どうやら悪の令息に転生したようだ

日村透

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番外・後日談

Xmasコラボ企画☆『巻き戻り令息』と不思議な本 (6)


 (4)話で「骨付き」を「足付き」と誤字っておりましたので修正しました。恥ずかしい(汗)
 本日中にもう1話投稿予定です。

 ※「巻き戻り令息の脱・悪役計画」を未読の方はご注意くださいませ!

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 色とりどりの光がツリーを包み、オーナメントがきらめいている。
 どれも金色や銀色の糸を縫い付けた模様があり、それが反射して余計に綺麗だ。

「頑張ったねリシェル、ツリーも部屋の飾りも素敵じゃないか」
「ふふ、そうでしょう! 飾るだけでもこんなに楽しいものなんだね」
「このような飾りつけは初めて目にしますが、確かに普段より心が浮き立つかもしれません」
「そうだろうとも。本当ならクリスマスプレゼントというものも交換するんだが、それはないから精一杯飾りまくったぞ」
「そうなのですか。では、私とランハート殿からは『料理』がプレゼントですね」

 広いダイニングテーブルの上に、俺とアレッシオ殿による力作の数々を並べた。
 途端、リシェルとオルフェオ殿から歓声が上がる。

 オルフェオ殿から希望があったので、サラダは大皿で用意し、各自食べたい量を取り皿に取ってもらうようにした。
 それからテーブルの中央になんかお洒落な鍋敷きを置き、その上にホワイトシチューの鍋をドンと置く。
 これも自由におたまでよそってもらうのだ。
 ちなみにバターは有塩バターだったから、ホワイトソース作りの段階でほんのり微妙に味があり、オルフェオ殿に狙われちまったのはいい思い出である。

 俺達の国はどちらもパン食なので、バゲットはよく食うだろうなと多めに準備。
 ほどほどの厚みでスライスし、何もつけずオーブンで焼いただけのシンプルなやつ以外にも、ちょっとひと手間かけたやつも用意してある。
 ケチャップがあったから表面に薄く塗り、アボカドのディップを載せ、刻みチーズをかけてオーブンで焼いたのだ。
 しょうゆとマヨを加えて刻み海苔をかけたやつも美味いんだけど――実はマヨと海苔もあったんだけど、これらは禁断の味だから封印したよ。
 特にマヨは……危険なんだ。

 それとは別に、ディップだけを入れた器も用意し、小さなスプーンを突っ込んだ。
 こちらもお好きな量をお取りください。

 そしてメインのローストチキン。
 クッキングシートはなく、天板にたっぷりバターを塗ってチキンを並べ、オーブンでじっくり焼いた。
 時々取り出しては、下味用のソースとオリーブオイルを表面に塗ってもう一度焼いて……と手間をかけただけはあり、めっちゃ美味そうに出来上がったぞ。
 これは立派な骨つき鶏モモ四本だったので、最初から各自の皿に載せておく。

「最高だ……! 素晴らしい、アレッシオもランハート殿もさすがだ!」
「すごい! すごいよランハート! これ、本当にランハートとアレッシオ殿が作ったの!?」

 ふはは、大歓声いただきました。

「おっ? ランハート殿、雪が降ってきたぞ!?」
「なんだと!? 本当だ……」
「これならホワイトクリスマスがいけるかもしれない……いやきっと、この『本』ならやってくれる!」

 窓の外でチラチラと雪が舞い始め、俺とオルフェオ殿のテンションは爆上がりだ。

「雪があると良いのですか?」
「クリスマスなら雪は素敵なことなんだね? だからツリーにも綿わたの雪を付けてたのか」

 一方、クリスマス初体験組は不思議そうにしていた。

「はしゃいでるニャ……」
「はしゃいでますねぇ……」

 子猫氏とミッテちゃんがテーブルの上でちょこんと並び、悟りをひらいた顔をしている。
 今日この場所でなら、猫がテーブルに上がったっていいだろう。
 ミッテちゃんの前にはブルーベリーの小皿を、子猫氏の前にはササミを茹でてほぐした小皿と水の入った小皿を置く。
 悪魔な子猫氏はミッテちゃんと同様、人と同じ料理を食べてもなんともないらしい。ただ、味付けせず肉や魚を茹でたやつが好みなんだそうで、ササミを前にした途端、目がキラッキラに輝いた。

