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番外・後日談
ベビー誕生! ウロウロあたふた (2)
(3)まで続く予定です。
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予定日の一週間ほど前になると、俺は在宅勤務するからね! という旨を他の三家に伝え、王宮への出勤をお休みした。
そしてとうとう、その日が来た。
産婆とメイド達が朝からその部屋に籠もり、役立たずの俺は用意された椅子には座らず、軽く瞼を伏せて腕組みをしながら部屋の外に立っていた。
そうしていないと落ち着かないのだ。
俺の肩にもふりとおさまったミッテちゃんも、今日ばかりはピヨヨと鳴かずに、ずっと静かだ。
廊下には母上様もいて、何故かヨハンもいた。この二人にはちゃんと座ってもらっている。ヨハンを立たせていると、あっちこっちへウロウロし始めるからだ。
奴の腰が椅子から浮きそうになるたびに、母上様が扇でピシリとやって座らせてくれる。
頼もしいです助かります母上様。つうかヨハンよ、俺が我慢してんのに、おまえがウロウロすんじゃねえっての!
しかし今日ばかりは、俺もヨハンにビシリと言う余裕がない。
時おり誰かから椅子を勧められても断り、内心とにかくハラハラしながら、ひたすら待ち続けた。
およそ数時間後、赤ん坊の泣き声が室内から響いてきた。
心臓が本気で口から飛び出そうになった。
そこにいる全員が弾かれたように扉を凝視すると、ややして、内側からガチャリと開けられた。
「母子ともにご無事で、ご健康にございます。おめでとうございます」
汗だくになったメイド長が、晴れやかな笑顔で教えてくれた。
俺達は示し合わせたわけでもないのに、一様に「はぁーっ」と息を吐いて肩から力を抜いた。
この時になって初めて、ミッテちゃんがピヨヨと呟く。
「安産だったようですね。よかったです」
……え、安産だったの?
朝から籠もって、もう何時間も経ったのに?
た、大変なんだな、ほんとに。
「どうぞ。殿下のみお入りくださいまし」
「あ、ああ……」
最初に対面するのはパパの権利だ。
それに日頃から仲良くしている家族といえど、出産直後に大人数で入室したら、奥さんのストレスになりかねない。
俺は母上様にミッテちゃんを預けた。天使のミッテちゃんから病気が感染るなんてことは有り得ないんだが、ほかの人はそんなこと知りようがないからな。
俺はアホみたいに力の入らなくなった膝を叱咤しつつ、できるだけ平然とした顔を装って入室した。
しかしリシェルと赤ん坊の姿を認めて、ポーカーフェイスなんざあっさり彼方へ消えてしまった。
「ランハート……」
背に挟んだクッションで少し上半身を起こしたリシェルが、生まれたばかりの我が子を抱いている。
先ほどのメイド長みたいに汗だくで、声もかすれ、けれどそこにあるのは輝かんばかりの笑顔だった。
「お疲れ様、リシェル」
それだけを言うのが精いっぱいだった。
自分の声がちょっと涙まじりになっている。大変だったのは俺じゃねぇってのに、情けないな。
震えそうになりながら、寝台脇に立った。リシェルの腕の中で、赤ん坊はすやすや眠っているようだった。
元気な産声が外まで聞こえていたのに、この短時間でストンと眠ってしまったのか。
既に産湯で清められ、やわらかな布でくるまれた小さな生き物を差し出され、俺はおそるおそる両腕で受け取った。
ものすごく小さいのに、ものすごく重く感じる。物理的な重量の話ではもちろんない。
おくるみの中から、小さな顔と手が覗いている。
しっかりとその子を見て、俺は目を見開いた。
瞼はまだ開かず、その子の瞳が何色かはわからない。
ごくうっすらと生えた細い髪の毛も、肌の色に馴染んでわかりにくかった。
でもおそらく、この髪は白と金の中間の、リシェルとそっくりな色合いだ。
ただ、俺がその子を見て息を呑んだのは、外見がリシェルに似ていそうだからではなかった。
――この子は、リシェルと同じ。
二代続けてフェーミナが産まれるなんて、そんなことがあるのか?
いや、前例だの確率だの、この際関係ないな。
実際に産まれたんだ。なら、そういうことだってあるんだろう。
母親似の予感がするフェーミナの我が子に、今の俺がはっきりと言えるのはこれだけだ。
「嫁にはやらん」
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