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第三章 二人の秘密
34.幸運の刺繍
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お茶のカップを置いて、ほっと一息ついたローゼは、すぐに不満そうに顔をしかめた。
「ジェイス、ひどい。私の体で無理をしすぎよ」
顔を赤くして毛布に隠れようとするローゼを引っ張りだし、ジェイスは唇を奪う。
ローゼのぐったりと力の入らない体を見て、ジェイスはようやく察した。
「そんなに大変だったのか?俺は平気だぞ」
ジェイスに耐えられる快感はローゼには耐えられず、その淫靡な感覚を強く残した体で目覚めたローゼは一日中眠くて仕方なかった。
さらに、ジェイスの体に入って、何度も果てた感覚も合わさり、精神的にも疲れ果てていた。
ジェイスは腕の中のローゼにもう一度口づけし、慈しむように微笑んだ。
「君の体はほとんどが魔力だから心や体に感じる感覚を倍増してしまう」
ローゼには不可解な表現だったが、ジェイスはローゼの魂の形がきちんと器に収まっているかどうか確かめた。
塔の周りが淡い光に包まれ、窓から入り込んだ光が室内を照らし出す。
驚くローゼに、ジェイスは微笑みかける。
「この塔は俺の手足のように思いのままだ」
ローゼを抱き上げ、ジェイスは一階におりた。
階段の左側はかまどを置いた台所で、右側は浴室になっている。
湯桶にローゼを入れ、石鹸をあわ立てる。
「生活に必要な物はだいたい揃っている。なんだか、不思議な感覚だ。大昔に戻ったような、それでいて昨日の次の日が来ただけで、今までのことはすべて夢だったような気もする。さっき戻ってきて、剣がない事に気が付いた。塔に立てかけてあったが、仲間が置いてくれたのだと思う。
騎士だった頃の記憶が抜け落ちていた。肉体を持てば地に足が付き、与えられた役目が出来る。もう自由に時空を漂うことも出来ない」
まるで独り言のようにジェイスは話し続け、ローゼの体を優しくこすった。
「自由にどこかに行きたいの?」
頭に泡を乗せたローゼがジェイスのために桶の中に場所を作る。
心得て、ジェイスも服を脱ぎ湯桶に入る。
温いお湯が体を包み、手のひらですくうとさらさらとこぼれる。
ジェイスは服を着ているような体の感覚を楽しみながら、ローゼの体を洗い始めた。
「体がここに馴染むまでもう少し時間がかかるだけだ。魂は肉体という器の中で安定し、体を重ねればその輝きは増すという」
ローゼはあの漆黒の髪の魔法使いがジェイスに乗り移ったのではないだろうかと、怪しむようにジェイスの膝の間からちくちくする顎を見上げる。
「私に理解できる話はない?」
「そうだな……昨日のあれは良かった。心と体が入れ替わったやつだ。魔力が循環して意識が入れ替わっただけだったが、体の感覚も面白かったし、何より気分が良かった」
火を噴きそうな顔をして、俯いたローゼを捕まえ、ジェイスは無理矢理ローゼの顎を押し上げた。
耳まで赤いその顔に唇で触れ、耳元で囁く。
「後でまた試してみよう。君の体があんな風に成すすべなく俺に振り回されていたなんて知らなかった」
「おかげで、今日は一日中寝ていたのよ」
憤慨するローゼの顔も悪くない。
「それも最高に気分が良い」
ジェイスはひとしきりローゼをからかって遊び、湯桶から出ると、今度は二人の食事を楽しんだ。
パンや肉といった簡単なものだったが、見慣れない油紙が一つ盆に乗っていた。
中から出てきたのは揚げた丸いケーキだった。
三十年ここで生きた記憶のあるジェイスも初めて目にするものだった。
