転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~

普門院 ひかる

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第1章 冒険者編

閑話6 付かず離れず ~リャナンシー~

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 フリードリヒが10歳で冒険者を始めた後、ある悩みを抱えていた。
 彼は年齢的にかなり前に精通を迎えていた。

 夢精をして下着が汚れるのもいやだったし、まして汚れた下着をメイドに見られるなんてどんでもない。
 しかたなく自分で処理する日々だったが、前世の既婚者時代の記憶を完全に保持しているフリードリヒとしては、たまらなくもどかしかった。

 自然、パーティーメンバーや精霊たちの顔が浮かぶ。
 ネライダは未成年だから除外として、ローザとヴェロニアは一応この世界的には成人だ。

 精霊たちは………いや、仮にも人族の信仰対象にもなっている者たちだ。まさか、そんなことをお願いできない。

 だが、その前に俺も肉体的には未成年だからダメか。男の成人は14歳だからあと4年!
 その4年間が途方もなく長く感じられる!

 いや。本番までいかなければ、ぎりぎりセーフなのでは………ダメだ。こんなこと考えてちゃ!

 ああ。男って救いようのないバカな生き物だな。

    ◆

 ある日、黒の森に狩にいく。
 千里眼クレヤボヤンスで辺りを探っていると、森が開けたところに女が1人たたずんでいる。かなりの美少女だ。年齢は高校生くらいの感じに見える。
「黒の森で女が1人なんて危ないな。何だというのだ。道にでも迷ったか…」と不信に思うフリードリヒ。

「なんだか女が1人はぐれているようだからそちらへ向かう」

「また、旦那も人がいいなぁ」ヴェロニアが呟いた。
 フリードリヒはパーティーメンバーとともに女のところに向かう。

 肉眼で遠めに見えた時、フリードリヒは気づいた。
「しまった。人族ではない。油断した」

 慌ててきびすを返そうとしたとき、目が合ってしまった。
 一目散に逃げるのも何かおかしかったので、フリードリヒは後ろを振り向いて、元来た道を早足で戻る。

 女は素早くフリードリヒのところに駆け寄ってきた。
「あら。いい男ねぇ。気に入ったわ。ねぇ。私と付き合わない?そうしたら良いこといっぱいあるわよ。」
 顔が近い。

「付き合うも何も、お前人族じゃないだろ」
「そうよ。私はリャナンシーっていう妖精なの。それが何か?これまでも人族の男とはたっくさん付き合ってきたけど何の問題もなかったわよ」

 リャナンシー?確かケルト系の妖精だ。ケルト人がゲルマン人に追い出されてから数百年。まだ、残っていたようだ。

「私的には大いに問題がある」

 そこにヴェロニアが割って入る。ヴェロニアたちは人外の存在だから見えているようだ。
「なんでぇ。あたいの旦那に手ぇ出そうってのかい」
 今にも切りかかりそうな勢いだ。

「あらっ。旦那って…あななたち付き合っているの?そうは見えないけれど…」
「そういう関係ではないのだが…」
「そんなぁ。旦那ぁー」
 ヴェロニアは落ち込んでしまった。

「とにかくお話にならないな。みんな行くぞ」
 追いかけられると面倒そうだったので、フリードリヒは皆を連れてテレポーテーションで離れたところまで移動した。

「あれっ?」
 みんなポカンとした表情をしている。
 そこでハッと気づいた。
 慌てるあまり、テレポーテーションを初披露してしまった! 

「あのう。主様。今のは…」
 ネライダが訪ねてくる。
「まあ。ちょっとした魔法みたいなものだな。大したことじゃない。気にするな」
「そう…なのですか?」
 みんな納得しかねる感じだがここはなんとかスルーしよう。

 そんなこともあって、その日の狩はテンションが上がらなかった。

    ◆

 それから数日たった夜。
 フリードリヒは部屋でリュートを構え、今日習った弾き語りの復習をしていた。

 突然後ろから声がする。
「そこは違うわ。もっと感情をこめないと」

「えっ。リャナンシー!どこから入ってきた?」
「私の好きな人以外の人族に私は見えないの。入るのなんて簡単よ。でも、探すのに苦労したわ。突然目の前から消えちゃうなんて酷い。あなたSなの」

「そうではない。お前と付き合いたくなかっただけだ」
「そんなつれないこと…。やっぱりSね」
「そういう問題ではないだろう」

 リャナンシーと付き合った男は、詩と歌の才能を得る替わりに精を吸い取られるため、短命で死ぬという話だ。俺は感情を表に出すのが下手だから詩は平凡だが、歌は前世の経験があるから問題ない。詩のために命を削るなど俺のポリシーに反する。触らぬ神に祟りなしだ。

「そうなの?じゃあ、あんまりしつこくすると嫌われちゃうから帰るね。またねー」
 リャナンシーはそう言うとさっさと姿を消した。

「意外と素直に引き下がったな。だが、またね…か」と思うフリードリヒ。

 数日後、詩作の練習をしていると…。
「詩の方は平凡なのね。歌は上手いのに」

「リャナンシー。お前私を見張っているのか。ストーカーか!」
「いやー。好きな人のことは気配でわかっちゃうんだよねー」

「今日はどうやって帰ってもらうか…」とフリードリヒは思案する。

「ここのところはさ。もっと素直に書いた方がいいよ」
「いや。詩の添削をしてくれるのはありがたいのだが…」

 その後小一時間詩の話をしてリャナンシーはあっさりと帰っていった。
 また来るんだろうな。どうしよう…。

 数日後、音楽の練習をしていると、今度は来なかった。
 こっちが構えていると来ないとは。小癪な。伝承によると、付き合うまでは献身的に尽くしてくれるということも聞くが…。あまりそういう感じでもないか。

