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病気送りにされる
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案外、男の手は簡単に振り払うことができたのだが、地面を蹴った瞬間に命懸け逃走レースが開始された。開始の合図をしなくても危険な状況を察して楠木と川田も同時に走り出した。人相の悪い二人組も俺たちを追いかけてくる。
人通りの多い商店街を騒がしくした数人は通行人の注目の的になった。
「待てえ、クソガキ!」
断末魔の叫びのような声をあげている。
交番がある側とは反対方向に逃げてしまい、助けを求めるには難しく、さらに状況は絶望的になった。
よく覚えていないが、アーケードの屋根がなくなる境目の居酒屋付近で制服の襟を捕まれ相手の体の動きがスローモーションのように見え、腹部にパンチをくらった。一撃で地面に倒れこみ、低い声でうめいた。倒れこむ時に視界がとらえた楠木と川田の姿は背中を向けて走り去って行く光景だった。
たった一瞬、楠木がこっちをチラッと振り返った気がした。
痛みこらえながら立ち上がり、助けを求めようとして大きな声を出そうとして口に息を吸いこんだ時だった。
後頭部に衝撃を感じた。何かが割れる音だ。
瞬間的に意識を失ったので、何が起こったのかはわからなかった。
自分が気を失った後に誰かが呼んでくれた救急車で病院に搬送された。打撲と出血だけで血は出ていたが、たいしたことはないらしい。意識が戻った時、病室にいたのは父と母だけだった。
「あれ?」
白い天井、白い壁。すぐにここは病院だとわかった。
「よかった、気がついたのね」
安堵の表情の母が駆け寄ってきた。起き上がろうとした時、後頭部に痛みが走った。
「痛みが引くまでは休んでいてね。また明日、様子を見ますから」
医者の先生から自分がガラス瓶で殴られたことを告げられた。
傷は大きいけど、安静にしてれば問題ないからと業務的に話され、看護師と一緒に早々に病室から出て行ってしまった。
腕を組んだまま、父は何かを言いたげな顔をして俺のことをまっすぐに見つめている。
言いたいことは俺を心配するような言葉ではないことはすぐにわかったが、父が口をひらくまで、何も言わなかった。
「お前、ケンカしたのか?」
父は怒って眉間にしわを寄せている。まだ何も事情を知らないのだろうか?
「ちげえよ!」
否定はした。父はずっと疑いの表情のままだった。
両親から受けた説明は驚愕の内容だった。自分はヤクザのような二人組に殴られ、気を失ったのだが、一人で血を流して倒れていたところを通行人が救急車を呼んでくれたらしい。
誰がそんなことを言ったのか?
楠木と川田はどうしたのだろう?
警察はどう処理したのだろう?
おかしなことになっている。
「勉強せず、フラフラしてるからそういうことになるんだ。しっかりしろ、まったく・・・」
俺の感情を無視した父の言葉が突き刺さる。
「担任の先生には連絡しておくからね」
じわじわと怒りがこみあげてきた。あの二人組逃げたんだ・・・。
自分が被害者なのに、理不尽な事件の片づけ方をされて腹が立った。
懸念は楠木と川田のことだった。あいつらはどうしたんだろう?
警察のやっかいにはなっていないのだろうか? 学校のほうは?
正直言って、なんか、イヤな予感がした。
これ以上考えるのは苦痛で、頭が痛くなる。
でも、見舞いにくらい来てくれてもいいんじゃないかと思った。
人通りの多い商店街を騒がしくした数人は通行人の注目の的になった。
「待てえ、クソガキ!」
断末魔の叫びのような声をあげている。
交番がある側とは反対方向に逃げてしまい、助けを求めるには難しく、さらに状況は絶望的になった。
よく覚えていないが、アーケードの屋根がなくなる境目の居酒屋付近で制服の襟を捕まれ相手の体の動きがスローモーションのように見え、腹部にパンチをくらった。一撃で地面に倒れこみ、低い声でうめいた。倒れこむ時に視界がとらえた楠木と川田の姿は背中を向けて走り去って行く光景だった。
たった一瞬、楠木がこっちをチラッと振り返った気がした。
痛みこらえながら立ち上がり、助けを求めようとして大きな声を出そうとして口に息を吸いこんだ時だった。
後頭部に衝撃を感じた。何かが割れる音だ。
瞬間的に意識を失ったので、何が起こったのかはわからなかった。
自分が気を失った後に誰かが呼んでくれた救急車で病院に搬送された。打撲と出血だけで血は出ていたが、たいしたことはないらしい。意識が戻った時、病室にいたのは父と母だけだった。
「あれ?」
白い天井、白い壁。すぐにここは病院だとわかった。
「よかった、気がついたのね」
安堵の表情の母が駆け寄ってきた。起き上がろうとした時、後頭部に痛みが走った。
「痛みが引くまでは休んでいてね。また明日、様子を見ますから」
医者の先生から自分がガラス瓶で殴られたことを告げられた。
傷は大きいけど、安静にしてれば問題ないからと業務的に話され、看護師と一緒に早々に病室から出て行ってしまった。
腕を組んだまま、父は何かを言いたげな顔をして俺のことをまっすぐに見つめている。
言いたいことは俺を心配するような言葉ではないことはすぐにわかったが、父が口をひらくまで、何も言わなかった。
「お前、ケンカしたのか?」
父は怒って眉間にしわを寄せている。まだ何も事情を知らないのだろうか?
「ちげえよ!」
否定はした。父はずっと疑いの表情のままだった。
両親から受けた説明は驚愕の内容だった。自分はヤクザのような二人組に殴られ、気を失ったのだが、一人で血を流して倒れていたところを通行人が救急車を呼んでくれたらしい。
誰がそんなことを言ったのか?
楠木と川田はどうしたのだろう?
警察はどう処理したのだろう?
おかしなことになっている。
「勉強せず、フラフラしてるからそういうことになるんだ。しっかりしろ、まったく・・・」
俺の感情を無視した父の言葉が突き刺さる。
「担任の先生には連絡しておくからね」
じわじわと怒りがこみあげてきた。あの二人組逃げたんだ・・・。
自分が被害者なのに、理不尽な事件の片づけ方をされて腹が立った。
懸念は楠木と川田のことだった。あいつらはどうしたんだろう?
警察のやっかいにはなっていないのだろうか? 学校のほうは?
正直言って、なんか、イヤな予感がした。
これ以上考えるのは苦痛で、頭が痛くなる。
でも、見舞いにくらい来てくれてもいいんじゃないかと思った。
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