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堕ちた天使を狩る
209. 懐かしの場所
読みに来てくださってありがとうございます!
本日は短めです。
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俺は真っ白な世界にいた。
周りは白、白、白ばかり。上下左右の感覚も曖昧で、よくよく意識してみたら身体自体が――いや、あるわ。
さっきまで俺は前世の姿、それも小学生になっていたのに、現在の俺の姿に戻っている。
すなわち、成人してリシェルと結婚した、ランハート・フォン・ムスターの姿に。
「ランハート! 無事でしたか!」
『ミッテちゃん!』
白いヒヨコが羽をぱたつかせながら、ちょこちょこと駆け寄ってきた。
黒い点がちょぼちょぼと二つ並んだ胡麻粒みたいな瞳、その間に黄色い逆三角形の嘴がちょびっと生えて、さらにその下には黄色い小枝がちょこんと二本伸びている。
首がどこにあるのか不明な、見た目がもふっとしたヒヨコは、間違いなくミッテちゃんだ。
『なんか、懐かしいな? この世界……っと』
ミッテちゃんの声は鮮明に聞こえたのに、どうしてか俺の口から出た声は、水の中で無理に声を出したみたいな違和感を覚えた。
「ここは特殊な狭間の空間ですから、肉声で話しているわけではないのですよ。それが違和感として捉えられるのでしょう」
なるほど、やっぱりそうなのか。俺の肉体があると思ったのが実は勘違いで、ここは精神世界の一種なのだ。
「その通りです。確かに、懐かしいですね」
ミッテちゃんもしみじみと呟いた。
ここは昔、俺が不思議な白いヒヨコと初めて出会った空間だ。
前世の俺の魂が召喚された直後で、まだ身体も何もなかった頃。
そこで俺は、妹にBL界のクソゲー代表と教えてもらった《愛と祈りの協奏曲》が、実は異世界で本当に起きていた完全ノンフィクションであったという恐るべき事実を知らされてショックを受け。
なんだかんだでヒヨコとの間に友情が芽生え、困っている友のために一肌脱いであげようと、その世界に転生することを快く承諾したのだった。
「思い切り脚色しましたね!? ……そのような小細工などをしても、あちらの方々には無意味ですよ」
へ~い、すんません。
叱られて『あちらの方々』の方角に目を向けた。
そこには、大きな翼らしきものを背から生やした、人型らしきものがある。
どうして『らしきもの』なのかというと、全身が眩しく発光していて、顔立ちも何もわからないからだよ。
その輝く何者かは、一人ではなく複数名いる。
いや、何者かって。背から立派な翼とくれば、もうあれしかあるまい。
ミッテちゃんの同族。それも、なんちゃって寄生天使じゃなく、マジもんの本物な方々のご登場だ。
魂からして邪悪なオーラが漂っていると評判の俺が、どうしてそんな本物な方々がいても結構余裕なのかというと、その方々の前に置かれている物体のおかげだ。
いや、物体なのかなあれは? ここからでは光る何かとしか見えないそいつは、鎖でぎっちぎちに縛られていて、その方々の足元に置かれているのである。
真っ白だから、地面ではないかもしれない。でも人間だったら多分、床か地面に膝を突かされているシーンだ。
そして俺は、おそらくそいつの背後のちょっと離れた場所にいる。
これから責められるのは明らかにそいつであり、つまり俺ではない。
俺、怒られない。
ああ、なんて気楽なんだろう……!
「あなたという人は……」
ピヨちゃんからジト目をいただきました。
そんな目しないでよ。だって、ことによったら俺もあそこで鎖を巻かれていたかもしれないんだからさ。
自己申告するのもあれですが、俺、ちょっとばかりドス黒い自覚はあるし……
下手したらあの野郎と一緒くたに退治されちまうかもと、ほんの少~し心配しなくもなかったんだもんよ。
「まあ……有り得ない、とは断言できませんね。仮にそうなっていたとしたら、私もどこまであなたを庇い切れたか……」
だろ?
一応は見捨てずに庇ってくれるつもりのミッテちゃん、サンキューだ。
「それにしても思い切ったことをしましたね。あの方々に感知されるよう、あの者を挑発したのでしょう? 驚きましたよ」
『ふふ。その通りだよ』
挑発しまくってブチ切れさせ、これまで同族にバレないようにと、あの野郎が一切使ってこなかった種類の『力』を使わせた。
内向きではなく、外向きに発散される『力』だ。
使わせるというより、怒りに任せて爆発させるというのが正しいか。
それがうまくいき、今ここというわけである。
俺はにっこりと微笑んだ。
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