 席は俺の隣にリシェル、前にオルフェオ殿。
 それぞれの前に細長い形のグラスが置かれ、アレッシオ殿がボトルから金色の液体をそそいでいく。
 俺とオルフェオ殿がどちらも炭酸飲料を好まなかったせいか、シャンパンはなかった。
 つうかオルフェオ殿は酒が完全にダメな人だったようで、ノンアルコールワインしかなかったよ。
 むしろノンアルコールワインあることが感動だよ。
 全員が席につき、俺はグラスをかかげて言った。

「メリークリスマス!」

 オルフェオ殿が「メリークリスマス!」と続き、リシェルとアレッシオ殿も俺達の真似をする。
 この世界で、この言葉を交わし合う日が来るとは思わなかったな。



 当然のように俺はリシェル、アレッシオ殿はオルフェオ殿の料理を取ってあげる係になった。
 だからスタイリッシュな黒エプロンは外さない。というかアレッシオ殿がさ、オルフェオ殿にチラチラ見られているのをわかってて外さないんだよ。

「ランハート……その格好、なんだかいつもと雰囲気が違ってドキドキする」
「そう?」

 俺も外しませんよ、ええ。それが何か?

「こ、これはなかなか美味しいですね……!」
「侮れんニャ……はぐはぐはぐ……」

 ミッテちゃんが大粒のブルーベリーに感嘆し、子猫氏も一心不乱に鶏ササミに食いついている。
 リシェルとアレッシオ殿はサラダを食べ、野菜の鮮度に感嘆の声を漏らしていた。
 この美味さは俺達の料理の腕前だけじゃなく、食材の質と保存状態の良さも大きい。
 しかも俺とオルフェオ殿の知る、品種改良されたものばかりだ。

「ランハート殿、このチーズ焼きが美味い!」
「アボカドとはこのような味なのですね。皮が沈むほどやわらかく、傷んでいるのではと思ってしまいましたが」
「大きなたねが出てきた実だよね? 味が全然想像つかなかったけれど、こんなにまろやかだったんだ」

 やはり見たことのない食材に注目が集まっている。器に入れていたディップも、一瞬にしてなくなってしまった。
 そしてやはりというか、オルフェオ殿とアレッシオ殿はチーズを好んだ。トマトがあればトマトソースを作れたんだけど、たまたま野菜室に入っていなかったのだ。
 ほかにもオルフェオ殿はクリーム系が好物らしく、シチューをじんわり味わいながら食べている。
 アレッシオ殿がシチュー担当を買って出た時点でそうじゃねーかと思ったよ。

 リシェルも俺が作った料理ということで、どれも美味しい美味しいと言いながら食べてくれた。
 お世辞抜きの本気で幸せそうな笑顔が、マジで俺にはご褒美だ。

「ランハート、わたしこんな美味しいお肉食べたことない……!」

 シチューのモモ肉にも感激していたリシェルだったが、それ以上にローストチキンを絶賛してくれた。

「これほどの味わい、私も初めてです。元の世界では再現できそうにないのが口惜しいですね」
「和ノ国の調味料を当たってみるしかないな。遠方の食材はなかなか手に入らないんだが、あの国ならしょうゆがあるのではと睨んでいる」
「オルフェオ殿、その国にみりんがありそうなら、それも入手したほうがいいよ」
「む、そうだな。そうしよう」

 全員から大絶賛してもらえた。作った甲斐があるぜ。
 ナイフで切り分けながらフォークで刺し、自分もぱくりと食べてみた。
 おっ、思ったよりいける。
 昔作った時は三時間ぐらい漬け込んでいたから、一時間は短いかなと心配していたのだ。
 でも今の俺達の世界は、調味料が塩、胡椒、酢ぐらいで、これほど複雑な味付けがまだない。
 ライスもなく、肉だけで食べることを考えたら、そこまで濃い味付けでなくとも充分なんだった。

 ……このパーティー料理、あの子達にも食わせてやりたいな。


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