聖女転生? だが断る

日村透

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お仕置きのお時間

159. 秘密を探したければまず霧を探せ (3) -sideアロイス

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「なんちゅう、罰当たりなことをやっとんじゃ、そ奴らは……」

 爺さんは盛大に顔をしかめながらうめいた。
 その反応には共感しかないぜ。

「だよなぁ。まさか聖女にそこまでのことをやっているなんてよ。奴らが拝金主義で信用ならないのは前々からだったが、聖女のことはちゃんと大事にしているとばかり思ってたぜ」

 だから俺達は――俺はセレスティーヌについて、ちやほやされるのが当たり前な環境で育ったお姫様だと先入観を持っていた。
 民の苦労なんて知らない無知なお姫様が、呑気に神殿にこもって民の何を祈るのかと。
 
「異世界から召喚されたもう一人の聖女は、平民の娘だという話だったろう? 民に寄り添えるのはセレスティーヌよりもこっちのほうなんじゃないかとさえ思ってたんだが、そんなことを思ってた自分に冷や汗が出る。セレスティーヌから聞いた話だけじゃなく、実際に聖女『リリ』の評判を調べたら、まぁこれがとんでもない女でな」
「うぬ~……いや、わしもセレ様があのような御方とは思っとらんかったから、無理もなかろう。一概におまえさんが未熟だったとは言えんよ。それにその『リリ』とやら、最初は猫を被っとったんだろ?」
「そうらしい。セレスティーヌがいなくなってから、本性を出し始めたって話だ」

 ロランの王や神殿の奴らは十中八九、召喚聖女がその力を発揮できるようになり、民に存在が認知されたら、不要になったセレスティーヌをつもりだった。
 そうなるまでは、いてもらわなくては困る。
 だから追って来た。

 あの甘ったれ王子……無様に尻餅をついて地面をずりずり退がるを見たのが最後の記憶だが、あれを世継ぎに据えようとしているロラン王の腹も明白だ。
 自分にとって操りやすい、都合のいい跡継ぎに育てたんだな。

「『リリ』という娘は聖女の力どころか、普通の魔法すら未だに使えんらしい。ところがセレスティーヌに関してはさっきも言ったように、物心つく頃から本物の聖女としての教育を受けていて、浄化魔法やその他の魔法もかなりのものだ。ほかにもこんなことがあってな……」

 オーギュスト王子の頭と、ロランの大神官の頭が、えらいことになっているらしい。
 マティス陛下や俺の親父ですら青ざめさせたこの話を、グスタフ大神官はどこか懐疑的な顔で聞いていた。しかし紛れもない真実と知るや、同じように顔色を悪くする。

「なんと。うぬぬ~……」
「そういう祈りは絶対に口にするなと約束はしてあるから、大丈夫だとは思いたいが。勢い任せで口走ることが今後もないとは言い切れんだろ? だから爺さんも、変にセレスティーヌを揶揄からかうなよ」
「うむ……肝に銘じよう」

 示し合わせたように、俺とグスタフ大神官は湯呑みに口をつけていた。
 喉を潤して一息つき、俺は長い前置きから本題に入った。

「マティス陛下はこう仰っていた。『聖女とは本来、ロラン王国のみに恩寵をもたらす存在ではない』と。それに召喚聖女のことも、『召喚したのは大神殿の者であって女神とは限らぬ』と仰っていた。これについて、一部の国と神殿には記録が残っているらしいな?」
「…………」
「道中、大神殿に立ち寄って尋ねよと指示されている。爺さんはその件、何か知っているか」

 ――知っていそうだな。
 答えを聞くまでもなく、その表情で察しがつくぜ。

 セレスティーヌ本人は引退したがってんのに、どうにも彼女の意に反して、彼女こそが『本物』ではないかと思わせる証拠ばかり出てくる。
 召喚された娘は例外なく聖女になると俺は思っていたし、ロラン王国の奴らもそう思っていたはずだ。そうでなければ、セレスティーヌを王子の正妃候補から外す理由がない。
 だがマティス陛下は、『諸説ある』という言い方をしていた。
 つまり過去には、そうならなかった例もあったっていうことじゃないのか。

「やはりセレスティーヌにとって、あまり聞きたくない話になりそうだな」
「だからおまえさんが先に聞いといて、あとで取捨選択した内容をお嬢さんに教えてやろうっちゅうことか。あのアロイスのんが過保護になりおって……」
「その話はやめろっつってんだろ!」

 わざとらしく涙ぬぐう仕草なんてしてんじゃねえよ……!


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