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9.注意書き
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厨房に火を入れながら、アロナは大きく欠伸をした。
ドルバインの腕の中でぐっすり眠ったアロナは、目を覚ました時、床にいたカインと手を繋いでいた。
カインはもう起きていて、寝台から落ちてきたアロナの手を両手で大事に支え、その指先に口づけを浴びせていた。
「そろそろ朝食を作りに行くから」
カインが囁き、アロナの手を放してそっと部屋を出て行き、アロナもそれを急いで追いかけた。
ドルバインが起きていたかどうかは確かめなかった。
どんなに体を重ね、同じ場所にいても身分の壁は存在していた。
アロナには夫が大切だし、ドルバインの権力を利用しようと考えたこともなく、自分の立場や本来の生活も大事にしていた。
厨房に入ると、アロナはさっそく鍋に水を入れて暖炉にかけた。
カインは食材を取りに裏口をさっさと出ていく。
食料庫は外の倉庫にあり、その床下には冬の秘密の会で残った食材も保管されている。
アロナが調理台の上に用意されていた具材を切って鍋に入れると、鍋底から泡がぶくぶくあがってきていた。
少し火が強いかもしれないと、棒でそれを調整していると、裏口が開き、カインが木箱を持って入ってきた。冷たい朝の風が吹き込み、炎が大きく揺れる。
「ドルバイン様にさっき会ったよ。用事があるから朝食はいらないそうだ。もう馬に乗って町の方へ走って行かれた」
外の音に全く気付かなかったアロナは驚いた。
「そうなの?私がこっそり出ていったことに気づいておられたのかしら?」
「そうだろうね。ドルバイン様はいつもお元気だから」
カインは昨夜のことを思い出し、込み上げる喜びに顔をほころばせた。
何度アロナを抱いても疲れた顔を見せないドルバインは、何度もカインを楽しませてくれる存在であり、心から信頼している主人なのだ。
アロナはまた大きな欠伸をした。
「私はドルバイン様みたいに鍛えているわけではないから……とっても眠いわ……」
鍋が煮えてきたことを確認し、アロナは次の料理にとりかかろうと後ろを向いた。
「きゃああっ」
アロナの悲鳴に、カインが木箱を放り出して駆け付ける。
「どうした?」
カインも目を丸くする。
厨房の入り口に、眠そうなナリアが立っていた。
腕組みをして、厚手の上着を羽織っている。
鼻の頭が少し赤くなっていて、まだ結い上げていない腰に届くほどの長い髪は、まだぼさぼさだった。
「お、驚かさないでください……。厨房にいらっしゃるなんて……侍女の方はまだ起きていないのですか?」
アロナは不機嫌な顔で、とげとげしく言った。
昨夜のカインへの仕打ちを思い出せば、優しい口調になるはずがない。
「食事は部屋に運んでちょうだい。それから、アロナ、あなたが持ってきて」
「え?!いや、アロナは疲れているので」
カインは止めようとしたが、アロナがその手を掴んだ。
「わかりました。後でお持ちします。お加減が悪いようでしたら、今日は一日休まれた方がいいと思うので薬湯も持っていきますね」
ナリアは態度の悪いアロナを睨み、ふいっと背中を向けて出て行った。
「アロナ、ナリア様は貴族なのだから、言い方に気を付けなくては……」
アロナは不満そうに鼻を鳴らす。
「夫をあんな目にあわされて、良い顔なんて出来ないわ」
「あの拘束具は悪くなかったけれどもね」
とんでもないとアロナは首を横に振った。アロナの目から見たら、貞操帯は立派な拷問器具だ。
「さっさと食事を作って運んでしまいましょう。今日は屋敷の掃除もしなくちゃいけないのよ。庭仕事もあるし大忙しよ」
冬の間は雪で閉ざされている庭も、そろそろ手入れを始めなければならない。
花壇の手入れもあるし、生垣の雪囲いも外す必要がある。
そう考えると、貴族が何をしているのか、不思議で仕方がない。
「何もしなくてもお世話されて、生活が出来るなんて、貴族はいいわね」
