1 / 10
ソメイヨシノ
私の中身
しおりを挟む
私は普通では無いらしい。
普通の人が見えないものが見えるから。
ただそれは幽霊とか妖怪とかの類ではなくて、
風が走っていたり、花が話していたり、鳥が歌っていたり、
いわゆるメルヘンチックとかいうものである。
そんな綺麗なはずの世界でも人は異端分子を排除しようとして私を押しのける。
やっぱり私には人って合わない。
......................................................
春、花の季節。
私が思うに最も騒がしい季節だ。
ハルカは高校の入学式を終え、高校の敷地内の桜の木の下にいた。
(桜の花達、やっぱり噂話好きなんだ。)
『ほら、新しく来た鶴山先生、風から聞いたけどやっぱり前の学校でトラブル起こしたらしいわよ』
『やっぱり?雰囲気からなんか違うわよね。こう、なにかを隠そうとしてるような』
『みんなもう察してるでしょうにね』
『堂々としたらいいのに』
まるで保護者かPTAのような会話に苦笑いする。種族は違えど考えることは同じなんだなと改めて実感した。
(鶴山先生…さっき紹介されてたような)
体格がよく筋肉の塊みたいな男の先生が教師紹介の時に前に出ていたのを思い出した。
見る限りは体育教師のようだった。
そんなことを考えていると地面から声が聞こえた。
『また桜達は噂話か?これだから苦労の知らない花は』
『自分の欠点なんて棚上げですよ。人のかけた部分だけほじくり回して、品がない』
『もっと苦労を知って生きるべきだろうな』
足元のホトケノザ達が桜達に物申している。
もっとも、ホトケノザ達から桜達までは随分高さが足りないので声は聞こえていないようだが。
私はと言うと話を聞いているだけで絶対割り込まない。
こちらの声はきちんと聞こえるようだが周りからも変に思われるし。
目の前を『風』が通る。
いつものように色とりどりな子供が笑いながら走っていった。
それと同時に桜の花びらが散る。
小さい悲鳴が頭上からいくつも聞こえる。
足元から嘲るような笑い声がいくつも聞こえる。
春は私からしてみれば1番賑やかで、色とりどりで、
1番悲痛な季節。
いろんな所からいろんな声が聞こえる。
私の中に声が押し入ってくる。
私が私じゃ無くなりそうな感覚。
私の内側が声に満たされて、破裂してしまいそう。
(ああ、はやく帰りたい。)
きっとお母さんは保護者会終わってもおしゃべりに興じているのだろう。
あの花たちのように。
私もあの花たちのように、噂話やどうでもいいおしゃべりが出来たらこんなに辛くないのだろうか。
(…気持ち悪くなってきた)
相談する友達もいなければ、対処法も分からない。
いつもながらやっぱり情けない。
「あの、大丈夫ですか?」
一瞬にして声が聞こえなくなった。
否、気にならなくなったというのが正解だろう。
鈴を転がしたような声という言葉に納得するような、とても素敵な、形容しがたい声が隣から聞こえた。
そこには、同じ制服を着た黒い髪を肩まで伸ばした少女が立っていた。
(かわいい…)
「あの、顔色悪いですけど…あ、これ飲んでください」
少し微笑んでペットボトルのお茶を渡してきた。
「あ、ありがとうございます」
震える手でそれを受け取り、キャップを開け口に付けた。
飲み込む度、罪悪感が押し寄せる。
結局2口飲んでキャップを閉じた。
「すみません、ありがとうございます。」
恐る恐るペットボトルを返した。
「いえいえ、大丈夫そうですか?」
笑顔でそれを受け取り、まだ私の心配をしてくれているようで。
「だ、だいぶ落ち着いたので、多分大丈夫です。」
「ならよかった!無理しないでくださいね。」
他人だと言うのに随分優しい。
不思議な感覚。
「ユキー!早くしないと、時間無くなっちゃうよー!」
その子の後ろから声が聞こえてきた。
「ごめん今行くー!」
そう声をかけ私に向き、
「同級生だよね?これからよろしくね!」
そう言い彼女の友達であろう輪の中に走り去って行った。
(ユキって言うのか、あの子)
彼女が走り去って行った時、私の中に生まれた寂しいような、少し幸せなような気持ちを、
まだ私は知らなかった。
普通の人が見えないものが見えるから。
ただそれは幽霊とか妖怪とかの類ではなくて、
風が走っていたり、花が話していたり、鳥が歌っていたり、
いわゆるメルヘンチックとかいうものである。
そんな綺麗なはずの世界でも人は異端分子を排除しようとして私を押しのける。
やっぱり私には人って合わない。
......................................................