女性と暮らすとこうしたものが差し入れに入って来るのかと、ジェイスは感心しながら一つを食べた。
小さなケーキは五つ入っていたが、ローゼは四つも食べた。
全て食べ終えた後に、ローゼは、これが一番美味しかったと感想を口にした。
最後に、二人は寝室作りに取り掛かった。
二階は外から覗かれそうだとローゼが恥ずかしがり、三階の部屋に寝具を運び直す。
魔の森の木々は背が高く、周囲は闇に沈んで見える。
塔の根元はぼんやりと明るいが、それは月光夜草が生えたからだった。
ジェイスは外に出て、何本か摘んで戻ってくると、水を入れたコップに挿して寝室の灯りにした。
すっかり準備が整うと二人は再び抱き合って毛布に潜り込む。
ジェイスが上になり、ローゼの体を優しく抱くと、今度はローゼを抱き上げ自分の上に乗せた。
ローゼは嫌な顔をした。
「またやるの?」
「やった方が俺の魔力が安定する」
ジェイスの体の上から逃げようとするローゼを引き止め、ジェイスはローゼをうつ伏せにして上からのしかかり、肩やうなじに唇を押し付けた。
「ローゼ、昨日は俺もわけがわからなくて夢中だった。体の具合も酷く悪くて、それに、君にはわからないかしれないが、俺は……数百年分も溜まっていた」
「そうなの?」
「そうだ。うまくいかなかった。君に会いたくてたまらなかった。その前は三十年もお預けをされていた。君が俺をちゃんと感じているのか少し知りたいだけだ」
「そんなのわかるじゃない」
「一回だけだ……」
耳に触れる声が甘く、ローゼは思わず頷いた。
その瞬間、体の奥を貫かれ、溜まっていた魔力が流れ出る。
ジェイスの耳に涙ぐんだ男の情けない声が聞こえてきた。
「ジェイスの体難しい……もう我慢できない。どうしよう」
うつ伏せのローゼの上に体を重ね、ジェイスが腰を振っている。
ところが、腰を振って慣れない男性器を振り回しているのはローゼだった。
予期しないところから湧き上がる快感に成す術もなく振り回され、ローゼがジェイスの声で喘ぎ続ける。
「あっ……あっ……んっ……もうだめっ」
ローゼの声だと思えば可愛いが、大の男であればなんとも情けない。
「ローゼ、十回や二十回ぐらい俺の体はどうってことない。好きに使っていい」
頼もしい発言はジェイスの体の下で揺すられている愛らしい少女のものだった。
しかしそれを口にしたのはローゼではない。
ローゼの胎内に熱く張り詰めたものが埋まり、もがくように下から突き上げる。
「と、止まらない……」
掠れた男の声がまたもや弱音を口にする。
ジェイスの体は糸を失った凧のように、理性を失い腰を振り続けている。
何度か熱を吐き出し、低い男の声でローゼがしくしく泣き始める。
「ジェイス、すぐ出ちゃう!どうやったら我慢できるの!」
ジェイスの男性器がローゼの秘芯の奥を強く深く貫いた。
ローゼの体はその勢いに負けじと熱い塊を飲みこみ、痺れるような快感に静かに耐える。
「この体は愛しいな……」
甘く疼く快感に包まれ、ジェイスは意識を自分の体に戻す。
ローゼが泣きそうな声をあげた。
「ジェイス!ひどい」
ジェイスの体で何度も果てたローゼは、痺れるような快感をとどめた自分の体に戻り、今度は女の体でまたしても果ててしまう。
うつ伏せのローゼの体を抱き上げ、ジェイスは自分の上にのせると下から突き上げた。
簡単にローゼを果てさせ、また体の位置を変える。
その瞬間、また意識を入れ替える。
ジェイスの体に入ったローゼが自分の体を見おろし、腰を振っている。
「また止まらない……」
泣きながら腰を振る男の情けない顔を見上げ、ローゼの体に入っているジェイスは手を伸ばして、目の前の男の乳首を指先で嬲る。
