んで部屋を出る。ドアが閉まる直前までバージル殿下はお辞儀したままだった。
なんかよくわかんないけど、兄がかっこよかった。でも本当に大丈夫なのだろうか?
「そんな顔しなくていいよ。そのうち廃嫡させるから」
兄の笑顔ってこんなに黒くなるんだな。でもカッコいい。兄は兄だな。
ん?ちょっと待って。顔合わせからなんでこんなことになったの?これから婚約パーティーなのに大丈夫かな?
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