136 / 209
番外・後日談
51. やる気の出るご褒美投下
しおりを挟むロッソ王都邸の執務室にいつものメンバーを集め、何度目かの打ち合わせをする。この中にジルベルトが加わるようになったのは感慨深いな。
式典用の衣装もろもろ、その他はつづがなく手配が終わっている。
あとは手順と作法、それを再度確認するだけ。だけと言っても、これが一番面倒だった。
まずは廊下で待機し、呼ばれたら式典用の大広間へ進み出て、国王と王妃の前で膝を突いて頭を垂れる。やたら持って回った言い方の『これまでの功績』を聞いた後、王様からのご褒美にお礼を言って退場……したいところだが、以降はすべて終わるまで用意された椅子に座り、じー……っと良い子にしていなければならない。
その後は俺らを湛えるためという名目のパーティーが待っている。
このパーティーに関しても、俺は結構ですサヨナラをしてはいけない。
「パーティーの間もずっと座っていてはダメか」
「ダメですよ兄様」
「無理ですって」
「いけませんよ閣下」
「お諦めください」
言ってみただけじゃん。みんな一斉に言わなくていいじゃん!
わかってるよ、出席した以上は挨拶回りをしなきゃいけないことぐらい。身分の低い者から勝手に話しかけてはいけないルールがあるから、今回身分がひとつ上がる関係で、挨拶する者をほぼ選べる立場になるのだけが幸いだがな。
俺が絶対に挨拶を省けない相手は、身内枠で出席するジルベルト。これは論じるまでもなく殿堂入りだ。
あとは国王陛下と王妃陛下。それから、今年から学園にご入学の王子殿下。ぴかぴかの中学一年生なわけだが、そろそろご公務の始まるお年頃だから、こういう式典にも出席義務があるらしい。大変だね。
次に公爵家。この国に公爵家は二家存在する。
片方のヴィオレット公爵家とは何年も仲良しこよしだから、こちらは何の心配もいらない。もう一家はあまり表に出てこないけれど、ヴィオレット公爵家とは仲がいいそうで、こちらも心配無用だと聞いていた。
その公爵家では二十数年前、兄弟間で後継者争いが起きている。その際、兄が落馬事故によって重傷を負い、それが原因で両足が動かなくなったらしい。
これではもう当主としては不適格だ、弟のほうに跡を継がせるべきだと弟一派は勢いづいたが、そうはならなかった。ヴィオレット家が兄の後ろ盾になることを宣言したからだ。
おまけにこの兄、弟など比較にならないほど切れ者だったらしい。だから弟は本当なら兄貴を暗殺したかったようだが、結局うまくいかずに悪事の証拠も押さえられ、追放処分になったそうだ。
よくあるお家騒動と世間には片付けられてしまったけれど、実はそいつも例のクズ世代の一人だったみたいでな。
俺の与り知らぬところで、その公爵様の俺への心証はだいぶ良くなっていたらしい。俺は確かに敵も多いけれど、そういう味方も結構増えているから、あんまり気にせず堂々としていればいいと言ってもらえている。
ちなみにその公爵さんが表に出てこない理由は、車椅子生活をしているからだ。バリアフリーっていう概念、ないからなぁ……。
今回は代理として息子が出席するそうだ。足がやられた当時、既に息子が二人いたそうで、兄貴の暗殺に失敗した例の弟は、『足』以外に貶せるポイントがまったくなかったらしい。兄貴は兄貴で、そういう弟の醜悪さを周囲に見せつけて人望を失わせる戦法を使ったとかで……お家騒動って、ホントやだね。
敵視はされていないにしても、できればお近付きになりたくはない。なんか怖いし。
でも絶対に声をかけられるだろうなぁ。
「そういえば、かの公爵家はご長男のみの出席なのだろうか?」
「ご長男のみで変更はないようです。ご次男は留学中、ご長女は他国へ嫁いでおられますから、いずれも出席義務はありません」
公爵家のご長男はアレッシオより少し年下ぐらいで、未婚っつったかな。男はいろんな理由で結婚の遅い奴がいて、女性よりも呑気でいられるけど、過去のあれこれで女性側に結婚をためらわれていたりすんのかな。
なんて、人んちの婚姻事情なんて俺の気にすることじゃないか。イレーネとシルヴィアに色目を使われなければ、基本どうでもいい。
国王一家と、公爵家。俺は彼らから声をかけてもらうのを待つ立場だ。わざと声をかけずに無視、なんていう嫌がらせあるあるが頭に浮かぶけれど、俺は間違いなく侯爵家の中では真っ先に声をかけられるから、儚い夢は見るなといろんな人に言われている。
別に最後でもいいんだけどな~、っていう俺の性格の理解者が年々増えまくり、ありがたくて涙出そうになるね。
四家ある侯爵家に関しては、同格の扱いになるから挨拶は必須ではない。が、あちらから話しかけてくる可能性はある。
そのうちの一家は、元同級生のお父さんだ。親子仲はいいようで、「父に会ったらよろしく!」と手紙をもらっている。この人はむしろこっちから話しかけたい。
もう一家は貴族院のトップをしている人物だ。中立的なスタンスを常に貫いている人物だが、密かにヴィオレット公爵家の傘下に入っている。公爵閣下ご本人がそう仰っていた。お願いですから俺の耳にそんな情報を入れないでください。
残り二家はまあ、無視でいいかな。
「我がアランツォーネの筆頭もパーティーに出席します。ちょっとでいいのでお声をかけてくださいね」
と、ラウル。もちろんだとも。ラウルの父ちゃんにも久々に会うなあ。
「僕の父も出席しますから、よろしくお願いします」
と、ニコラ。俺以上にそういう集まりが苦手そうなおじさんが、ワイングラス片手に所在無げにぽつーんと立っている光景が脳裏に浮かんだ。は、早く声をかけてあげないと!