「あっ……ひどいっ……」
体躯の大きな男が泣いて身をよじる。
「俺の体で簡単に泣いてくれるな」
文句を言いながらもジェイスは楽しそうにローゼの意識が入っている自分の体に触れる。
男の体など触っても楽しいはずもないのだが、ローゼが入っていると思うと、楽しくてたまらない。
さらに、自分の体だから多少乱暴に扱っても罪悪感もない。
ローゼが顔を赤くし、熱を吐き出すと、ジェイスはまた意識を入れ替えた。
「んっ!」
その瞬間、ローゼの体にも燃えるような快感が走り抜ける。
ジェイスは数百年分の愛を注ぎ、もう二度と離れなくてすむように魂の隅々までも味わいつくそうと、舌をローゼの体に這わせる。
ローゼが意識を失う寸前にジェイスは愛撫を止め、最後の熱を吐きだした。
「ローゼ?」
うっとりとした表情で微笑むローゼの姿に安堵し、ジェイスは横に寝そべりローゼを抱き寄せた。
ローゼは全速力で走ってきたかのように浅い呼吸を繰り返す。
男の体で数回果て、さらに女の体でも深く快感を味わった。
これでは明日もまた寝たきりになってしまう。
文句の一つでも言わなければとローゼが考えていると、ジェイスが先に口を開いた。
「謝らないといけないことがある……」
その声は少し深刻な響きを帯びていた。
「なに?」
ローゼはジェイスにしがみつく。最も悪い話はジェイスが離れてしまうことだ。
安心させるように、ジェイスがローゼの肩を優しく撫でる。
「俺達はこの森を出られない。あるいは、ここ以外の場所に行くなら最果てしかない。魔力が濃い場所で塔を建て、自分たちを守り生きていくしかない。隔絶された世界で二人きりだ」
孤独に生きてきたローゼは簡単に頷いた。
ただジェイスのことを心配した。
「ごめんなさい。私のせい?ジェイスはもう騎士に戻れないの?」
部下になるはずのデリックや騎士団の新人たち、それから仲間たちと異国の国々を旅したことを思い出す。
魔獣の群れを討伐するために他国に渡ったこともあれば、魔霧の影響を調査しに、大陸の果てまで行ったこともある。
多くの人々と出会い、仲間と絆を深め合った。
ローゼが水晶に封印されている間、ジェイスが森の外で助けた人々は、今度は助からないかもしれない。
「第二騎士団は優秀だ……俺がいなくても……」
「そうだ!ねぇ、私が刺繍したらどう?幸運の刺繍。私の体には幸運の魔力がいっぱい入っているのでしょう?」
はっとしてジェイスは体を起こし、ローゼを見おろした。
「確かにそうだ。君が封印されていた三十年、君の刺繍も世に出ることはなかった。それがあれば以前よりずっと平和になるかもしれない」
封印された記憶を持たないローゼはジェイスのこうした不可解な発言に慣れてきていた。
余計なことは聞き返さず、素朴な疑問を口にした。
「そういえば、ここは魔の森でしょう?幸運の実が見つかれば、きっと多くの人が喜ぶはずよ」
幸運の実には悪意を持たない魔力が詰まっている。
薬を作る時に一滴でもあればその結果は運の良い方に傾く。
さらにローゼはその力を刺繍に注げる。
「騎士の隊服の全てに君の刺繍を入れてもらえば、かなり生存率があがるだろう」
ローゼも目を輝かせる。
「ジェイスが毎日、こんなに私を抱いたりしなければ仕事がはかどると思う」
釘を刺され、ジェイスは苦笑した。
「今日は昨日よりましだったはずだ」
「嘘よ。だってもう体に力が入らないもの……」
「俺の体とどっちがいい?」
ジェイスはローゼの上に覆いかぶさり、再びローゼの中に入った。
喜びの声をあげながら、強すぎる刺激にローゼは身をよじった。
