転生ジーニアス ~最強の天才は歴史を変えられるか~

普門院 ひかる

文字の大きさ
61 / 215
第3章 軍人編

第44話 ブービーヌの戦い(1) ~第6騎士団の介入~

 プランタジネット家のイングランド王ジョンは、フランス領土の大部分を甥のブルターニュ公アルテュールⅠ世やフランス王フィリップⅡ世との抗争で失っており、その回復を目指していた。
 また、フランドル伯フェランはフランス王と抗争しており、自領への侵攻を受けていた。

 ジョンは、以前から同盟していたオットーⅣ世やフランドル伯らとはかって、フィリップⅡ世を南北から挟撃する計画を立てた。
 ジョンがフランス南部に進撃し、同時にイングランド、ドイツ、フランドルなどの連合軍が北部からフランスに侵入するというものである。

 イングランド王ジョンはつぶやいた。

「あの大男にも最後に少しは役にたってもらわねばな。今までさんざん援助してきた甲斐かいがない…」

    ◆

「クララどう思う?」

 イングランド王の使者からジョンの計画を聞いたオットーⅣ世は、お気に入りの愛妾であるクララ・エシケーに尋ねた。傲岸ごうがんな性格の彼も、追い詰められて気弱になっていたのである。

 クララは素っ気ない表情で答えた。
「ドイツはほぼホーエンシュタウフェン家側に回ってしまったから、外からホーエンシュタウフェン家を援助するフランスを攻撃してみるのも悪くないんじゃないかしら…」

「そうだな。もうそのくらいしか手はないか…」
 オットーⅣ世は自信なさげにつぶやいた。

 それを氷のように冷たい表情で見つめるクララにオットーⅣ世は気づいていない。

「おまえは最後まで付いてきてくれるよな?」
 オットーⅣ世はすがるように尋ねた。

「私の心は最後まで陛下のものよ」
「そうか。安心した」

 だがオットーⅣ世は気づいていない。クララの心はもうここにはないことに…

    ◆

 ホーエンシュタウフェン家に追い込まれていたオットーⅣ世は、イングランド王ジョンと結んで、フリードリヒⅡ世を支持するフランス王フィリップⅡ世を攻撃することで活路を見出そうとした。

 ホーエンシュタウフェン家とヴェルフ家の対立はフランス対イングランドの対立の構図と重なっていた。
 折しも、フランスとイングランドは後に100年戦争と呼ばれる長い戦いの真っただ中にあった。

    ◆

 フリードリヒは館の自室でタンバヤ情報部のアリーセからの報告を聞いていた。

 話によると、オットーⅣ世がイングランド王ジョンと組んでフランスを挟撃する作戦を遂行するということだ。

 だがフリードリヒは宮仕えの身だ。勝手に動くことは許されない。それに数的には連合軍が有利だがフランス軍が負けると決まった訳でもない。

 結局、フリードリヒは、上層部の判断を静観することした。

    ◆

 数日後。
 シュバーベン公の館では、フリードリヒⅡ世、軍務卿のハーラルト・フォン・バーナー、近衛騎士団長のコンラディン・フォン・チェルハ、副団長のモーリッツ・フォン・リーシックが集まってフランスと連合軍の戦いに対する対応を協議していた。

 フリードリヒⅡ世が訪ねる。
「この戦いでフランス軍が手ひどくやられるようなことがあるとフランスからの援助が途絶えてしまう。オットーのやつが息を吹き返すことにもなりかねん」
「確かに、何もせずに静観するという手はあり得ませんな」
 バーナーが答える。

 そこでチェルハが発言する。
「ここはオットーの軍がフランスへ着く前に一撃加えておくべきでしょう。数が減らせればそれだけフランスが有利になります」

「では誰を使わす? またあの小僧か?」
 フリードリヒⅡ世は若干不愉快そうな顔をしながら訪ねた。

「強くて、早くてとにかく使い勝手がいいですから、仕方ありませんな」

 チェルハは平然と答えた。
 客観的に見てそうなのだからフリードリヒⅡ世も反論が難しい。

 バーナーが訪ねる。
「しかし第6だけで大丈夫なのか?」
「もともと他国の戦争ですからね、今回は大勝する必要はありません。
 数さえ減らせば後はフランス軍が片付けてくれるでしょう。
 必要なら第5を付けますが、それは小僧自身に選ばせましょう。おそらくいらないと言うでしょうがね」

 フリードリヒⅡ世は、しばらく考え込むと結論を出した。
「また小僧を頼るのはしゃくではあるが、卿の言うことは理解した。あとはあの小僧に任せてみよう。
 だが、今回も失敗は許さぬからな。きつく言いわたしておけ!」

