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交流を深めましょう
36. 同時攻略、いけるかも?
しおりを挟む「それでしたら、おまえ達三人とも出席予定ですよ」
「――ええっ!?」
夜になり、母上様のお部屋にお邪魔してバウアー男爵のパーティーについて尋ねてみたら、あっさりとそんな答えが返った。
「毎年だいたい五月頃、暑くなる前に催されるのですよ。夏場は食材が腐ってしまいやすいですからね。おまえもリシェルも健康に問題がなくなりましたから、肩慣らしに一度は経験させておこうと思っていました。同年代の貴族を知る数少ない場でもありますから、貴重な経験になるでしょう」
「それは、僕は構いませんが。リシェルも参加するのですか?」
「我が家に迎えた婚約者であると、しっかり広める意味もあります。ところで教師から報告は来ておりますが、何故この件に興味を持ったのです?」
「特産品で美味しいお菓子が出るのでしょう? リシェルが喜ぶかなと思って……」
これは言い訳じゃない。だって本当に喜びそうだと思ったんだ。
甘い果物のお菓子、食べさせてあげたい。
それにバウアー男爵の息子もまた、自分に逆らえない弱い相手を狙うタイプだった。今のリシェルは孤立しておらず、手を出したらムスター家が黙ってはいない。そうとわかれば、簡単には手出しなんてできないはず。
でも俺の見通しが甘かったらいけないし、母上様に詳細をお尋ねしてから決めようと思っていたんだけど。
「考えることは同じのようですね。わたくしもリシェルの好きそうなお菓子が出るので、参加させてやろうと思ったのが第一の動機ですよ」
「えええっ!?」
は、母上様もか!? 俺、母上様の後!? 負けた……!
大袈裟に天を仰ぎ、次いでごろんとソファへ寝転がっていじけ始めた俺を、寛容な母上様は見逃してくれた。
でもおかげで、堂々とバウアー男爵について訊けるようになったのだ。いじけつつも上半身を起こし、メイドが退室前に用意してくれたホットミルクを飲みながら、気になったことを片っ端から尋ねていく。
「お母様から見て、バウアー男爵は良い臣下なのですね?」
「そうですね。主君が自分を見ずとも忠義を尽くす、よい臣下という印象でした。ヴェルク公へ多少の不満はあれど、決して表に出しませんし、思わせぶりな愚痴なども漏らしたりはしません」
ミッテちゃんと母上様の意見が一致している。
ならやっぱり、バウアー男爵にダメージがいかない方法じゃないとダメだな。もしその人がいなくなったら、ヴェルク領の台所事情が一気に傾きそうな予感がする。
「バウアー男爵にもお子様はいるのでしょうか?」
「息子が二人いますよ。どちらもこれまでパーティーに関わったことがないので、わたくしは見たことがありませんが、今年は長男のほうが男爵の手伝いとして来ると聞いています。確かフロイデという名の、二十歳の青年ですよ」
「はたち……」
――二十歳?
思っていたのより若いぞ。いや、これもゲームではそう見えていたというやつか。
あのオッサンの体形、直視したくなくて記憶が曖昧だが、メタボではなかった気がする。あと少しで割れそうな顎と、くぼんだ頬のへこみがなんとなく三~四十代に見えていた。それから、とにかく気持ち悪くておぞましかったセリフの数々。
「パーティーの主催者の息子だからといって、無理に会う必要はありません。むしろその息子には関わらぬほうがよいでしょう」
「え……」
「二十歳にもなるのに、後継者としての披露目をこれまで一度もしていないのです。病という話も聞きませんから、素行に問題のある息子なのでしょうね。父親の目のないところでは途端に怠ける癖があり、手伝いという名目で働かせるために引きずって来る……というところでしょう」
母上様、千里眼ですか。絶対そういう息子ですよ。
だってあの野郎、リシェルに寄生して遊び暮らしてやがったもん。
「弟のほうも似た感じなのでしょうか」
「いいえ。弟はフェーミナなのです。だから表には出て来られず、北の農園を手伝っていると男爵本人から聞きましたよ。話しぶりからも、弟はおそらく良い子です」
「へえ……」
リシェル以外のフェーミナか。
いい子であっても、家を継がせることはできないから兄貴を連れて来るしかないんだな。
「おまえ達の衣装については、既に準備を進めるよう申し伝えてあります。当日の注意点としては、レーツェル公の息子も来ますから、喧嘩は禁物ですよ」
悪ガキクソガキのティバルトと親友になるエアハルトが来るんですねかしこまりました。やられたら相手有責でやり返します。
――ん? 出席するのはエアハルトだけ?
「ティバルトはパーティーに出ないのですか?」
「あれは過日のおいたが原因で、現在は主だったパーティーへの出席を禁じているようです。行儀作法を徹底的に躾け直しているようですね」
あ~、婚約予定の集まりをすっぽかすという、とんでもない無礼千万をしやがったからか。
それでエアハルトだけが出席、と。
ゲームでもティバルトとエアハルトの初対面は来年のパーティー、つまり今年は会わなかった。あのすっぽかし事件がなくとも、何か別件でやらかして出席禁止になっていたのかもしれない。
そう……あの二人はまだ会っていない。
となると、親友予定の二人の仲、事前に裂けるんじゃないか?
裂くと言うのは違うか。仲良し妨害だ。
エアハルトだけじゃない、ルチナとのフォーリンラブも妨害できるかもしれん。何故なら、どうしてエアハルトがルチナに転んだのか、その理由もきっかけも俺は知っている。
フロイデの件についてはまだ練らなきゃいけない点があるけれど、エアハルトはいけるぞ?
これはパーティー、是非とも参加しなきゃいけない理由ができてしまったな。
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