文字の大きさ
大
中
小
79 / 195
番外・後日談
27. 正しい野望の燃やし方
半日休みを取ったはずが、何故か体力を使うことになった午後。
だけどあのアレッシオが、まさかの嫉妬!
嫉妬だよね? そうだよね? ―――をしてくれたとあって、とっても疲れましたが心は最の高に満たされました……。
俺が可愛いって言うとちょっぴり拗ねるんだあいつ。自分は俺のこと可愛い可愛い言うくせに、俺に言われるのは嫌とか。たまにそういう子供っぽい面もあるのを、俺には遠慮なく見せてくれるというところがまたね。
甘えられてる特別感がこう、たまらんのですよ。あああ好き……。
なんて悶えていたら、俺が意識を取り戻した頃には帰宅していた子猫がチクリ。
「みゅ。そーゆー発言だだ漏れにすると、ダメ夫に引っかかったお嬢さんみたいに聞こえるぞ」
なにい!? 失礼な!
いざとなったら自力で爵位買えるぐらいの金を稼げて、熱でへろへろになっているパートナーに「あーん」で食べさせてやるような男がダメ夫はないだろ!
とは思いつつ、でも第三者が耳にしたらそんな風に聞こえるのかもしれんから、俺の心のメモリーに保存するだけで我慢しとくさ。
ちなみにアレッシオはシャワー中だ。
配管を伝って声が別の場所に漏れる問題があって、一緒に風呂に入ったことってないんだよね。
声漏れの何が問題かって? そりゃあ、いろいろと、あれでそれなんだよ。ごにょごにょ。
というのは置いといて、風呂工事は壁をぶち抜いてドアを作るよりも大工事になるみたいなんだよな。水回りは慎重にしなきゃだし。
「そんなん、温泉旅館風の別荘でも建てちまえば?」
「素晴らしい意見だ」
子猫よ、ナイス提案!
……いやいやいや、俺はこれでも真面目な領主様をやっているんだから、私欲でそんなもん建てちゃダメだろ。
…………でもいつか、一緒に風呂に入ってみたいなあ、なんて……。
………………こぢんまりとした、隠れ湯的な温泉宿みたいなのだったら、そんなに費用も日数もかからないと、思うし……。
保留、いや、要検討としておこう。うむ
そんなこんなで十月末、秋祭り復活の日と相成りました。やったー!
収穫祭めっちゃ楽しみだったんだよ。俺が食い意地張ってんのって、あっちの世界の『俺』が影響していると思うんだよね。人が豊かな生活を送るのに美味いメシは欠かせないって信念が染みついてたし。
でもって、こっちの世界の人々も、当たり前だけど美味しいものが食べられるんなら食べたいんだよ。春と秋の二大祭りが全国的に人気なのって、その日は特別に食べられる料理がいろいろ出てくるからっていう面もあるんだ。
だから今回の祭りにおいては、祭り予算が必ず民の代表者に行き渡るよう徹底させた。もう何年も予算がくすねられていたせいで、毎年ガッカリ祭りを開催するしかなかった領民達は、「予算が増えた!」と大喜びだったらしい……。
いや、予算は増やしてないし、毎年計上はしてたんだよ。それが間でごっそり抜かれていたから、彼らは毎年のように、ほぼ自腹で祭りを開催するしかなかったわけで。
それじゃあろくな食べ物も提供できないし、催し物に回すお金も足りないよね。
マジごめんね……。
しかしこれで、かつてのような盛大な祭りをすることができる。ロッソ杯みたいに本邸近くの住民だけじゃなく、ロッソ領全体の村や町でそれぞれの祭りが行われるから、領民全体が楽しめるってわけだよ。
たくさん収穫できた食材で、たくさんの料理の出店が並ぶ。昔は定番料理が二種類ぐらいだったそうなんだが、俺と料理長がタッグを組んでせっせとレシピを流したもんで、今年は今までにないメニューがぐんと増えたそうな。くっくっく。
「さて、視察に向かうぞ!」
「はい、参りましょうか」
「ふっふふ、楽しみですね」
「お供いたします」
ニコラは奥さんの土産になりそうなものはないか探したくて、ラウルは商売のネタ探しを楽しみたいようだ。
まあ俺も視察と銘打って、やることは祭り見物だしな。みんなそれぞれ好きに楽しんでくれたらいいなと思う。エルメリンダは今日休みにしてあげたから、メイド友達と一緒に回るらしい。旦那のジェレミアも半日シフトにしたから、ちゃんと一緒に遊べるぞ。
しかし俺は視察だろうがただのお出かけだろうが、護衛必須。なのでアレッシオとデートと言い切れないところが唯一残念なところだ。
本邸の庭は広過ぎて、門まで行くのにも馬か馬車を使う。今回は馬車でだだっぴろい庭を抜け、門をくぐればそこはもう町だ。
馬で行こうかとも思ったけど、護衛の観点から今回は馬車にして欲しいって言われたんだよね。久々の祭りだから、最初は様子見のために乗り物に入ってて欲しいということだ。
「祭りに何か仕掛けてきそうか?」
誰とは言わないけど、ほら、いたじゃん。なんか俺に勝つことに執念燃やしてそうな奴が。
