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4.オーブンと火の妖精?
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声をかけられた。
『もしかして気付いてない?』
『気づいてーここだよー』
複数いる。皆、オーブンの中にいた。赤色の帽子を被った小さな子どもに見える。お洋服はワンポイントで橙の線が入っててオシャレだ。
もしかして、この子達……妖精?
でも、神様が見せてくれた子は蝶々の様な羽が生えていたはず。
まじまじと見ていると女性の方が苛立った声を上げた。
「何見てるんだい!」
「あ、ごめんなさい。ここに、小さな赤色の小人がいて……」
「!!小人だと?……お前、妖精眼持ちか?」
「妖精眼?」
「妖精が見える目のことだ」
「は、はい。多分、この子達が妖精なら、そうですね」
『多分じゃなくて、そうだよー』
『僕らは炎の妖精だよー』
『神様が手伝えっていうから、来てあげたんだよー』
『神様が美味しいものくれるからっていうから、もらいに来たんだよー』
「そうだったの。じゃあ、今からクッキーを焼くのだけど手伝ってくれる?」
『どれぐらいー?』
『真っ黒こんがりー?』
「真っ黒に焼いたら食べれなくなっちゃう。直接火は当てないで、熱気だけで焼いて欲しいの」
『わかったー。燃やそうー!』
『わかったー。暖か空気で焼いていくー』
トルテさんが信じられないという様な目で私を見てくる。
その間にも、妖精達は私に対して声をかけてきてくれるので、そっちに目線を合わせて話す。
話終えると、炎の妖精だと名乗ったその子達は、オーブンの下の段にあった炭に手をおく。ボォっと何もないところから突然湧き上がる炎と、その中で平気そうに『これでいいー?』と聞いてくる妖精達に頷いていると、トルテさんは「本当に……」と呟いた。
「なんだ!?本当に、火がついたよ……!」
「すご~いぃ。これがぁ、妖精の力ってやつなんですかぁ~?」
女性と少女が驚いたように声を上げる。
妖精眼の事は後で聞くとして、今は火加減に集中しよう。
焦がしたら大変だ。
熱気が逃げてしまうけれど、時々開けて中の様子を見る。
こんがり狐色に染まった所で妖精達にストップをかけた。
「妖精さん、ありがとう。もういいよ」
『はぁーい!これで、美味しいの食べれるの?』
「うん、少しだけ待っててね」
オーブンから鉄板を取り出し、クッキーを別の皿へと移し替えて粗熱をとっていく。
「よし!出来た!!」
『完成?完成!?』
「うん、妖精さん達のお陰だよ。ありがとう。これはお礼ね」
大きめのクッキーを3枚程渡すと、妖精達は嬉しそうにそれを頬張った。
『熱々、サクサク、おいひぃー!』
『あむ。あむ。あむ。あむ』
『うまうま。うまーい!』
夢中で食べる妖精達に癒されながら、私は女性と少女、トルテさんの方を向いた。
3人とも、目を丸くしている。
妖精が見えない彼らからすれば、クッキーが勝手に消えている様に見えるのだろうか?
「あ、あの、出来ました」
クッキーを差し出すと、3人とも1枚ずつ手に取った。
「これは、毒味、そう。毒味だ」
「ウチらは味見だね。どんな味なのか、想像も出来ないからね!」
「はぁーい。そうですよねぇー。甘くていい匂い。いただきますぅー」
3人とも、パクッと食べた瞬間無言で食べ切り、指先についた食べカスまで舐めとり、うっとりした表情を浮かべるとブンブンと横に首を振って私をマジマジと見つめた。
「アンタ、流石は主が神託を告げただけあるね。ウチはガジェタ。この子は料理見習いのカラメロだ。これからよろしく頼むわ」
「はぁぁん。甘くて、さくっとした歯応えが美味しすぎるぅー!凄いわぁー。もう一個欲しいぃー」
「こら、ダメだ。後は神殿長と主に差し出さねば!」
カラメロさんが手を伸ばそうとするのをトルテさんが止める。口惜しそうにこちらを見るカラメロさんに苦笑して、声をかけた。
「これが認めてもらえれば、また別の美味しい物も作るから。楽しみにしていてね!」
「本当ぉ?楽しみだわぁー」
「こんだけ美味しいんだもの、きっと認められてくるね」
カラメロさんが嬉しそうに微笑み、ガジェッタさんも頬を掻きながらそう言ってくれる。
やっぱり、作ったものを褒められるのは嬉しいな。
「トルテさん、じゃあ渡しに行きましょう!」
「あ、ああ……」
行きとは違い、元気になった私のテンションに若干戸惑いながらトルテさんは頷いた。
『もしかして気付いてない?』
『気づいてーここだよー』
複数いる。皆、オーブンの中にいた。赤色の帽子を被った小さな子どもに見える。お洋服はワンポイントで橙の線が入っててオシャレだ。
もしかして、この子達……妖精?