春、花の季節。
私が思うに最も騒がしい季節だ。
ハルカは高校の入学式を終え、高校の敷地内の桜の木の下にいた。
(桜の花達、やっぱり噂話好きなんだ。)
『ほら、新しく来た鶴山先生、風から聞いたけどやっぱり前の学校でトラブル起こしたらしいわよ』
『やっぱり?雰囲気からなんか違うわよね。こう、なにかを隠そうとしてるような』
『みんなもう察してるでしょうにね』
『堂々としたらいいのに』
まるで保護者かPTAのような会話に苦笑いする。種族は違えど考えることは同じなんだなと改めて実感した。
(鶴山先生…さっき紹介されてたような)
体格がよく筋肉の塊みたいな男の先生が教師紹介の時に前に出ていたのを思い出した。
見る限りは体育教師のようだった。
そんなことを考えていると地面から声が聞こえた。
『また桜達は噂話か?これだから苦労の知らない花は』
『自分の欠点なんて棚上げですよ。人のかけた部分だけほじくり回して、品がない』
『もっと苦労を知って生きるべきだろうな』
足元のホトケノザ達が桜達に物申している。
もっとも、ホトケノザ達から桜達までは随分高さが足りないので声は聞こえていないようだが。
私はと言うと話を聞いているだけで絶対割り込まない。
こちらの声はきちんと聞こえるようだが周りからも変に思われるし。
目の前を『風』が通る。
いつものように色とりどりな子供が笑いながら走っていった。
それと同時に桜の花びらが散る。
小さい悲鳴が頭上からいくつも聞こえる。
足元から嘲るような笑い声がいくつも聞こえる。
春は私からしてみれば1番賑やかで、色とりどりで、
1番悲痛な季節。
いろんな所からいろんな声が聞こえる。
私の中に声が押し入ってくる。
私が私じゃ無くなりそうな感覚。
私の内側が声に満たされて、破裂してしまいそう。
(ああ、はやく帰りたい。)
きっとお母さんは保護者会終わってもおしゃべりに興じているのだろう。
あの花たちのように。
私もあの花たちのように、噂話やどうでもいいおしゃべりが出来たらこんなに辛くないのだろうか。
(…気持ち悪くなってきた)
相談する友達もいなければ、対処法も分からない。
いつもながらやっぱり情けない。
「あの、大丈夫ですか?」
一瞬にして声が聞こえなくなった。
否、気にならなくなったというのが正解だろう。
鈴を転がしたような声という言葉に納得するような、とても素敵な、形容しがたい声が隣から聞こえた。
そこには、同じ制服を着た黒い髪を肩まで伸ばした少女が立っていた。
(かわいい…)
「あの、顔色悪いですけど…あ、これ飲んでください」
少し微笑んでペットボトルのお茶を渡してきた。
「あ、ありがとうございます」
震える手でそれを受け取り、キャップを開け口に付けた。
飲み込む度、罪悪感が押し寄せる。
結局2口飲んでキャップを閉じた。
「すみません、ありがとうございます。」
恐る恐るペットボトルを返した。
「いえいえ、大丈夫そうですか?」
笑顔でそれを受け取り、まだ私の心配をしてくれているようで。
「だ、だいぶ落ち着いたので、多分大丈夫です。」
「ならよかった!無理しないでくださいね。」
他人だと言うのに随分優しい。
不思議な感覚。
「ユキー!早くしないと、時間無くなっちゃうよー!」
その子の後ろから声が聞こえてきた。
「ごめん今行くー!」
そう声をかけ私に向き、
「同級生だよね?これからよろしくね!」
そう言い彼女の友達であろう輪の中に走り去って行った。
(ユキって言うのか、あの子)
彼女が走り去って行った時、私の中に生まれた寂しいような、少し幸せなような気持ちを、
まだ私は知らなかった。
0
あなたにおすすめの小説
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる