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ソメイヨシノ
私の思考と彼女の存在
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入学式も終わり家に帰りハルカは足早に自分の部屋に入った。
さっきよりも気分は良くなった。はず。
少し飲み物をもらったからだろうが、それ以外にもハルカを癒したものがあった。
人との関わりというものを極力避けてきたハルカにとって人からの優しさ、気遣いというものはとんでもなく貴重で、嬉しいものであった。
精神的に苦痛だった時にあの気遣いは本当に救いだった。
ただハルカ本人は何か引っかかるものを感じながらも、それが彼女に助けてもらった時の嬉しさからくる癒しだとは気付けない。
それこそ、人との関わりを絶っていた証だった。
もう少し気の利く返事なんかを返せばよかったとか、絶対喋り方キモかっただろだとか考えながら、椅子に座った。自然とネガティヴになっていたことに気が付いたが今更この考え方を直せる訳でもない。
(私ってどうしようもない)
中学生の頃、入試の面接用に質問に答える練習をしていた時を何故かふと思い出した。
最近見たニュースだとか、感動した本、中学で頑張った事など、ほとんどはスラスラと言葉が出てきた。
だが、唯一言葉に詰まる質問があった。
長所を聞いてくるような質問だった。
どうしたって自分の長所は分からない。短所なら清々しいほど素早く、それでいて大量に出てくる。
自分に自信を持って、なんて先生から言われた気もする。でも、どうやって自信を持ったらいいのか分からない。
生まれてこの方自信を持ったことが無いから、自信の持ち方なんて知らない。
(それにひきかえ、あの子は随分自分をしっかり持っている子だった。)
話し方でなんとなくわかる。
なよなよしたり、相手に合わせたり、優柔不断だったりすることが無いような凛とした話し方だった。きっといろんな人から頼られるのだろう。
羨ましいとは思わない。
羨ましいのは彼女自身ではなく彼女の周りにいられる人達。
(いいなぁ)
こんなこと思ったこと無かったけど、
(あの子と、もっと話してみたい。)
......................................................
入学式の次の日
あいも変わらず外は賑やかだ。
人の声もそうだが、人ではないもの達も随分話しているようだ。
イヤホンを耳につけて声を遮断する。
教室に着いて、自分の席に座る。
窓際の1番後ろの席だ。
授業の時はだいぶ落ち着いて受けられそうな席だが窓が近いせいで声がまあまあ聞こえてくる。
そうこうしてるうちに1限が近づいてきた。
入学式の次の日の1限といえばどこの学校も恒例になっているであろう自己紹介の時間だった。
前で1人ずつ自己紹介をするらしく、ハルカにとっては面倒と苦痛以外の何物でもない。
着々と自分の番は近づいてくる。
窓際だったおかげで順番は後ろの方だ
。
カースト上位の人、まあまあ話せますよって感じの人、絶対にクラスで浮く人、モテそうな人、大体検討がつく。
中には私のように話すのが苦手そうな人もいたが、私より数段話せている。
私の番が近づく。
もう自分には諦めているのでとくにドキドキもしない。
前の席の人が座った。
私の名前が呼ばれる。
「…はい」
小さい声。
多分この席周辺の人も聞こえないんじゃないかな。
「じゃあ自己紹介お願いね。」
担任がにこやかに言う。
「えと…み、宮田ハルカです。
趣味は…ん、と…音楽…とか」
音楽とかってなんだ。
「まぁ、…皆さんと仲良くしたいのでよろしくお願いします。」
ぎこちなくお辞儀をすると、ぱちぱちとまばらな拍手が起こる。
ウケるような所はないし、終わったのか終わってないのか分からないようなしめ方で、そりゃあ困惑するだろう。
自分の席に戻る。
学校生活の終了を感じながら座る。
担任が次の生徒の名前を呼んだ。
咄嗟に私は振り向いてしまった。
自分でもあまり理解出来ていなかった。でも、何だか振り向かなきゃ行けない気がした。
そこには昨日見たあの顔があった。
色白で、黒い髪を肩の辺りまで伸ばした、私を気遣ってくれた、あの子だった。
その子は元気な返事をすると、前に出た。
「えー、唐木ユキネです。趣味は、絵を描く事と、おしゃべりです!このクラスをみんなで学校1にしたいです!是非みんなと仲良くなりたいので、たくさん話しかけてください!」
にっこりとしながらそう言った。
私には彼女の笑顔が花が咲いたように見えた。
ふわっと一気に咲き誇ったような、とても綺麗な花。
目が離せない。
初めてそう思った。
はっと我にかえり、まず私は彼女が同じクラスだということに驚いていた。
昨日もこの教室に、この席にいたというのに、ハルカは全く周りを見ていなかったことを実感していた。
そのあと3人くらいが自己紹介をしてその時間は終わった。
休み時間になると各々が自由に出歩いていろんな人と話している。
(私のところにはきっと誰も来ないだろうな)
「宮田さん!」