でも、神様が見せてくれた子は蝶々の様な羽が生えていたはず。
まじまじと見ていると女性の方が苛立った声を上げた。
「何見てるんだい!」
「あ、ごめんなさい。ここに、小さな赤色の小人がいて……」
「!!小人だと?……お前、妖精眼持ちか?」
「妖精眼?」
「妖精が見える目のことだ」
「は、はい。多分、この子達が妖精なら、そうですね」
『多分じゃなくて、そうだよー』
『僕らは炎の妖精だよー』
『神様が手伝えっていうから、来てあげたんだよー』
『神様が美味しいものくれるからっていうから、もらいに来たんだよー』
「そうだったの。じゃあ、今からクッキーを焼くのだけど手伝ってくれる?」
『どれぐらいー?』
『真っ黒こんがりー?』
「真っ黒に焼いたら食べれなくなっちゃう。直接火は当てないで、熱気だけで焼いて欲しいの」
『わかったー。燃やそうー!』
『わかったー。暖か空気で焼いていくー』
トルテさんが信じられないという様な目で私を見てくる。
その間にも、妖精達は私に対して声をかけてきてくれるので、そっちに目線を合わせて話す。
話終えると、炎の妖精だと名乗ったその子達は、オーブンの下の段にあった炭に手をおく。ボォっと何もないところから突然湧き上がる炎と、その中で平気そうに『これでいいー?』と聞いてくる妖精達に頷いていると、トルテさんは「本当に……」と呟いた。
「なんだ!?本当に、火がついたよ……!」
「すご~いぃ。これがぁ、妖精の力ってやつなんですかぁ~?」
女性と少女が驚いたように声を上げる。
妖精眼の事は後で聞くとして、今は火加減に集中しよう。
焦がしたら大変だ。
熱気が逃げてしまうけれど、時々開けて中の様子を見る。
こんがり狐色に染まった所で妖精達にストップをかけた。
「妖精さん、ありがとう。もういいよ」
『はぁーい!これで、美味しいの食べれるの?』
「うん、少しだけ待っててね」
オーブンから鉄板を取り出し、クッキーを別の皿へと移し替えて粗熱をとっていく。
「よし!出来た!!」
『完成?完成!?』
「うん、妖精さん達のお陰だよ。ありがとう。これはお礼ね」
大きめのクッキーを3枚程渡すと、妖精達は嬉しそうにそれを頬張った。
『熱々、サクサク、おいひぃー!』
『あむ。あむ。あむ。あむ』
『うまうま。うまーい!』
夢中で食べる妖精達に癒されながら、私は女性と少女、トルテさんの方を向いた。
3人とも、目を丸くしている。
妖精が見えない彼らからすれば、クッキーが勝手に消えている様に見えるのだろうか?
「あ、あの、出来ました」
クッキーを差し出すと、3人とも1枚ずつ手に取った。
「これは、毒味、そう。毒味だ」
「ウチらは味見だね。どんな味なのか、想像も出来ないからね!」
「はぁーい。そうですよねぇー。甘くていい匂い。いただきますぅー」
3人とも、パクッと食べた瞬間無言で食べ切り、指先についた食べカスまで舐めとり、うっとりした表情を浮かべるとブンブンと横に首を振って私をマジマジと見つめた。
「アンタ、流石は主が神託を告げただけあるね。ウチはガジェタ。この子は料理見習いのカラメロだ。これからよろしく頼むわ」
「はぁぁん。甘くて、さくっとした歯応えが美味しすぎるぅー!凄いわぁー。もう一個欲しいぃー」
「こら、ダメだ。後は神殿長と主に差し出さねば!」
カラメロさんが手を伸ばそうとするのをトルテさんが止める。口惜しそうにこちらを見るカラメロさんに苦笑して、声をかけた。
「これが認めてもらえれば、また別の美味しい物も作るから。楽しみにしていてね!」
「本当ぉ?楽しみだわぁー」
「こんだけ美味しいんだもの、きっと認められてくるね」
カラメロさんが嬉しそうに微笑み、ガジェッタさんも頬を掻きながらそう言ってくれる。
やっぱり、作ったものを褒められるのは嬉しいな。
「トルテさん、じゃあ渡しに行きましょう!」
「あ、ああ……」
行きとは違い、元気になった私のテンションに若干戸惑いながらトルテさんは頷いた。
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