どうやら悪の令息に転生したようだ

日村透

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番外・後日談

久しぶりに二人でいちゃいちゃ (1)

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 アデリナお姉様とエアハルトをムスター邸に招き、ささやかな身内だけのお祝いを行った。
 ヴェルクの義父上ちちうえ様の親子もお招きしようかと思ったんだが、そうなるとシュピラーレの一家だけ招待しないのは可哀想だという話になる。
 じゃあ皆呼ぼうとなったら、四大公が家族も含めて全員集まることになり、それなりに規模が大きくなってしまうのは火を見るより明らかだった。

 今回はあくまで身内だけ、なおかつささやか(ここ重要)なお祝いごとにしたい。
 俺だけじゃなく、我が家の皆もそう考えていたようで、呼ぶのはお姉様の一家だけとスムーズに決まった。
 ルーディやカールを呼ぶのは、また別の機会だ。

「今日はすごく楽しかったね」
「そうだね。エアハルト義兄にい様は相変わらずお姉様を大事にしてくれているし、甥っ子と姪っ子もすくすく育って可愛かったな」

 そろそろ夜も更け、皆は各自の部屋に戻っている。
 お姉様の一家は今回、ムスター邸に二泊はしていく予定だ。
 ちなみにミッテちゃんはお姉様の一家にモテまくり、今夜はそちらの部屋に行っている。エアハルトとは王宮でちょくちょく会うんだが、お姉様は久しぶりだもんな。

 俺とリシェルの共有居間で、現在リシェルは室内用のケープを軽く羽織り、ソファに腰を沈めて大切そうにサシャの頭を支えている。胸元にくっつけた小さな頬が「んくんく」と動いているのが可愛い。
 俺はそれを横でじーっと見ている。頭の中には「ひたすら可愛い」しか出てこない。この子を見るといつも生命の神秘に感動するし、敬虔な気持ちも芽生えてくる。

 しかしこれパパが見ちゃっていいのかなと、お互い気恥ずかしくなっていたのは最初の一週間ぐらいだけだった。数時間置きに泣かれると、否が応でも慣れるものだな。

 カイやノア、メイド達は外してもらっているので、今は本当に二人きり――いや、三人きりだ。
 やっと気分的にも余裕ができて、人払いができるようになったのはここ一ヶ月ぐらいのこと。
 サシャは毎日健康に育ってくれているし、リシェルもすっかり回復して元気になっている。

「そうだ。回復といえば……」
「え?」
「どうやら皆が集まるこの日を狙って、ミッテちゃんが粋なことをしてくれたみたいでね。何をどうしたとは言えないんだけれど、どうも順調に『力』が戻っているみたいだ」
「そうなんだ? よかったね。ミッテちゃんが完全に回復するのって、あとどのぐらいかかるの?」
「そのあたりはハッキリしないけど……そういえば、全回復したらどうなるのか、あんまり訊いたことなかったな」

 完全復活したらどうなるんだろう?
 あのミッテちゃんが成長して巨大コッコになったら、なんかショックなんだけど。
 全体的に丸っこいフォルムは見るからに雛の種類が違うし、将来コケコッコと鳴き出す心配はそんなにないと思いたいけどさ。
 いや、それがミッテちゃんであれば、どんな姿になろうと最終的に受け入れるけども。

 思えばミッテちゃんの先輩方は、眩しすぎて顔立ちが全然わからなかったのはさておき、形状はみんなヒト型だった。
 ヒトの背に翼が生えている、これぞ天使という姿で、もしやミッテちゃんもああいう形態に進化するのだろうか。
 それはそれでショックかもしれない。
 でも、ミッテちゃんはいつまでもピヨピヨ鳴いて肩にちょこんと乗っててほしいというのは、俺のエゴでしかなかった。
 だからいつかミッテちゃんが巨大コッコになろうと、輝きすぎて顔の見えない天使っぽい何かになろうと受け入れる心の準備だけはしておこう。

「お腹いっぱいになった? ふふ……」

 リシェルがサシャに微笑みかけながら、額にキスを落としている。
 サシャはむにゅむにゅと口を動かし、謎の声を発しながら瞼を閉じていた。
 やがて寝入ってしまったらしい。それとほぼ同時に、静かにノックの音がして、メイドが入室の可否を問う控えめな声が聞こえた。

「入っていいよ」
「失礼いたします」

 リシェルが応え、何人ものメイド達が足音を消して入ってきた。
 とにかくサシャが大きくなるまで生かすことが優先なので、俺達だけにしてもらえる時間はだいたい決まっている。
 ほんの短時間だけとはいえ、自宅デート気分を味わえて満足だ。

「……?」

 と、思ったんだが、世話係のメイド達はリシェルからサシャを受け取ると、何故か俺達の寝室からベビーベッドを運び出した。
 居間を挟んでいくつかある部屋のひとつに、そのベッドを移動させ……室内の様子を目にして、俺は呆気にとられた。

「いつの間に?」

 そこには子供部屋ができていた。
 品の良さと愛らしさが融合した雰囲気で、しかも家具のいくつかは子供の頃のリシェルが使っていた家具だ。
 手配を命じたのは俺ではない、となると誰がこれを用意させたのかなんて、俺の横でうつむいている彼以外になかろう。

 そのリシェルは、俺の服の裾をきゅっとつまんだ。
 角度的に顔は見えない。でも、耳がほんのり赤く染まっていた。

「それではランハート様、リシェル様、おやすみなさいませ」
「おやすみなさいませ」

 メイド達は俺の知らない間に準備されていた子供部屋で、交代でサシャを見てくれるようだ。
 彼女達の休憩用の長椅子もそこに用意されている。
 つまり今夜は、俺達の寝室には誰もいないということで。

「あの、ランハート……必要な時は、呼びに来てもらうようにしてるんだ。今は、お腹一杯になった直後、だから……」

 うつむいたままのリシェルは、蚊の鳴くような声で言った。
 俺達は寝間着に薄い上着を羽織った格好で、とうに入浴も済ませている。
 つまりいつでもベッドに入ってオッケーな状態であり――つまり要するにそういうことか?
 それ以外ないよな!?

「……いいの?」

 それでもちゃんと相手の意思を確認するのはマナーだ。
 赤く色付いた耳をぺろりと舐めながら低めの声で尋ねたのは、土壇場で「やっぱナシ」と心変わりをされねぇための平和的な予防策だよ。
 リシェルはぶるりと震え、どこか必死な様子でこくりと頷いた。
 よっしゃぁ!!



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 読んでくださってありがとうございます!
 二人のいちゃいちゃ話、多分(2)話までになると思います。

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