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第二章
許可証
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「ほらね、僕の言ったとおりでしょ? あいつ、こっそり返してくれたんだよ」
「そう……みたいね」
内包物に気づいた彼は、どう思っただろうか。ただの黒い点だと、思っていてほしい。そう願った。
饅頭をひとつ手にしたラークは、再び椅子に腰掛けた。ルウリの目の前に、ぽんと饅頭が置かれる。途端にパナは喉から唸り声を上げた。
「うええ、もう食べちゃったよ、遅いよ。ふたつも食べられないしー」
「誰が貴様に食えと言った、図々しい鳥め」
「はあ? 鳥に無駄な形容詞くっついたよね? 図々しいって褒め言葉だよね?」
「鳥は許容したのか」
「してないし! 僕のことはレアリティの高い鳥精霊さまと呼んでほしいし」
「無駄に長いな」
ふたりのやりとりに挟まれながら、ルウリは饅頭をぱくりとかじる。
パナのほうがよほどラークと会話が成立しているので、気が合うのかもしれない。微笑ましく応酬を見守りながら、ルウリは軽い食事を済ませた。
検問所の喧噪が収まったようなので、ふたりと一羽は茶屋をあとにした。
許可証のない星玉師たちは諦めて帰っていった。イディアにはジャイメール以外にも鉱山が点在している。その中には許可証の要らないところもあるらしい。けれどジャイメールほど大量の星玉が産出される鉱山は国広しといえどないと言われている。
ルウリは腰に提げた袋から許可証を取り出した。数年前に取得したもので、ルウリの名前と出身について表記されている。その隣に本人の指紋が押してある。
若い星玉師は珍しいが、才能だけで資格を取得したわけではなかった。かつて星玉師だった、ルウリの母から引き継がれたという経緯があった。
検問所の番兵が念入りに指紋を照合させる。
「はい、よろしい」
許可証を受け取り、後ろを振り返った。次はラークの番だ。
彼も許可証らしきカードを掲げて番兵に見せている。前のめりになってカードを凝視していた番兵と二言ほど会話すると、ラークは検問所をさらりと抜けた。
パナは頓狂な声を上げる。
「あれー? なんであいつ、指紋パスなの?」
ラークの背中を見送った番兵の視線には、畏怖と嫌悪が入り交じっていた。
こわいもの、いやなものを見る目つき。
「行くぞ」
質問を許さないというように、ラークは先立って山道を登り始める。
「ていうか、何で一緒に行くことになってんだよ」
「いいじゃない、パナ。みんなで行ったほうが楽しいし」
鉱山までは、ここから半日ほど急勾配の山道を登らなければならない。道に迷ったり崖から滑落する事故も多発するが、今回は大勢の星玉師たちが行き交っているので心配なさそうだ。
それにラークもいる。エルナ村の星玉師はルウリひとりなので、今まで仲間と呼べるような人は周りにいなかった。心強さに山登りする足も軽い。
「遊びじゃないだろ。ここに来ている全員がラクシュミ目当てなんだ。皆、他の奴らを出し抜こうと必死だ」
ラクシュミ、という言葉に顔を上げる。
今やイディア中の星玉師たちが、その単語に敏感に反応するはずだ。
「ラークも審査会に参加するのね」
「それはラクシュミを見てから決める」
数ヶ月前、イディア全域にカースト最高位のバラモンからお触れが出された。
伝説の星玉ラクシュミを解放させるとき、奇蹟が起きる。その奇蹟を起こすための星玉師を募集するというのだ。定期的に開催される審査会には星玉師たちが上質の星玉を持ち寄って技を披露したが、未だバラモンのお眼鏡に叶う者はいない。
バラモンに認められ、ラクシュミを解放できれば金銀財宝が与えられるという条件だが、肝心のラクシュミがどんな星玉で、内包物は何かなどの情報はない。
「順番が逆じゃない……? 審査会に合格してからラクシュミを見せてもらえるんでしょ?」
「そんなルール知るか」
「でも、審査会で披露するための星玉を探しにきたのよね?」
「おまえが探せばいい」
パナが肩で大仰な溜息を吐いた。
「何しにきたの、こいつ」
聞こえよがしの呟きは、ラークに黙殺される。
ルウリはどんな星玉に出会えるのか、鉱山を仰ぎ見ながら期待に胸を膨らませた。