「ジェイスの体は我慢できなくなるから苦手よ。だって、終わってもすぐに気持ち良くなって息をする暇もないし、腰が止まってくれないのだもの。どうやって出るのを我慢したらいいの?」
ローゼを喘がせながら、腰を押し付け、ジェイスは余裕のある笑みを浮かべた。
「俺が何年男の体で生きてきたと思っている。使い方をわかっているのさ。それに、こつがある。知りたいか?」
「あっ!いやっ!」
突然ローゼの悲鳴は男の声に変わる。
ローゼの体に意識を移したジェイスは腰の止まらない自分の体を見上げ、親切に教えた。
「騎士は痛みと感情を区別する訓練をする。怪我をした時に痛みで動けなくなったらそれこそ死につながる。だから体の痛みと感情を引き離す。痛みはあっても、それを切り離せるだけの精神力があれば戦える」
ローゼの体に入っているジェイスは、顔を赤くし、余裕なく腰を動かす自身の体を楽しそうに眺める。
ジェイスの体に入っているのはローゼの意識だ。
「あっ!またっ!出ちゃう!我慢なんて出来ない!ああっ!ひどいっ!動かないでよ!」
色気のない男の声で喘ぐローゼの姿は本当に愛おしい。
容姿というのはあまり気にならないものだなとジェイスは冷静に分析し、三回ローゼが堪えきれず男の体で果てたところで意識を交換した。
せっかく慣れた体に戻ったのに、今度はジェイスに的確に体の奥を突かれ、ローゼは拳でジェイスの胸を叩く。男の体でもう三回も達している。さらにローゼの体は強い快感を我慢しすぎて既に限界を迎えている。
甘い悲鳴を上げて、ローゼは体を震わせた。
くぐもった笑い声を立て、ジェイスは少し意地悪だったと謝りながら、ローゼを抱いて横たわった。
ローゼはすぐに寝息を立て始める。
甘く隠微な香りをまとう愛らしい姿に、ジェイスは口づけし、幸福な吐息と共に瞼を落とした。
「ジェイス、ひどい。私の体で無理をしすぎよ」
顔を赤くして毛布に隠れようとするローゼを引っ張りだし、ジェイスは唇を奪う。
ローゼのぐったりと力の入らない体を見て、ジェイスはようやく察した。
「そんなに大変だったのか?俺は平気だぞ」
ジェイスに耐えられる快感はローゼには耐えられず、その淫靡な感覚を強く残した体で目覚めたローゼは一日中眠くて仕方なかった。
さらに、ジェイスの体に入って、何度も果てた感覚も合わさり、精神的にも疲れ果てていた。
ジェイスは腕の中のローゼにもう一度口づけし、慈しむように微笑んだ。
「君の体はほとんどが魔力だから心や体に感じる感覚を倍増してしまう」
ローゼには不可解な表現だったが、ジェイスはローゼの魂の形がきちんと器に収まっているかどうか確かめた。
塔の周りが淡い光に包まれ、窓から入り込んだ光が室内を照らし出す。
驚くローゼに、ジェイスは微笑みかける。
「この塔は俺の手足のように思いのままだ」
ローゼを抱き上げ、ジェイスは一階におりた。
階段の左側はかまどを置いた台所で、右側は浴室になっている。
湯桶にローゼを入れ、石鹸をあわ立てる。
「生活に必要な物はだいたい揃っている。なんだか、不思議な感覚だ。大昔に戻ったような、それでいて昨日の次の日が来ただけで、今までのことはすべて夢だったような気もする。さっき戻ってきて、剣がない事に気が付いた。塔に立てかけてあったが、仲間が置いてくれたのだと思う。
騎士だった頃の記憶が抜け落ちていた。肉体を持てば地に足が付き、与えられた役目が出来る。もう自由に時空を漂うことも出来ない」
まるで独り言のようにジェイスは話し続け、ローゼの体を優しくこすった。
「自由にどこかに行きたいの?」
頭に泡を乗せたローゼがジェイスのために桶の中に場所を作る。
