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番外・後日談
51. やる気の出るご褒美投下
しおりを挟むロッソ王都邸の執務室にいつものメンバーを集め、何度目かの打ち合わせをする。この中にジルベルトが加わるようになったのは感慨深いな。
式典用の衣装もろもろ、その他はつづがなく手配が終わっている。
あとは手順と作法、それを再度確認するだけ。だけと言っても、これが一番面倒だった。
まずは廊下で待機し、呼ばれたら式典用の大広間へ進み出て、国王と王妃の前で膝を突いて頭を垂れる。やたら持って回った言い方の『これまでの功績』を聞いた後、王様からのご褒美にお礼を言って退場……したいところだが、以降はすべて終わるまで用意された椅子に座り、じー……っと良い子にしていなければならない。
その後は俺らを湛えるためという名目のパーティーが待っている。
このパーティーに関しても、俺は結構ですサヨナラをしてはいけない。
「パーティーの間もずっと座っていてはダメか」
「ダメですよ兄様」
「無理ですって」
「いけませんよ閣下」
「お諦めください」
言ってみただけじゃん。みんな一斉に言わなくていいじゃん!
わかってるよ、出席した以上は挨拶回りをしなきゃいけないことぐらい。身分の低い者から勝手に話しかけてはいけないルールがあるから、今回身分がひとつ上がる関係で、挨拶する者をほぼ選べる立場になるのだけが幸いだがな。
俺が絶対に挨拶を省けない相手は、身内枠で出席するジルベルト。これは論じるまでもなく殿堂入りだ。
あとは国王陛下と王妃陛下。それから、今年から学園にご入学の王子殿下。ぴかぴかの中学一年生なわけだが、そろそろご公務の始まるお年頃だから、こういう式典にも出席義務があるらしい。大変だね。
次に公爵家。この国に公爵家は二家存在する。
片方のヴィオレット公爵家とは何年も仲良しこよしだから、こちらは何の心配もいらない。もう一家はあまり表に出てこないけれど、ヴィオレット公爵家とは仲がいいそうで、こちらも心配無用だと聞いていた。
その公爵家では二十数年前、兄弟間で後継者争いが起きている。その際、兄が落馬事故によって重傷を負い、それが原因で両足が動かなくなったらしい。
これではもう当主としては不適格だ、弟のほうに跡を継がせるべきだと弟一派は勢いづいたが、そうはならなかった。ヴィオレット家が兄の後ろ盾になることを宣言したからだ。
おまけにこの兄、弟など比較にならないほど切れ者だったらしい。だから弟は本当なら兄貴を暗殺したかったようだが、結局うまくいかずに悪事の証拠も押さえられ、追放処分になったそうだ。
よくあるお家騒動と世間には片付けられてしまったけれど、実はそいつも例のクズ世代の一人だったみたいでな。
俺の与り知らぬところで、その公爵様の俺への心証はだいぶ良くなっていたらしい。俺は確かに敵も多いけれど、そういう味方も結構増えているから、あんまり気にせず堂々としていればいいと言ってもらえている。
ちなみにその公爵さんが表に出てこない理由は、車椅子生活をしているからだ。バリアフリーっていう概念、ないからなぁ……。
今回は代理として息子が出席するそうだ。足がやられた当時、既に息子が二人いたそうで、兄貴の暗殺に失敗した例の弟は、『足』以外に貶せるポイントがまったくなかったらしい。兄貴は兄貴で、そういう弟の醜悪さを周囲に見せつけて人望を失わせる戦法を使ったとかで……お家騒動って、ホントやだね。
敵視はされていないにしても、できればお近付きになりたくはない。なんか怖いし。
でも絶対に声をかけられるだろうなぁ。
「そういえば、かの公爵家はご長男のみの出席なのだろうか?」
「ご長男のみで変更はないようです。ご次男は留学中、ご長女は他国へ嫁いでおられますから、いずれも出席義務はありません」
公爵家のご長男はアレッシオより少し年下ぐらいで、未婚っつったかな。男はいろんな理由で結婚の遅い奴がいて、女性よりも呑気でいられるけど、過去のあれこれで女性側に結婚をためらわれていたりすんのかな。
