殺す男と涙女

月獅ムラマサ

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名のない少女とともに

俺が霧の中を彷徨うまで(序)

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俺は今、どこまで続くかもわからない霧の中を彷徨い続けている。視界が霧に遮られるようになってから既に1時間が経過していた。俺がなぜこんな場所で彷徨っているのか? それは3時間前まで遡る。





今日もいつものように依頼任務を達成するために拠点から少し離れた工業都市まで来ていた。工業都市はその名の通り工業が盛んな工場が集まってできた都市だ。ここは自分にとってとて戦いやすい構造の街なので、ここでの任務は意外と好きだりする。治安悪いけど。そもそも、治安が悪くなければこんな依頼が俺に来ないか。


ああ、言い忘れていたが俺は暗殺者だ。それも裏の世界では結構有名で世界最凶の暗殺者と言われている。もともと、父が世界最強の暗殺者と言われていてそれを受け継いだ形なのだが、なぜか俺は最凶と言われている。なんでだろう?

そういえば、父と一緒に任務をしていた頃よくみたのだが、父に暗殺された人は誰も苦しまず死んでいっていた。それに比べて俺はどうだろう?

うん、比べるまでもない。苦しませない努力をするどころか、心のどこかで相手が苦しむところを見るのを楽しんでいる節がある。
暗殺者としては全く問題ないのだが、人間としてはどうなのだろう。どこか大切な感情が抜けているように思える。それがなんなのかわからないが、とにかく俺はどこか人間として壊れているのだろう。


ちょっと話が長くなったが今は依頼を達成するための任務中だ。集中しなければ。




♢♦︎♢


今回の依頼はアメリカから直の依頼だ。日本の発明家宮下悠真を殺せという依頼だ。

宮下悠真は確か世界でも有数の発明家なはずだ。最近姿を現さないので研究室にこもって、また何か凄い発明をしているのではないかという噂だったが、そんな時にアメリカから依頼が来るということはどうやら噂は本当だったらしい。何かわからないが密かに作っていたものがアメリカにばれて、標的にされてしまったのだろう。推測でしかないが。

因みに、暗殺者は国規模だと中立だ。なので自分の母国の日本に不利益になることを外国から依頼されても普通に依頼は達成させることが常識だ。




♢♦︎♢


やっと着いた。

工場が立ち並ぶ都市の中央に立っているドーム型の建物。ここが今日の目的地日本中央研究所だ。標的宮下悠真はここの建物の中心にある自分の個人研究室にいるはずだ。今は丁度昼時。その自室でコーヒーでも飲みながらくつろいでいることだろう。毎日の奴の日課だからな。

ん?なぜそんなことを知ってるかって?

なめてもらっちゃ困る。俺は暗殺者だ。暗殺者にとって依頼任務前の下調べは特に重要なのだ。

そんなことより早速侵入しよう。本当は暗殺は夜に行うのが基本だが、今回はあえて昼に実行する。
ここの建物は夜、赤外線センサーやら監視カメラなど数々の防犯対策がされている。下調べの時覗いたが、あれは無理だ。確実に失敗する。
それに比べて昼は、人がたくさんいるからなのかそんなに防犯対策はされていなかった。警備員はたくさんいたが、所詮は人の目。気付かれずに進むことなんて簡単だ。


気配を殺しながら、裏手にあった扉から研究所の中に侵入する。

侵入すると通路の奥に2つ目の扉があり、その扉の前には警備員が2人立っていた。

自分との距離推定約50メートル。

このぐらいの距離なら気配を殺している俺の存在に気づくことはできないだろう。
銃を構えて2発警備員の脳天に向かって勢いよく発射。

ダーンダーン


弾は狙った通り2人の脳天を貫いた。
「ふう......」


銃に音を最小限に抑える改造したおかげで今の音に誰も気付かなかったようだ。

倒れている警備員を扉の中に運び、片方の警備員のポケットに入っていた鍵で1つ目と2つ目の扉を両方とも外から開かないように閉める。
これで外から様子がおかしいと気付かれても少しの時間稼ぎにはなるだろう。



さらに奥へ進んでいくと曲がり角があった。気配を殺しながら角の向こうの様子を観察する。この先は確か食堂だったはずだ。

「やっぱり食堂か......。」


調理場に6人、食事中の人が13人、レジに客と店員合わせて3人。


今の人の配置では何事もなくここを通るのは難しそうだ。


「しようがない......。」

ポーチから催眠スプリンクラーという投げると落ちた場所から催眠スプレーを四方八方に噴射するものを取り出した。

どの位置に投げれば全員にスプレーがかかるか計算する。

「よし」



調理場と客席の間、丁度レジの真上の天井に思いっきり投げる。


カチッと音がしてシューとスプレーが噴射された。

スプレーが室内に充満し始めてすぐに気づいた人が慌てているが、時既に遅しだ。このスプレーは即効性なので少しでも吸ったらすぐに眠りについてしまう。案の定、食堂にいた人たちは全員眠ってしまったようだ。


防護マスクをつけて食堂を通り抜ける。

反対側の通路の最奥に宮下悠真の個人研究室がある。依頼達成の最終目的地まであと少しだ。



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