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番外・後日談
ファーデンにご招待 (7)
俺達が石ころ探しをしている間、ミッテちゃんを水の上に浮かべてやると、まったり心地よさそうな顔ですいすい泳いでいた。
ミッテちゃんの足には水かきなんてないのに、いつもどうやって推進力を確保してんだろう?
時間としてはおそらく三十分弱、水遊びをたっぷり楽しみ、日が暮れる前に切り上げた。
幸いにしてヨハンは、本当に幸いなことに、とうとう一度も転ばなかった……!
なんたって俺とエアハルトが奴を見張――見守り、さりげなくフォローができる位置に移動したりしたからな。
途中、危うい瞬間が二度ほどあったとだけ言っておく。いずれも俺とエアハルトによって危機は回避されたとも付け加えておこう。
侍従達が足ふき用の布とブーツを持ってきて、俺とリシェルは自分の足をぬぐってから素早く履いた。
が、子供達のブーツは断った。だってこの子ら、最初は裾を折らずに水に入ったもんだから、ズボンの膝から下がびしゃびしゃなのよ。これじゃブーツなんて履けないだろう。
という立派な言い訳ができたから、俺は裸足のサシャをひょいと抱き上げた。
濡れた衣類というものは、肌に張り付く面積が広いほど不快になるものだから、ズボンは折ったままにする。
リシェルも同様に、フェリクスの足の水気をざっと拭うと、腕に抱き上げてやっていた。
「父さま、父さまのうわぎがぬれちゃいます」
「このぐらい構わんさ」
頭を撫でながら言ってやると、サシャは顔から心配そうな色を消し、「えへへ」と嬉しそうにはにかんだ。
サシャもフェリクスも、俺達の抱っこが大好きなのである。毎年どんどん成長して重くなっていくけれど、まだまだ片手の指にも満たない年齢だからな。
リシェルに片腕抱っこをされているフェリクスの頭も撫でてやると、こちらもくすぐったそうに笑った。
この子達は抱っこだけじゃなく、俺やリシェルの膝に座るのも好きで、リビングでくつろぐ時はよくどちらかの膝に乗っかっている。
前世の俺の妹も、このぐらいの年の頃はそうだった。思い出すと、いつもほっこり胸があたたまるのだ。
「母さま、この石、母さまにさしあげます!」
「わたくしも母さまにさしあげますわ!」
レーツェル家の双子の声が聞こえてきた。
一個だけという約束で拾ったお気に入りの石を、あの子達はアデリナお姉様にプレゼントするつもりだったようだ。
「この石、中がお星さまみたいなのですよ」
「こっちは猫さんみたいな光が入ってますの。とってもきれいでしょう?」
しかもどちらもスター効果のあるやつではないか。やるなぁ、おまえ達。滅多に見つからない一番貴重な石を発見するとは。
案の定、エアハルトの笑顔からハイライトが消えかけている。
義兄様、細かいことは気にしなくていいんですよ~。綺麗で貴重な石ころがお姉様の手元で保管されることになったんだから、むしろ良かったじゃないですか。
すると、そんな従兄姉達を見ていたサシャが、俺の上着の前をつまんでつんつんと引っ張った。
「父さま父さま」
「ん、どうした?」
「わたしの石、おばあさまにあげます」
それを聞いていたフェリクスまで、すかさず「おばーたまにあげる!」と言い出した。
そうかそうか、よっしゃ母上様のとこまで行くぞ!
「わたくしに……?」
「はい、おばあさま!」
「おばーたま、ぷれぜんとです!」
当然ながら母上様は面食らっていたものの、純粋な孫達の無邪気な贈り物に、じわりと笑みを浮かべた。
しかもこの子達の拾った石は、水色と銀色が半々になった色。狙ったわけではなかろうに、母上様の瞳にぴったりなのである。
母上様のあたたかな微笑は貴重で、さながら春の女神の風情だった。
「お母様、お姉様。この子達からの贈り物の石、加工して何かの飾りにしましょうか」
アクセサリー用のパーツがあるから、そんなに日数はかからない。
俺やリシェルが以前、そうやって贈った首飾りやブレスレットのことを、二人は思い出してくれたのだろう。
「せっかくですから、お願いしましょうか」
「わたくしもお願いしたいわ。嬉しい」
「では、明日の午前中に職人を呼びましょう――いえ、何なら視察も兼ねて工房に足を運びましょうか。そこでお気に入りの飾りを選べますよ」
先ほどハイライトの消えかけたエアハルトとは反対に、母上様とお姉様の顔が少女のように輝く。
彼女達をずっと待たせて、俺達だけ水遊びで楽しんじゃったからな。お二人にもたくさん楽しんでもらわないと。
ちなみに母上様とお姉様だけでなく、俺達の話を聞いていた子供達の表情も、それはもう輝いている。
贈り物を大事にしてもらえるのは、時に贈られる側よりも喜びが強くなるものだった。
宿泊所に着くとまず湯あみをして、皆で夕食を美味しくいただき、共同の居間でお喋りを楽しんだ。
寝間着ではないとはいえ、全員がくつろぎ用の服でゆったりと会話を交わすこの時間は、何よりも特別で得難いものに感じられた。
やがて各自の部屋に戻り、俺達は子供部屋でサシャとフェリクスにおやすみを告げると、自分達の寝室に戻った。
しかし――
「リシェル。困った事態が発生した」
「何?」
「抱きたい」
「……うん。わたしも……」
してほしい、と蚊の鳴くような声のイエスを、俺の耳はしっかりきっちり拾わせてもらった。
もう辛抱たまらんとばかりにリシェルの唇を奪うと、ついでに衣類も奪い去り、流れるように行為に突入。
翌日のことを考え、丁寧に丁寧に手加減しまくったんだが――
「お願い、焦らさないで……! 頭が変になっちゃうよぉ……!」
却って彼を泣かせる結果になってしまった。
涙声のおねだりに煽られた俺は理性があっさり吹っ飛びかけ、逆にいつもよりちょっぴり激しくなっちまったというか、まあそのなんだ。
中途半端な我慢はよくないということだな。
明日、目が腫れてないだろうか。
すまんリシェル。
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