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第二章 エウクラトア聖王国
39話 助けてくれたのは
しおりを挟む――レイナード視点
捕らわれてから何日が経っただろうか……?もうぼんやりとしている。カーソン大司教が来る時は必死に虚勢を張っているけど、誰も教皇派がいない時は何もする気力がなくぼんやりと過ごしていた。
精霊達もずっと寝ている。もう限界なのだろうと思っている。僕も限界だ……。
そんな時、ふとキーラがいないことに気づいた。
キーラはどこに行ったのだろう……?逃げたのかな……?良かった……。キーラだけでもここから出られたのなら良かった……。
再び目を閉じて眠ろうとした時、誰か来たのが分かった。重たい瞼を無理やり上げ、力強い自分を演じる。
いつもと同じようにやって来たのはカーソン大司教。もう、僕から奪える力などあまりないというのに……。
僕はいつもと同じようにカーソン大司教を睨む。僕の目を見たカーソン大司教も忌々しく睨みつけながら言う。
「其方の力を奪う。 もう、悪あがきはよせ」
「ふんっ! お前達の好き勝手はさせない! 俺の力をいくら取ろうとも俺は足掻き続けるっ!!」
そうは言ったけど、もう足掻く程の力は残ってない……。だけど、言わずにはいられなかった。
「そんなに弱っておいてまだそんな口を利くのか! お前がすんなりと精霊達の力を渡せばこんなに苦労しないというのに……!!」
精霊達の力をすんなりと渡す馬鹿がどこに存在するのか!それにもう精霊達の力も奪っているだろうに実感がないのか?カーソン大司教の言動に疑問に思うけど、その間にも僕はあっさりと拘束魔法に縛られてまた水晶の方へと連れて行かれる。
どこかで思っていた。今回力を奪われたらもう僕は……と。
水晶がいつも通りに怪しく光始める。僕の死のカウントダウンが始まったようでもあった。
ああ、僕はこれで死ぬかと思った瞬間に驚くべきことが起こった。
あともう少しで水晶に力を吸収される距離になろうとした時、突然カーソン大司教がどさりっ……と倒れたのだ。
そして、僕を拘束していた魔法も解けた。
突然の出来事にポカンとする頭。一体何があったのだろうか……?そんなことを思っていると……。
「レイナードーーーー!!」
何処からかキーラの声が聞こえて来た。
「えっ……? キーラ?」
辺りを見てもキーラの姿など見えない。これは幻聴が聞こえてくるようになってしまったのかと思った。
だけど、それは幻聴ではなく本物のキーラの声だった。突然現れたキーラに驚きつつも嬉しさが募る。
「キーラっ!!」
「レイナードっ!! 大丈夫?! 大丈夫?!」
すごく心配するキーラ。僕の周りをパタパタと飛び回る。
大丈夫と言いたいけど……。
「だ……大丈夫……、って言いたいけど、ちょっと、きついかな……」
僕の答えにキーラは今にも泣きそうだった。
「レイナードっ!! 僕っ、僕の力をっ!!」
そう言うとキーラの体が淡く光り始める。すると、呼応する様に僕の体も淡く光り始める。
これはアレノやフメリも僕に力を分け与えてくれる時になる状態。これではまたキーラもアレノとフメリのようになってしまう……!
「キーラ! またそんなに僕に力を渡したら……!!」
キーラは僕が止めるのを聞かず、そのまま続けてやめない。
お願いだ……!キーラまでアレノとフメリのようになってしまっては……。
僕はまたキーラにやめさせるために言おうとした時。
「キーラ。 そんなに力を使ってはまたあの時の様になるよ……。 何のために私が一緒に来たと思うの??」
キーラのことを優しく両手で包み込む女性。突然現れたその女性はとても、とても美しくこの世のものとは思えない程に美しかった。
僕は一瞬時が止まったかのように見惚れてしまった。
キーラに優しく言うその女性はまさに女神様のようだった。
「アマネ様っ!! レイナードのことを助けてくださいっ!!」
「安心して、キーラ」
キーラに優しく微笑むとそのまま僕の方へと視線が向き、目が合う。ドクンと大きく胸がなった。
すると、僕のことを優しい光が包み込む。
優しい光が包み込んだ瞬間に今まで力が入らなかった体が、瞬く間に回復していく。
僕はこの奇跡のような出来事にまた固まってしまった。すると、キーラが心配そうに僕に聞いてくる。
「レイナード! どう……? 大丈夫??」
キーラの言葉にハッとする。そして僕は、自分の体を確かめるように見る。
「辛くない……。 力も戻っている感じ……」
――それからは驚く奇跡がいっぱい降り注いできた。僕同様にアレノとフメリのことを回復してくれたアマネ様。本当はお姿を隠していたいであろうに精霊達のためにすぐさま本来の姿になって回復魔法をかけて下さった。
お陰でアレノとフメリも助かり、他の捕らわれていた子供達もあっという間に助けてくれた。
ただ、アレノとフメリを助ける前の僕の悪態はやり直せるならやり直したい……。
本当、アマネ様には申し訳なかった……。あの後改めて謝ったけどアマネ様は『気にしてないから大丈夫!むしろ精霊達を守ろうとした行動だから、精霊達のことを心から思っているって分かって安心したよ!』と言ってくれた。
本当に女神様のようだ。この世界に有名な女神様はいないけど、もし存在するならアマネ様が女神様だと僕は思う。
だから今度はこの女神様に恩返しが出来るように、それから隣にいれるように僕は努力しなければならない。
本来なら出会うことすら叶わない人だった……。
幸運にも僕は出会った。
この奇跡の出会いに感謝して、僕はこの気持ちを大切にすると決めた……。
ーーーーーーーーーーーー
おまけ
――神域のウーラノス視点
「えっ!? もうアマネに恋心抱いちゃった子がいる!? 早くない!? これは早急にアマネとのデートプランを考えなければ……!!」
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