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7.救世主
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気まずい空気の中、アロナとカインは抱き合い、互いの体を隠し合っていた。
アロナは床に落ちていたカインのシャツを引き寄せ、その下半身を隠し、カインはアロナの破れた服の胸元が見えないように向かい合って抱いていた。
ドルバインはそんな二人を庇い、ナリアの前に立っていたが、ナリアの意図がわからず、その返答を待っている。
ナリアは静かに涙を落としながら、ようやく重い口を開いた。
「あなたから私に求婚してきたはずです。なぜ、自分から私を欲しがっておきながら、私ではだめだったなんて、今更そんなことを言い出したのです」
「それは……。俺がお前に一目惚れしたのは本当の話だ。結婚してから、自分の性癖について自覚し始めたことも。お前に幸せになってもらいたいと思い、身を引いた。
君の夫が望まない限り、人妻であっても、お前に手は出せない」
「それで、逆らうことのできない男の妻を寝取って遊んでいたと?」
農民の男から妻を奪っても、貴族であればいくらでも理由をこじつけて正当化出来てしまう。
ナリアはそう考えたが、カインが黙っていられず口を出した。
「ドルバイン様はそんな乱暴なことはなさいません!私が……妻を奪われるのが好きなのです。その、無理やりにではなく、妻を大切にしてくれる方ではないと困ります……。妻を愛していますし、妻も私の許可なく誰かに抱かれるようなことはしません」
そこには自身の性癖に対する細かいこだわりがあるのだ。
アロナもよく理解していないが、ドルバインとカインはその点ではとても意見が合う。
それ故、冬に行われる秘密の会についての企画や、部屋割り、細かい打ち合わせに関しては二人が身分にかかわりなく対等に相談しながら決めている。
一般的な価値観の中で生きるナリアには、どうやっても理解出来ない話なのだ。
普通の価値観を持つナリアが、ドルバインと対等に恋をしようとするならば、それは互いに譲り合う必要がある。
アロナとカインがそうであったように、どこまで許せるのか、許せないのか、あるいはどこまで愛のために受け入れる覚悟があるのか。
二人の道を二人で決めていく必要がある。
ナリアはドルバインと築くはずだった二人の道を下りたのだ。
「夫が許せば、私を抱けるの?」
ドルバインは腕組みをして首を横に振った。
「ナリア、残念ながら俺達は終わっている。確かにアロナに惹かれているが、彼女は夫と別れる気がない。そこも俺が気に入っている点だ。
彼女の身分や人妻かどうかも今は、あまり気にならない。俺達の関係を君が理解することは難しいだろう。なぜ、俺にこだわる?お前は……俺に触れられることを嫌がっていただろう……」
それはドルバインにとっても苦い記憶だった。
美しいナリアに求婚した当初、まさかその求婚をナリアが受けてくれるとは思いもしなかった。
ところが、ナリアはドルバインの求婚を受け入れた。
愛されているのだとドルバインは喜んだが、初夜を始めようとした時、ナリアは恐怖に震え嫌悪の表情でドルバインを見上げていた。
お世辞にも美しいとは言えない容姿であり、ドルバインは仕方がないとその妻の反応を咎めるようなことはしなかった。
「愛せると思ったのです……。どんなにあなたが醜くても、髪が薄くて、お腹が出ていて、髪が薄いくせに体が、獣のように毛むくじゃらでも。見た目が最悪で、夜会で並んで歩きたくないと思ったことは確かです。でも、嫌いだったわけじゃない。
あなたを尊敬していたし、人間的には好きだと思っていました」
後ろで聞いていたカインとアロナは、あまりにも失礼なナリアの言い分に、思いきり顔をしかめた。
ドルバインもなんとも複雑な表情だった。人間的には素晴らしいと褒められながらも、容姿が酷いとけなされている。