 彼女の訪問はいつも唐突で気まぐれだった。
 訪問は決まって詩作か歌を練習しているときで、それ以外の話は話題にならなかった。
 なんだか付き合うというより、ほとんど家庭教師のようだ。

 そして数か月が過ぎ、次第に会話も角がとれていった。
「もしかしてもう彼女のペースに嵌っている?もう付き合っているっていうことになっているのかな。もう毒を食らわば皿までだ。」とフリードリヒの頭に良からぬ考えが浮かんでしまう。
 次に彼女が訪問したとき、ついにフリードリヒはぶっちゃけることにした。

「お前の××で私の×××を×××××くれないか」

 彼女はポカンとしている。
「ああ。何の段取りも踏まずに女の子にこんなことを頼むなんて、俺は馬鹿か」とフリードリヒは後悔して、セルフ突っ込みを入れる。

「あはっ。あなたもやっぱり男の子なのね。そういうことを何も言わないし、してこないから、まだ子供なのかと思っていたわ。いいよ。お姉さんがやさしくしてあ・げ・る」

 詳細は割愛するが、フリードリヒは文字通り精を吸ってもらった。もちろん本番はなしでだ。
「もう空っぽだ。このスーッとする心地よい脱力感も久しぶりだな。忘れていた」と心地よさを堪能するフリードリヒ。

「ああ。とても満足した。ありがとう」
「そう言ってくれると嬉しいわ。尽くすかいがあるというものよ」

「なあ。これで私の寿命は削られたことになるのか」
「あはは。寿命なんて運命で決まっているものだから私がどうこうできる訳ないじゃない。精を吸ったから命が削られるなんて迷信よ。
 私が付き合った男たちは詩や歌が上達するとどんどん堕落していったわ。
 詩が書けない詩人や歌が歌えない歌手は生活力がないからね。みんな貧乏のどん底であっという間に死んでいった。ただそれだけよ」

「そうかそれは少し安心した」
「私はあなたが堕落するような人とは思えない。期待しているわね」
「できれば、そうありたいと思っている」

    ◆

 私とあの人には2人だけの秘密がある。
 私はヴァンパイアで数日に一度血を飲まないと吸血衝動を抑えられない。
 あの人には眷属を増やすことを禁じられていたので、自然とあの人から血をもらう流れになった。

 数日に一度、あの人の部屋で血を吸わせてもらう。本当はワインなどに数滴たらして飲めば足りるのだが、それでは味気ないと思い。傷を付けたあの人の指から直接口で吸いたいとお願いしたら、あっさりと許してくれた。

 あの人の血は今まで経験のしたことのないとても高貴な味わいで、飲むと体の底から力が湧いてくる感じがして高揚する。

 それにあの人の指が口の粘膜や舌を刺激するのがとても快感で、興奮してしまう。
 ──口で感じてしまうなんて私少しおかしいのかしら。

 そんなことが続いて、ある日。
 あの人が一瞬黙り込んだと思うと意を決したようにこう言った。

「君の××で私の×××を×××××くれないか」
 ──えっ。今何と…。

 恋愛経験のほとんどない私には理解ができない。世間の恋人や夫婦はそういうことを普通にやっているの?私には変態チックに思えるのだけれど…。

「さすがに今すぐは無理なので、出直しますね」やっとの思いでそう答えると私は急いで部屋を出る。

 後ろからあの人の「やっぱり今のは聞かなかったことにしてくれ」という声が聞こえる。
 ──あの人の本音を聞いてしまった以上、聞かなかったことにする何て無理よ。

 その日は悶々と悩み、妄想し、ほとんど眠ることができなかった。結果、私は経験が浅いから、できることからやっていくことしかできないという当たり前の結論に至った。

 さて、これをどう伝えるか…。
「こういうことには順番があると思うの。私にはあまり経験がないから…」
 あの人は「そうだね。まったく君のいうとおりだ。女の子の心を蔑ろにした私が全面的に悪かった。」というと優しく私を抱きしめ、髪をなでてくれた。
 とても気持ちよく、心が落ち着いた。

 一段落ついたところで、あの人は私の瞳を愛おしそうに除きこんだ、恥ずかしかったが、目線を外そうとは思わなかった。
 私はあの人の意図を察し、しずかに目をつぶる。

 あの人の唇が私の唇にわずかに触れた。触れるか触れないかくらいの軽いキス。私のファーストキスだ。
 その余韻が過ぎた後、あの人は「いっぺんに進めるのも良くないから、今日はここまでにしよう。」といって私を解放してくれた。
 私は体中が火照っていっぱいいっぱいだったので、助かった。

 以来、血を飲んだ後のキスは定番コースとなり、日を重ねるうちに次第に激しいものになっていった。

 そしてある日。
「私は未成年だからね。これ以上のお楽しみはとっておこう」とあの人の打ち止め宣言があった。

 正直、私としては、既にその先も受け入れる気持ちになっていたが、心がついていけるのか不安でもあった。
 ──少し残念なような。ほっとしたような…でも、その日がとっても楽しみ。
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