心得て、ジェイスも服を脱ぎ湯桶に入る。
温いお湯が体を包み、手のひらですくうとさらさらとこぼれる。
ジェイスは服を着ているような体の感覚を楽しみながら、ローゼの体を洗い始めた。
「体がここに馴染むまでもう少し時間がかかるだけだ。魂は肉体という器の中で安定し、体を重ねればその輝きは増すという」
ローゼはあの漆黒の髪の魔法使いがジェイスに乗り移ったのではないだろうかと、怪しむようにジェイスの膝の間からちくちくする顎を見上げる。
「私に理解できる話はない?」
「そうだな……昨日のあれは良かった。心と体が入れ替わったやつだ。魔力が循環して意識が入れ替わっただけだったが、体の感覚も面白かったし、何より気分が良かった」
火を噴きそうな顔をして、俯いたローゼを捕まえ、ジェイスは無理矢理ローゼの顎を押し上げた。
耳まで赤いその顔に唇で触れ、耳元で囁く。
「後でまた試してみよう。君の体があんな風に成すすべなく俺に振り回されていたなんて知らなかった」
「おかげで、今日は一日中寝ていたのよ」
憤慨するローゼの顔も悪くない。
「それも最高に気分が良い」
ジェイスはひとしきりローゼをからかって遊び、湯桶から出ると、今度は二人の食事を楽しんだ。
パンや肉といった簡単なものだったが、見慣れない油紙が一つ盆に乗っていた。
中から出てきたのは揚げた丸いケーキだった。
三十年ここで生きた記憶のあるジェイスも初めて目にするものだった。
女性と暮らすとこうしたものが差し入れに入って来るのかと、ジェイスは感心しながら一つを食べた。
小さなケーキは五つ入っていたが、ローゼは四つも食べた。
全て食べ終えた後に、ローゼは、これが一番美味しかったと感想を口にした。
最後に、二人は寝室作りに取り掛かった。
二階は外から覗かれそうだとローゼが恥ずかしがり、三階の部屋に寝具を運び直す。
魔の森の木々は背が高く、周囲は闇に沈んで見える。
塔の根元はぼんやりと明るいが、それは月光夜草が生えたからだった。
ジェイスは外に出て、何本か摘んで戻ってくると、水を入れたコップに挿して寝室の灯りにした。
すっかり準備が整うと二人は再び抱き合って毛布に潜り込む。
ジェイスが上になり、ローゼの体を優しく抱くと、今度はローゼを抱き上げ自分の上に乗せた。
ローゼは嫌な顔をした。
「またやるの?」
「やった方が俺の魔力が安定する」
ジェイスの体の上から逃げようとするローゼを引き止め、ジェイスはローゼをうつ伏せにして上からのしかかり、肩やうなじに唇を押し付けた。
「ローゼ、昨日は俺もわけがわからなくて夢中だった。体の具合も酷く悪くて、それに、君にはわからないかしれないが、俺は……数百年分も溜まっていた」
「そうなの?」
「そうだ。うまくいかなかった。君に会いたくてたまらなかった。その前は三十年もお預けをされていた。君が俺をちゃんと感じているのか少し知りたいだけだ」
「そんなのわかるじゃない」
「一回だけだ……」
耳に触れる声が甘く、ローゼは思わず頷いた。
その瞬間、体の奥を貫かれ、溜まっていた魔力が流れ出る。
ジェイスの耳に涙ぐんだ男の情けない声が聞こえてきた。
「ジェイスの体難しい……もう我慢できない。どうしよう」
うつ伏せのローゼの上に体を重ね、ジェイスが腰を振っている。
ところが、腰を振って慣れない男性器を振り回しているのはローゼだった。
予期しないところから湧き上がる快感に成す術もなく振り回され、ローゼがジェイスの声で喘ぎ続ける。
「あっ……あっ……んっ……もうだめっ」
ローゼの声だと思えば可愛いが、大の男であればなんとも情けない。
