聖女転生? だが断る

日村透

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聖女達の反逆

247. あの国には山賊がいる、それでいい

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 読みに来てくださってありがとうございます……!
 年末にかけて、ちょいちょいお休み挟みつつの投稿となりますm(_ _)m

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「山賊か……とうとうあの国にも出てきたか」
「それほどに人心が離れているのでしょうな」

 アロイスを掴まえた時、彼はちょうどヒューゴと話しているところだった。
 ミュリエルが発見したという山賊について伝えると、二人は納得半分、驚き半分という反応だった。

「わたくしも驚きましたわ。これまで大きな犯罪者の一団など、ロラン王国にはありませんでしたものね」

 聖女信仰が根付いていた影響で、他国と比べたら盗みや殺人といった罪を犯す者が少なかった。
 それがあの国の数少ない美点だったのに。

「王子と俺らの間に出てきた瘴気、あれがどんどんでかくなっているみたいでな。その手前にあった小村の民が続々と逃げ出して、その先で賊になるかもしれんとは思っていた」
「ロラン王や神殿の者どもが、その者達の面倒をちゃんと見てやるとは思えませぬ。放置され、行き場を失って……ということは充分に考えられましょう」

 驚きはしても、やはり「有り得る」という結論になる。
 ジゼルが言っていたように、脱走兵が強盗団に早変わりするというのも、充分有り得ることだった。

「ミュリ、そいつらはどのへんの山を根城にしている? 詳しく説明しろ」
「アイ!」

 ミュリエルが元気よく返事をした。
 とても賢い鳥だけれど、彼女の喋り方は小さな子供のようなので、私には理解できないことが多々ある。
 アロイスはその内容を確認する話し方に慣れていて、少し時間はかかったものの、ミュリエルが『偵察任務』で見聞きしたものをどんどん明らかにしていった。

 ……話が進むにつれ、口数が少なくなる私達。

「山賊ってつまり」
「ジゼルさん、言っちゃダメ」

 メラニーさん、止めてくれてありがとう。
 ロラン王国の神殿には、とっても怖い盗賊団がいる。
 彼らは山から下りてきて、神殿に住みついたようだ。
 それでいい。

「あいつら、やってることは賊そのものだからな……それでいいだろ」

 アロイスは私の心を読んだみたいなタイミングで言った。
 確かに、あの人達は神官の服を着た犯罪者の集団である。
 ミュリエルは単に見たまま、あるがままを報告しただけだ。

「ねえセレ様、ちょっといい?」
「ええ、メラニー様。どういたしましたの?」
「ロラン王国の神殿にも孤児院はあるでしょう? そこの子供達、大人がみんなそんなことをしていて大丈夫なのかしら」

 不意を突かれて目をしばたたいた。
 私だけでなく、ほかの皆も似たような反応になっている。

「ふむ、メラニー殿はあの国の神殿事情には明るくないのですな? 博識でいらっしゃるので、とうにご存じかと思っておりましたぞ」
「褒めてくれてありがとう、ヒューゴさん。ええ、その通りよ。あの国は魔法使いを排斥はいせきしているから、とにかくあたしみたいなのを嫌っているってこと以外、そんなに詳しくないのよ」

 そうか、と合点がいった。
 内部の人間でないとわからないことはたくさんあり、ましてやメラニーさんは魔法使い。
 大魔法使いの弟子という肩書に加え、その名に恥じぬ知識の持ち主だったから、みんな彼女が『知っている』前提で進めてしまっていた。

「うっかりしてましたわ。アロイス様達にはお教えしているからと、メラニー様へのご説明を失念してしまうなんて」

 以前、アロイスに保護してもらった頃、彼らに神殿の内情を詳しく教えてあげたことがある。
 その代わりに、外から見たロラン王国の神殿の印象を教えてもらったのだ。
 だからつい、『みんな知っていること』という感覚になってしまっていた。

「いいのよぉ。それで? その様子だと、あんまり心配しなくていいことなのかしら?」
「そうですわね。簡潔に言ってしまいますと……あの国には、孤児がほとんどいないのですわ」

 神殿が孤児院を併設しているパターンは多くある。
 ただ他国と比較して、そこに入る子供の数がとても少なかった。

 ――ロラン王国の数少ない美点、もうひとつありましたわね。

 子を捨てることは罪のひとつであり、捨てられる子があまりいなかったのである。
 両親を失った子がいても、だいたいは親戚か隣近所の大人がその子を見てやった。
 だから神殿は孤児院の役目も果たす場所ではあったけれど、子供が一人もいないことは珍しくなかった。

「大神殿は、一番若い子でも十代半ばぐらいでしたわ。神官見習いとして、立派にわたくしの監視役を務めていましたのよ」


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