窓の外に目をやれば、ロッソの馬車に気付いた領民が頭を下げている。下げる前に笑顔だったのがちらりと見えてなんか嬉しいな。
あっちの若いお嬢さんは、護衛の騎馬にきゃあきゃあ黄色い声を送っていそうな雰囲気だ。わかるぞ、かっこいいもんな護衛騎士って。
町の至るところに飾られている花は、生花より造花が多い。でもさすが職人の多い領地の民だけあって、どれも見事だ。本物と見紛いそうなものもあれば、造り物とわかるのに味があって魅力的な作品もある。どうやら子供達も花づくりに参加したようだな。
これらを確実に邪魔したそうな奴が一人いたろ。そいつは大丈夫なんだろうか。
「あなたに妙な対抗心を燃やされている御仁のことですが、現時点でこちらに仕掛けてくる余裕はなさそうですよ」
アレッシオがクスリと嗤った。
「馬術大会は成功したから、さほど焦っていない……というわけでもなさそうだな」
「そうですね、馬術大会は大成功だったそうです。それはもう立派な大会だったそうですよ」
なんか含みのある言い方だな? 軽く首を傾げた俺に、側近達は一様にニヤリと嗤った。
ニコラ君の笑顔までほんのり黒いなと思っていたら、ニコラが爆弾発言を落とした。
「借金だったんです」
「は?」
「あちらの馬術大会、費用のほとんどを借金でまかなってたんですよ。それが返済できていないうちに、お次は収穫祭まで閣下に対抗して盛大にやろうとしていましてね。金貸しが目をギラつかせて見張っているそうです」
「……バカなのか?」
「バカですねぇ」
「バカですよね」
「バカでよろしいかと」
意見が一致した。確定だな。
何か事業を始める時に、いくらかお金を借りるってのはよくある話だが、どう聞いても普通の額じゃないだろ。大イベント二回分だぞ。
「要するに、見栄を張り過ぎたのが仇になり、こちらに妨害行為をわざわざ仕掛けてくる余裕がなくなっているわけです。収穫祭もご丁寧に同じ日に設定したようですからね。同時進行で別の仕事が可能な方ではないとの評判をお聞きしますし、本日は特段何事もないのではと考えます」
もちろん油断は禁物だし、夜になれば酒も出るであろう祭りにトラブルはつきものだ。自警団も領内を交代制で見回り、ギスギスしてはいないけれど、いつもより警戒は強めているそうだ。
「ですので、今回は余事を気にせず、ただ視察を楽しみましょう」
「そうだな」
視察だよ。お仕事だよ!
あー楽しみ♪
感想 882
あなたにおすすめの小説
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
【完結】悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
本編完結済です。
もっちもっち感謝祭で、リクエストいただいたお話を更新しています。
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
皆の動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
表紙や動画にAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
『捨てたはずのΩが運命の番でした ~今さら愛してると言われても、もう遅い~
雪兎あらすじ
Ωである朝霧湊は、事故のような一夜をきっかけに、名門企業の御曹司α・九条玲司と関係を持つ。
しかし玲司は「ただの過ちだ」と湊を切り捨て、政略結婚のためβの婚約者との未来を選んだ。
深く傷ついた湊は、彼の前から姿を消す。
数か月後――。
湊の身体は、これまで誰も知らなかった希少な『遅咲きΩ』として覚醒する。
その瞬間、玲司は初めて湊こそが運命の番だったと知る。
「戻ってきてくれ」
今さら必死に追いかけてくる玲司。
だが湊の隣には、自分を支え続けてくれた医師のα・神崎伊織がいた。
「あなたは俺を捨てたでしょう」
後悔に苦しむα、執着する第二のα、そして希少Ωを巡る陰謀。
もう二度と傷つきたくないΩが最後に選ぶ相手とは――。
捨てた側の後悔と執着が加速する、すれ違いオメガバースBL。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
婚約破棄から50年後
あんど もあ王立学園の卒業パーティーで、王子が婚約者に婚約破棄を宣言した。王子は真に愛する女性と結ばれ、めでたしめでたし。
そして50年後、王子の孫の王子は、婚約破棄された女性の孫と婚約する事に。そこで明かされた婚約破棄の真実とは。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!