なんて、人んちの婚姻事情なんて俺の気にすることじゃないか。イレーネとシルヴィアに色目を使われなければ、基本どうでもいい。
国王一家と、公爵家。俺は彼らから声をかけてもらうのを待つ立場だ。わざと声をかけずに無視、なんていう嫌がらせあるあるが頭に浮かぶけれど、俺は間違いなく侯爵家の中では真っ先に声をかけられるから、儚い夢は見るなといろんな人に言われている。
別に最後でもいいんだけどな~、っていう俺の性格の理解者が年々増えまくり、ありがたくて涙出そうになるね。
四家ある侯爵家に関しては、同格の扱いになるから挨拶は必須ではない。が、あちらから話しかけてくる可能性はある。
そのうちの一家は、元同級生のお父さんだ。親子仲はいいようで、「父に会ったらよろしく!」と手紙をもらっている。この人はむしろこっちから話しかけたい。
もう一家は貴族院のトップをしている人物だ。中立的なスタンスを常に貫いている人物だが、密かにヴィオレット公爵家の傘下に入っている。公爵閣下ご本人がそう仰っていた。お願いですから俺の耳にそんな情報を入れないでください。
残り二家はまあ、無視でいいかな。
「我がアランツォーネの筆頭もパーティーに出席します。ちょっとでいいのでお声をかけてくださいね」
と、ラウル。もちろんだとも。ラウルの父ちゃんにも久々に会うなあ。
「僕の父も出席しますから、よろしくお願いします」
と、ニコラ。俺以上にそういう集まりが苦手そうなおじさんが、ワイングラス片手に所在無げにぽつーんと立っている光景が脳裏に浮かんだ。は、早く声をかけてあげないと!
「ローザ家の御嫡男も、男爵の名代として出席されるそうです」
と、アレッシオ。
ローザ男爵家はまだエテルニアの貴族だ。だが近々、正式にアルティスタ貴族になる話が進んでおり、俺の傘下の貴族であると早めに表明しておきたい。かといって当主本人が出ると、エテルニア王国に後足で砂をかける真似になってしまうので、息子を代理人として出席させる、ていう塩梅か。
いくらエテルニア王国へ未練がないと言っても、喧嘩を売りたいわけじゃないだろうからね。
……あ~、気が重いなあ。
ラウルん家はもちろん、ヴェルデ家もローザ家も、出席の権利があるだけで、義務なんて本来はないんだよ。けれど彼らは俺の傘下として、あるいは新たにそこへ加わる者として、何を置いても絶対に参加しなきゃならないっていうんだから。
しかも彼らだけじゃなく、普段は領地にいるロッソ配下の小貴族も何人か出て来るんだ。主人として、俺は彼らにも絶対に声をかけてあげなきゃならない。
おうさまたちがちゅうもくするパーティーかいじょうでだよ……。
気~が~お~も~いぃ~……。
ジルベルトの手前、執務机にだらーんと懐く真似は控えたけれど、そんな俺のダレ切った顔色を読んだのだろう。アレッシオが苦笑した。
「閣下」
「なんだ?」
「私とあなたの当日のお衣装は、さりげなくお揃いにしてくださるそうです」
おそろい。
おそろい、とな?
ピコーンと俺の脳内に何かが灯った。
身分的にアレッシオは一代貴族の当主の立場であり、俺の腹心として出席する。
でもって俺は自分の衣装を、実はまだ確認していない。イレーネとシルヴィアがラウルと一緒に手配してくれているのだ。
彼女達は「楽しみにしてらしてね!」と微笑を浮かべ合っていた……。
「誰よりも威厳に満ちて美しい、あなたの勇姿を心から楽しみにしております」
「―――任せろ」
ふふふ、ははは、ふはははは。
よかろう。有象無象の視線など何のその、おまえのあるじとして完璧に素晴らしい当主を演じ切ってやろうではないか!
アレッシオにニヤリと笑いかけてやれば、彼は嬉しそうに微笑みながら頷いた。
ほかのみんなが生ぬるい視線を寄越してくるけど、気にしないんだからね!
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