「君の浮気相手は皆、見た目の良い男ばかりだった。俺の容姿が君の好みでないことはわかっていた。だったら、最初から俺の求婚を断ってくれたらよかった」
「愛せると思ったのです……。あなたが好きだったから……」
顔以外は好きだったのだ。
頭が剥げていなければ、あるいは、お腹が出ていなければ、容姿がもっと整っていれば、そして特殊な性癖でなければ。
愛がなかったわけではない。
ナリアは、ドルバインの後ろで抱き合うカインとアロナの姿を見た。
変態の夫を全力で守ろうと、妻はその体を抱きしめている。
それだけの強い絆がドルバインとは築けなかった。
愛はあっても、やっぱり難しかったのだ。
「でもいやです。あなたが……私に求婚したあなたが、そんな、身分もない女を大切に抱いているなんて、許せない」
「本当にそんなことが理由でこんなところまで乗り込んできたのか?」
信じ難い話だとドルバインは首を横に振り、後ろに向かって手を振った。
「カイン、アロナと一緒に部屋を出ていろ。いつもの寝室で先に寝ていて良い」
飛ぶようにカインとアロナは立ち上がり、ドルバインに頭を下げて部屋を出た。
ドルバインはナリアに視線を向けたまま、扉が閉まる音を聞いていた。
「ナリア、お前の夫に連絡し、迎えにきてもらおう。それとも、何か問題があったのか?もとに戻ることは出来ないが、出来る範囲であれば、手助けすることも出来る」
涙を浮かべ、ナリアはドルバインを睨んだ。
「本当に優しいのね……。どうしても納得できないわ。あなたが、あの子を抱けるのか私に見せて」
とんでもない話だとドルバインはうんざりと息を吐き出した。
「なぜ?そんなことをする必要はないだろう。お前が俺に夫との夜の生活を見られるとしたらどうだ?お前の夫は良い気はしないだろうし、お前だって嫌だろう?
俺はこの関係を大切にしている。俺の欲望は表に出すべきものではないと思い、長い間封じてきた。彼らに会ったのは偶然で、彼らは多少無謀だが、互いに自分たちの望む未来を作ろうと努力していた。
そんな彼らの力を借り、俺はいくらかこんな自分を許せるようになり、好きにもなれてきた。世間的に受け入れられないことだと理解しているからこそ、同じ想いで生きている人々とも絆を深め、誰にも迷惑をかけない形でこの会を存続出来ている。
ナリア、君がどんな問題を抱えているのかわからないが、彼らを巻き込むな。
元夫として、出来る限り相談には乗りたいと思っている。その点だけは理解してくれ」
ドルバインはナリアの返事を待ったが、ナリアは黙り込み、また横を向いてしまった。
それ以上、今夜は進展しそうにないとみて、ドルバインは部屋を出た。
寝室で待っていろと告げたはずのカインとアロナが服を着替えて、廊下で待っていた。
「ドルバイン様……何か出来ることはありますか?」
仲良く並び、手を繋ぎ合うまだ若い夫婦の姿を見て、ドルバインは苦笑した。
「そうだな……。厨房にまだ何か残っているかな?急いで戻ったため、食事も風呂もまだだ」
ぱっと二人の顔が輝いた。
「すぐにご用意しますね!」
階段を駆け下りていく二人の背中を追いかけ、ドルバインもゆっくり歩きだしたが、途中で少しだけ足を止め、ナリアの部屋を振り返った。
若く美しいナリアを抱けなくなった時の苦しみが蘇る。
申し訳ない気持ちはあったが、手放せず、そして自分の性癖についても告げることは出来なかった。
愛がなかったわけではなかったが、当時のドルバインでは難しい決断だったのだ。
何か力になれることがあればと考えながら、じっと扉を見ていたドルバインは、やがて背を向け階段を下りて行った。
部屋に残ったナリアは、まだ納得がいっていなかった。
護衛のジーンとドムは隣の部屋に移動し、侍女たちも追い出してしまうと、ナリアは一人寝台に横たわった。
ドルバインがアロナを助け起こす姿を思い出し、ナリアは苛立った。
たまらなく、胸がざわめくし、どうしても手に入れることのできないものを前に、激しい怒りが湧いてくる。
本当にそんなことが許される世界があるのだろうか。
妻を寝取られることに喜びを感じるカインと、誰かの妻を抱きたいドルバイン。