「本当に?ドルバイン様はいつも忙しそうだ……」
カインの言葉に、アロナも渋々同意した。
何をしているかわからないが、ドルバインはここに来るためにだいぶ無理をして時間を作っている印象だ。
冬の会を始める前は、領主代理としてかなり忙しい立場だったが、引退されてからは領地の仕事ぐらいしかしていないと聞いている。
しかし領主様の相談相手もしているし、なんだかんだで頼ってくる人もいるため、ドルバインは常に仕事に追われているし、せっかく別荘に来ても難しい顔で書類を読んでいることもある。
「貴族の女性は何をしているのかしら?」
それはわからないなとカインも頭を傾けた。
とりあえず、平民の二人には山ほど仕事があるのだ。
二人は大急ぎで自分たちの仕事に戻った。
その日、珍しくナリアは静かだった。本当に風邪をひいたのかもしれないと根は善良なアロナは心配し、薬湯の他にも喉に優しい飴菓子をお皿に乗せて部屋に運んだ。
侍女の三人組がそれを受け取り、ナリアは姿をみせなかったが、護衛のドムとジーンも扉の中にいて、昨夜の事件が嘘のように何事もなく平和だった。
その隙に、カインとアロナはたまっていた屋敷の仕事にとりかかった。
夕刻前に、ドルバインが夕食用の買出しをして戻ってくると、買い物に行く暇もなかった二人はドルバインに深く感謝した。
ドルバインはナリアの様子も見に行き、やはり体調が良くないようだと二人に教えた。
「昨夜、体を冷やしてしまったようだな。俺も今日はここで食事をとる。侍女たちが世話をしているからナリアのことは気にしなくて良い。護衛もいる」
「ドルバイン様はその、召使の方とかは連れて移動されないのですか?」
アロナはドルバインのための食事をテーブルに用意しながら問いかけた。
「一人に慣れてしまっているからな」
人妻に手を出したくなってしまうドルバインは、その性癖に気づいてからなるべく誰とも接触しないように気を付けてきたのだ。
「アロナ」
ドルバインに呼ばれ、アロナはカインを振り返る。
カインがにこにこと頷くと、アロナはほっとして、ドルバインの手を取ってその膝に抱かれた。
ドルバインの手がアロナのドレスの胸元に入り込んだ。
毛むくじゃらのドルバインの手の甲がアロナの胸の谷間から覗くと、カインは股間をおさえ、荒く息を吐いた。
興奮で鼻の穴が大きく膨らんでいる。
アロナは顔を赤くして俯いている。
「夫の前では嫌か?」
アロナは迷わず頷いた。ドルバインは苦笑し、カインの喜びに染まっていた顔も困ったように歪む。
「でも……カインが良いなら……」
夫想いのその言葉に、カインはまた笑顔になる。わかりやすい夫婦の反応に、ドルバインは満足そうに口角を引き上げた。
面倒な駆け引きのない、純朴な夫婦の姿はドルバインにとっても癒されるものだった。
「また今夜も可愛がってやらなければな」
「はい、お願いします」
元気に答えたのはカインだった。
アロナはぎょっとしたようにカインを見たが、そのにこにこした顔を前に、やはり困ったように微笑んだ。
その夜、客人の世話を終えた二人は、いつものようにドルバインの寝室を訪れた。
アロナはドルバインに抱かれ、それからカインはそれを心ゆくまで見学し、それから二人がいちゃいちゃしながら寝るのを寝台の下から眺め、股間をいじらないように命じられながら毛布にくるまって横になった。
秘密の会が終わると、三人はいつもそうして数日を過ごすのだ。
ところが、ドルバインは一度横になったのに、思い出したように寝台を出て、部屋の隅に寄せた荷物から書類の束を取り出すとテーブルに移動した。
カインがすぐに目を覚まし、お茶を入れて戻ってきた。
「ドルバイン様、何かお夜食を作りますか?」
カインが蝋燭をランプの中に入れると、ドルバインはあまり明るくしなくてもいいとカインに告げた。
「アロナを起こす必要はないぞ。実はとある調査を依頼されている。どうもこの土地に南国の地に生息する炎虫が運ばれた記録がある。この辺りでは糸麦を育てるが、それは熱に弱い。あれが入り込むと収穫高が半減してしまうからな。
