巻き戻り令息の脱・悪役計画

日村透

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甘く誘う悪魔

111. 甘い一日(微*)

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 もしも過去へ戻ることができたら、と誰しも夢想した経験があるだろう。
 巻き戻りではなく、過去の己へ何かを忠告することができたとしたら。

 俺は、指の本数と入り口の定義について頭を悩ませていた当時の俺に言ってやりたい。
 おまえそれは前戯も前戯、準備運動なんだぞ―――と。

 本番という言葉の真の意味を、嫌というほど身体で学んだ日から、三日目。
 なぜ三日目。間の一日はどうした?
 答え。……ベッドから出してもらえませんでした。

 あの日あの行為が、何時頃に終わったのかは定かではない。後半は意識が朦朧もうろうとして、最後は気絶に近い形で眠ったようだ。
 そして翌日の朝、いつも通りの時間に目が覚めた。ものすごく、とてつもなく、これでもかと体力を使ったはずなんだが、開始時間が早かったおかげで、そのぶん睡眠時間が長く取れたみたいだ。
 すっきりした頭でパカッと瞼を開けたら、目の前にアレッシオの寝顔が……。

 アレッシオのベッドの上で、身体は綺麗に清められていて、シーツも交換されてサッパリだし、それでもって裸で抱きしめられているんですよ。
 状況を呑み込んで頭の中がフィーバーしたわ。脳内乙女化してきゃーきゃー叫びましたわ。ついでに自分の痴態というか醜態を思い出し、ギャーギャー叫び転げたくなったわ!
 こんなの正面切って本人に言えなぁーい、とか言ってた俺どうした!! 全部本人に垂れ流してるじゃん!! なんでそこんところはバッチリ記憶に残っているの俺!! そこは都合よく忘れるとこでしょ!!

 悶えながら顔を両手で覆っていたら、アレッシオが「ん…」と目を覚ました。
 寝起きで少しぼーっとしているアレッシオ初めて見るな、かわいいな……と、さっきまでの悶絶をころっと忘れて魅入る俺。

『オルフェ……?』
『! ……お、おはよう……』

 っぎゃあああ愛称! 愛称呼びが継続されている! 嬉し―――え?
 感動に打ち震えている俺を、何故かくるんとひっくり返したアレッシオ。
 え? え? 何? と思っているうちに。

『んっ!? ……あっ、アレッシ……ふあ、ぁ、あぁ!』
『ふ……おはようございます』
『あっ、あぅんっ』

 後ろからずぶずぶずぶ、と入り込んできて、突き上げながら朝の挨拶だと!?
 しかも両手で、胸をさわさわ、乳首をもみもみ……自分で触っても欠片も感じなかったそこが、あいつに触られると下半身直撃の性感帯だった。
 いや、そこだけじゃなく、あいつに触られたところ、漏れなく全部なんだけど……。

 そんなわけで起きて早々、後ろからずんずん攻められて泣かされまくりまして。朝食を食べて休んだら、また少し復活して攻められて。
 そうして二日目が終了。朝からずー……っと、文字通りがつがつ貪られて終わってしまいました。
 エルメリンダの見立てが正確過ぎる……。

 さらに迎えた翌日の今日。
 ベッドから出られません。またか。

 だって……だって、まだおしりの中にアレッシオのが入ってる感じがするんだよう……。
 あんなでっかいのが本当に入るなんて、人体の神秘だ……。
 事前にたっぷり慣らされたおかげか、そこの痛みはなかったけどさ。その代わり、全身筋肉痛という落とし穴が待っておりました。

 体力については、日常生活が体力づくりみたいなもんだった。移動するのに自分の足か馬を使う生活をしていたら、食べて寝ているだけでそこそこ体力も筋肉もつくんだよ。
 俺の場合は書類仕事が多くてモヤシになりそうなものだけど、視察の時に馬で行くことがほとんどだった。馬車は道幅によって通過できないところが多いし、窓から見る景色以外の情報が入ってこないからね。
 それに休んでいる日も庭か邸内のどこかをぐるぐる散歩していたら、それだけで運動になる。我が家、めっちゃ広いんだもん。
 そういうわけで、体力面は、クリアできたと思うんだ。
 ……普段使っていない筋肉がギシギシ言うのだけはどうにもならなかった。

 二日連続でアレッシオの寝室にこもるとか、俺、どんな風に思われているんだろう……うわあぁぁん……。

「朝食をお持ちしました。起き上がれそうですか?」

 俺の脳内で話題の男が、完璧執事モードで声をかけてきた。

「……むり。いたい……」

 ものすごく恨みがましい声でうめいてやったのに、「それは大変です」とかサラッと言いやがったよ。

「ところでオルフェ。可愛らしいですがそこから出てもらえませんか? 食事の用意ができません」

 は? 何を言うんだ。この布団ダンゴはもはや俺の一部なのだ。断じて俺はここから出な―――ぎ取りおった!?
 しかも完璧でストイックな執事の顔から一転、妖艶な夜の男の顔で俺のはらをサス…と撫で。

は、痛みますか……?」

 とか耳元でしっとりささやきやがった……!

 そ、そこは、つまりさんざん使ったは痛いですかと!?
 ぶんぶんと必死で首を横に振った。

「それはよかった」

 あ。しまった。これ、縦に振って痛いですアピールをしたほうが安全だった……? でももう遅い。
 なんかまだ入っている感じはするけど、実際つらくはないんだよなそこは……うう……。
 ぷるぷる震える俺に、アレッシオは困ったようにくすりと笑った。

「今日はしませんよ。昨日までかなり無理をさせてしまいましたから、この後も寝て休んでください」
「……そうさせてもらうと、助かる……」

 おまえの気が済むまでやってくれドンと来い! と、いくら気持ちでは思っていても、この筋肉ギシギシ状態で三日目は真剣に無理だ。俺が苦痛を我慢していたらこいつは確実に気付いてくれるし、そんな状態でしても愉しめないだろう。

 アレッシオは俺の背中を抱いて起こし、クッションを挟んで背もたれにしてくれた。ちなみに今着せてもらっているのもアレッシオのナイトガウンだ。《セグレート》から出しているこだわりの品で、寝間着の上に羽織ってもいいし、これ自体を寝間着にしてもいい。
 四脚のついた台を起き、その上に朝食が置かれる。食べやすそうな料理のワンプレートだ。これはジャガイモとチーズのニョッキかな?
 ものすごく機嫌のよさそうなアレッシオが、一個ずつスプーンですくって口に運んでくれる。もちもちして美味しい。

「……前にも、こんなことがあったな」
「ありましたね。私は無意味な業務からやっと解放された直後で、あなたは熱を出していて」
「憶えてくれていたのか」
「当然でしょう。あの頃からあなたは、私を翻弄ほんろうする天才でした」
翻弄ほんろうなんてした憶えはないぞ」
「しかも無自覚です。これからたっぷり目にものを見せてさしあげますから、お覚悟を」
「うぐ……」

 赤面する俺にくすくす笑いながら、甲斐甲斐しくスプーンを運んでくれるアレッシオ。
 ほんとに、あの時も思ったけど。ゲームの中で、暗い影を背負って、いつも独りで、俺を父の仇と恨んでいたであろうアレッシオ=ブルーノが…………事後の朝に、甘い笑顔を俺に向けて「あーん」してくれる世界……。
 なんだか、遠いところに来てしまった気がするなぁ。


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