彼らは互いの欲望を満たし合うことの出来る関係ということになるが、ならばアロナはどうなのか。
そんな変態な夫を受け入れ、ドルバインにも平気で抱かれることが出来るなんて信じられない。あんなに醜い男に抱かれるなんて。
普通の価値観を持つ女であれば、とても耐えられるものではない。
カインを愛しながら、ドルバインに抱かれるのであるから、それは浮気と変わらない。
とりわけ美人というわけではないが、小柄な女性ではあった。
化粧もしていないし、若く生き生きとした良く言えば雑草のような女だ。
考えているうちに、ナリアはまたもや激しい怒りがわいてきた。
アロナがドルバインの今の女だということがどうしても気に入らない。
洗練された美しさもなしに、ドルバインに愛されるなんて、許せない。
ナリアはそれが自身の本音だと疑わなかった。
先ほど、アロナがやってきたバルコニーに出ると、そこから隣の部屋を覗き込む。
ドムとジーンの部屋を飛び越え、その上にはドルバインの部屋がある。
アロナとカインがどこかにいるはずだ。
ナリアは部屋に戻ると、こっそり通路に出て屋敷内の探検に乗り出した。
その頃、ドルバインとアロナ、それからカインは浴室にいた。
湯桶に浸かったドルバインの世話を焼くのはアロナで、毛むくじゃらの背中やお腹を泡立てた石鹸で磨いていた。
その様子をカインは、目を輝かせて見つめている。
手には湯桶を持ち、必要な時に湯が足せるように召使らしく控えている。
ドルバインが大きな水音を立てて立ち上がり、尻の毛からぽたぽた水を滴らせながら足を開いた。
股の間にアロナが手を入れて石鹸を泡立て、敏感な場所を丁寧に洗う。
奇妙に見えるかもしれないが、三人には日常的な行為であり、それを眺めているカインにとっては至福の時だった。
「アロナ……きれいだ……」
かすかに声に出し、カインは他の男の股間を洗う妻にうっとりとした眼差しを向ける。
アロナは顔を赤くして、ちらりとカインに視線を向けると、困ったように微笑んだ。
夫が喜んでいるかどうかを確かめずにはいられないのだ。
夫を気に掛けるアロナの姿をドルバインも好ましく見ていた。
アロナは夫を愛しているし、アロナを愛する夫は、自分の欲望を叶えてくれるドルバインに人間的な好意を抱いている。
この複雑な関係は、互いの性癖を理解し合っていなければ成立しない。
何も知らないナリアに踏み込まれても、互いに不愉快な思いをするだけだ。
「そろそろ出るか。寝室は三階の大部屋を使おう。部屋は出来ているか?」
「はい。ドルバイン様、いつお戻りになっても良いように、夕方から暖炉にも火を入れてあります」
カインの言葉に、ドルバインは満足げに頷いた。
アロナは床に落ちていたカインのシャツを引き寄せ、その下半身を隠し、カインはアロナの破れた服の胸元が見えないように向かい合って抱いていた。
ドルバインはそんな二人を庇い、ナリアの前に立っていたが、ナリアの意図がわからず、その返答を待っている。
ナリアは静かに涙を落としながら、ようやく重い口を開いた。
「あなたから私に求婚してきたはずです。なぜ、自分から私を欲しがっておきながら、私ではだめだったなんて、今更そんなことを言い出したのです」
「それは……。俺がお前に一目惚れしたのは本当の話だ。結婚してから、自分の性癖について自覚し始めたことも。お前に幸せになってもらいたいと思い、身を引いた。
君の夫が望まない限り、人妻であっても、お前に手は出せない」
「それで、逆らうことのできない男の妻を寝取って遊んでいたと?」
農民の男から妻を奪っても、貴族であればいくらでも理由をこじつけて正当化出来てしまう。
ナリアはそう考えたが、カインが黙っていられず口を出した。
「ドルバイン様はそんな乱暴なことはなさいません!私が……妻を奪われるのが好きなのです。その、無理やりにではなく、妻を大切にしてくれる方ではないと困ります……。妻を愛していますし、妻も私の許可なく誰かに抱かれるようなことはしません」
そこには自身の性癖に対する細かいこだわりがあるのだ。
