煌めく氷のロマンシア

沖田弥子

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吹雪の一夜 2

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 とくりと、鼓動が熱を刻む。
 侍従だとか皇帝だとか、その身を縛る身分を取り払ってしまえば、後には愛しさだけが残る。
 アレクのものになりたい。
 抱いてほしい。
 純粋な欲が迫り上がる。
 こんな気持ちは初めてだった。誰かに対して肉欲を抱いたことなど今までになかった。自慰はしていたが、それもたまにというだけで、自分は淡泊だと思っていたのだ。
 吹雪に閉じ込められたふたりだけの空間は、濃密な香りが漂う。
 煌は押し込めていた想いを打ち明けた。

「僕はあなたのものです。抱いてください。どうかアレクの好きなように、触れてください」

 傍にある碧の眸は薄闇の中で、驚きに見開かれていた。
 けれどすぐに眇められ、その双眸には欲の色が浮かんでいる。
 突如、唇を塞がれた。むしゃぶりつくように獰猛に、初心な唇は食まれる。

「ん、ん……っ」

 強靱な肩に縋り、性急な口づけを必死に受け止めた。ぬるりと、歯列を割って濡れた舌が挿し入れられる。それはくまなく口腔をまさぐり、舌を搦め捕る。舌根を吸われ、柔らかい舌を堪能するように延々と絡められた。
 溢れる唾液が口端を伝う。
 普段は冷静なアレクから与えられる情熱的な口づけに、経験のない煌はついていけない。息が苦しくなり咳き込んでしまう。

「けほっ……、う……はぁっ、はぁ……」

 肩で息を継ぐ煌を、アレクは気遣わしげに覗き込む。互いの唇は銀糸で繫がれていた。その煽情的な光景に体の奥が、ぞくりと粟立つ。

「息を止めるな。鼻で息をするんだ」
「あ……なるほど」
「もしかして、初めてか?」

 こくりと頷く。恋人もいなかったので、接吻すらしたことがない。三十番目の王子となれば恋愛は自由だが、心惹かれる人に出会ったのは幼い頃のアレクだけだ。

「僕が身を委ねたいと思えたのはアレクだけなんです。この年齢で経験がないなんて、おかしいでしょうか?」
「何もおかしくはない。そうか……私が初めてなのか。では、抱かれるということが具体的に何をされるのか、知っているか?」

 俯いて首を横に振る。抱いてくださいと言ったのは、抱きしめるという意味で使ったのではないが、具体的なことは分からなかった。完全に空回りだ。性的なことに興味もなく、友人もいなかったので、煌の性知識は王宮の講義で受けた閨房の作法のみである。

「性器を……その、くっつけるんですよね」

 未経験の体ではアレクを失望させてしまうだろうか。心細くなったが、アレクはとろりとした笑みを浮かべて、嬉しそうに双眸を細めていた。

「そのとおりだ。少しだけ、痛みを伴うかもしれない。こんなふうに」

 ちゅ、と首筋に口づけられて淡く吸われる。痛みのようなものは感じたが、ほんの僅かのことだ。

「痛くありません。平気です」
「では、これはどうかな」

 唇は鎖骨へ下り、平らな胸を辿っていく。啄むような口づけを与えられて、白い肌に花のような朱が散らされた。
 胸の尖りをきつく吸われ、背筋を駆け抜けた衝撃にびくりと体が跳ねる。

「んっ」
「いい反応だ。感じたら声を出すのだ。恥ずかしいことではない」
「……はい。……ん、ぅん……」

 吸ったあとに癒すように舌で舐め上げられ、またきつく吸われる。もう片方の胸の尖りも同じように愛撫された。初心な胸の飾りは淫猥に舐めしゃぶられ、唇からは鼻にかかったような喘ぎばかりが零れる。交互に幾度も繰り返されれば、ぞくりとした快感が背筋を這い上る。

「どちらも紅く淫らに色づいてきたな。もっと私の刻印を刻まなければならない」

 二の腕の内側や脇腹、内股にも唇を寄せられて、紅い痕を刻まれる。
 煌の体はまるで鳳凰木のように、朱の花弁が咲き誇った。

「あ、あ……アレク……」

 体中に接吻を受けて、じわりとした甘い疼きが下腹のあたりに広がる。花芯は触れられないうちから勃ち上がっていた。

「ここにも」
「ひあっ」

 じゅくり、と先端を吸い上げられて、滲んでいた蜜を吸い取られる。幹を伝い下りた淫靡な舌は、奥の蕾に辿り着いた。

「えっ⁉ そんな……」

 脚の間に体を割り込ませたアレクは、煌の両脚を抱えて大きく割り開く。そうすると秘められた箇所がすべて男の眼前に晒された。舌先で露わになった蕾を突かれれば、ひくりと花開いてしまう。
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