作付けの前に、もしどこかに入り込んでいたら駆除する必要があるのだが、その駆除のために使用されるシダと呼ばれる鳥の入荷が間に合っていない。調査団を手配してきたが、手遅れになるかもしれないから、各村に知らせることにした」
ドルバインは白い紙を広げ、そこに文字を書き始めた。
村々の収穫が減れば、税収も下がることになる。
「領主様には知らせてきたが、どうも昨年からかなりの被害が出ているようなのだ。カイン、お前の村では聞かないか?」
カインは村長に聞いた身売りする女性がいる話を思い出した。
収穫が減った原因が炎虫かどうかはわからないが、その可能性も考えられる。
ドルバインは、カインの話を聞くと憂鬱な溜息をついた。
「困った話だな。娼館に女性が出稼ぎに行く話は珍しい話ではないが、土壌管理のせいとなると、それは領地を管理する側にも責任がある。
調査をしているが……実は北の地で南国の果実を育てるためにわざと仕入れることもある虫でもある。土壌と虫、それから植える作物の相性さえ合えば、収入を上げることが出来る」
「その……南国の虫が入り込んでいるかどうかは、どうしたらわかるのですか?その果実を植えてみればわかるのでしょうか?」
ドルバインがペンを置き、拳を打った。
「なるほど、名案だな、カイン。オツと呼ばれる果実の種なら手に入る。それがあっという間にこの寒い大地に根付けば、その虫が入り込んでいる可能性がある。オツ鳥が入荷出来るまでそれを配って調べさせよう。今のところ、出来ることはそれぐらいだ」
ドルバインは再びペンを取り、カインは紙についたインクを乾かすため、絨毯の上にドルバインの作成した注意書きを並べていった。
アロナがすやすや眠っている間に、男二人は各村に配るための書類を作り上げ、朝方にようやく就寝となった。
翌朝、アロナが目を覚ますと、二人の男は珍しくぐっすり眠っていた。
ドルバインはアロナの胸を大きな手で包んでいたが、アロナがその腕の中から抜け出てもドルバインは目を覚まさなかった。
カインは猫のように丸まって眠っていた。
アロナは二人を起こさないようにそっと寝室を出て厨房に向かった。
ドルバインの腕の中でぐっすり眠ったアロナは、目を覚ました時、床にいたカインと手を繋いでいた。
カインはもう起きていて、寝台から落ちてきたアロナの手を両手で大事に支え、その指先に口づけを浴びせていた。
「そろそろ朝食を作りに行くから」
カインが囁き、アロナの手を放してそっと部屋を出て行き、アロナもそれを急いで追いかけた。
ドルバインが起きていたかどうかは確かめなかった。
どんなに体を重ね、同じ場所にいても身分の壁は存在していた。
アロナには夫が大切だし、ドルバインの権力を利用しようと考えたこともなく、自分の立場や本来の生活も大事にしていた。
厨房に入ると、アロナはさっそく鍋に水を入れて暖炉にかけた。
カインは食材を取りに裏口をさっさと出ていく。
食料庫は外の倉庫にあり、その床下には冬の秘密の会で残った食材も保管されている。
アロナが調理台の上に用意されていた具材を切って鍋に入れると、鍋底から泡がぶくぶくあがってきていた。
少し火が強いかもしれないと、棒でそれを調整していると、裏口が開き、カインが木箱を持って入ってきた。冷たい朝の風が吹き込み、炎が大きく揺れる。
「ドルバイン様にさっき会ったよ。用事があるから朝食はいらないそうだ。もう馬に乗って町の方へ走って行かれた」
外の音に全く気付かなかったアロナは驚いた。
「そうなの?私がこっそり出ていったことに気づいておられたのかしら?」
「そうだろうね。ドルバイン様はいつもお元気だから」
カインは昨夜のことを思い出し、込み上げる喜びに顔をほころばせた。
何度アロナを抱いても疲れた顔を見せないドルバインは、何度もカインを楽しませてくれる存在であり、心から信頼している主人なのだ。
アロナはまた大きな欠伸をした。
「私はドルバイン様みたいに鍛えているわけではないから……とっても眠いわ……」
鍋が煮えてきたことを確認し、アロナは次の料理にとりかかろうと後ろを向いた。