鉱山に到着すると、至る所で星玉師たちが発掘作業を行っていた。掘り返された鉱山は深い穴になっており、絶壁と化している箇所もある。
「そう……みたいね」
内包物に気づいた彼は、どう思っただろうか。ただの黒い点だと、思っていてほしい。そう願った。
饅頭をひとつ手にしたラークは、再び椅子に腰掛けた。ルウリの目の前に、ぽんと饅頭が置かれる。途端にパナは喉から唸り声を上げた。
「うええ、もう食べちゃったよ、遅いよ。ふたつも食べられないしー」
「誰が貴様に食えと言った、図々しい鳥め」
「はあ? 鳥に無駄な形容詞くっついたよね? 図々しいって褒め言葉だよね?」
「鳥は許容したのか」
「してないし! 僕のことはレアリティの高い鳥精霊さまと呼んでほしいし」
「無駄に長いな」
ふたりのやりとりに挟まれながら、ルウリは饅頭をぱくりとかじる。
パナのほうがよほどラークと会話が成立しているので、気が合うのかもしれない。微笑ましく応酬を見守りながら、ルウリは軽い食事を済ませた。
検問所の喧噪が収まったようなので、ふたりと一羽は茶屋をあとにした。
許可証のない星玉師たちは諦めて帰っていった。イディアにはジャイメール以外にも鉱山が点在している。その中には許可証の要らないところもあるらしい。けれどジャイメールほど大量の星玉が産出される鉱山は国広しといえどないと言われている。
ルウリは腰に提げた袋から許可証を取り出した。数年前に取得したもので、ルウリの名前と出身について表記されている。その隣に本人の指紋が押してある。
若い星玉師は珍しいが、才能だけで資格を取得したわけではなかった。かつて星玉師だった、ルウリの母から引き継がれたという経緯があった。
検問所の番兵が念入りに指紋を照合させる。
「はい、よろしい」
許可証を受け取り、後ろを振り返った。次はラークの番だ。
彼も許可証らしきカードを掲げて番兵に見せている。前のめりになってカードを凝視していた番兵と二言ほど会話すると、ラークは検問所をさらりと抜けた。
パナは頓狂な声を上げる。
「あれー? なんであいつ、指紋パスなの?」
ラークの背中を見送った番兵の視線には、畏怖と嫌悪が入り交じっていた。
こわいもの、いやなものを見る目つき。
「行くぞ」
質問を許さないというように、ラークは先立って山道を登り始める。
「ていうか、何で一緒に行くことになってんだよ」
「いいじゃない、パナ。みんなで行ったほうが楽しいし」
鉱山までは、ここから半日ほど急勾配の山道を登らなければならない。道に迷ったり崖から滑落する事故も多発するが、今回は大勢の星玉師たちが行き交っているので心配なさそうだ。
それにラークもいる。エルナ村の星玉師はルウリひとりなので、今まで仲間と呼べるような人は周りにいなかった。心強さに山登りする足も軽い。
「遊びじゃないだろ。ここに来ている全員がラクシュミ目当てなんだ。皆、他の奴らを出し抜こうと必死だ」
ラクシュミ、という言葉に顔を上げる。
今やイディア中の星玉師たちが、その単語に敏感に反応するはずだ。
「ラークも審査会に参加するのね」
「それはラクシュミを見てから決める」
数ヶ月前、イディア全域にカースト最高位のバラモンからお触れが出された。
伝説の星玉ラクシュミを解放させるとき、奇蹟が起きる。その奇蹟を起こすための星玉師を募集するというのだ。定期的に開催される審査会には星玉師たちが上質の星玉を持ち寄って技を披露したが、未だバラモンのお眼鏡に叶う者はいない。
バラモンに認められ、ラクシュミを解放できれば金銀財宝が与えられるという条件だが、肝心のラクシュミがどんな星玉で、内包物は何かなどの情報はない。
「順番が逆じゃない……? 審査会に合格してからラクシュミを見せてもらえるんでしょ?」
「そんなルール知るか」
「でも、審査会で披露するための星玉を探しにきたのよね?」
「おまえが探せばいい」
パナが肩で大仰な溜息を吐いた。
「何しにきたの、こいつ」
聞こえよがしの呟きは、ラークに黙殺される。
ルウリはどんな星玉に出会えるのか、鉱山を仰ぎ見ながら期待に胸を膨らませた。
鉱山に到着すると、至る所で星玉師たちが発掘作業を行っていた。掘り返された鉱山は深い穴になっており、絶壁と化している箇所もある。
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