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2 男と女の泣き声
しおりを挟む勿論、自分がおかしな事をしてるとは、これっぽっちも思っていない旦那を病院に連れて行く事は困難だった
警官には病院に連れて行くと約束したにも関わらず私は、旦那を病院には連れて行かなかった
旦那はコンビニと洋服屋を辞めてから自分の実家の仕事をしていた。レザーの輸出入の仕事だ。私達の自宅のN橋と実家のある墨田区に有る実家を車で通勤していた
旦那の徘徊は止まなかった
相変わらず、ウチに帰って来るなり、ビルを徘徊しては『謎の誰か』を探し回る日々
警察も相手にしてくれなくなり旦那も苛立っていた
そんなある日、徘徊中の旦那から私は呼び出された
今度はビルの各階に付いているトイレの3階部分のトイレの中に『謎の誰か』を閉じ込めたと言うではないか
私は歩夢を寝かし付けて3階のトイレの前まで連れて行かれた
旦那は突っ張り棒を持っていて「あいつらここに閉じ込めたから、これでドアを押さえておけ」と私に命令した
あいつらと言ったのも、いつの間にか旦那が見えていたのは男と女の2人になっていたからだ
そう言い残すと旦那は車を駐車場に停めに行ってしまった
私はそのビルに1人取り残される事になり恐怖が押し寄せて来た
私は必死に突っ張り棒でトイレのドアを押さえながら中に向かって
「誰か居ますか?!居るなら出て来て下さい!」
と、叫んでいた
が、勿論何の返答も無い
私は恐る恐るドアを開けて中を覗いて見た
ー誰も居ないー
旦那が見えていると言う男と女とは一体何者なんだ!
私は怒りすら込み上げて来た
はたから見たらおかしな事だが私は至って本気だった
車を駐車場に停めて来た旦那が戻って来た
「誰も居ないよ」
と、私が言うと
「チッ」
と、いつもは優しい旦那だが、この事に関しては旦那は不機嫌になって舌打ちしてはまた徘徊が始まる
私は部屋に戻りベッドでスヤスヤ寝て居る歩夢の隣に行き眠りに着いた
その内、旦那の行動の、ある傾向に気付いた
それは、一晩中ビルを徘徊しては明朝、必ず決まって「6時」に戻ってくる、と言う事だった
徘徊終了時間は、見事に6時だったのだ
私はしばしばビル内に呼び出されては『謎の誰か』の存在を、旦那に必死に叩き込まれた
今思えば可愛そうな事をしたな、と思うがいよいよ私まで旦那の言う事に呆れ出してしまい、ある意味旦那を放置するようになった
それでも、旦那は1人でビルの中を探し回っていた
リビングに戻って来ては私に
「2階の部屋で男と女が泣いている。行って確かめて来い」
と言うので、私はそんな事は無いと証明する為に一緒に2階まで行き、その部屋の前に行った
「なっ、聞こえるだろ?」
「聞こえ無いよ」
「そんなはずはねぇー」
「何も聞こえ無いって、聞こえ無いよ、パパ、しっかりしてよ!」
「チッ」
旦那はその度に不機嫌になった
旦那は、朝6時に帰って来ては11時位迄寝て、それから仕事に行っていたので旦那のお父様から「孝太郎はどうしたんだ!早く出勤させてくれ!」と私が怒られた
私は、旦那がおかしな行動をする事をお父様に話たがお父様は受け入れてくれなかった
その夜も、旦那が帰って来るなり飛び出した
もう、すっかり日常化していたその行動に私も余り驚かなくなっていた
しかし私は一連の出来事と旦那のお父様の対応の板挟みになっていたので、自分の両親にその事を相談しようとウチへ両親を呼んだ
旦那はビルを徘徊中で家には居なかった
両親がウチに来て、相談しようとした時、母親が
「今、階段から男の人と女の人が降りて来たわよ」
と言った
「えーーー!!お母さん!本当!?」
「ええ。こんな時間に誰だろう?と思って。ビルの人なの?」
母親が続けたので、私は身震いした
「ち、違うと思うよ。そんな人達、このビルには居ないもん!どんな人達だった?」
「ちょっと年配の人だったわよ。でも顔ははっきり覚えて無いけど…」
「そう……」
私は、やっぱり、旦那には『何か』が見えているのだ、と疑りから確信に変わった瞬間だった
私は両親に今まで旦那の行動を相談すると両親も、なすすべも無く帰って行った
その朝、いつものように私が6時に起きると旦那が6時に帰って来た
今日は、やけに機嫌が良い
どうしたのか?と思っていると
「あいつら、ウチのビルから出て来てタクシーに乗ったから車で尾行したんだよ。でも、途中で見失っちゃった。もう少しだったのに」
旦那はとても悔しそうにそう言った
私は、旦那の話には信憑性がないなと思いつつも、昨日の母親の言葉が忘れられなかった
階段を降りて来て、ビルを出てタクシーに乗ったというのは、何となく辻褄が合う
旦那の話は本当なのかもしれない。私は旦那の話を信じてあげたいと言う気持ちになって来た
そして、また夜が訪れる
その日は旦那が私に
「お願いだから、警察に付き合ってくれ。本当に本当にこれで最後にするから。なっ。あいつら尾行した事言うんだ。お願いだよ」
いつになく、低姿勢でしつこく言って来た
私は、渋々承諾して寝て居る歩夢を起こさないように抱き上げて車に乗り込んだ
向かった先は、中央警察署だった
窓口に行くと旦那が息せき切って話始めた。私は寝て居る歩夢を抱いて長椅子に座っていた
旦那の事は、中央区内の警察では話題になっていたらしく、軽くあしらわれた様子だった
旦那がガックリして私の所に来た
やっぱり、誰も旦那の話は信用してくれず警察署を後にした。車の中で旦那が「後、1軒、違う警察行こう」と言うので、私は必死にそれを食い止めて、家路に着いた
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