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番外・後日談
Xmasコラボ企画☆『巻き戻り令息』と不思議な本 (4)
本日もう1話投稿予定です。
※「巻き戻り令息の脱・悪役計画」の主人公達が登場いたします。
そちらを未読の方はご注意くださいませ!
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クリスマス――それはとても素敵なお祭り。
もとは他国で宗教的な意味を持つ日のことだったが、俺の前世の国にそれが持ち込まれた途端、そのように変貌して定着した。
家族や友人と胸の弾むパーティーをしたり、特別な相手と二人きりでムードたっぷりのパーティーをしたり、なんか楽しくて特別な日だ。
リシェルとアレッシオ殿にざっくりそう説明し、提案した。
「この際だからクリスマスパーティー、存分に楽しんでしまおうと思うんだけれど。どうかな?」
俺、笑顔全開。そのせいでアレッシオ殿からバリバリに警戒されてしまった。
しかし今回のオルフェオ殿はまったく怯まず、ニヤリと悪そうな笑みを浮かべる。
「面白い」
おお、なんか格好いいなこの人?
俺だとこういう笑顔にはならないんだよなー……どうしても「おまえに最後の慈悲を与えてやろう」みたいな感じになっちゃって。
「リシェルもそれでいい?」
「もちろん賛成だけれど、わからないことがあるんだ。わたしと図書館長は先に『本』を目にしていたのに、どうして何もなかったのかな」
「あ、言われてみれば。何故だろう?」
「うみゅ、それはなー……」
子猫氏いわく、小物相手にパクパク食いつくのは怪物か底辺悪魔ぐらいで、そこそこ上のランクであるこの『本』が狙うのは、より多くの人々に影響力を持つ人間なんだそうだ。
「でもって悪魔は、満たされない願いや鬱屈を抱え込んだヤツを狙うのさ」
「なるほど。だからわたしと館長は無事だったんだね」
リシェルはふわ、と笑んだ。
大きな影響力なら彼も持っているのに、こいつの捕獲対象から外れていたのは、その心が『満ち足りている』からにほかならない。……俺をキュン殺する気かな?
ちなみに図書館長の爺さんが無事だった理由もわかった。ずっと書庫で地味な仕事をしてきた爺さんには、影響力がそんなにない。
加えて俺が王宮図書館の計画を実行し、彼を図書館長に任じたことで、嬉し涙と一緒に長年の鬱屈も完全に晴れた。
リシェルともども、付け入る隙がまるでなかったわけだね。
「僕らとオマエらの世界に出現したのは最近になってからだろ。何人か捕食に成功して騒ぎになったら、さっさと姿をくらますのさ。運がよかったニャ」
ほんとラッキーだったよな俺達。
その時たまたま俺の胸にあった『叶わない願い』ってやつは、つまり『リシェルとのクリスマスパーティー』だった。
自分の国で新たに祭日を作るというのは、なんか違うと感じてさ。
「アレッシオ、いいだろう? 私もおまえと、このパーティーをやってみたかったんだ」
「……御心のままに」
あっちもまとまったな。
よし、そうと決まれば準備開始といこう!
このコテージは森の中にポツンと建っており、外が暗いと思っていたら、夕暮れで空の色が移り変わる時間帯だった。
パーティー本番は夜。それまでに準備をしなきゃ! ――というシチュエーションである。
いやぁ、なかなか凝ってるな~。
外の気温はかなり低く、室内着だけで出歩く気にはならない。お散歩デートはここじゃないとできないことではないので、特に残念ではなかった。
オルフェオ殿も同じだったようで、まず俺達はコテージ内の探索を始めた。
「――オルフェオ殿!! この部屋の灯り、暖炉以外はすべて電気だぞ!?」
「何だと!? ――ほ、本当だ……!! スイッチもある!! この壁のランプもそうか!? 電力会社はどこだ、電気メーターは!? 料金はどうなっているんだ……!?」
「あああっ、これカウンターキッチンじゃないか!! しかもあれはガスコンロ……!?」
「この水道、水も湯も両方出るぞ……!! 上下水設備はどうなっている!?」
リシェルとアレッシオ殿は俺達の狂乱っぷりに探索を止め、唖然としてこちらを眺めていた。
そんなリシェルの肩にはミッテちゃん、手の中には子猫氏が丸まっている。
「カメラは。撮ったその場でプリントできるインスタントカメラはここにないのか!?」
今のリシェルを撮影して記念に持ち帰りたい!