「ローザ家の御嫡男も、男爵の名代として出席されるそうです」
と、アレッシオ。
ローザ男爵家はまだエテルニアの貴族だ。だが近々、正式にアルティスタ貴族になる話が進んでおり、俺の傘下の貴族であると早めに表明しておきたい。かといって当主本人が出ると、エテルニア王国に後足で砂をかける真似になってしまうので、息子を代理人として出席させる、ていう塩梅か。
いくらエテルニア王国へ未練がないと言っても、喧嘩を売りたいわけじゃないだろうからね。
……あ~、気が重いなあ。
ラウルん家はもちろん、ヴェルデ家もローザ家も、出席の権利があるだけで、義務なんて本来はないんだよ。けれど彼らは俺の傘下として、あるいは新たにそこへ加わる者として、何を置いても絶対に参加しなきゃならないっていうんだから。
しかも彼らだけじゃなく、普段は領地にいるロッソ配下の小貴族も何人か出て来るんだ。主人として、俺は彼らにも絶対に声をかけてあげなきゃならない。
おうさまたちがちゅうもくするパーティーかいじょうでだよ……。
気~が~お~も~いぃ~……。
ジルベルトの手前、執務机にだらーんと懐く真似は控えたけれど、そんな俺のダレ切った顔色を読んだのだろう。アレッシオが苦笑した。
「閣下」
「なんだ?」
「私とあなたの当日のお衣装は、さりげなくお揃いにしてくださるそうです」
おそろい。
おそろい、とな?
ピコーンと俺の脳内に何かが灯った。
身分的にアレッシオは一代貴族の当主の立場であり、俺の腹心として出席する。
でもって俺は自分の衣装を、実はまだ確認していない。イレーネとシルヴィアがラウルと一緒に手配してくれているのだ。
彼女達は「楽しみにしてらしてね!」と微笑を浮かべ合っていた……。
「誰よりも威厳に満ちて美しい、あなたの勇姿を心から楽しみにしております」
「―――任せろ」
ふふふ、ははは、ふはははは。
よかろう。有象無象の視線など何のその、おまえのあるじとして完璧に素晴らしい当主を演じ切ってやろうではないか!
アレッシオにニヤリと笑いかけてやれば、彼は嬉しそうに微笑みながら頷いた。
ほかのみんなが生ぬるい視線を寄越してくるけど、気にしないんだからね!
3,640
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!
をち。「もう我慢なんて」書籍発売中
BL
これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。
ボクの名前は、クリストファー。
突然だけど、ボクには前世の記憶がある。
ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て
「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」
と思い出したのだ。
あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。
そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの!
そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ!
しかも、モブ。
繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ!
ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。
どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ!
ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。
その理由の第一は、ビジュアル!
夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。
涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!!
イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー!
ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ!
当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。
ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた!
そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。
でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。
ジルベスターは優しい人なんだって。
あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの!
なのに誰もそれを理解しようとしなかった。
そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!!
ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。
なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。
でも何をしてもジルベスターは断罪された。
ボクはこの世界で大声で叫ぶ。
ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ!
ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ!
最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ!
⭐︎⭐︎⭐︎
ご拝読頂きありがとうございます!
コメント、エール、いいねお待ちしております♡
「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中!
連載続いておりますので、そちらもぜひ♡
【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。