どうやら悪の令息に転生したようだ

日村透

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番外・後日談

Xmasコラボ企画☆『巻き戻り令息』と不思議な本 (2)


 コラボ連載の第2話でございます。

 ※「巻き戻り令息の脱・悪役計画」の主人公達が登場いたします。
  そちらを未読の方はご注意くださいませ!

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 ……これはいったい、何が起こったんだ?

 王宮図書館にいたはずの俺とリシェルは、いつの間にかどこかのコテージっぽい部屋の中にいた。
 外は暗く、室内は明るい。
 暖炉には火が入り、それ以外の灯りもついているようだ。

 その部屋にいるのは俺達だけではない。
 俺達の前には見知らぬ顔の、身分の高そうな人物が二人いる。

 まず目につくのは、緋色というのか、命や太陽の輝きを連想する髪色の青年。
 同じ色の瞳には理知の光があり、全体的に気品と落ち着きがあって、ハッと目が覚めるような美形だった。
 背丈はリシェルとどっこいか、微妙にリシェルのほうが高いぐらいかな?
 ただ、肉体的に強そうなのはこっちの兄さんだなと感じた。

 そんな彼に寄り添うのは、黒に近い焦げ茶の髪に、とび色の瞳の男。
 装いもたたずまいも、どことなく執事っぽい。こちらもちょっと見ないほどの美形だ。
 つうか、背がたっかいな~。俺も結構伸びたのに、それより上背があるぞ。

 どちらも雰囲気のある整った顔立ちで、並んだ姿がそのまま一枚の絵になりそうだ。

「…………」

 リシェルが俺にそっとくっつき、腕を掴んできた。
 見覚えのない場所、見知らぬ二人に戸惑い、俺を頼ってくれているのだ。
 何があっても俺がいれば切り抜けられると、そう信じてくれているのなら嬉しいな。

 ――でもなんか、そこまで心配はいらない気がする。
 あちらの二人も俺達に困惑の視線を向けているし、なんといっても緋色の髪のお兄さん、真っ白ふわふわの子猫ちゃんを抱っこしているんだよねぇ?
 あれってさぁ……

「ねえリシェル、あちらの子猫、可愛らしいと思わない?」
「え? あ……そう、だね? とっても可愛い」
「みゅ?」
「毛並みはもちろんのこと、湖に張った氷のような瞳も、僕らのお母様並みに綺麗じゃないか? いとけなさと気位の高さが絶妙に融合して、なんて可愛らしいんだろう」
「うん、そうだね?」
「みゅふふん、そうだろうとも。わかってるじゃないかオマエ」

 リシェルがぎょっとして子猫を見た。
 そう、先ほどの可愛い子供の声は、間違いなくその子猫が発したのだ。
 やっぱりなー。

「大丈夫だよリシェル。こういう変わった場所で出会う小さな生き物が喋るのは、ごく普通のことだから」
「そうなの……?」
「騙されてはいけませんリシェル! まったくもって『よくあること』ではありませんから! ランハート、あなたは自分の中の『普通』の基準を見直すべきです!」

 今度はあちらの二人が、俺の肩でピヨピヨ抗議する生き物に注目した。

「ヒヨコが……」
「喋りましたね……」
「ミッテちゃん!? わたしも今、ミッテちゃんの言葉がわかったよ!?」

 おっと、あちらさんだけじゃなくリシェルにも聞こえたのか!
 ということは、あちらの白い子猫ちゃんも、普段は会話できる相手が限定されていそうだな。
 この場所だから全員に通じているのかもしれない。

「そのとーり。僕と会話できる奴は、本来ならコイツら二人だけだ。つうかオマエ、その順応力の高さといい、と一緒にいることといい、やっぱり……」

 子猫ちゃんが俺をじろじろ観察したあと、俺の肩にジト目を向けた。

「オマエ、何を召喚してんの……?」
「不可抗力です!! 結果良ければすべて良しなのです!!」

 みーみーピヨピヨ、むっちゃ可愛くて和む争いが勃発ぼっぱつした。
 子猫とヒヨコではガタイも違うし、子猫のほうが強いかな?
 でもこの一匹と一羽の場合はどうなんだろう。
 それはともかくこの場にヨハンを召喚できないものか、と真剣に考えかけた時、緋色の髪のお兄さんが何やらうんうんと頷いて俺を見た。

「この素晴らしい光景を見るにつき、やはり案じる必要など何ひとつなさそうだ。ついては、もうしばし眺めていたいのは山々だが、まずはお互いの自己紹介と状況説明をしないか? そして私にそのヒヨコ殿を撫でさせていただきたい」
「閣下、最後の要求が余計です。アムレート様が嫉妬なさいますよ」
「別に私は浮気など――あ、いや。うむ、そうだな。心移りと誤解されそうな行動はいかん」

 言いかけて急に撤回した。
 ピンときたぞ。嫉妬すんのは猫じゃなく、そこの男だな?
 と思いつつ、俺としてもその申し出に否やはなかった。



   ■  ■  ■ 



 さっきまで前後の記憶が曖昧になっていたものの、順に思い返してみる。

 確か俺はリシェルに、記録に残っていない本があるから見てほしいと言われ、それを確認するために二人と一羽で書庫の奥に向かったのだ。
 そこにあるのは、王家の者でなければ閲覧してはならない、歴史ある書物の数々。
 盗難防止のために鎖で本棚に繋がれていたり、鍵付きの書棚に仕舞われていたり、鉄柵で囲まれたケースの中に飾られていたりと、とにかくそんなのばかりだ。

「これだよ。ほら、鎖はついていないし、鍵付きの棚にあったわけでもない。ごく普通にこの本棚に置かれていたんだ」

 言いながらリシェルが抱え持ったのは、かなり大きな本だった。
 大昔は規格サイズがなくて、本棚に並べることを想定していないやつが結構ある。
 そいつは縦の長さが俺の肘から中指の先ぐらいまであり、厚みが十センチぐらいと、一人で持つのは難しい重量級だ。
 リシェルもすぐに腕が疲れてきたらしく、大型の書を読むための台に置いた。
 臙脂えんじ色の革装丁は触れるとやや温かく、全体的にとにかくズッシリとしている。

「このタイトル、書かれている意味がわからないんだ。図書館長も心当たりはないみたいだし」
「中はもう見てみた?」
「ううん。この表紙を閉じている鍵も、どこに置いてあるのか――」

 リシェルが言いかけた瞬間、カチリと音がした。

「え? 開いた?」
「何だと……?」

 本を閉ざしていた革ベルトが勝手にぱらりと外れ、同時に、俺の目にタイトルの文字が映る。
 何故かさっきまでぼんやりしていたのに、くっきりと読めた。

「……『クリスマスパーティーの夜』?」

 なんで、このタイトルの本がこの世界に?
 目をみはる俺の前で、触れてもいないのに勝手に表紙がひらこうとしていた。

「あぁっ、もしやこれは――二人とも見てはいけませんっ!」

 ミッテちゃん、遅いですよ?

 ここに至ってヒヨコがピィィ! と叫ぶも、時既に遅し。
 本の内側から強烈な光が溢れ、俺達を呑み込んだ。


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