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斬撃ババは今日も洗濯機にシュークリームを洗っていた

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二人の兵士に囲まれながら、少年は独房に続く通路を歩いていた。独房についた少年は、手錠を外され、独房の中に入れられた。
その監視役として私が選ばれた。
「今日から死刑までの間、その少年を見張れ。不可解な行動を見せた時は報告しろ」
そう告げた兵士たちは来た道を戻っていく。
独房をキョロキョロした後に、少年が話しかけてきた。
「食事の時間って、何時なの?」と。
囚人と会話は禁止されていた。
それでも少年は楽しそうに話しかけてくる。
「どうして話しないの。仕事上だから、それともボクが大罪人だから……」
そう少年は大罪人であり、多くの人を殺めた。それなのに平然と笑っていられる。そんな奴と話したいとも思わない。
食事を知らせる鐘がなり、少年の独房にも食事が運ばれた。
少年は子供のように無邪気に食事を食べている途中で、交代の人がやって来た。
少年は私にニコニコ顔でこう言った。
「また明日会えるかな!」とはしゃぐ子供みたいに聞いてきた。
私は少年のことなど見向きもせず、牢獄室から出ていった。
正直言って最低な人間で、正気じゃないよ、あの少年はーー。

♢♢♢♢♢

自宅に着いた私を彼氏が出迎えてくれた。
すると彼氏が私の後ろの方に立ち、優しく抱きしめてきた。
「今日の仕事はどうだった。なんか臭いよ。もしかして、ドブのあるところで仕事してるの?」
「そうよ。臭い人は嫌いなのかしら」
「君の匂いとドブの匂いが混じって、案外好きかもしれないな」
「変態さんだ♡」
彼氏は私の首筋にキスを迫るが、その気がなかった私は、彼氏に言われたのもあってお風呂に入ることにした。
それから彼氏と一緒の食事を楽しむが、話題は少年の話になった。
私はいかに少年がやばい事を彼氏に話すと、彼氏は心配そうな声で「君が心配だ。そんな野蛮な奴と一緒にいると聞いただけで気が狂いそうだ。もしも君に何かあったらその時は、正義の鉄槌を下さないとな」
彼氏のその優しさを聞けて、私の気分が晴れた。

♢♢♢♢♢

今日も少年の監視をするため牢獄室に通じる扉を開けようとしたら、反対側から何人かのテンション高めの兵士が出てきた。
私は軽めを挨拶を済ませて階段を降りていき、少年の居る独房を除いてみたら、少年は壁に寄りかかり、顔と体に複数のアガが確認できた。
少年は大罪人で多くの人を殺めた。死刑執行の日までのうのうと生きている、だから私は別にいいと思った。それだけのことを少年はしたのだから……。
それなのに少年は私に気づくやいなや手を振りながら、「……おはよう」と笑顔を見せてきた。
だが少年は腹部を手でおさえて苦痛な顔になる。
少年は身動きが取れなく、その場で横になるぐらいしか出来なく、相当殴られたのか、今日はおとなしかった。
だが悶え苦しむ唸り声は聞こえるが、決して弱音を吐かない。ただただ少年は耐え忍んでいた。
お昼を知らせる鐘がなり、私は食事を独房に入れるときに、少年のことを見てみると、少年が微笑みたながら、私の方をまっすぐ見てくる。
それを見た私は人としての何かを失いそうになり、先生を呼ぶことにした。
少年をベッドに寝かせると、先生は診察を始める。先生が少年の腹部を触っただけで、少年の顔が歪んだ。先生は最低限の手当てを済ませて独房から出てきた。
 「もう時期彼はこの世からさる。それまでの間人としての尊厳を与えてあげなさい」
そう言って先生は牢獄室から出ていった。
少年は天井を見つめながら私に向かって「助けてくれて、ありがとう……」とささやくが、私は何もしてない。
時より少年はうめき声をあげる。私は少年のことが気になり、少年の寝顔を見ている自分がいた。夕ご飯の時間になっても少年は起きなかったので、交代の時間になったら私は帰ることにした。
少年のことなど心配なんてしてないのに、なぜか色々考えてしまう。食事は食べられただろうか、また殴られてないのかとか。そんなことを考えているうちに家にたどり着いた。
玄関を開けると彼氏が「おかえり」と言って出迎えてくれた。
しかし元気のなかった私に彼氏は心配の声をかけてくれた。
食事もあまり進まず、少年のことを考えてしまう。
そんな私に彼氏は「少年に何かされたの」と聞いてきが、私は首を横に振って「だいじょぶ」と曖昧な返事で返してしまう。
その夜、私と彼氏はベッドでキスをしようとしたが、「ごめん」と言ってそのまま毛布を包む私に彼氏はハグだけしてきた。

♢♢♢♢♢

私いつもよりも早く家を出て、出勤していた。心配なんてしてないのに体は素直だった。だけど職場につけばゆっくりと歩きながら牢獄室の扉を開けて、階段を降りていく。
そして少年の居る独房を怖いもの見たさの感じて除いてみたら、少年はいつもの壁に寄りかかり、元気よく「おはよう!!」と言ってきた。
私はそれを見てホッと笑みをこぼしてしまう。それを見た少年は「初めて笑った。ねえ!もっと笑ってよ」と言ってきた。
だから私はすぐに仕事の顔に戻った。相変わらず少年は楽しそうに笑いながら話してくるのを私は聞いていた。
すると少年は「海を見たことある?」と聞いてきたから、私は思わず首を横に振っていたことすら自分でも気づかなかった。
だけどそのうち私の視界がぼんやりとしてきた。そしてとうとう立たないほどの立ちくらみに会い、私は倒れてしまった。
すると少年はゆっくりと起き上がり、私の方に近づいてきたと思えば、独房の鍵に手を伸ばした。それを最後に私は気を失ってしまう。