「きゃああっ」
アロナの悲鳴に、カインが木箱を放り出して駆け付ける。
「どうした?」
カインも目を丸くする。
厨房の入り口に、眠そうなナリアが立っていた。
腕組みをして、厚手の上着を羽織っている。
鼻の頭が少し赤くなっていて、まだ結い上げていない腰に届くほどの長い髪は、まだぼさぼさだった。
「お、驚かさないでください……。厨房にいらっしゃるなんて……侍女の方はまだ起きていないのですか?」
アロナは不機嫌な顔で、とげとげしく言った。
昨夜のカインへの仕打ちを思い出せば、優しい口調になるはずがない。
「食事は部屋に運んでちょうだい。それから、アロナ、あなたが持ってきて」
「え?!いや、アロナは疲れているので」
カインは止めようとしたが、アロナがその手を掴んだ。
「わかりました。後でお持ちします。お加減が悪いようでしたら、今日は一日休まれた方がいいと思うので薬湯も持っていきますね」
ナリアは態度の悪いアロナを睨み、ふいっと背中を向けて出て行った。
「アロナ、ナリア様は貴族なのだから、言い方に気を付けなくては……」
アロナは不満そうに鼻を鳴らす。
「夫をあんな目にあわされて、良い顔なんて出来ないわ」
「あの拘束具は悪くなかったけれどもね」
とんでもないとアロナは首を横に振った。アロナの目から見たら、貞操帯は立派な拷問器具だ。
「さっさと食事を作って運んでしまいましょう。今日は屋敷の掃除もしなくちゃいけないのよ。庭仕事もあるし大忙しよ」
冬の間は雪で閉ざされている庭も、そろそろ手入れを始めなければならない。
花壇の手入れもあるし、生垣の雪囲いも外す必要がある。
そう考えると、貴族が何をしているのか、不思議で仕方がない。
「何もしなくてもお世話されて、生活が出来るなんて、貴族はいいわね」
「本当に?ドルバイン様はいつも忙しそうだ……」
カインの言葉に、アロナも渋々同意した。
何をしているかわからないが、ドルバインはここに来るためにだいぶ無理をして時間を作っている印象だ。
冬の会を始める前は、領主代理としてかなり忙しい立場だったが、引退されてからは領地の仕事ぐらいしかしていないと聞いている。
しかし領主様の相談相手もしているし、なんだかんだで頼ってくる人もいるため、ドルバインは常に仕事に追われているし、せっかく別荘に来ても難しい顔で書類を読んでいることもある。
「貴族の女性は何をしているのかしら?」
それはわからないなとカインも頭を傾けた。
とりあえず、平民の二人には山ほど仕事があるのだ。
二人は大急ぎで自分たちの仕事に戻った。
その日、珍しくナリアは静かだった。本当に風邪をひいたのかもしれないと根は善良なアロナは心配し、薬湯の他にも喉に優しい飴菓子をお皿に乗せて部屋に運んだ。
侍女の三人組がそれを受け取り、ナリアは姿をみせなかったが、護衛のドムとジーンも扉の中にいて、昨夜の事件が嘘のように何事もなく平和だった。
その隙に、カインとアロナはたまっていた屋敷の仕事にとりかかった。
夕刻前に、ドルバインが夕食用の買出しをして戻ってくると、買い物に行く暇もなかった二人はドルバインに深く感謝した。
ドルバインはナリアの様子も見に行き、やはり体調が良くないようだと二人に教えた。
「昨夜、体を冷やしてしまったようだな。俺も今日はここで食事をとる。侍女たちが世話をしているからナリアのことは気にしなくて良い。護衛もいる」
「ドルバイン様はその、召使の方とかは連れて移動されないのですか?」
アロナはドルバインのための食事をテーブルに用意しながら問いかけた。
「一人に慣れてしまっているからな」
人妻に手を出したくなってしまうドルバインは、その性癖に気づいてからなるべく誰とも接触しないように気を付けてきたのだ。
「アロナ」
ドルバインに呼ばれ、アロナはカインを振り返る。
カインがにこにこと頷くと、アロナはほっとして、ドルバインの手を取ってその膝に抱かれた。
ドルバインの手がアロナのドレスの胸元に入り込んだ。
毛むくじゃらのドルバインの手の甲がアロナの胸の谷間から覗くと、カインは股間をおさえ、荒く息を吐いた。
