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未知の瘴気
131. 地下に隠された秘密
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ちょくちょくお休み挟んですみません(汗)
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私が水の浄化を行える量は、二人前ぐらいの鍋に、なみなみ一杯分ぐらい。
それを一時間に一回のペースであれば、ほぼ消耗することなく一日中行える。
対してトマス神官は、片手で運べる一般的なサイズの桶で、日に一回が限度という話だった。
その桶で浄化できる水の量だけれど、多分、なみなみ一杯分ではない。
何故なら、水は非常に重い。この地下にある魔法効果のおかげで疲労が軽減され、水桶を持って階段を上がるまでは問題がなくとも、廊下に出ればその効果はなくなる。
それに、ただ歩いているだけで水が揺れてこぼれてしまうから、量を抑える必要があるはずだ。
おおよそ、五~六リットルぐらい。トマス神官の限度は、ざっとそのぐらいと推測できる。
それに私もアロイスも、それを『どのぐらいの時間で』浄化していたのかを訊いていなかった。
もしかしたら一回魔法をかけて終わりではなく、重ねがけをしている可能性すらある。
この泉全体に魔力を通すことが、多分トマス神官にはできない。
私の魔力量は普通の神官と変わらないものの、魔法の練度が高い分、省エネで大きな効果を発揮できるようだった。
そもそも、瘴気の含まれていないただの水に、魔力を含ませられる者自体が稀だった。
これまで私の周りには、水の浄化に関する比較対象がいなくて、そういうことを判断しようがなかった。でもトマス神官の様子からして、どうも彼が標準らしいと見て取れる。
私の魔法は私が思っていた以上に有用だった。
この水すべてを浄化する要領といっても、それは感覚的な話で、要は水の中に魔力を満たせればそれでいい。
効果は一瞬で、劇的に表れた。
「おお、すげぇな」
「うわっ……!」
「これは、凄まじい……」
泉に含ませた魔力は、瞬時に吸収された。
根から栄養を吸い取るように、水に触れていた部分から伝わり、奥の壁に巨大な絵が描かれてゆく。
「本当に凄まじいですわね……」
「ああ、あんなでかい壁画があったとはな。おそらく、通常よりも吸収力の強い魔石を砕いて塗料にしたやつだ。岩や石壁なんかに塗ると、そこに何かが塗られているようには見えないことが多い。アホみたいに値が張るもんで、あまり使う奴はいないんだが」
「そのようなお品がありましたのね」
立ち上がる際、アロイスや騎士がすかさず背を支えてくれた。
この場所では全然疲れないと知っているのに、それでも気遣ってくれるのが、素直にありがたい。
トマス神官は位置的に遠かっただけで、私に向ける目は心配そうだった。
「大丈夫でしてよ。でもありがとう存じます。――ところで、あの絵ですけれど」
「地図、だな。それも、描かれたのはつい最近だ」
「最近?」
「最近、ですか?」
素っ頓狂な声を発したのは私だけでなく、トマス神官もだ。
彼も、てっきりこれを太古の地図だと思っていたのだろう。
アロイスは首を横に振った。
「最近と言ったら語弊があるかもしれんけどな、少なくとも古いものじゃない。何十年だか前に、新たに作られた村の位置が描かれている。開墾によって作物の生産量を増やすために、よそから農民を移住させて村を作らせるということがたまにあるんだ」
彼の答えは明快だった。
それならば確かに、この壁画はほんの数十年内に描かれた『新しい』ものだと言える。
「もしや、この神殿が放棄される前に、当時の神官の方々が描き残されたのかしら?」
「有り得るな。あの塗料、本当ならあっち側にもあった壁の魔石灯を全部外して、自分達で作ったんじゃないか? ――何にせよこんな仕掛けを残すということは、ただの地図じゃないんだろうさ」
そもそも地図自体が一般に出回っているものではない。
アロイスは商人という職業柄と、皇帝陛下の親族という立場の両面から詳しくなったのだと想像がつく。
「わたくし、このあたりの地理にまったく詳しくありませんの。何か変わったものが描かれていたとしても、気付けそうにありませんわ」
「そのへん、気付かせるための『印』でも残してくれなきゃ不親切だよな。ただ俺としては、川の位置が気になる」
「川の位置?」
「壁画の右側上部から下に流れてるだろ。俺の認識していた位置よりも、かなり村に近い」
アロイスは顎へ手を当てながら、壁画の地図を睨んでいた。
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