♢♢♢♢♢

次に私が目覚めたのは病室のベッドの上で、横には看護師さんが点滴のチェックをしているところだった。
だから私は少年のことを尋ねてみたら、看護師さんはこう言った。
少年は私を担いで、病棟まで運んできたあとは、兵士に連行されて独房に戻された。
その時の少年はものすごく慌ててた感じで、同時に心配もしてたと教えてもらう。
その後私は先生に、ニ日ほど休めば問題はないだろうとのことだったので、そのまま私は早退きをすることにした。
ちょっとだけでも少年を見に行きたかったが、他の監視役がいると思い、大人しく帰ることにした。

△△△△△

そのまま私は体調が悪いながらも、なんとか家にたどり着いた。だけど今日は彼氏の出迎えはない。だって彼氏は仕事中で、夕方まで帰ってこない。
私は玄関の鍵を開けるが、なぜかロックになる。ただの彼氏の締め忘れだと思い、家にの中に入るが、寝室から彼氏の声が聞こえる。
彼氏も私と同じで体調を崩して早退きしたのかな。だから私は寝室のドアを開けると、そこには見知らぬ女性と彼氏がにゃほにゃほ中だった。
「気持ちいい♡」
「うん♡すごく気持ちいい♡」
だが昇天まで残りわずかなところで私の存在に気付いた彼氏の激しい動きがピタリと止み、目を丸くして私の方を見る。女性の方も私の方を見て、三人して固まっていた。
彼氏は何か言いたげだったが、私は静かに寝室のドアを閉めて家を出ていった。
私体調がすぐれないままとりあえず宿屋にチェックインすることにした。悪い夢でも見ているのかな。だから寝れば悪夢から覚めると思い、ベッドにはいる。
そのまま寝続けて目を覚ましたら深夜になっていた。私は月明かりの部屋で壁を呆然と見ながら、今日のことを思い出してしまった。
私は体を丸めて自分の袖を強く引っ張り、悔しさを噛み締めていたが、少年のことを思い出していたら自然と落ち着きを取り戻し、いつの間にか寝ている自分がいた。

△△△△△

それからニ日後には、すっかり体調を取り戻していた。
それから彼氏のことは忘れる事にして、今は少年に会いたい気持ちの方が大きかった。
私は牢獄室の階段を降りて行き、少年の居る独房を除いて見ると、少年はつまらなそうに壁の隙間から見える空を見ていた。
だから私は禁止とされている会話を破り、声をかけてしまった。
「おはよう!!」と。
その声に少年は反応して、私の方を向いた。
少年は嬉しい顔を見せるが、心配の声をかける。
そんな少年に私は感謝の気持ちを伝えた。
「運んでくれて、ありがとう」と満面の笑みで伝えた。
すると少年は照れくさそう顔をするが、またいつもの楽しいそうに話してくる。
私はもっと少年の近くで話が聞きたくて、独房の柵を開けて中に入った。
私の意外な行動に少年は慌てふためく。そんな少年に私は「後ろを向いて」っと言って、少年に背中を向かせた。
そして私は隠し持っていたクシを取り出して、少年の髪を梳かしてあげた。
ふと少年は半開きの柵を見て、そのことを私に教えてくれた。
「いいの開けっぱなしで、このまま逃げちゃうよ」と冗談混じりの言い方をする。
私は少年の背中に頭を乗せて一言「いいよ」と言ってしまう。
それに対して少年は優しい声で「もしもこのまま逃げたら、君が怒られちゃう。僕は君の落ち込んだ顔なんて見たくないな
な……」と言ってくれた。
その少年のあまりの優しさに、私は甘えていくことを口にした。
「最初にあなたに会ったときは最低な人間だと思っていた。それなのに何日か前に自分の都合が悪くなれば、こうやってあなたに甘えている。私の方が……最低の人間だ」
沈黙の時間がほんの少し流れた後に、少年が口を開いた。
「ほんと……最低な人間だ。ならひとつだけお願い聞いてもらってもいい」
「・・・・・」
「君と……キスしてみたい」
すると交代を知らせる鐘の音が鳴り、このままだと少年に被害が及ぶとして私は独房から出ようとした。それを少年は私の腕を優しく引っ張り、互いに見つめあった。
そして私たちは唇を何度と重ね合わせて、互いの吐息が激しく聞こえるほど濃厚なキスを交わし続けた。
 それから三日後の午前十一時二四分、少年の居る独房に二人の兵士が中に入り、少年の両手に手錠をかけられた。
少年は二人の兵士に挟まりながら数週間ぶりの外に出るが、少年の目に映るのは絞首刑台だった。
絞首刑台を囲む様にして人々が集まり、少年に向けて罵倒や物を投げる中に私はいた。
死刑執行人が少年の首にロープを巻くと、レバーに手を伸ばした。少年は私の存在に気付くと、いつもと変わらない笑顔を見せてくれたから、私も、とびっきりの笑顔を見せてあげた。
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