アロナもよく理解していないが、ドルバインとカインはその点ではとても意見が合う。
それ故、冬に行われる秘密の会についての企画や、部屋割り、細かい打ち合わせに関しては二人が身分にかかわりなく対等に相談しながら決めている。
一般的な価値観の中で生きるナリアには、どうやっても理解出来ない話なのだ。
普通の価値観を持つナリアが、ドルバインと対等に恋をしようとするならば、それは互いに譲り合う必要がある。
アロナとカインがそうであったように、どこまで許せるのか、許せないのか、あるいはどこまで愛のために受け入れる覚悟があるのか。
二人の道を二人で決めていく必要がある。
ナリアはドルバインと築くはずだった二人の道を下りたのだ。
「夫が許せば、私を抱けるの?」
ドルバインは腕組みをして首を横に振った。
「ナリア、残念ながら俺達は終わっている。確かにアロナに惹かれているが、彼女は夫と別れる気がない。そこも俺が気に入っている点だ。
彼女の身分や人妻かどうかも今は、あまり気にならない。俺達の関係を君が理解することは難しいだろう。なぜ、俺にこだわる?お前は……俺に触れられることを嫌がっていただろう……」
それはドルバインにとっても苦い記憶だった。
美しいナリアに求婚した当初、まさかその求婚をナリアが受けてくれるとは思いもしなかった。
ところが、ナリアはドルバインの求婚を受け入れた。
愛されているのだとドルバインは喜んだが、初夜を始めようとした時、ナリアは恐怖に震え嫌悪の表情でドルバインを見上げていた。
お世辞にも美しいとは言えない容姿であり、ドルバインは仕方がないとその妻の反応を咎めるようなことはしなかった。
「愛せると思ったのです……。どんなにあなたが醜くても、髪が薄くて、お腹が出ていて、髪が薄いくせに体が、獣のように毛むくじゃらでも。見た目が最悪で、夜会で並んで歩きたくないと思ったことは確かです。でも、嫌いだったわけじゃない。
あなたを尊敬していたし、人間的には好きだと思っていました」
後ろで聞いていたカインとアロナは、あまりにも失礼なナリアの言い分に、思いきり顔をしかめた。
ドルバインもなんとも複雑な表情だった。人間的には素晴らしいと褒められながらも、容姿が酷いとけなされている。
「君の浮気相手は皆、見た目の良い男ばかりだった。俺の容姿が君の好みでないことはわかっていた。だったら、最初から俺の求婚を断ってくれたらよかった」
「愛せると思ったのです……。あなたが好きだったから……」
顔以外は好きだったのだ。
頭が剥げていなければ、あるいは、お腹が出ていなければ、容姿がもっと整っていれば、そして特殊な性癖でなければ。
愛がなかったわけではない。
ナリアは、ドルバインの後ろで抱き合うカインとアロナの姿を見た。
変態の夫を全力で守ろうと、妻はその体を抱きしめている。
それだけの強い絆がドルバインとは築けなかった。
愛はあっても、やっぱり難しかったのだ。
「でもいやです。あなたが……私に求婚したあなたが、そんな、身分もない女を大切に抱いているなんて、許せない」
「本当にそんなことが理由でこんなところまで乗り込んできたのか?」
信じ難い話だとドルバインは首を横に振り、後ろに向かって手を振った。
「カイン、アロナと一緒に部屋を出ていろ。いつもの寝室で先に寝ていて良い」
飛ぶようにカインとアロナは立ち上がり、ドルバインに頭を下げて部屋を出た。
ドルバインはナリアに視線を向けたまま、扉が閉まる音を聞いていた。
「ナリア、お前の夫に連絡し、迎えにきてもらおう。それとも、何か問題があったのか?もとに戻ることは出来ないが、出来る範囲であれば、手助けすることも出来る」
涙を浮かべ、ナリアはドルバインを睨んだ。
「本当に優しいのね……。どうしても納得できないわ。あなたが、あの子を抱けるのか私に見せて」
とんでもない話だとドルバインはうんざりと息を吐き出した。
「なぜ?そんなことをする必要はないだろう。お前が俺に夫との夜の生活を見られるとしたらどうだ?お前の夫は良い気はしないだろうし、お前だって嫌だろう?