「ないぞ。言っとくケド、ここにあるもんは元の世界に持ち帰れないからな?」
「無情な……!」
ヒヨコと子猫氏の冷たい視線を浴びながらうなだれていると、何やらオルフェオ殿から「ランハート殿」と深刻そうに声をかけられた。
「私は、とんでもないものを見つけてしまった……これは業務用冷蔵庫ではないか?」
「な、ん、だ、と……?」
それは一見すると、大きな木製の棚だった。
俺はてっきり、そこには食器類が仕舞われていると思っていたのだ。
ところが、蓋を開けてみると。
「……冷蔵庫だ」
「な?」
「こ、こちらは冷凍庫……!」
しかも、ぎっしりと食材が詰まっている。男四人で腹いっぱい食べても余りそうな量だ。
「こ、これはいかにもな骨つき鶏モモ肉……オーブンは……あるな」
「こ、これはスポンジケーキではないか……自由にデコレーションしてオリジナルケーキを作れという……」
俺達はそこで気付いた。
このコテージ内には、俺達が「最低限これだけあったらいいな」と思っていたものが完備されている。
食材入りの冷蔵庫、口が複数あるコンロ、キッチンに組み込まれたオーブン、調理器具、水道、電灯。
これ以外はないみたいだが、これだけあれば充分だ。しかも俺達の世界の感覚で、違和感を覚えない外観になっている。
液体類はパックやペットボトルではなく、瓶に入っていた。棚に並ぶ瓶に施されたアンティークゴールドの装飾文字が『しょうゆ』と読めた時は、目が点になったぜ。
「ランハート殿……もしやこの『本』とやら、とても仕事のできる奴なのではないか?」
「有能だよね……あまりにも行き届いている」
おまけにモミの木のオーナメントが入っている箱の中に、電飾もあった。
小さな電球がたくさんついた、クリスマスといったらこれぞというイルミネーション。
それらはあちらの世界のものでありつつ、俺達の世界にも馴染みそうなデザインに工夫されていた。
獲物に俺達を選ぶという大ポカを挽回する勢いではないか。
この『本』……できる……!
モミの木の飾りつけと料理、役割分担についてはすぐに解決した。
オルフェオ殿がキッチンに立った瞬間、彼は今悟ったと言わんばかりの顔でこう言ったのだ。
「料理ができない」
というわけで選手交代。
料理係、俺とアレッシオ殿。
飾りつけ係、リシェルとオルフェオ殿に決定いたしました。
「閣下は料理に関する知識はお持ちでも、ご自身の経験はありません。記憶の元になった方は料理をなさっていたようですが、多忙で手を抜くことが多かったそうです」
忙しくて外食や弁当を買って済ませることが多かった感じかな?
アレッシオ殿としては、そもそも主人のオルフェオ殿は料理できなくて当然と思っているらしい。そりゃそうだ。
それに多分オルフェオ・ロッソという人間自体が、料理を苦手とするタイプなんだと思う。
俺も包丁を握るのは前世ぶりなのに、手にした瞬間「問題なし」と直感したんだから。
「とはいえ僕自身も久しぶりだから、危なくないよう慎重にやるよ」
「そうなさってください。正直、閣下よりあなたのほうが料理姿を想像できません」
おや、言ってくれますな。
でもアレッシオ殿は言うだけあって、めっちゃ料理できそうな男だ。
そして彼は予想通り、キッチンの使い方をひととおり教えると、彼の世界にはないあれこれに呆れたり驚いたりしつつ、あっという間に覚えてしまった。
「基本性能が違いすぎる。アレッシオ殿、もう少し万能感を小出しにする気はない? リシェルに僕がかすんでいると思われたら困るよ」
「何を仰います。先ほどの言葉を撤回いたしますが、ランハート様の手際でしたら私の世界でも一流の料理人を名乗れますよ? 正直なところ戦慄しております」
ある意味貴重な体験です、と小声で付け足したのが気になった。『ある意味』ってどういう意味かな?
「リシェル殿、これをこうして、このスイッチを入れるとだな……」
「わっ、光った? うわあ、どういう仕組みなんだろう……!」
……リシェルはイルミネーションの使い方を教えてもらっているみたいだ。
「これはブーツではなく靴下なのだ。こちらのご老人はサンタクロースといってな」
「靴下? サンタクロース?」
子猫氏は丸い飾りでころころボール遊びをしている。
ミッテちゃんはモミの木にとまってオーナメントと同化していた。
「あちらに行きたくなってきた」
「ランハート殿。お気持ちは理解できますが、素晴らしい料理を用意してあの方々を喜ばせてさしあげましょう」
執事の微笑が「私だってあちらに行きたいですよ」と言っている。
そうだな。
俺はリシェルのために、アレッシオ殿はオルフェオ殿のために。
歓声を上げさせてやろう。
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