後ろから声がした。
恐る恐る振り向くと、ニコニコとしながらこちらを見る唐木ユキネ、彼女がいた。
さっきよりも気分は良くなった。はず。
少し飲み物をもらったからだろうが、それ以外にもハルカを癒したものがあった。
人との関わりというものを極力避けてきたハルカにとって人からの優しさ、気遣いというものはとんでもなく貴重で、嬉しいものであった。
精神的に苦痛だった時にあの気遣いは本当に救いだった。
ただハルカ本人は何か引っかかるものを感じながらも、それが彼女に助けてもらった時の嬉しさからくる癒しだとは気付けない。
それこそ、人との関わりを絶っていた証だった。
もう少し気の利く返事なんかを返せばよかったとか、絶対喋り方キモかっただろだとか考えながら、椅子に座った。自然とネガティヴになっていたことに気が付いたが今更この考え方を直せる訳でもない。
(私ってどうしようもない)
中学生の頃、入試の面接用に質問に答える練習をしていた時を何故かふと思い出した。
最近見たニュースだとか、感動した本、中学で頑張った事など、ほとんどはスラスラと言葉が出てきた。
だが、唯一言葉に詰まる質問があった。
長所を聞いてくるような質問だった。
どうしたって自分の長所は分からない。短所なら清々しいほど素早く、それでいて大量に出てくる。
自分に自信を持って、なんて先生から言われた気もする。でも、どうやって自信を持ったらいいのか分からない。
生まれてこの方自信を持ったことが無いから、自信の持ち方なんて知らない。
(それにひきかえ、あの子は随分自分をしっかり持っている子だった。)
話し方でなんとなくわかる。
なよなよしたり、相手に合わせたり、優柔不断だったりすることが無いような凛とした話し方だった。きっといろんな人から頼られるのだろう。
羨ましいとは思わない。
羨ましいのは彼女自身ではなく彼女の周りにいられる人達。
(いいなぁ)
こんなこと思ったこと無かったけど、
(あの子と、もっと話してみたい。)
......................................................
入学式の次の日
あいも変わらず外は賑やかだ。
人の声もそうだが、人ではないもの達も随分話しているようだ。
イヤホンを耳につけて声を遮断する。
教室に着いて、自分の席に座る。
窓際の1番後ろの席だ。
授業の時はだいぶ落ち着いて受けられそうな席だが窓が近いせいで声がまあまあ聞こえてくる。
そうこうしてるうちに1限が近づいてきた。
入学式の次の日の1限といえばどこの学校も恒例になっているであろう自己紹介の時間だった。
前で1人ずつ自己紹介をするらしく、ハルカにとっては面倒と苦痛以外の何物でもない。
着々と自分の番は近づいてくる。
窓際だったおかげで順番は後ろの方だ
。
カースト上位の人、まあまあ話せますよって感じの人、絶対にクラスで浮く人、モテそうな人、大体検討がつく。
中には私のように話すのが苦手そうな人もいたが、私より数段話せている。
私の番が近づく。
もう自分には諦めているのでとくにドキドキもしない。
前の席の人が座った。
私の名前が呼ばれる。
「…はい」
小さい声。
多分この席周辺の人も聞こえないんじゃないかな。
「じゃあ自己紹介お願いね。」
担任がにこやかに言う。
「えと…み、宮田ハルカです。
趣味は…ん、と…音楽…とか」
音楽とかってなんだ。
「まぁ、…皆さんと仲良くしたいのでよろしくお願いします。」
ぎこちなくお辞儀をすると、ぱちぱちとまばらな拍手が起こる。
ウケるような所はないし、終わったのか終わってないのか分からないようなしめ方で、そりゃあ困惑するだろう。
自分の席に戻る。
学校生活の終了を感じながら座る。
担任が次の生徒の名前を呼んだ。
咄嗟に私は振り向いてしまった。
自分でもあまり理解出来ていなかった。でも、何だか振り向かなきゃ行けない気がした。
そこには昨日見たあの顔があった。
色白で、黒い髪を肩の辺りまで伸ばした、私を気遣ってくれた、あの子だった。
その子は元気な返事をすると、前に出た。
「えー、唐木ユキネです。趣味は、絵を描く事と、おしゃべりです!このクラスをみんなで学校1にしたいです!是非みんなと仲良くなりたいので、たくさん話しかけてください!」
にっこりとしながらそう言った。
私には彼女の笑顔が花が咲いたように見えた。
ふわっと一気に咲き誇ったような、とても綺麗な花。
目が離せない。
初めてそう思った。
はっと我にかえり、まず私は彼女が同じクラスだということに驚いていた。
昨日もこの教室に、この席にいたというのに、ハルカは全く周りを見ていなかったことを実感していた。
そのあと3人くらいが自己紹介をしてその時間は終わった。
休み時間になると各々が自由に出歩いていろんな人と話している。
(私のところにはきっと誰も来ないだろうな)
「宮田さん!」
後ろから声がした。
恐る恐る振り向くと、ニコニコとしながらこちらを見る唐木ユキネ、彼女がいた。
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