「ローゼ、十回や二十回ぐらい俺の体はどうってことない。好きに使っていい」
頼もしい発言はジェイスの体の下で揺すられている愛らしい少女のものだった。
しかしそれを口にしたのはローゼではない。
ローゼの胎内に熱く張り詰めたものが埋まり、もがくように下から突き上げる。
「と、止まらない……」
掠れた男の声がまたもや弱音を口にする。
ジェイスの体は糸を失った凧のように、理性を失い腰を振り続けている。
何度か熱を吐き出し、低い男の声でローゼがしくしく泣き始める。
「ジェイス、すぐ出ちゃう!どうやったら我慢できるの!」
ジェイスの男性器がローゼの秘芯の奥を強く深く貫いた。
ローゼの体はその勢いに負けじと熱い塊を飲みこみ、痺れるような快感に静かに耐える。
「この体は愛しいな……」
甘く疼く快感に包まれ、ジェイスは意識を自分の体に戻す。
ローゼが泣きそうな声をあげた。
「ジェイス!ひどい」
ジェイスの体で何度も果てたローゼは、痺れるような快感をとどめた自分の体に戻り、今度は女の体でまたしても果ててしまう。
うつ伏せのローゼの体を抱き上げ、ジェイスは自分の上にのせると下から突き上げた。
簡単にローゼを果てさせ、また体の位置を変える。
その瞬間、また意識を入れ替える。
ジェイスの体に入ったローゼが自分の体を見おろし、腰を振っている。
「また止まらない……」
泣きながら腰を振る男の情けない顔を見上げ、ローゼの体に入っているジェイスは手を伸ばして、目の前の男の乳首を指先で嬲る。
「あっ……ひどいっ……」
体躯の大きな男が泣いて身をよじる。
「俺の体で簡単に泣いてくれるな」
文句を言いながらもジェイスは楽しそうにローゼの意識が入っている自分の体に触れる。
男の体など触っても楽しいはずもないのだが、ローゼが入っていると思うと、楽しくてたまらない。
さらに、自分の体だから多少乱暴に扱っても罪悪感もない。
ローゼが顔を赤くし、熱を吐き出すと、ジェイスはまた意識を入れ替えた。
「んっ!」
その瞬間、ローゼの体にも燃えるような快感が走り抜ける。
ジェイスは数百年分の愛を注ぎ、もう二度と離れなくてすむように魂の隅々までも味わいつくそうと、舌をローゼの体に這わせる。
ローゼが意識を失う寸前にジェイスは愛撫を止め、最後の熱を吐きだした。
「ローゼ?」
うっとりとした表情で微笑むローゼの姿に安堵し、ジェイスは横に寝そべりローゼを抱き寄せた。
ローゼは全速力で走ってきたかのように浅い呼吸を繰り返す。
男の体で数回果て、さらに女の体でも深く快感を味わった。
これでは明日もまた寝たきりになってしまう。
文句の一つでも言わなければとローゼが考えていると、ジェイスが先に口を開いた。
「謝らないといけないことがある……」
その声は少し深刻な響きを帯びていた。
「なに?」
ローゼはジェイスにしがみつく。最も悪い話はジェイスが離れてしまうことだ。
安心させるように、ジェイスがローゼの肩を優しく撫でる。
「俺達はこの森を出られない。あるいは、ここ以外の場所に行くなら最果てしかない。魔力が濃い場所で塔を建て、自分たちを守り生きていくしかない。隔絶された世界で二人きりだ」
孤独に生きてきたローゼは簡単に頷いた。
ただジェイスのことを心配した。
「ごめんなさい。私のせい?ジェイスはもう騎士に戻れないの?」
部下になるはずのデリックや騎士団の新人たち、それから仲間たちと異国の国々を旅したことを思い出す。
魔獣の群れを討伐するために他国に渡ったこともあれば、魔霧の影響を調査しに、大陸の果てまで行ったこともある。
多くの人々と出会い、仲間と絆を深め合った。