俺はこの関係を大切にしている。俺の欲望は表に出すべきものではないと思い、長い間封じてきた。彼らに会ったのは偶然で、彼らは多少無謀だが、互いに自分たちの望む未来を作ろうと努力していた。
そんな彼らの力を借り、俺はいくらかこんな自分を許せるようになり、好きにもなれてきた。世間的に受け入れられないことだと理解しているからこそ、同じ想いで生きている人々とも絆を深め、誰にも迷惑をかけない形でこの会を存続出来ている。
ナリア、君がどんな問題を抱えているのかわからないが、彼らを巻き込むな。
元夫として、出来る限り相談には乗りたいと思っている。その点だけは理解してくれ」
ドルバインはナリアの返事を待ったが、ナリアは黙り込み、また横を向いてしまった。
それ以上、今夜は進展しそうにないとみて、ドルバインは部屋を出た。
寝室で待っていろと告げたはずのカインとアロナが服を着替えて、廊下で待っていた。
「ドルバイン様……何か出来ることはありますか?」
仲良く並び、手を繋ぎ合うまだ若い夫婦の姿を見て、ドルバインは苦笑した。
「そうだな……。厨房にまだ何か残っているかな?急いで戻ったため、食事も風呂もまだだ」
ぱっと二人の顔が輝いた。
「すぐにご用意しますね!」
階段を駆け下りていく二人の背中を追いかけ、ドルバインもゆっくり歩きだしたが、途中で少しだけ足を止め、ナリアの部屋を振り返った。
若く美しいナリアを抱けなくなった時の苦しみが蘇る。
申し訳ない気持ちはあったが、手放せず、そして自分の性癖についても告げることは出来なかった。
愛がなかったわけではなかったが、当時のドルバインでは難しい決断だったのだ。
何か力になれることがあればと考えながら、じっと扉を見ていたドルバインは、やがて背を向け階段を下りて行った。
部屋に残ったナリアは、まだ納得がいっていなかった。
護衛のジーンとドムは隣の部屋に移動し、侍女たちも追い出してしまうと、ナリアは一人寝台に横たわった。
ドルバインがアロナを助け起こす姿を思い出し、ナリアは苛立った。
たまらなく、胸がざわめくし、どうしても手に入れることのできないものを前に、激しい怒りが湧いてくる。
本当にそんなことが許される世界があるのだろうか。
妻を寝取られることに喜びを感じるカインと、誰かの妻を抱きたいドルバイン。
彼らは互いの欲望を満たし合うことの出来る関係ということになるが、ならばアロナはどうなのか。
そんな変態な夫を受け入れ、ドルバインにも平気で抱かれることが出来るなんて信じられない。あんなに醜い男に抱かれるなんて。
普通の価値観を持つ女であれば、とても耐えられるものではない。
カインを愛しながら、ドルバインに抱かれるのであるから、それは浮気と変わらない。
とりわけ美人というわけではないが、小柄な女性ではあった。
化粧もしていないし、若く生き生きとした良く言えば雑草のような女だ。
考えているうちに、ナリアはまたもや激しい怒りがわいてきた。
アロナがドルバインの今の女だということがどうしても気に入らない。
洗練された美しさもなしに、ドルバインに愛されるなんて、許せない。
ナリアはそれが自身の本音だと疑わなかった。
先ほど、アロナがやってきたバルコニーに出ると、そこから隣の部屋を覗き込む。
ドムとジーンの部屋を飛び越え、その上にはドルバインの部屋がある。
アロナとカインがどこかにいるはずだ。
ナリアは部屋に戻ると、こっそり通路に出て屋敷内の探検に乗り出した。
その頃、ドルバインとアロナ、それからカインは浴室にいた。
湯桶に浸かったドルバインの世話を焼くのはアロナで、毛むくじゃらの背中やお腹を泡立てた石鹸で磨いていた。
その様子をカインは、目を輝かせて見つめている。
手には湯桶を持ち、必要な時に湯が足せるように召使らしく控えている。
ドルバインが大きな水音を立てて立ち上がり、尻の毛からぽたぽた水を滴らせながら足を開いた。
股の間にアロナが手を入れて石鹸を泡立て、敏感な場所を丁寧に洗う。
奇妙に見えるかもしれないが、三人には日常的な行為であり、それを眺めているカインにとっては至福の時だった。
「アロナ……きれいだ……」
かすかに声に出し、カインは他の男の股間を洗う妻にうっとりとした眼差しを向ける。
アロナは顔を赤くして、ちらりとカインに視線を向けると、困ったように微笑んだ。
夫が喜んでいるかどうかを確かめずにはいられないのだ。
夫を気に掛けるアロナの姿をドルバインも好ましく見ていた。
アロナは夫を愛しているし、アロナを愛する夫は、自分の欲望を叶えてくれるドルバインに人間的な好意を抱いている。
この複雑な関係は、互いの性癖を理解し合っていなければ成立しない。
何も知らないナリアに踏み込まれても、互いに不愉快な思いをするだけだ。
「そろそろ出るか。寝室は三階の大部屋を使おう。部屋は出来ているか?」
「はい。ドルバイン様、いつお戻りになっても良いように、夕方から暖炉にも火を入れてあります」
カインの言葉に、ドルバインは満足げに頷いた。
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