興奮で鼻の穴が大きく膨らんでいる。
アロナは顔を赤くして俯いている。
「夫の前では嫌か?」
アロナは迷わず頷いた。ドルバインは苦笑し、カインの喜びに染まっていた顔も困ったように歪む。
「でも……カインが良いなら……」
夫想いのその言葉に、カインはまた笑顔になる。わかりやすい夫婦の反応に、ドルバインは満足そうに口角を引き上げた。
面倒な駆け引きのない、純朴な夫婦の姿はドルバインにとっても癒されるものだった。
「また今夜も可愛がってやらなければな」
「はい、お願いします」
元気に答えたのはカインだった。
アロナはぎょっとしたようにカインを見たが、そのにこにこした顔を前に、やはり困ったように微笑んだ。
その夜、客人の世話を終えた二人は、いつものようにドルバインの寝室を訪れた。
アロナはドルバインに抱かれ、それからカインはそれを心ゆくまで見学し、それから二人がいちゃいちゃしながら寝るのを寝台の下から眺め、股間をいじらないように命じられながら毛布にくるまって横になった。
秘密の会が終わると、三人はいつもそうして数日を過ごすのだ。
ところが、ドルバインは一度横になったのに、思い出したように寝台を出て、部屋の隅に寄せた荷物から書類の束を取り出すとテーブルに移動した。
カインがすぐに目を覚まし、お茶を入れて戻ってきた。
「ドルバイン様、何かお夜食を作りますか?」
カインが蝋燭をランプの中に入れると、ドルバインはあまり明るくしなくてもいいとカインに告げた。
「アロナを起こす必要はないぞ。実はとある調査を依頼されている。どうもこの土地に南国の地に生息する炎虫が運ばれた記録がある。この辺りでは糸麦を育てるが、それは熱に弱い。あれが入り込むと収穫高が半減してしまうからな。
作付けの前に、もしどこかに入り込んでいたら駆除する必要があるのだが、その駆除のために使用されるシダと呼ばれる鳥の入荷が間に合っていない。調査団を手配してきたが、手遅れになるかもしれないから、各村に知らせることにした」
ドルバインは白い紙を広げ、そこに文字を書き始めた。
村々の収穫が減れば、税収も下がることになる。
「領主様には知らせてきたが、どうも昨年からかなりの被害が出ているようなのだ。カイン、お前の村では聞かないか?」
カインは村長に聞いた身売りする女性がいる話を思い出した。
収穫が減った原因が炎虫かどうかはわからないが、その可能性も考えられる。
ドルバインは、カインの話を聞くと憂鬱な溜息をついた。
「困った話だな。娼館に女性が出稼ぎに行く話は珍しい話ではないが、土壌管理のせいとなると、それは領地を管理する側にも責任がある。
調査をしているが……実は北の地で南国の果実を育てるためにわざと仕入れることもある虫でもある。土壌と虫、それから植える作物の相性さえ合えば、収入を上げることが出来る」
「その……南国の虫が入り込んでいるかどうかは、どうしたらわかるのですか?その果実を植えてみればわかるのでしょうか?」
ドルバインがペンを置き、拳を打った。
「なるほど、名案だな、カイン。オツと呼ばれる果実の種なら手に入る。それがあっという間にこの寒い大地に根付けば、その虫が入り込んでいる可能性がある。オツ鳥が入荷出来るまでそれを配って調べさせよう。今のところ、出来ることはそれぐらいだ」
ドルバインは再びペンを取り、カインは紙についたインクを乾かすため、絨毯の上にドルバインの作成した注意書きを並べていった。
アロナがすやすや眠っている間に、男二人は各村に配るための書類を作り上げ、朝方にようやく就寝となった。
翌朝、アロナが目を覚ますと、二人の男は珍しくぐっすり眠っていた。
ドルバインはアロナの胸を大きな手で包んでいたが、アロナがその腕の中から抜け出てもドルバインは目を覚まさなかった。
カインは猫のように丸まって眠っていた。
アロナは二人を起こさないようにそっと寝室を出て厨房に向かった。
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