ローゼが水晶に封印されている間、ジェイスが森の外で助けた人々は、今度は助からないかもしれない。
「第二騎士団は優秀だ……俺がいなくても……」
「そうだ!ねぇ、私が刺繍したらどう?幸運の刺繍。私の体には幸運の魔力がいっぱい入っているのでしょう?」
はっとしてジェイスは体を起こし、ローゼを見おろした。
「確かにそうだ。君が封印されていた三十年、君の刺繍も世に出ることはなかった。それがあれば以前よりずっと平和になるかもしれない」
封印された記憶を持たないローゼはジェイスのこうした不可解な発言に慣れてきていた。
余計なことは聞き返さず、素朴な疑問を口にした。
「そういえば、ここは魔の森でしょう?幸運の実が見つかれば、きっと多くの人が喜ぶはずよ」
幸運の実には悪意を持たない魔力が詰まっている。
薬を作る時に一滴でもあればその結果は運の良い方に傾く。
さらにローゼはその力を刺繍に注げる。
「騎士の隊服の全てに君の刺繍を入れてもらえば、かなり生存率があがるだろう」
ローゼも目を輝かせる。
「ジェイスが毎日、こんなに私を抱いたりしなければ仕事がはかどると思う」
釘を刺され、ジェイスは苦笑した。
「今日は昨日よりましだったはずだ」
「嘘よ。だってもう体に力が入らないもの……」
「俺の体とどっちがいい?」
ジェイスはローゼの上に覆いかぶさり、再びローゼの中に入った。
喜びの声をあげながら、強すぎる刺激にローゼは身をよじった。
「ジェイスの体は我慢できなくなるから苦手よ。だって、終わってもすぐに気持ち良くなって息をする暇もないし、腰が止まってくれないのだもの。どうやって出るのを我慢したらいいの?」
ローゼを喘がせながら、腰を押し付け、ジェイスは余裕のある笑みを浮かべた。
「俺が何年男の体で生きてきたと思っている。使い方をわかっているのさ。それに、こつがある。知りたいか?」
「あっ!いやっ!」
突然ローゼの悲鳴は男の声に変わる。
ローゼの体に意識を移したジェイスは腰の止まらない自分の体を見上げ、親切に教えた。
「騎士は痛みと感情を区別する訓練をする。怪我をした時に痛みで動けなくなったらそれこそ死につながる。だから体の痛みと感情を引き離す。痛みはあっても、それを切り離せるだけの精神力があれば戦える」
ローゼの体に入っているジェイスは、顔を赤くし、余裕なく腰を動かす自身の体を楽しそうに眺める。
ジェイスの体に入っているのはローゼの意識だ。
「あっ!またっ!出ちゃう!我慢なんて出来ない!ああっ!ひどいっ!動かないでよ!」
色気のない男の声で喘ぐローゼの姿は本当に愛おしい。
容姿というのはあまり気にならないものだなとジェイスは冷静に分析し、三回ローゼが堪えきれず男の体で果てたところで意識を交換した。
せっかく慣れた体に戻ったのに、今度はジェイスに的確に体の奥を突かれ、ローゼは拳でジェイスの胸を叩く。男の体でもう三回も達している。さらにローゼの体は強い快感を我慢しすぎて既に限界を迎えている。
甘い悲鳴を上げて、ローゼは体を震わせた。
くぐもった笑い声を立て、ジェイスは少し意地悪だったと謝りながら、ローゼを抱いて横たわった。
ローゼはすぐに寝息を立て始める。
甘く隠微な香りをまとう愛らしい姿に、ジェイスは口づけし、幸福な吐息と共に瞼を落とした。
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確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
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