 シュバーベン公は相変わらずフリードリヒに対して辛口なのであった。

    ◆

 フリードリヒは、近衛騎士団長のチェルハに呼び出された。

 フリードリヒは、早速に話を切り出す。
「オットー軍のことですね」
「相変わらず情報が早いな。わかっているなら話は早い。第6騎士団で対処してもらいたい」

「了解いたしました。対処方針などはありますか?」
「同じ帝国人同士だから殺し過ぎないように頼む」

「それは心得ているつもりです」
「第6だけでだいじょうぶか?」

 殲滅せんめつせよというのなら別だが、数を減らすだけなら問題ない。

「十分です」

 チェルハは予想通りと心中でニヤリとした。彼は第6の実力ならば完勝することも可能だと踏んでいた。

「それは心強い。よろしくたのむぞ」
「はっ。では、失礼いたします」

 フリードリヒは、騎士団長の部屋をあとにすると、早速出発の準備に取りかかった。

    ◆

 今回は少しズルをするつもりだ。
 既に出発しているオットー軍を追いかけるのではなく、遠距離の転移魔法で先回りするのだ。

 まずはダミーとしていったん全軍が駐屯所から出陣した姿を見せつける。

 フリードリヒが第6騎士団を出発させると、一斉にバイコーン騎兵が走り出し、ペガサス騎兵が羽ばたく。ダークナイトも冥界へ戻らせず、いったん行軍させる。
 その騒然とした行軍の様子をいやでも人々の目に留まったはずだ。

 郊外の人目につかないところで行軍を止めた。
 千里眼クレヤボヤンスでオットー軍の居所を探っていく。ちょっと遠距離だが問題ないだろう。

 見つけたオットー軍だ。
 当然だが敵に襲われることなど想定もせず、長蛇の列をなして行軍している。

「テンプス。では頼む。場所はここだ」
 フリードリヒは、テレパシーで転移先の場所を伝えた。

「わかったわ。任せて」

 時空精霊のテンプスが手を掲げると青い魔法陣が姿を現した。この魔法陣がオットー軍の行軍先とつながっているのだ。

「では、我に続け!」

 第6騎士団の要員が魔法陣にあがると、その姿がかき消えていく。そして転移先の魔法陣から続々と姿を現していた。

 全員の転移が終わると、フリードリヒは、なだらかな丘の上に陣を構えた。
 幻影ミラージュの魔法で敵からは視認できないようにしてある。

 そのままオットー軍が通り過ぎるのを待つ。オットー軍の背後から襲うのだ。

 頃合いを見てフリードリヒが命令を出す。
「ネライダ。まずはペガサス騎兵だ。突撃アングリフ!」

 ペガサス騎兵が一斉に飛び立つ。その羽音にオットー軍の兵士は驚き、恐怖に染まった顔で仰ぎ見ている。

炸裂弾さくれつだん投下ファーレン!」

 ネライダの指示で炸裂弾さくれつだんが投下されるとすさまじい爆音があがった。
 爆発音に人も馬も驚き、特に馬は制御を失って走り去っていくものも多い。

 投下位置に近かった者は爆風や破片を浴びて血まみれになって助けを求めている。従士たちは対応に右往左往している。

「続けて弓放てアタッケ!」

 上空から打ち下ろす矢の雨が敵を襲う。
 下から弓を打ち上げて反撃を試みる者もいるが、重力に逆らって打ってもペガサス騎兵には届かない。

 これを避けようと上に盾を構えると、今度はバイコーン騎兵がやってきて横向きの矢がやって来る。これを同時に防ぐことはできない。

「オスクリタ。ダークナイトも出撃だ」
「了解」

 ダークナイトの恐ろしい姿を見てオットー軍の兵士は恐怖した。脱走を試みる者も出始めた。

 その頃、ようやくオットーのもとに後背から攻撃を受けていることが報告された。長蛇の列で行軍をしていたことが裏目に出た形である。

 想定外の敵の出現にオットーは驚愕した。

「なにっ! いったいどうしたことだ。とにかく陣をしけるところまで撤退だ!」

 オットー軍は前方へ向け全速力で撤退を始めた。

 その頃。オットー軍の後列の方は既に散りぢりになっていた。ようやく前列に合わせて撤退を始めたが、負傷者を収容しながらなので遅々として進まない。

 だがフリードリヒは追撃はしなかった。
 先ほどの攻撃でオットー軍の2割くらいの死傷者が出ていたからだ。敵を大きく削るのはこのくらいでいいだろう。

「だが、これで終わりではないぞ」
 フリードリヒは誰に言うでもなくつぶやいた。
感想 7

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。